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第3話 いざ街へ
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「街だ!」
「お嬢様、離れないでくださいね」
医師の診断が下り、やっと回復したと判断されて街に出向くことが出来た。窓から見たあの獣人だらけの街に行くことをこのどれだけ待ちわびたことか。
街には食べ物や食材が並ぶ屋台がズラッと道沿いに建ち並んでいた。そして、その売り子も客ももちろんみんな獣人!獣人!獣人!天国のような街だ……
「……ん?」
「いかがされましたか?」
「いや、あの子……」
「ああ……獣人奴隷ですね。借金などの事情があって身を売らなければならない者たちです」
ボロボロの服を着せられて、華奢な体で重たそうな荷物を持って主人と思われる人間の後ろをフラフラと着いていっている。自分はぶくぶくと太り、やはり人間はクソだ……救ってあげたいけど、キャルトの反応を見るにどうしてあげることも出来ないようだった。
あんな子を少しでも減らしてあげられたらいいのに、どうすればいいのだろうか。せっかく貴族である人間に転生したのだから何か出来ることはないか。
「そこのお嬢様、お嬢様」
「私?」
「そうです、そこの美人のお嬢様。奴隷に興味がおありですか?」
「奴隷……ああ、そうだな」
どうやら話しかけてきた人間は奴隷商人のようで、媚びへつらう姿勢が気持ち悪いと思ったが、奴隷には興味があったのでついて行ってみることにした。
案内された建物の中には鎖に繋がれた獣人がズラリと並んで座っていた。値札のようなものが付けてあって胸糞悪い。
「こちらなんていかがでしょう、お嬢様の奴隷と同じく猫族で従順に躾ております」
「うちのは奴隷じゃない!」
「しっ、失礼致しました……へへ、大事になさっているんですね」
キャルトを奴隷と言われてイラッとして大きな声を出してしまう。ぺこぺこ頭を下げる奴隷商人に苛立ちは収まらないが、奴隷を一通り見てみることにした。
キャルトのような猫族に、犬族、女性の奴隷もいてまさによりどりみどりといった感じだ。書いてある金額を見て、思っていたより安く、ある考えが思いつく。
「少し出てくる」
「もうよろしいので?」
「すぐ戻る。その間、一人も売るな」
「は、はい……?」
建物を出て、キャルトに質屋の場所を聞くと驚いた表情をされる。少し複雑な表情をして教えてくれたので、急いでそこへ向かう。
「店主、これを全て売りたい」
「こ、こんな立派なものを……!?よろしいのですか?」
「ああ、すぐ金が欲しい。用意できるか」
「は、はい!すぐにお持ちします!」
部屋からこっそり持ち出して宝石類の入った袋を店主に渡すと、中を覗いた店主は顔と袋を交互に見て、慌てて奥に入っていく。
ドサリと並べられた札束に、キャルトに妥当な金額かどうか耳打ちをする。コクリと頷いたキャルトに、騙されてないことを確認して金を回収する。そしてまた奴隷商人の元へ急ぐ。
「お早いお戻りで、お嬢様」
「これで買えるだけ奴隷を買う」
「こっ、こんなに!?ここにいる全員買える金額ですが……」
「それならよかった。じゃあ全員買う」
「は、はい!ありがとうございます!」
手続きを済ませ、その間キャルトは一言も言葉を出さなかった。私がただ奴隷を買って仕えさせるとでも思っているのだろうか。ふん、人間の思うようになんてさせはしない。
「たくさんおりますので、荷馬車をご用意しました。全員乗せております」
「キャルト、荷馬車を引けるか?」
「はい、もちろんです。全員連れて帰るのですか?」
「先に連れて帰って、あとで迎えに来てくれるか?」
「お嬢様一人には出来ません!」
キャルトが大きな声を出し、通りすがった獣人たちがなにごとだと振り向く。そんな治安の悪い場所でもあるまいし、万が一のために短剣も持っているし大丈夫と頼むと苦虫を潰したような顔で了承してくれた。
キャルトの引く荷馬車を見送って、適当に買い物をさっさと済ませる。キャルトの迎えを待つこともなく、全速力で戻ってきたキャルトに苦笑いして持ちきれない荷物を持ってくれるよう頼んで街での買い物を終えた。
屋敷に帰ってきたが、奴隷の子たちはビクビクと怯えてフロアのすみっこにかたまっている。人間にあんな仕打ちにされてたら人間不信にもなるよなぁ。
「服とお金をあげるから、みんな好きなところに行きなさい」
「!?」
「お嬢様!?なにを……」
「いいの。うちで雇うには多すぎるからね。街で普通に暮らしてもいいし、自分の町があるなら帰ってもいい。好きにしなさい」
獣人をこき使うなんて出来ないし、きっとこの子達は買い主の私に気を遣うだろうから解放した方がいい。玄関のドアを開けてあげると、ゆっくり立ち上がって一人、また一人と外に出ていく。人間から獣人を助けられてスッキリした気分!
「お嬢様……よろしかったのですか?あんな大金を使って買った奴隷たちを解放するなんて……」
「いいのよ。酷い扱いをされる前に助けられてよかったわ」
「……お嬢様は優しいですね」
えっ!?奴隷を買ったのに無責任に解放するなんて!責任をもって雇うべきだ!とかって怒ってもいいところだと思ったのに……キャルトこそ優しすぎるんじゃないか。
「お嬢様、離れないでくださいね」
医師の診断が下り、やっと回復したと判断されて街に出向くことが出来た。窓から見たあの獣人だらけの街に行くことをこのどれだけ待ちわびたことか。
街には食べ物や食材が並ぶ屋台がズラッと道沿いに建ち並んでいた。そして、その売り子も客ももちろんみんな獣人!獣人!獣人!天国のような街だ……
「……ん?」
「いかがされましたか?」
「いや、あの子……」
「ああ……獣人奴隷ですね。借金などの事情があって身を売らなければならない者たちです」
ボロボロの服を着せられて、華奢な体で重たそうな荷物を持って主人と思われる人間の後ろをフラフラと着いていっている。自分はぶくぶくと太り、やはり人間はクソだ……救ってあげたいけど、キャルトの反応を見るにどうしてあげることも出来ないようだった。
あんな子を少しでも減らしてあげられたらいいのに、どうすればいいのだろうか。せっかく貴族である人間に転生したのだから何か出来ることはないか。
「そこのお嬢様、お嬢様」
「私?」
「そうです、そこの美人のお嬢様。奴隷に興味がおありですか?」
「奴隷……ああ、そうだな」
どうやら話しかけてきた人間は奴隷商人のようで、媚びへつらう姿勢が気持ち悪いと思ったが、奴隷には興味があったのでついて行ってみることにした。
案内された建物の中には鎖に繋がれた獣人がズラリと並んで座っていた。値札のようなものが付けてあって胸糞悪い。
「こちらなんていかがでしょう、お嬢様の奴隷と同じく猫族で従順に躾ております」
「うちのは奴隷じゃない!」
「しっ、失礼致しました……へへ、大事になさっているんですね」
キャルトを奴隷と言われてイラッとして大きな声を出してしまう。ぺこぺこ頭を下げる奴隷商人に苛立ちは収まらないが、奴隷を一通り見てみることにした。
キャルトのような猫族に、犬族、女性の奴隷もいてまさによりどりみどりといった感じだ。書いてある金額を見て、思っていたより安く、ある考えが思いつく。
「少し出てくる」
「もうよろしいので?」
「すぐ戻る。その間、一人も売るな」
「は、はい……?」
建物を出て、キャルトに質屋の場所を聞くと驚いた表情をされる。少し複雑な表情をして教えてくれたので、急いでそこへ向かう。
「店主、これを全て売りたい」
「こ、こんな立派なものを……!?よろしいのですか?」
「ああ、すぐ金が欲しい。用意できるか」
「は、はい!すぐにお持ちします!」
部屋からこっそり持ち出して宝石類の入った袋を店主に渡すと、中を覗いた店主は顔と袋を交互に見て、慌てて奥に入っていく。
ドサリと並べられた札束に、キャルトに妥当な金額かどうか耳打ちをする。コクリと頷いたキャルトに、騙されてないことを確認して金を回収する。そしてまた奴隷商人の元へ急ぐ。
「お早いお戻りで、お嬢様」
「これで買えるだけ奴隷を買う」
「こっ、こんなに!?ここにいる全員買える金額ですが……」
「それならよかった。じゃあ全員買う」
「は、はい!ありがとうございます!」
手続きを済ませ、その間キャルトは一言も言葉を出さなかった。私がただ奴隷を買って仕えさせるとでも思っているのだろうか。ふん、人間の思うようになんてさせはしない。
「たくさんおりますので、荷馬車をご用意しました。全員乗せております」
「キャルト、荷馬車を引けるか?」
「はい、もちろんです。全員連れて帰るのですか?」
「先に連れて帰って、あとで迎えに来てくれるか?」
「お嬢様一人には出来ません!」
キャルトが大きな声を出し、通りすがった獣人たちがなにごとだと振り向く。そんな治安の悪い場所でもあるまいし、万が一のために短剣も持っているし大丈夫と頼むと苦虫を潰したような顔で了承してくれた。
キャルトの引く荷馬車を見送って、適当に買い物をさっさと済ませる。キャルトの迎えを待つこともなく、全速力で戻ってきたキャルトに苦笑いして持ちきれない荷物を持ってくれるよう頼んで街での買い物を終えた。
屋敷に帰ってきたが、奴隷の子たちはビクビクと怯えてフロアのすみっこにかたまっている。人間にあんな仕打ちにされてたら人間不信にもなるよなぁ。
「服とお金をあげるから、みんな好きなところに行きなさい」
「!?」
「お嬢様!?なにを……」
「いいの。うちで雇うには多すぎるからね。街で普通に暮らしてもいいし、自分の町があるなら帰ってもいい。好きにしなさい」
獣人をこき使うなんて出来ないし、きっとこの子達は買い主の私に気を遣うだろうから解放した方がいい。玄関のドアを開けてあげると、ゆっくり立ち上がって一人、また一人と外に出ていく。人間から獣人を助けられてスッキリした気分!
「お嬢様……よろしかったのですか?あんな大金を使って買った奴隷たちを解放するなんて……」
「いいのよ。酷い扱いをされる前に助けられてよかったわ」
「……お嬢様は優しいですね」
えっ!?奴隷を買ったのに無責任に解放するなんて!責任をもって雇うべきだ!とかって怒ってもいいところだと思ったのに……キャルトこそ優しすぎるんじゃないか。
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