初戀

槙野 シオ

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第五話 貞男勃てたし間男したし

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根元から先端までゆっくり舌を這わせると、藤城の腰がビクッと跳ねる。全身性感帯なんじゃねえの……とりあえず入るところまで、と思い咥えてみる……けど……多分半分も入ってないよな、これ……先端を吸いながらくびれてるところを舌先でめると、脚に力が入るのがわかる。

元々そんなにおキレイな人生を歩んでるわけじゃない。だからなのか、藤城が男だとか同性愛者だとか、そんなことはどうでもよかった。ただそのままの、ありのままの藤城を知りたいと思った。大体セックスするのにそんなうやうやしい理由なんか要らないだろ。

「……大学生のほうが良かった?」
「…っ…なんで……そんな…こと…」
「すぐ目閉じるから…他の誰かを想像してんのかなって」
「してない……も…閉じない…から…」
「誰に何されてんのかちゃんと見てろよ」

大きな目に涙を浮かべながら頬を紅潮させ鳴き声をあげる。こんな良さそうにされたら、一発で相手の心鷲掴みなんじゃねえの……両脚を持ち上げ入口・・を舌で突ついたら、小さな悲鳴があがった。

「久御山…!」
「なに」
「や、駄目、めちゃ駄目」
「なんで」
「駄目、汚い…から……やめて」
「……本気で言ってんの?」
「だって……やだ…」
「……大学生にはめさせるのに、オレは嫌?」
「嫌われたくない……久御山……」
「……なんで…嫌われると思うのよ……」

小さな尻を押し広げて入口をめると、藤城のカラダが大きく仰け反った。ココ・・、こんなに柔らかいものなんだ……比較対象がないからわからないけど……なんて良さそ気な声あげんだ藤城…

「……おまえ、ここもピンク色なのな……」
「ばっ……バカ何言ってんだよ!!!!」
「バカって……ピンク色で可愛いねって褒めてるのに」
「やめろ……! あ、あ、あ、あああ……ふ…ああ…」
「ヒクヒクしてる…」
「やめ……ああ、あ、あ!」

恥ずかしさで覚醒しつつ、小さな尻を震わせながらピンク色の入口をひく付かせ、鳴き声が漏れないよう口を手のひらで覆う藤城の姿に、胸の奥がキュッと音を立てる。

持ち上げた両脚を肩に乗せ、上体を起こして藤城の尻を高く持ち上げた。

めてるとこ…見える?」
「や…あ…っ…あ…恥ず……ん…っ」
「どう? "格好いい久御山" に恥ずかしいところめさせてる気分は」
「やだ…っ…あ、あ、あ…や…あ…っ…」
「むしろ "格好いい久御山" が美味しそうにめてる姿の感想が聞きたいけどね」
「ふ…あ…気持ちい…あ…」
「……可愛いかよ」

舌先を尖らせて入口をめながら、バキバキに硬くしたままのモノを握ると、切羽詰った鳴き声が激しくなった。敏感な先端をぬるぬる擦ると、ビクッと腰を跳ねさせ藤城が甘い声で懇願する。

「くみや…ま……見ない…で…」
「…どうして?」
「…欲しがりの…ビッチだって……エロいって…そんなとこ……見られたくな…」
「オレは見たいよ」
「引かれるの…やだ…」
「こんなことしてるオレはエロくない?」
「……格好…いい…」
「おまえも可愛いよ、藤城」
「嫌われたく……ない…」
「オレを欲しがれよ」

掛けられた呪いが幾重にも藤城に巻き付いて、自由を絡め取って行く。アンタが植え付けた羞恥心と罪悪感はしっかり根を張って、藤城を雁字搦がんじがらめに縛り上げてるよクソ大学生。他の男にカラダを開けないように、一体どれだけの呪詛を唱えたんだよクソ大学生。

「久御山…やだ……」
「藤城、目開けて」

中指で藤城の口唇をなぞり、口の中に挿し込むと柔らかい舌が絡み付く。その指を咥えると藤城はパッと目を見開き湿度の高い吐息を漏らす。唾液で濡らした指を入口に当てそっと押し込むと、吐息は熱を帯びた鳴き声に変わる。内側の壁を擦りながら、もう片方の手のひらで硬くたぎったモノをぬるっと滑らせた。

「あ…あ、あ、あ…っ…あ…あああ…」
「指…きつい…」
「う…あ…ああ、あ…」
「藤城、挿れたい」


正直……男相手にここまで興奮するとは思ってなかった。正確に言えば、ここまで前戯に興奮したのも、挿入したいと思ったのも初めてだった。

藤城はコンドームを口唇で挟むとそれを器用にオレに着け、その上からめ始めた。はあ……やっぱり上手いんだよな、藤城……

唾液にまみれて溶けそうになってるモノを藤城の小さい尻に押し当てる。

「オレ初めてだから……痛かったり不快だったりしたら言って」

当然ローションなどという気の利いたもののないオレの部屋で、冬場にしか陽の目を見ない白色ワセリンが夏場に輝く日が来るとは思いもしなかった。

ゆっくり挿し込むと、藤城の鳴き声が一層激しくなる。女の子とは全然違う感触……キッツ……これ、動いて大丈夫なのか……まだ先端しか挿れてないけど藤城の鳴き声が……すごい。

「浅い部分、そんなにイイの…?」
「…ん……ああ、はぁっ、あ…ああ……っ…」

あ、前立腺……結構浅い場所にあるんだっけ。入口付近でゆっくり動かすと締め付けが激しくなって行く。


「く…みやま…イイ…あ、あ…気持ちい…あ……」

……ヤバい…これは……ちょっとときめく……あんなに見られるの嫌がってたのに、そんなことが気にならないくらい良くなってるってことなのか…泣き腫らしたような顔で喘ぐ藤城の姿に背徳感を覚えつつ、そのことが尚更興奮を高めていることに気付く。

「くみや…ま…久御山……あ…う……っ…くみ…ああ…イイ…イイよう…あ…」

あ、ダメだ…これは完全に殺しに来てる……教室の中で見る、凛として他人を寄せ付けないような、見つかるまいと集団の中で息をひそめる被食獣のような藤城が、薄っすらと赤くカラダを染めながら涙目で身をよじり、快楽に溺れ悶える姿を惜しみなく晒す。……溺れてるのはオレも同じか。

「気持ちい…あ…おかしくなる……イイ、あ…」
「目開けて……湊」
「あああ……っ…くみや……あ…イ……あ、あ…イく……」
「湊…イく顔見せて」
「あ、イく……イっちゃ…う……久御山……イく…ぅ…」


…なんつーエロい顔してイくんだよおまえ……


めちゃくちゃ可愛い顔してんのに男らしくなりたいと言い、かと思えば凶悪なもん股間にぶらさげてて卑猥な声で鳴く……サクっとコンドームは装着するのに乳首められて仰け反って、こんなに無駄のないきれいなカラダしながら自分は汚いと言って泣く。アンバランスで危なっかしくて……エロくて可愛いよなあ……




「……久御山、イかなくてよかったの?」
「うん、なんか湊がイったから満足しちゃった」
「久御山……ノンケだよね」
「いやおまえ、いま何してたか思い出せよ」
「う…ん……でも、ほら…」


「オレは普通とかよくわからん。オレ自身普通じゃない扱いされて育ってるし」

……昔、祈祷師呼ばれたこともあるんだぜ……狐憑きだ、物の怪の仕業だつって。あーそうか、オレそういう目で見られてんのか、人間扱いすらされてないのか、って……産まれなきゃよかったって思ったし、死んだほうがいいかなって思ったこともあるし。かーちゃん、浮気疑惑掛けられるしな。

オレ四つか五つまでなんつーの、座敷牢っつの? なんか監禁生活送ってたみたいでさ。由緒正しい家柄に相応しくないつって、隠して育てられたっつか。だから四つかな、五つかな、それくらいまでオレ言葉を知らなかったんだよね。教えてくれるひともいなかったし。だからオレ、喋れなくってさ。

で、この見た目じゃん? 日本語がわからないんだな、外国人なんだな、って思われて英語で話し掛けられたりすんの。英語もわかんねえっつのな。周りとコミュニケーション取れなくてずーっと孤立してたんだよね。特殊な施設に預けられて初めて言葉ってのを覚えたんだけど、それでも見た目は変わらないしさ。

三つ下の妹がいるんだけど、オレのせいでイジメに遭ってさ。おまえの兄ちゃんは物の怪だー宇宙人だー不倫の子だーって言われて、でも妹オレのこと好きだから歯向かうわけ。オレをかばって。したら更にイジめられてさ。なんかもう見てらんないの。オレが出張でばるとまたイジめられんだろうなって思うと何もできん。

一族と無関係でご近所さんでもない遠いひとたちからはさ、モテたの。オレの家のこととか親族のこととか知らないからさ、無責任でいられるじゃん。でも踏み込んで知ってくうちにオレを見る目が変わってくのよ。カッコイイ久御山くんから、可哀想な久御山くんになってさ。余計なお世話だっつのな。

だから……恋愛を馬鹿にはしてないけど、恋愛しようと思ったこともない。いつオレを見る目が変わるんだろって、毎日気にしながら生きてくのもしんどいし。だからオレにとって湊は "無責任でいられる距離の、優しい人間" だったんだよね。それなら見る目も変わらないのかなって。

「……踏み込んだって変わらないよ…久御山は久御山じゃん…」
「うん、湊はそう言うだろうなって思った」
「恋愛を馬鹿にしてるなんて思ったこともないし」
「おまえは? 恋愛経験あんの?」
「…ない…けど……いや、どうだろう…」
「何よ、そんな曖昧なもんなの?」
「久御山のことは好きだと思う……オカズにしたことあるし…」
「オカズって、おまえ…」
「どんな久御山だって格好いいよ…格好良くて頭良くて優しい」
「おまえも可愛いよ、イくときの顔なんか特に」
「…っ…やめろ!」
「男相手にこんな萌えると思わんかった」
「あ、うん…そ…なんだ…」
「ヨさそうにしてる顔がエロくて可愛いなあ、と」
「だからやめろよ!」
「…思い出したら勃って来た」
「何を思い出したらそうなる!?」

男か女かなんてどーでもいいよ。オレ、化け物か人間かも怪しいわけだし。




「……久御山もイこ」

湊に咥えられ、あっという間に元気になった。いままで女の子に尺られたことはあるけど、正直ここまでイイと思ったことがない。決してセックスが嫌いなわけじゃないし、女の子の柔らかさとか、においなんかは好きだ。でも湊の、なんていうかオレのためっていうより自分が欲しくてやってるみたいな感じが……

「ん……っ…」
「なんで我慢するの?」
「なに……」
「声……聞かせてよ…他に誰も聞いてないんだし」
「そう言われても……いままでそういうの、なかったし……」

湊の舌の動きが激しくなる。どうやってんだろ……絡みつく舌と、吸引される感覚と、上下する口唇と……あ、あれだ…女の子の内側なかに似てる…全体が締め付けられる感じ……程よく圧迫されて

「…ん……う…」
「……久御山でもそんな声出すんだ」
「ん……あ……っ…」

いや、出そうと思って出してるわけでは……あ、ダメだ。完全にイイところを掌握されてる気さえして来る…何より、顔がエロい。普段感情が顔に表れないというか、感情の起伏を抑えるように硬い表情をしてることが多いだけに、そのギャップだけで相当萌える。

「あの……すぐイきそうなんだけど…」
「…イイところで止めてあげるよ」
「え……」

口から離したソレを手に持ち替え、絶妙な感触で動かしながら首筋に舌を這わせ、その湊の舌がゆっくりと探るようにカラダを降りて行く。自分のカラダがこんな風に反応することを初めて知って、思わず漏れる声に自分で驚くほどだった。



「ん…っ…」
「なんだよ、自分だってピンク色じゃん…」
「ま、待て湊……」
「僕は "おあずけ" ができない犬なんだ」

いままでだってめられたことがないわけじゃないし、手でしごかれたことがないわけじゃない。なんなら手で扱かれてイったことだってある。ただ、乳首められてこんなに腰の辺りがゾワゾワしたこともなければ、鳴き声を我慢しなくちゃいけないような感覚に陥ったこともない。

「あ…ああ…はあっ……ん…んっ…」
「久御山だってすげえ感度いいじゃん……乳首弱いの?」

ここまで念入りにめたり噛んだり吸ったりされたことねえわ!


優しくめられたかと思うと、触れるか触れないかくらいのかすかな感触で扱かれ、刺激が足りなくて自然と腰が動く。決してセックスが嫌いなわけじゃない? そんなレベルの話じゃない、欲しくて堪らなくておかしくなりそうだ……

「…湊……もっと…」
「もっと……なに?」
「ちゃんと…触って…」


ぎゅっと根元を握り締めながら、柔らかい舌で先端をなでる。ああ、もう、どこをどうしたらどうなるか、完全にわかってやってるとしか思えない。あと一往復、というタイミングで別の部分を刺激され、そこが高まって来るとまた違う場所を可愛がり始める。あああああそこじゃねえ!!

散々焦らされてもう頭が回らない……とにかくイきたい。もうなんでもいいからイきたい。

「ん、あぁ…っ……湊、イきたい……」
「どうしたの久御山……いつもの余裕は?」
「はぁ……あ…ない…ない、もうイきたい…も……あかん…」
「まさか……久御山がヨダレ垂らして欲しがるとは思わなかった…」
「湊、湊…あっ……イきたい…ん……イかして……湊…」

乳首から足の指までしゃぶり倒されて正気でいられるほどオレは淡泊じゃねえ……

「苦しくて眉間にしわ寄せてても格好いいね」
「はぁ…はぁっ…みな…と……も、無理…」

咥えられた瞬間、全身に鳥肌が立った。絡む舌の熱さと口唇の摩擦でカラダ中の血液が蒸発するんじゃないかと思った。これ、もう絶対溶けてる……

「あ、あ…イイ…あ…っ…湊…はあっ…イく…みな…と…イ…く……」




……尽き果てた。




「久御山……久御山、大丈夫…?」
「大丈夫なわけあるか……」
「イケメンのエロい声、最強だよね……」
「このドS野郎……」

可愛い顔をしたおあずけのできない犬はとんだドSだった。おどおどと落ち着かない様子で、いまにも消えてしまいそうだと思ったのは勘違いだったのか、それとも……距離が近くなったからなのか。

「今度試してみようか」
「何を……」
「後ろのほう」
「え、さっきやったけど」
「久御山が受けで」
「そっ……そんな凶悪なもん入るわけねえだろ!」

笑った湊の顔を初めて見た気がした。いや、いままでだって普通に笑ってたけど、どこか寂しそうだったというか、一所懸命笑ってる感があった気がする。

「久御山、関西出身なの?」
「え……なんで」
「いや、さっき……アカンて言ってたから」
「……ええええ……恥ず……」
「ほとんど出ないよね、関西弁」
「かな?」
「関西弁で話してみてよ」
「なんでやねん。そんなん突然ゆわれてもできひんて」
「できてるじゃん」

湊が大笑いしながら新鮮でいいね、と言った。

こんなことを喜んでくれるなら、たまに地元の言葉で話してもええかな。
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