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第六章 対峙
①
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葵は犯人と対峙すると言い、屋敷の北側…芸術館に向かった。
有紀が言った。
「芸術館に犯人が?」
葵は首を横に振った。
「いえ、少し寄り道です…」
芸術館に着いたら、葵は二人に言った。
「ここで待っていて下さい…」
そう言うと葵は芸術館の中へと入って行った。
取り残された二人は屋敷の方角を見た。まだ屋敷は燃え上がっている。
五月は言った。
「火は怖いです……。大事な物を全て燃やし尽くすんで…」
有紀も言った。
「私もだ……。炎は美しくもあり、恐ろしくもある……残酷にも人の命も平気で奪うからな…」
二人がいたたまれない気分になった頃に、葵は芸術館から出てきた。
葵の手には、布に包まれた物があった。
有紀が言った。
「寄り道の理由はそれか?何だそれは?」
葵は言った。
「後の楽しみです……。さぁ、行きましょう…」
3人は屋敷の裏側の位置にある教会へと向かった。
屋敷の炎の影響か、体感温度はかなり高く感じる。
「さぁ、到着しました…。準備はいいですか?」
教会前に到着し、葵は二人に準備を促した。
二人は黙って頷いた。
葵は教会の両開きの扉を勢いよく開けた。奥の祭壇に誰かいる。
葵は言った。
「お待たせしました……祥子さん…」
奥にいた人物は祥子だった。
祥子は祭壇で葵に背を向けて、自分が持ってきたパイプ椅子に座り……絵を描いている。
五月が言った。
「祥子さん……嘘でしょ…」
祥子はやっと手を止めてこちらを向いた。
3人の様子を見て、祥子は言った。
「ごきげんよう……皆さん…」
葵は言った。
「やっとたどり着きましたよ……あなたに……」
祥子は薄ら笑みを浮かべて言った。
「では、聞かせてもらおうかしら?月島君の推理を…」
葵は話始めた。
「今回の一連の事件は……現実世界に『帰りたい派』と『帰りたくない派』の心理戦でした」
五月が言った。
「どういう事?」
「つまり、『帰りたくない派』にとっては、『帰りたい派』が邪魔な存在で、その逆もしかりです」
有紀が言った。
「しかし、何故帰りたくないのだ?」
葵は言った。
「それは、怪我や病気……コンプレックスなどの理由でしょう…」
五月が言った。
「どういう事?怪我や病気?」
いまいちピンときてない五月に葵は言った。
「この世界では、元々あった『怪我や病気が治る』と、言うことです」
五月が言った。
「そんな事って……」
葵は続けた。
「この世界の僕たちの肉体は、脳の記憶を頼りに、プログラミングによって構築されています」
有紀が言った。
「なるほど……実体で無いのなら、怪我や病気は安易に治せる…」
葵が言った。
「その通りです……。しかし、現実世界に戻ってしまったら、怪我や病気がまた再発する……これが、帰りたくない理由です」
有紀が言った。
「それで陸の怪我が治っていたのか……しかし、それなら…」
葵が言った。
「そうです……そこにいる祥子さんも怪我を持っていたのです…」
すると今まで黙って聞いていた祥子が、葵に言った。
「さすがね……。でも、いつわかったの?」
葵が答えた。
「それは……絵です」
五月が言った。
「絵?」
「湖であなたの絵を見た時、僕は違和感を感じました……。でもその理由はすぐにわかりました…」
祥子は黙って聞いている。
葵は続けた。
「あの時……同じ絵が2枚ありました……。しかし、比べて見ると別人が描いたみたいに、絵のタッチや色合いが違いました」
葵は続けた。
「その時思いました……。あの2枚の絵は『利き手』と『逆手』でそれぞれ描かれた絵だと…」
有紀が言った。
「しかし、何故逆手で描いたのだ?治っていたのなら、利き手で描けばいいのに…」
葵が言った。
「これは僕の想像ですが……おそらく恐かったのでは?」
五月が言った。
「恐い?」
「はい……。この世界にきて、手が治った兆候はあったが……いざ絵を描くときに恐くなった…「前みたいに描けなかったら」と…。それで最初の絵は逆手で描いた…」
祥子はまたもや、薄ら笑いを浮かべて言った。
「さすがね……。絵を見ただけで、わかるなんて……やっぱりあなたは興味深いわ。でも……それだけで私が犯人と言うには……少し強引ね……それに容疑者は『12人目』よ…」
葵は言った。
「『12人目』では……犯行が不可能なんですよ…」
祥子の表情は少し硬くなった。
葵は続けた。
「有紀さんには説明しましたが、陸さんは包丁で2ヶ所刺されて死亡しました。しかし、犯人が『12人目』だとすれば、凶器を入手することができないのです」
有紀が言った。
「リセットのルール…」
葵は言った。
「そうです……凶器の包丁は、厨房にしかありません……包丁が盗まれたとしたら1本減っている状態です…」
「しかし、『12人目』が犯人だとすれば、この世界にきたその日の深夜に、盗まなければいけません。しかし……歩さんが翌朝、朝食の準備をしている時は包丁はしっかりあったようですよ…」
祥子の顔色が変わった。
葵は続けた。
「つまり……『12人目』いや、僕や歩さんがこの世界に来る前に、包丁は抜き取られ……厨房から消えた包丁はリセットのルールで補充された事になります…」
五月が言った。
「だから『12人目』の犯行はあり得ない…」
祥子が言った。
「でも、陸が死んだ時間は正午よっ…私にはアリバイがある。午前中は部屋で絵を……正午には食堂に居たわ…」
葵が言った。
「午前中のアリバイは不確かです、それに陸さんは正午に死んだのではありません……。これを見てください」
葵はポケットから紙切れを出した。祥子はそれを見て、表情が変わった。
葵は紙切れの説明をした。
「これは陸さんの部屋にあったメモ書きです…『湖で待つ』と、しかしこの部分を見てください」
葵紙切れの端を見せた。
「ハサミか何かで切った痕跡があります」
葵の言うように、紙切れには確かに刃物で切った跡がある。
「おそらく切った先に呼び出し時刻が、記されていたのでしょう…」
葵はさらに続けた。
「つまり、陸さんを正午前……おそらく11時30分頃に、湖に呼び出し……そして、陸さんを刺して、なに食わぬ顔で屋敷に戻った。そして、陸さんは正午を過ぎた頃に出血多量で死んだ…」
有紀が言った。
「我々はリセットのルールに囚われ過ぎたのだな…」
しかし、祥子は反論する。
「確かに……でも、それなら私以外にも犯行は可能よ…」
すると葵は言った。
「犯人はあなたです…」
祥子は引かない。
「証拠は…証拠はあるのかしら?」
葵はある物を取り出した。
祥子はそれを見て驚愕した。
葵は言った。
「これが……その証拠です…」
祥子は言葉が出ずに、ただ愕然とした。
有紀と五月が見守る中…葵の謎解きが始まろうとしていた。
有紀が言った。
「芸術館に犯人が?」
葵は首を横に振った。
「いえ、少し寄り道です…」
芸術館に着いたら、葵は二人に言った。
「ここで待っていて下さい…」
そう言うと葵は芸術館の中へと入って行った。
取り残された二人は屋敷の方角を見た。まだ屋敷は燃え上がっている。
五月は言った。
「火は怖いです……。大事な物を全て燃やし尽くすんで…」
有紀も言った。
「私もだ……。炎は美しくもあり、恐ろしくもある……残酷にも人の命も平気で奪うからな…」
二人がいたたまれない気分になった頃に、葵は芸術館から出てきた。
葵の手には、布に包まれた物があった。
有紀が言った。
「寄り道の理由はそれか?何だそれは?」
葵は言った。
「後の楽しみです……。さぁ、行きましょう…」
3人は屋敷の裏側の位置にある教会へと向かった。
屋敷の炎の影響か、体感温度はかなり高く感じる。
「さぁ、到着しました…。準備はいいですか?」
教会前に到着し、葵は二人に準備を促した。
二人は黙って頷いた。
葵は教会の両開きの扉を勢いよく開けた。奥の祭壇に誰かいる。
葵は言った。
「お待たせしました……祥子さん…」
奥にいた人物は祥子だった。
祥子は祭壇で葵に背を向けて、自分が持ってきたパイプ椅子に座り……絵を描いている。
五月が言った。
「祥子さん……嘘でしょ…」
祥子はやっと手を止めてこちらを向いた。
3人の様子を見て、祥子は言った。
「ごきげんよう……皆さん…」
葵は言った。
「やっとたどり着きましたよ……あなたに……」
祥子は薄ら笑みを浮かべて言った。
「では、聞かせてもらおうかしら?月島君の推理を…」
葵は話始めた。
「今回の一連の事件は……現実世界に『帰りたい派』と『帰りたくない派』の心理戦でした」
五月が言った。
「どういう事?」
「つまり、『帰りたくない派』にとっては、『帰りたい派』が邪魔な存在で、その逆もしかりです」
有紀が言った。
「しかし、何故帰りたくないのだ?」
葵は言った。
「それは、怪我や病気……コンプレックスなどの理由でしょう…」
五月が言った。
「どういう事?怪我や病気?」
いまいちピンときてない五月に葵は言った。
「この世界では、元々あった『怪我や病気が治る』と、言うことです」
五月が言った。
「そんな事って……」
葵は続けた。
「この世界の僕たちの肉体は、脳の記憶を頼りに、プログラミングによって構築されています」
有紀が言った。
「なるほど……実体で無いのなら、怪我や病気は安易に治せる…」
葵が言った。
「その通りです……。しかし、現実世界に戻ってしまったら、怪我や病気がまた再発する……これが、帰りたくない理由です」
有紀が言った。
「それで陸の怪我が治っていたのか……しかし、それなら…」
葵が言った。
「そうです……そこにいる祥子さんも怪我を持っていたのです…」
すると今まで黙って聞いていた祥子が、葵に言った。
「さすがね……。でも、いつわかったの?」
葵が答えた。
「それは……絵です」
五月が言った。
「絵?」
「湖であなたの絵を見た時、僕は違和感を感じました……。でもその理由はすぐにわかりました…」
祥子は黙って聞いている。
葵は続けた。
「あの時……同じ絵が2枚ありました……。しかし、比べて見ると別人が描いたみたいに、絵のタッチや色合いが違いました」
葵は続けた。
「その時思いました……。あの2枚の絵は『利き手』と『逆手』でそれぞれ描かれた絵だと…」
有紀が言った。
「しかし、何故逆手で描いたのだ?治っていたのなら、利き手で描けばいいのに…」
葵が言った。
「これは僕の想像ですが……おそらく恐かったのでは?」
五月が言った。
「恐い?」
「はい……。この世界にきて、手が治った兆候はあったが……いざ絵を描くときに恐くなった…「前みたいに描けなかったら」と…。それで最初の絵は逆手で描いた…」
祥子はまたもや、薄ら笑いを浮かべて言った。
「さすがね……。絵を見ただけで、わかるなんて……やっぱりあなたは興味深いわ。でも……それだけで私が犯人と言うには……少し強引ね……それに容疑者は『12人目』よ…」
葵は言った。
「『12人目』では……犯行が不可能なんですよ…」
祥子の表情は少し硬くなった。
葵は続けた。
「有紀さんには説明しましたが、陸さんは包丁で2ヶ所刺されて死亡しました。しかし、犯人が『12人目』だとすれば、凶器を入手することができないのです」
有紀が言った。
「リセットのルール…」
葵は言った。
「そうです……凶器の包丁は、厨房にしかありません……包丁が盗まれたとしたら1本減っている状態です…」
「しかし、『12人目』が犯人だとすれば、この世界にきたその日の深夜に、盗まなければいけません。しかし……歩さんが翌朝、朝食の準備をしている時は包丁はしっかりあったようですよ…」
祥子の顔色が変わった。
葵は続けた。
「つまり……『12人目』いや、僕や歩さんがこの世界に来る前に、包丁は抜き取られ……厨房から消えた包丁はリセットのルールで補充された事になります…」
五月が言った。
「だから『12人目』の犯行はあり得ない…」
祥子が言った。
「でも、陸が死んだ時間は正午よっ…私にはアリバイがある。午前中は部屋で絵を……正午には食堂に居たわ…」
葵が言った。
「午前中のアリバイは不確かです、それに陸さんは正午に死んだのではありません……。これを見てください」
葵はポケットから紙切れを出した。祥子はそれを見て、表情が変わった。
葵は紙切れの説明をした。
「これは陸さんの部屋にあったメモ書きです…『湖で待つ』と、しかしこの部分を見てください」
葵紙切れの端を見せた。
「ハサミか何かで切った痕跡があります」
葵の言うように、紙切れには確かに刃物で切った跡がある。
「おそらく切った先に呼び出し時刻が、記されていたのでしょう…」
葵はさらに続けた。
「つまり、陸さんを正午前……おそらく11時30分頃に、湖に呼び出し……そして、陸さんを刺して、なに食わぬ顔で屋敷に戻った。そして、陸さんは正午を過ぎた頃に出血多量で死んだ…」
有紀が言った。
「我々はリセットのルールに囚われ過ぎたのだな…」
しかし、祥子は反論する。
「確かに……でも、それなら私以外にも犯行は可能よ…」
すると葵は言った。
「犯人はあなたです…」
祥子は引かない。
「証拠は…証拠はあるのかしら?」
葵はある物を取り出した。
祥子はそれを見て驚愕した。
葵は言った。
「これが……その証拠です…」
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