42 / 76
第七話 ピエロは笑う
⑤
しおりを挟む
縁の推理を聞き、明奈が犯人だと告げた桃子により、部屋の空気は一気に緊張感に包まれた。
その緊張感のなか、章造が目を丸くして言った。
「あ、明奈が……牧島を、殺したじゃと!?」
章造が言葉を発したのを皮切りに、雄一も言った。
「そ、そうですよっ!小笠原先生……明奈姉さんが犯人って……犯人はピエロでしょ?姉さんも黙ってないで何とか言って下さいよっ!」
そう言いながら雄一が目線を明奈に移すと、明奈は下を向いて黙っていた。
一方屋上では、推理に付いての疑問を、ピエロが縁に投げ掛けた。
「ひとつわからない事がある……俺は部屋に盗聴機を仕掛け……部屋の会話を聞いていたが……いつ犯人に気づいた?君の口ぶりだと、ハンカチに気づく前から、西岡明奈が犯人だと思っていたようだが……」
縁は言った。
「ハンカチはあくまでも物的証拠……殺害された牧島さんの胸ポケットからハンカチが消えていた……おそらく殺害後に抜き取り、今も自身が持っているのだろう……。ただ、確かにお前の言う通り、ハンカチに気づく前から犯人の目星は付いていた」
ピエロは興味津々といった感じだ。
縁は続けた。
「犯人は偽の予告状を、山王商事に送っている……広報にね」
ピエロは言った。
「だとしたら、広報部の大島が自作自演した可能性もあるぜ……」
縁はピエロに言った。
「確かにその可能性もあるが……広報にはもう一人いる……」
「それが西岡明奈だと言うのか?……しかし彼女の肩書きは会長の娘ってことしか……」
「俺は今朝、山王商事の広報に行ってきた……。その時の印象は、よく整理された職場だった……広報は主に企業PRやプロモーション等を請け負う部署だ……資料などが散乱し、散らかっていても、おかしくはない……」
ピエロはピンときていないと、いった様子だ。
縁は続けた。
「それなのに、見事に整理され、キレイな職場だった。上司がよほどのきれい好きで、几帳面なのが伺える」
ピエロが言った。
「その上司が西岡明奈だと言うのか?」
縁は頷いた。
「彼女は牧島の襟元を、そのハンカチで拭いていた。きれい好きでないと、他人の襟元をハンカチで拭かないし、殺すための仕掛けなら、「プレゼント」と言ってハンカチを胸ポケットに差し込めばいいだけだ……」
ピエロは言った。
「しかしそれだけで犯人にするには……少し弱いぜ……」
縁はニヤリとして言った。
「もちろんそれだけじゃねぇ……。広報の大島は予告状を、中身を確認せずに上司に渡している」
ピエロは言った。
「なるほどね……。大島の上司は西岡明菜……それで犯人を絞った訳か……」
「ああ……そして、ハンカチに気づいて、犯人を確定したんだ……」
一方の桃子は、縁の推理の続きを皆に話した。
すると章造が言った。
「明奈が……明奈が殺人じゃと!?信じられん……明奈っ、違うと言ってくれっ!ハンカチなど持ってないんじゃろ?」
章造は明奈をすがるような目で見た。
すると明奈はようやく口を開いた。
「もう……もういいの……お父様……」
すると雄一が言った。
「あ、明奈姉さん……」
明奈は桃子を見つめて言った。
「私が……牧島さんを…………殺したわ……」
桃子は言った。
「認めるのだな?」
桃子にそう言われると、明奈はスカートの内側から、ハンカチとレースの手袋を出した。手袋とハンカチには血が付いていた。
それを見た章造と雄一は項垂れた。
桃子は小声で呟いた。
「縁……こっちは終わったぞ……」
イヤホンから桃子の声を聞いた縁は、ピエロに言った。
「西岡明奈が罪を認めたよ……」
ピエロが言った。
「そのようだな……で、いいのか?殺人犯を放っておいて……」
縁は言った。
「俺が信頼している女性に任せてある。それよりも……」
「それよりも?」
縁は目を見開いき、不敵な微笑みした。
「最初から俺の興味は、殺人犯よりお前に向いちまってんだ……」
縁の様子を見て、ピエロはニヤリとした。
「恐いねぇ……」
縁は言った。
「後はお前の喜劇の種を証すだけだ……」
ピエロは縁に突きつけられた、麻酔銃を見て言った。
「あぶない野郎だな……目がイッちまってるぜ」
縁は気にせず言った。
「お前はまず……警備員として、このビルの防犯に、数日前から加わった……。下調べも予てな……。そして犯行当日に連絡ミスを誘発し、人員を減らし、屋上の警備を手薄にし、脱出ルートを確保した」
ピエロは口角を上げて聞いている。
縁は続けた。
「屋上の警備をかって出たお前は、犯行時間の数分前に、『マリーの泪』が保管されている部屋の入口の警備員と「木村警部の指示」とでも言って、屋上の警備と入れ替わった」
縁は口角を上げた。
「そして犯行時間になり、ビルが停電したのを見計らって、部屋に侵入し『マリーの泪』を奪い、非常階段から屋上に逃走した」
するとピエロが言った。
「肝心な種が残ってるぜ……俺があのショウケースをどうやって解除したのか……あれは指紋認証システムだ……。あのジイさん以外の人間が開けるのは不可能だぜ」
縁は不敵な微笑みを浮かべた。
「言っただろ?「数日前からお前はこのビルに入ってる」と……」
するとピエロの口元が、確かに少しだが、ピクッと反応した。
縁は言った。
「つまりお前は……『マリーの泪』より先に盗んだんだ……『章造氏の指紋を』……」
縁は突きつけている、麻酔銃を握る手に、力を込めた。
「お前は章造氏の指紋を採取し、特殊な手袋を造り……あのショウケースを解除したんだ」
ピエロはニヤニヤしながら、下を向いている。
縁は言った。
「ゲームオーバーだぜ……」
すると非常口から、木村率いる捜査員達が、大勢現れた。
木村は声を荒げた。
「観念しろっ!ピエロっ!」
ピエロは木村に言った。
「遅かったな……木村の旦那。でも、今回はいい助っ人連れてきたな……」
ピエロの余裕な態度を不信に思った縁は、ピエロに言った。
「状況を理解してんのか?この引き金を引いたら、お前はめでたく逮捕だぜ……」
ピエロはニヤニヤしたままだ。
縁は麻酔銃を強調した。
「俺が引き金を引かないと思ってんのか?」
ピエロは言った。
「そんな事は思ってねぇよ……ただ、見事に種を証した少年に、面白いものを見せてあげようと、思ってねっ……」
「何っ!?面白いもの?」
警戒している縁をよそに、ピエロは軽く咳払いをし、そして口を開いた。
「縁……私を撃つのか?」
縁はその声を聞いて、さすがに動揺した。ピエロの発するその声は……桃子のものだった。
縁は思わず怯み、ピエロはその一瞬を逃さずニヤリとした。
次の瞬間、ピエロは地面に何かを投げつけた。それはパーンッという激しい音を発すると同時に、辺りを煙に包んだ。
煙は瞬く間に、屋上全体に拡がった。
木村の声が屋上に響き渡る。
「えっ、煙幕だっ!」
屋上はパニックに陥る。
すると煙幕のなかから、縁に向かって声がした。
「なかなか楽しかったぜ……」
その声はピエロだった。
ピエロは続けた。
「今回は引き分けって事にしておいてやる……」
縁は煙幕に向かって言った。
「何をっ!?……」
すると煙幕の中から、縁に向かってなにかが飛んできた。
縁がそれをキャッチすると、ピエロは言った。
「そいつは返すぜ……本物じゃねぇからな……」
「何っ!?」
「じゃあな、天才少年っ……機会があったら、また遊ぼうぜ……」
「待てっ!ピエロっ!」
縁は煙幕に向かって叫んだが……返事は返ってこなかった。
やがて煙幕は晴て、屋上は元に戻ったが、ピエロはすでにおらず、縁と木村率いる捜査員が、屋上に取り残される格好になった。
縁はピエロから受け取った物を、確認した。それは、『マリーの泪』だった。
縁は苦笑いをした。
「あの野郎……」
縁の様子を元に木村がやって来た。
「新井場君っ……無事か?『マリーの泪』は?」
縁は『マリーの泪』を手でブラつかせた。
「逃げられたよ……」
木村は縁から『マリーの泪』を受け取った。
「しかし……お手柄だ……『マリーの泪』は無事だからな」
縁は呟いた。
「引き分けか……言ってくれるぜ、あの野郎……」
その後到着した、有村率いる捜査一課に明奈は連行された。
明奈はマスコミが待つ表口を堂々と歩き、パトカーに乗り込んだ。マスコミが放つカメラのフラッシュに、臆することなく……。
そして章造や雄一が見守るなか、明奈を乗せたパトカーは、警視庁に向かって走って行った。
血の繋がった肉親がパトカーに乗せられて、目の前から去っていく心境を、縁や桃子、椿が知るすべはなかったが、章造と雄一の憔悴した表情を見れば、心中を察する事くらいはできた。
1階のエントランスから、ガラスの窓越しにその様子を伺い、3人は少し沈黙したが、桃子が口を開いた。
「ピエロは……どういう奴だった?」
縁は苦笑いをした。
「ふざけた野郎だったよ……」
椿が言った。
「なんか……色々起こりすぎて、整理できてないんだけど……」
桃子が言った。
「しかし『マリーの泪』が偽物とは、どういう意味だ?」
縁は言った。
「さぁな……高価な宝石には代わりないけど、『マリーの泪』ではなかったって、事じゃないのか……」
椿が言った。
「意味がわからないんだけど……」
すると男性の声がした。
「それは今後警察が、調べる事だよ……」
声の主は有村だった。
有村はニコニコしながら言った。
「またまたお手柄だねぇ……お二人さん」
桃子は誇らしげに、有村に言った。
「私の名推理を、警視殿にも聞かせたかったぞ」
有村は言った。
「それは残念……聞きたかったなぁ、桃子ちゃんの推理を……」
縁は呆れ気味に言った。
「よく言うよ……」
有村は縁に言った。
「お手柄だったね……どうだった?ピエロは……」
「掴み所のないふざけた野郎って、感じだな……」
「表にはマスコミが、わんさかいるよ……明日からヒーローだね」
縁は笑って言った。
「ははっ……それは桃子さんに任せるよ……」
こうして短くて長い夜は終わった。縁とピエロの対決は、引き分けという形になったが、縁は「奴にはまたどこかで会う」と思えて仕方がなかった。
……翌日放課後……
ピエロとの対決を終え、一夜経った翌日、縁は通常通り学校に通った。
今朝の朝刊に『小笠原桃子!!ピエロ撃退!!』と大々的に紙面を飾っていたので、学校の話題はそれでもちっきりだった。
縁は放課後、担任の椿に応接室に呼ばれ、その扉の前にいる。
縁は軽くノックをし、応接室の扉を開けた。中には縁の予想通り、ソファーに腰を掛けた木村警部が縁を待っていた。
木村は縁に対して、軽く手を上げた。
「よっ!新井場君……」
木村の対面の席には、椿も座っていた。
縁は椿の隣に腰を掛けた。
「で、どうしたの?昨日の今日で忙しいだろ?」
「君と小笠原先生には世話になったからな……現状わかってる事を教えに来たんだ」
「『マリーの泪』が偽物だったって、話かい?」
「それもあるが……西岡明奈の犯行動機も伝えに来た」
「わざわざどうも……」
木村はテーブルに置かれた、コーヒーを一口飲んで、話始めた。
「『マリーの泪』の件だが……調べた結果、偽物だと判明した」
「本物のサファイアには変わりないが……『マリーの泪』ではなかった……」
木村は目を丸くして言った。
「よくわかったな……」
「あの宝石にはただの偽物とは、思えない輝きがあった……高価なサファイアに変わりないだろ」
木村は頷いた。
「ああ……確かに本物のサファイアだが、『マリーの泪』ではない。『マリーの泪』もサファイアだが、あれには特殊な技法が用いられている」
縁は目を細めた。
「特殊な技法?」
「本物の『マリーの泪』は光に当てると、宝石の中に『マリーの刻印』が浮かび上がるらしい……」
「それがあのサファイアにはなかったって、事か……」
木村は頷いた。
「そうだ……本物のサファイアに変わりなかったから、鑑定結果も本物だったんだ」
縁はニヤリとした。
「あのじいさんの悔しがってる顔が、目に浮かぶよ……」
木村は続けた。
「入手ルートは現在調査中だ。次に西岡明奈の件だが……」
「恋人同士だった……」
木村はまたもや目を丸くした。
「よくわかったな……」
縁は明奈と牧島のやり取りを思い出していた。ハンカチで牧島の襟元を丁寧に拭っている、明奈の姿を……。
「あの様子を見たらわかるよ……椿先生が言っていた『大人の男女』って感じかな……」
木村は頷いた。
「新井場君の言う通り、あの二人は恋人同士だった……。しかし牧島は専務のポストと引き換えに、彼女を捨てたんだ……」
縁は理解できない表情だ。
「それだけで、人を殺すのか?仮にも恋人だったんだろ?しかも明菜は結婚してるだろ?名字が山王じゃないから……」
すると椿が言った。
「恋人だったから……本気で愛していたから……許せなかったのかも……」
縁はしらけた表情を椿に向けた。
「何恥ずかしい事を言ってんの?」
椿はしらけた表情を縁に返した。
「新井場君にはわからないわ……大人の男女恋愛は……」
すると木村は軽く咳払いをした。
「ゴホンッ……まぁ、『マリーの泪』は牧島が入手したようだからな……それで西岡明奈は今回の犯行を思い付いたのだろ……」
縁は言った。
「危うくピエロも殺人犯になるところだったからな……」
木村は憮然とした表情で言った。
「ピエロは……人は殺さん……」
縁はニヤニヤしながら言った。
「長い付き合いだけあって、よくわかってるねぇ……」
「フンッ……大きなお世話だ……」
縁は表情を変えて、木村に言った。
「木村警部……あのピエロって奴は何なんだ?対峙していて感じたけど……ただの窃盗犯じゃない……奴の原動力はいったい……」
木村は難しそうな表情をした。
「俺もよくはわからん……しかし、以前奴が言っていたのは「美しい物は、あるべき所にあってこそ、美しい」と、言っていた事がある」
縁は顎を指で摘まんだ。
「あるべき所にあってこそ、美しい……。なるほど、だから返したのか……」
椿が言った。
「どういう事?」
「『マリーの泪』は彫刻『マリー』のために創られたネックレスだ……仮にあれが本物だったら、『マリー』に返していたんじゃないかな……」
木村は頷いた。
「なるほど……。しかし『マリー』の存在は誰も知らないと言われているのだぞ……」
縁は言った。
「それは俺も聞いたことがある……。現在出回っている彫刻『マリー』はどれもレプリカで、本物は誰も知らないと……」
椿は難しそうな表情をした。
「なんか……複雑ね……」
縁はニヤリとして言った。
「まぁ……次は逃がさねぇ……絶対捕まえてやるよ」
……喫茶店風の声……
週末の土曜日、午前……縁は風の声で朝から入り浸っていた。
巧から渡された昨日の朝刊に目を通して、溜め息をついた。
「はぁ……桃子さん、派手に写ってるな……」
昨日学校でも話題になった『小笠原桃子!!ピエロ撃退!!』の写真つきの記事だった。
巧が言った。
「写真の隅を見てみろよ……お前も写ってるぜ……後ろ姿だけど」
巧が言うように、写真には凛とした桃子と、隅の方に後ろ姿が写っている縁がいた。
縁は言った。
「まぁ後ろ姿だから、誰にも気づかれねぇだろうけど……」
巧はニヤニヤしながら言った。
「しかしこの写真……先生、格好よく写っているじゃん……先生の喜んでる姿が目に浮かぶよ……」
縁はげんなりした。
「笑ってる場合じゃねぇよ……ますます調子にのっちまうぜ……」
「でも縁が、先生に推理させたんだろ?」
「少し後悔してる……」
すると店に誰かがやって来た。言わずと知れた桃子だった。
桃子はニコニコしながら縁の隣に座った。
「いらっしゃい……先生……」
巧がそう言うと、桃子は「アイスコーヒー」と言い、縁が持っていた朝刊を横から覗いた。
桃子は言った。
「写真写りは問題ないな……しかし気に入らない事がある……」
縁は怪訝な表情で言った。
「なんだよ?」
「何故縁が後ろ姿なのだ?せっかくのツーショット写真のチャンスだったのにっ!」
縁は呆れた様子で言った。
「何を言ってんだ……」
「そもそも何故マスコミから逃げたんだ?有名になるチャンスなのに……」
「俺は目立ちたくないのっ!」
桃子は理解しがたい表情で言った。
「縁のように有能な人間が、世間に知れるのは当然だと思うがな……私のように……」
縁は頭を抱えた。
「はぁ~……」
桃子は縁の肩を叩いた。
「心配するな縁……今回の事で、私はさらに有名になったが、お前と別れるような事はしない……お前と私はずっと一緒だ」
縁は目を細めて言った。
「何を言ってんだ……別れるって……それにいつ恋人同士になった……」
「こっ、恋人……縁、何を言ってるのだっ!ふふふ……恋人……」
桃子は一人で舞い上がっている。
縁は呆れて呟いた。
「何なんだこの人は……」
そんな二人の様子を見て、巧はゲラゲラ笑っている。
学校が始まり、しばらく桃子に会わなかったが、結局最後はいつもの感じになる。
縁はこの騒がしさに、どこかホッとした。
……某所……
とある一室で、一人の男性が新聞を読んでいた。
男性の読む記事は『小笠原桃子!!ピエロ撃退!!』の記事だった。
しかし、男性の視線は、凛とした桃子ではなく、後ろ姿の縁に向いていた。
「やっと見つけた……」
そう言うと男性はニヤリとした。
「謎と向き合うのを放棄し、出ていったテメェが……謎を解いてしまったために、俺の前に姿を現す……」
男性は新聞を畳んで、部屋の窓際に立った。
「会いたかったぜ……エニシ……」
その緊張感のなか、章造が目を丸くして言った。
「あ、明奈が……牧島を、殺したじゃと!?」
章造が言葉を発したのを皮切りに、雄一も言った。
「そ、そうですよっ!小笠原先生……明奈姉さんが犯人って……犯人はピエロでしょ?姉さんも黙ってないで何とか言って下さいよっ!」
そう言いながら雄一が目線を明奈に移すと、明奈は下を向いて黙っていた。
一方屋上では、推理に付いての疑問を、ピエロが縁に投げ掛けた。
「ひとつわからない事がある……俺は部屋に盗聴機を仕掛け……部屋の会話を聞いていたが……いつ犯人に気づいた?君の口ぶりだと、ハンカチに気づく前から、西岡明奈が犯人だと思っていたようだが……」
縁は言った。
「ハンカチはあくまでも物的証拠……殺害された牧島さんの胸ポケットからハンカチが消えていた……おそらく殺害後に抜き取り、今も自身が持っているのだろう……。ただ、確かにお前の言う通り、ハンカチに気づく前から犯人の目星は付いていた」
ピエロは興味津々といった感じだ。
縁は続けた。
「犯人は偽の予告状を、山王商事に送っている……広報にね」
ピエロは言った。
「だとしたら、広報部の大島が自作自演した可能性もあるぜ……」
縁はピエロに言った。
「確かにその可能性もあるが……広報にはもう一人いる……」
「それが西岡明奈だと言うのか?……しかし彼女の肩書きは会長の娘ってことしか……」
「俺は今朝、山王商事の広報に行ってきた……。その時の印象は、よく整理された職場だった……広報は主に企業PRやプロモーション等を請け負う部署だ……資料などが散乱し、散らかっていても、おかしくはない……」
ピエロはピンときていないと、いった様子だ。
縁は続けた。
「それなのに、見事に整理され、キレイな職場だった。上司がよほどのきれい好きで、几帳面なのが伺える」
ピエロが言った。
「その上司が西岡明奈だと言うのか?」
縁は頷いた。
「彼女は牧島の襟元を、そのハンカチで拭いていた。きれい好きでないと、他人の襟元をハンカチで拭かないし、殺すための仕掛けなら、「プレゼント」と言ってハンカチを胸ポケットに差し込めばいいだけだ……」
ピエロは言った。
「しかしそれだけで犯人にするには……少し弱いぜ……」
縁はニヤリとして言った。
「もちろんそれだけじゃねぇ……。広報の大島は予告状を、中身を確認せずに上司に渡している」
ピエロは言った。
「なるほどね……。大島の上司は西岡明菜……それで犯人を絞った訳か……」
「ああ……そして、ハンカチに気づいて、犯人を確定したんだ……」
一方の桃子は、縁の推理の続きを皆に話した。
すると章造が言った。
「明奈が……明奈が殺人じゃと!?信じられん……明奈っ、違うと言ってくれっ!ハンカチなど持ってないんじゃろ?」
章造は明奈をすがるような目で見た。
すると明奈はようやく口を開いた。
「もう……もういいの……お父様……」
すると雄一が言った。
「あ、明奈姉さん……」
明奈は桃子を見つめて言った。
「私が……牧島さんを…………殺したわ……」
桃子は言った。
「認めるのだな?」
桃子にそう言われると、明奈はスカートの内側から、ハンカチとレースの手袋を出した。手袋とハンカチには血が付いていた。
それを見た章造と雄一は項垂れた。
桃子は小声で呟いた。
「縁……こっちは終わったぞ……」
イヤホンから桃子の声を聞いた縁は、ピエロに言った。
「西岡明奈が罪を認めたよ……」
ピエロが言った。
「そのようだな……で、いいのか?殺人犯を放っておいて……」
縁は言った。
「俺が信頼している女性に任せてある。それよりも……」
「それよりも?」
縁は目を見開いき、不敵な微笑みした。
「最初から俺の興味は、殺人犯よりお前に向いちまってんだ……」
縁の様子を見て、ピエロはニヤリとした。
「恐いねぇ……」
縁は言った。
「後はお前の喜劇の種を証すだけだ……」
ピエロは縁に突きつけられた、麻酔銃を見て言った。
「あぶない野郎だな……目がイッちまってるぜ」
縁は気にせず言った。
「お前はまず……警備員として、このビルの防犯に、数日前から加わった……。下調べも予てな……。そして犯行当日に連絡ミスを誘発し、人員を減らし、屋上の警備を手薄にし、脱出ルートを確保した」
ピエロは口角を上げて聞いている。
縁は続けた。
「屋上の警備をかって出たお前は、犯行時間の数分前に、『マリーの泪』が保管されている部屋の入口の警備員と「木村警部の指示」とでも言って、屋上の警備と入れ替わった」
縁は口角を上げた。
「そして犯行時間になり、ビルが停電したのを見計らって、部屋に侵入し『マリーの泪』を奪い、非常階段から屋上に逃走した」
するとピエロが言った。
「肝心な種が残ってるぜ……俺があのショウケースをどうやって解除したのか……あれは指紋認証システムだ……。あのジイさん以外の人間が開けるのは不可能だぜ」
縁は不敵な微笑みを浮かべた。
「言っただろ?「数日前からお前はこのビルに入ってる」と……」
するとピエロの口元が、確かに少しだが、ピクッと反応した。
縁は言った。
「つまりお前は……『マリーの泪』より先に盗んだんだ……『章造氏の指紋を』……」
縁は突きつけている、麻酔銃を握る手に、力を込めた。
「お前は章造氏の指紋を採取し、特殊な手袋を造り……あのショウケースを解除したんだ」
ピエロはニヤニヤしながら、下を向いている。
縁は言った。
「ゲームオーバーだぜ……」
すると非常口から、木村率いる捜査員達が、大勢現れた。
木村は声を荒げた。
「観念しろっ!ピエロっ!」
ピエロは木村に言った。
「遅かったな……木村の旦那。でも、今回はいい助っ人連れてきたな……」
ピエロの余裕な態度を不信に思った縁は、ピエロに言った。
「状況を理解してんのか?この引き金を引いたら、お前はめでたく逮捕だぜ……」
ピエロはニヤニヤしたままだ。
縁は麻酔銃を強調した。
「俺が引き金を引かないと思ってんのか?」
ピエロは言った。
「そんな事は思ってねぇよ……ただ、見事に種を証した少年に、面白いものを見せてあげようと、思ってねっ……」
「何っ!?面白いもの?」
警戒している縁をよそに、ピエロは軽く咳払いをし、そして口を開いた。
「縁……私を撃つのか?」
縁はその声を聞いて、さすがに動揺した。ピエロの発するその声は……桃子のものだった。
縁は思わず怯み、ピエロはその一瞬を逃さずニヤリとした。
次の瞬間、ピエロは地面に何かを投げつけた。それはパーンッという激しい音を発すると同時に、辺りを煙に包んだ。
煙は瞬く間に、屋上全体に拡がった。
木村の声が屋上に響き渡る。
「えっ、煙幕だっ!」
屋上はパニックに陥る。
すると煙幕のなかから、縁に向かって声がした。
「なかなか楽しかったぜ……」
その声はピエロだった。
ピエロは続けた。
「今回は引き分けって事にしておいてやる……」
縁は煙幕に向かって言った。
「何をっ!?……」
すると煙幕の中から、縁に向かってなにかが飛んできた。
縁がそれをキャッチすると、ピエロは言った。
「そいつは返すぜ……本物じゃねぇからな……」
「何っ!?」
「じゃあな、天才少年っ……機会があったら、また遊ぼうぜ……」
「待てっ!ピエロっ!」
縁は煙幕に向かって叫んだが……返事は返ってこなかった。
やがて煙幕は晴て、屋上は元に戻ったが、ピエロはすでにおらず、縁と木村率いる捜査員が、屋上に取り残される格好になった。
縁はピエロから受け取った物を、確認した。それは、『マリーの泪』だった。
縁は苦笑いをした。
「あの野郎……」
縁の様子を元に木村がやって来た。
「新井場君っ……無事か?『マリーの泪』は?」
縁は『マリーの泪』を手でブラつかせた。
「逃げられたよ……」
木村は縁から『マリーの泪』を受け取った。
「しかし……お手柄だ……『マリーの泪』は無事だからな」
縁は呟いた。
「引き分けか……言ってくれるぜ、あの野郎……」
その後到着した、有村率いる捜査一課に明奈は連行された。
明奈はマスコミが待つ表口を堂々と歩き、パトカーに乗り込んだ。マスコミが放つカメラのフラッシュに、臆することなく……。
そして章造や雄一が見守るなか、明奈を乗せたパトカーは、警視庁に向かって走って行った。
血の繋がった肉親がパトカーに乗せられて、目の前から去っていく心境を、縁や桃子、椿が知るすべはなかったが、章造と雄一の憔悴した表情を見れば、心中を察する事くらいはできた。
1階のエントランスから、ガラスの窓越しにその様子を伺い、3人は少し沈黙したが、桃子が口を開いた。
「ピエロは……どういう奴だった?」
縁は苦笑いをした。
「ふざけた野郎だったよ……」
椿が言った。
「なんか……色々起こりすぎて、整理できてないんだけど……」
桃子が言った。
「しかし『マリーの泪』が偽物とは、どういう意味だ?」
縁は言った。
「さぁな……高価な宝石には代わりないけど、『マリーの泪』ではなかったって、事じゃないのか……」
椿が言った。
「意味がわからないんだけど……」
すると男性の声がした。
「それは今後警察が、調べる事だよ……」
声の主は有村だった。
有村はニコニコしながら言った。
「またまたお手柄だねぇ……お二人さん」
桃子は誇らしげに、有村に言った。
「私の名推理を、警視殿にも聞かせたかったぞ」
有村は言った。
「それは残念……聞きたかったなぁ、桃子ちゃんの推理を……」
縁は呆れ気味に言った。
「よく言うよ……」
有村は縁に言った。
「お手柄だったね……どうだった?ピエロは……」
「掴み所のないふざけた野郎って、感じだな……」
「表にはマスコミが、わんさかいるよ……明日からヒーローだね」
縁は笑って言った。
「ははっ……それは桃子さんに任せるよ……」
こうして短くて長い夜は終わった。縁とピエロの対決は、引き分けという形になったが、縁は「奴にはまたどこかで会う」と思えて仕方がなかった。
……翌日放課後……
ピエロとの対決を終え、一夜経った翌日、縁は通常通り学校に通った。
今朝の朝刊に『小笠原桃子!!ピエロ撃退!!』と大々的に紙面を飾っていたので、学校の話題はそれでもちっきりだった。
縁は放課後、担任の椿に応接室に呼ばれ、その扉の前にいる。
縁は軽くノックをし、応接室の扉を開けた。中には縁の予想通り、ソファーに腰を掛けた木村警部が縁を待っていた。
木村は縁に対して、軽く手を上げた。
「よっ!新井場君……」
木村の対面の席には、椿も座っていた。
縁は椿の隣に腰を掛けた。
「で、どうしたの?昨日の今日で忙しいだろ?」
「君と小笠原先生には世話になったからな……現状わかってる事を教えに来たんだ」
「『マリーの泪』が偽物だったって、話かい?」
「それもあるが……西岡明奈の犯行動機も伝えに来た」
「わざわざどうも……」
木村はテーブルに置かれた、コーヒーを一口飲んで、話始めた。
「『マリーの泪』の件だが……調べた結果、偽物だと判明した」
「本物のサファイアには変わりないが……『マリーの泪』ではなかった……」
木村は目を丸くして言った。
「よくわかったな……」
「あの宝石にはただの偽物とは、思えない輝きがあった……高価なサファイアに変わりないだろ」
木村は頷いた。
「ああ……確かに本物のサファイアだが、『マリーの泪』ではない。『マリーの泪』もサファイアだが、あれには特殊な技法が用いられている」
縁は目を細めた。
「特殊な技法?」
「本物の『マリーの泪』は光に当てると、宝石の中に『マリーの刻印』が浮かび上がるらしい……」
「それがあのサファイアにはなかったって、事か……」
木村は頷いた。
「そうだ……本物のサファイアに変わりなかったから、鑑定結果も本物だったんだ」
縁はニヤリとした。
「あのじいさんの悔しがってる顔が、目に浮かぶよ……」
木村は続けた。
「入手ルートは現在調査中だ。次に西岡明奈の件だが……」
「恋人同士だった……」
木村はまたもや目を丸くした。
「よくわかったな……」
縁は明奈と牧島のやり取りを思い出していた。ハンカチで牧島の襟元を丁寧に拭っている、明奈の姿を……。
「あの様子を見たらわかるよ……椿先生が言っていた『大人の男女』って感じかな……」
木村は頷いた。
「新井場君の言う通り、あの二人は恋人同士だった……。しかし牧島は専務のポストと引き換えに、彼女を捨てたんだ……」
縁は理解できない表情だ。
「それだけで、人を殺すのか?仮にも恋人だったんだろ?しかも明菜は結婚してるだろ?名字が山王じゃないから……」
すると椿が言った。
「恋人だったから……本気で愛していたから……許せなかったのかも……」
縁はしらけた表情を椿に向けた。
「何恥ずかしい事を言ってんの?」
椿はしらけた表情を縁に返した。
「新井場君にはわからないわ……大人の男女恋愛は……」
すると木村は軽く咳払いをした。
「ゴホンッ……まぁ、『マリーの泪』は牧島が入手したようだからな……それで西岡明奈は今回の犯行を思い付いたのだろ……」
縁は言った。
「危うくピエロも殺人犯になるところだったからな……」
木村は憮然とした表情で言った。
「ピエロは……人は殺さん……」
縁はニヤニヤしながら言った。
「長い付き合いだけあって、よくわかってるねぇ……」
「フンッ……大きなお世話だ……」
縁は表情を変えて、木村に言った。
「木村警部……あのピエロって奴は何なんだ?対峙していて感じたけど……ただの窃盗犯じゃない……奴の原動力はいったい……」
木村は難しそうな表情をした。
「俺もよくはわからん……しかし、以前奴が言っていたのは「美しい物は、あるべき所にあってこそ、美しい」と、言っていた事がある」
縁は顎を指で摘まんだ。
「あるべき所にあってこそ、美しい……。なるほど、だから返したのか……」
椿が言った。
「どういう事?」
「『マリーの泪』は彫刻『マリー』のために創られたネックレスだ……仮にあれが本物だったら、『マリー』に返していたんじゃないかな……」
木村は頷いた。
「なるほど……。しかし『マリー』の存在は誰も知らないと言われているのだぞ……」
縁は言った。
「それは俺も聞いたことがある……。現在出回っている彫刻『マリー』はどれもレプリカで、本物は誰も知らないと……」
椿は難しそうな表情をした。
「なんか……複雑ね……」
縁はニヤリとして言った。
「まぁ……次は逃がさねぇ……絶対捕まえてやるよ」
……喫茶店風の声……
週末の土曜日、午前……縁は風の声で朝から入り浸っていた。
巧から渡された昨日の朝刊に目を通して、溜め息をついた。
「はぁ……桃子さん、派手に写ってるな……」
昨日学校でも話題になった『小笠原桃子!!ピエロ撃退!!』の写真つきの記事だった。
巧が言った。
「写真の隅を見てみろよ……お前も写ってるぜ……後ろ姿だけど」
巧が言うように、写真には凛とした桃子と、隅の方に後ろ姿が写っている縁がいた。
縁は言った。
「まぁ後ろ姿だから、誰にも気づかれねぇだろうけど……」
巧はニヤニヤしながら言った。
「しかしこの写真……先生、格好よく写っているじゃん……先生の喜んでる姿が目に浮かぶよ……」
縁はげんなりした。
「笑ってる場合じゃねぇよ……ますます調子にのっちまうぜ……」
「でも縁が、先生に推理させたんだろ?」
「少し後悔してる……」
すると店に誰かがやって来た。言わずと知れた桃子だった。
桃子はニコニコしながら縁の隣に座った。
「いらっしゃい……先生……」
巧がそう言うと、桃子は「アイスコーヒー」と言い、縁が持っていた朝刊を横から覗いた。
桃子は言った。
「写真写りは問題ないな……しかし気に入らない事がある……」
縁は怪訝な表情で言った。
「なんだよ?」
「何故縁が後ろ姿なのだ?せっかくのツーショット写真のチャンスだったのにっ!」
縁は呆れた様子で言った。
「何を言ってんだ……」
「そもそも何故マスコミから逃げたんだ?有名になるチャンスなのに……」
「俺は目立ちたくないのっ!」
桃子は理解しがたい表情で言った。
「縁のように有能な人間が、世間に知れるのは当然だと思うがな……私のように……」
縁は頭を抱えた。
「はぁ~……」
桃子は縁の肩を叩いた。
「心配するな縁……今回の事で、私はさらに有名になったが、お前と別れるような事はしない……お前と私はずっと一緒だ」
縁は目を細めて言った。
「何を言ってんだ……別れるって……それにいつ恋人同士になった……」
「こっ、恋人……縁、何を言ってるのだっ!ふふふ……恋人……」
桃子は一人で舞い上がっている。
縁は呆れて呟いた。
「何なんだこの人は……」
そんな二人の様子を見て、巧はゲラゲラ笑っている。
学校が始まり、しばらく桃子に会わなかったが、結局最後はいつもの感じになる。
縁はこの騒がしさに、どこかホッとした。
……某所……
とある一室で、一人の男性が新聞を読んでいた。
男性の読む記事は『小笠原桃子!!ピエロ撃退!!』の記事だった。
しかし、男性の視線は、凛とした桃子ではなく、後ろ姿の縁に向いていた。
「やっと見つけた……」
そう言うと男性はニヤリとした。
「謎と向き合うのを放棄し、出ていったテメェが……謎を解いてしまったために、俺の前に姿を現す……」
男性は新聞を畳んで、部屋の窓際に立った。
「会いたかったぜ……エニシ……」
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる