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陽芹孝介

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第八章 太陽の下で

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  葵は銃口を赤塚に突き付け、見た通り赤塚を追い詰めた。
 「僕が引き金簡単に引く事は知っているでしょう……。さぁ、目的を話してもらいましょうか…」
  赤塚は言った。
 「目的を?それは先程も述べたはずですが?」
  葵は言った。
 「これ程の事をするには……あなたに支援者がいるはずです…。もちろん、このくだらないゲームを楽しんでいる……博打打ち達もです…」
  有紀が言った。
 「今回も、我々は賭けの対象だったのか?」
  有紀は歩の元へ行き、歩の容態を診ていた。
  葵は言った。
 「おそらくは、そうでしょう……どういった賭けをしていたかは、知りませんが…」
  赤塚は言った。
 「フフフ……今回は君と渡辺歩がどのような選択をするのかが……賭けの内容でした…」
  葵は言った。
 「選択を?」
 「ええ……あなた方が脱出を選ぶか、この世界で共存をするか…」
  葵は言った。
 「そんなのは賭けにならないでしょう…」
  赤塚は笑って言った。
 「フフフ……もちろん君が脱出を選ぶのはわかってました。しかし、渡辺歩は深く悩んだでしょう……何せあなたに想いを寄せている女性が……現実世界に戻れば、死ぬかもしれないのですから…」
  歩は言葉に力をこめた。
 「貴様はっ!……ぐっ……」
  しかし、全身ボロボロの歩は、体の苦痛に顔を歪めた。
  葵は言った。
 「何故そこまで歩さんに拘るのですか?」
  赤塚は言った。
 「フフフ……言ったでしょう……。 Your having helped me(あなたは私を助けたことを…)」
 「You will be sorryby all means……(あなたは必ず後悔する……)と… 」
  葵は言った。
 「救ってもらっておいて……何を……」
  赤塚は歩に言った。
 「あなたはあの時……私を救うべきでは無かった…」
  歩は言った。
 「俺は医者だ……。救える命がそこにあるのに、放っておけない…」
  赤塚は言った。
 「欺瞞ですね……。救われた事により、不幸になる人間もいる事を……あなたは知った方がいい…」
  葵は言った。
 「どうやらあなたとは、価値観が真っ向から合わないようです…」
  赤塚は言った。
 「フフフ……残念です……。では、そろそろお開きにしましょうか…」
  葵は言った。
 「何をする気です?あなたに逃げ場はありませんよ…」
  赤塚は言った。
 「それはどうでしょう?私が前回と同じ過ちを繰り返すとでも?」
  葵は赤塚の言う事がわからなかったが……すぐに理解する事になる。 
  赤塚の体がぼやけ出したのだ。
  葵は言った。
 「何をしたのです?」
  赤塚は言った。
 「三木谷祥子が死亡し、私がある言葉を言えば……私だけ脱出できるプログラムを組んでおきました」
  有紀が言った。
 「ある言葉を?」
  葵は言った。
 「ちっ!『お開き』か…」
  赤塚は言った。
 「フフフ……もう遅いですよ。最後に一言言っておきます」  
 「この顔を覚えておいてください…」  
  そう言い残して赤塚は消えた。跡形もなく……。
  こうして赤塚……いやアマツカはこの世界から消えた。
  赤塚が先程までいた場所を見つめて、歩は言った。
 「また……逃げられたな……」
  葵は言った。
 「はい……しかし、危機は脱しました…」
  有紀が言った。
 「あとは……脱出だな……」
  歩は言った。
 「その前に……痛て…」
  歩は有紀の肩を借りて立ち上がった。
  歩は言った。
 「マリアちゃんっ!入ってきてっ!」
  歩の呼び掛けに、マリアが教会の入口に姿を現した。
  五月が言った。
 「マリアちゃん……よかった、無事で…」
  葵が言った。
 「しかし、歩さん……。拳銃をどこで?」
  歩は言った。
 「マリアちゃんが持っていたのさ…」
  これにはさすがの葵も驚いた。
 「何故、マリアさんが?」
  歩は言った。
 「それは俺にもわからないが……俺が屋敷の炎から逃げるために、2階から飛び降りた時に、屋敷の入口でマリアちゃんを見つけたんだ…」
  有紀は言った。
 「それで一緒に避難を?」
 「ああ……。で、教会に行く時にマリアちゃんから拳銃を渡されたのさ…」
  葵は言った。
 「しかし、何故拳銃を?」
  歩は言った。
 「まぁ、本人は記憶が無いから聞いても無駄だし、結果助かったからいいんじゃねっ?」
  有紀は言った。
 「気楽な奴だ…」
  葵は言った。
 「仕方ありませんね……それは後程考えるとして、まずは脱出ですね…」
  歩は言った。
 「わかったのかい?」
  葵は言った。
 「ええ……先程…」
  そう言って葵は1枚の絵画を取り出した。
  有紀が言った。
 「それは?」
  葵は皆に絵を見せて言った。
 「ゴッホの向日葵です……」
  それは確かに有名な、ゴッホの代表作『向日葵』だった。
  五月が言った。
 「それで、その絵でどうやって脱出するの?」
  葵は言った。
 「ここに来た時、最初に違和感を感じたのは……植物館でした。何かが足りないと…」
  有紀が言った。
 「その足りない物が向日葵だったと?」
  葵は言った。
 「もちろんそれだけで気付いた訳ではありません……。ポイントになるのは、そこの浮いている『球』です」
  葵は祭壇の上にある光輝く球を指差した。
  葵は言った。
 「あの球が向日葵に繋がる重要な物だったのです……。あれは特殊な光を発しています」
  歩が言った。
 「確かに……普通の光ではないな。基本的に炎のような色だけど、なんか……色々混じってるような…」
  有紀が言った。
 「そうか……太陽…」
  葵は口角を上げた。
 「そうです……。あれは太陽をモチーフに造られています。太陽は7色の色を発していると言われています。色が混じって見えるのはそのせいでしょう」
  歩が言った。
 「それで向日葵か…」
  葵が言った。
 「向日葵は太陽の光を浴びてこそ美しい……。しかし、この世界には太陽が存在しません…」
  五月が言った。
 「じゃあ、祭壇にその向日葵の絵を飾ったら…」
  葵が言った。
 「脱出できるはずです……。祭壇に飾る事により、光を浴びた向日葵が鏡を通じて、植物館に現れるはずです。さっそく飾りましょう」
  そう言うと葵は祭壇へ向かった。
  皆は脱出への期待を胸に、葵の行動を見守った。
  そして、葵はゴッホの向日葵を祭壇に飾った。
  向日葵は光を浴びて美しく輝いた。
  皆はそれをただ見守った。
  美しい向日葵に引き込まれるように。
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