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結婚式直前に「好きな人が出来たから別れてくれ」と言われた元旦那の恋人が男だった。

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「俺、好きな人が出来たんだ」
「一一は?」
「だから別れてくれ!」
「結婚式まで1週間もないのよ!?冗談でも笑えないわ!」
「冗談なんかじゃない。一目惚れしてしまったんだ……」

 アンニュイに言ってるけど、新しく好きな人が出来たから私との結婚式はや~めた!ってこと?

「勝手にしろ!!」

 バンッと机を叩いて立ち上がり、早足で部屋を出た。無責任で浮気性な夫なんてこちらから願い下げだ。



 結婚式は1人でやるわけにもいかず、全員に諸事情で結婚式はなくなったと断りの手紙を出した。当日のスケジュール表をビリビリに破き、粉々になったゴミを捨てていると「郵便でーす」と声をかけられる。

「はーい」
「郵便でーす」
「わかってるわよ、手紙は?」
「あるけどない」
「はぁ?」

 メッセンジャーのこいつは幼なじみのラフィ。郵便物があるのにないとはどういうことだ。

「早く渡して」
「……だって、お前、見たら……」
「……もしかして、元旦那からの手紙?」
「うっ」
「はぁ……私はもう割り切ってるから。ほら早く」
「……ほらよ」

 中身を開けてみると、中身は『結婚式の招待状』だった。クシャ、と封筒を握りつぶし、元旦那の幸せそうに笑う顔を想像してさらに腹が立った。
 私と別れたあとすぐ結婚式をするのはいいけど、元妻を、それも結婚式直前に別れた元妻を普通結婚式に呼ぶか?頭沸いてんのか?

「お、おい、大丈夫か?」
「……ふふ、ふふふ……そう、そっちがその気なら行ってやろうじゃねぇの」
「お、おう……大丈夫そうなら、よかった……じゃあ俺はこれで……」

 ドンッ、床を踏みつける。
 ドンッ、ドンッドンッドンッ、ドンドンドンドンドン!

「くっそ!!なんなんだよ!私との結婚はどうでもよくて、別の女と結婚を前提に二股してたっけわけかよ!」

 フるなら結婚式1週間切った直前だったからこそ、底辺クズ男だとなんの未練もなく気持ちが割り切れたのかもしれないけど。それでも、それでも他の女との結婚式に招待されるのは嫌だ。どんな顔をして会いに来ると思ってやがるんだ。

「……はぁ、何仕込んでやろうかな……」



「……ってことがあってさぁ!」
「まあまあ、飲み過ぎだよエリー」
「あのクソ野郎の顔、一発殴らないと気が済まない」
「目が座ってるよ……ほんとにしないでね?」

 彼は友人のテンドルド。酒場で働いており、ヤケ酒をしに来た私の話に付き合ってくれていた。元旦那の愚痴をひたすら恨みつらみ言っていると、彼の左手にキラリと光るものを見つける。

「テンドルド、指輪なんかしてたっけ?」
「あ、えへへ。僕、今度結婚するんだ」
「えー!おめでとう!なんで言ってくれなかったの!?」
「エリーがそんな状況で言えるわけないじゃん……」
「確かに……」

 にへらと笑うテンドルドは心底嬉しそうだった。彼は優しいし、いい人を捕まえてやっと結婚できるのかと友人として嬉しいことこの上ない。

「今日、迎えに来てくれるって言ってたから会っていく?」
「え!会う会う!どんな人か凄い気になる!」
「変な絡み方しないでよね」
「大丈夫!テンドルドの友人ですって挨拶したらもう帰るからさ」

 お勘定を先に済ませて、話しながらテンドルドの彼女を待つ。しばらくすると酒が回ってきて眠くなってくるが、テンドルドの彼女に挨拶してから帰らないと……

「テンドルド」
「あ、来た!」
「んぇ?……は?」
「は、なんでお前が……」
「あれ?二人は知り合いだったの?紹介するね、僕の恋人の……」
「いや、私の元旦那……」
「え?」
「え?」

 いや、別れられた理由の"好きになった人"って男だったんかーーーい!!
 しかもなんならテンドルドって!!招待状をまともに読まずに捨てたせいで、新婦の名前なんて見てなかったけど……いや、いつから男が好きだったんだこいつ……

「ふざけんなーー!!」
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