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15:真実のキス

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15:真実のキス


ドンドンドンドン!

「出せー 出せーー! 出してよ~

 ダーリン! たすけてぇ~

 コワィ女子高生たちが苛める~~!!

 きんつば~!」

ガチャガチャガチャ

 目覚めたナナは、助けを求めていたが、

外側からの”保険”で、ビクともしないドアを、ズルズル滑り床で顔をこすった。

そしてまたメモを読み返した。

|もし、また私たちの誰かに手を上げたら

|グループ創始者(裏)が動くかもしれません

|お父上の会社もろとも…ご用心下さい

|風祭 カナ

「大家… 風祭一族の娘…

 か、かっこ、裏ってなにさ~~~~

 こんなの嘘! うそっぱちだぁーーー!

 でも、こぁいよぉ~~

 本物のおにーさん達が来る?

 す巻きにされちゃうー!

 コンクリ詰めかぁーー!

 ママ~! パパ~! タカオミーー!

 ヒーー きんつば~~」

 声に気づいた犬は何度か飛び起きた。

そのたび尻尾を振り喜んだが、すぐ静かになってしまうドアに飽き、

また眠ってしまった。





『ダメ! 逃げちゃダメ! 話さなきゃ、だってアタシ、アタシ!

 タカオミが大好き! ほんとのこと聞くの…』

ノックすると、ドアはお入りなさいとでも言うように、簡単に隙間を見せた。


部屋は真っ暗だった。

手探りで明かりのスイッチを入れると、床に散った木々の破片が目に付いた。

『な、何これ。 何があったの? タカオミ!』

 天井を見上げたイリはそこに穴が出来てるのを知り、広くもない部屋を見回した。

ゴミ箱に空になったマヨネーズが見えた。

『タカ…』

 誰も居ないリビングから、寝室へ入った。

彼はどこにも居なかった…。

振り向くと、ゆっくり、そっと歩いた…。

しゃがみこみ、それを見た。

テーブル下にあった一枚の紙片。

彼の上で、幸せそうに目を閉じたナナが写る、

プリントアウトされた写真…。

イリはそうじゃないと思って拾いあげた。

はじめは何が写っているのか分からなかった。

でも、現実はイリを、また大きく。強く。揺さぶった。

「あたし、タカオミの赤ちゃんいるんだー」

 声が浮かんだ。

『…やっぱり…アタシじゃ…』

 イリは部屋を飛び出した!

その時、何かを引っ掛けた。

弾かれて、転がっていったのは、

丁寧に、丁寧に天使のイリが描かれたキャンバス。

羽の部分にためらったような筆跡が残り、少しぼやけていた…。





 チューチューチュールルルチュ~ チュッパチュー♪

すごい下品な音がした。


15-1:真実のキス

「おぃ みっともねーだろー ちゃんとご飯食べに行こう。な?」

 二人目のタカオミは、もう一人と混同するので、自分はオミーだと言っていた。

オミーは、タカが夢遊病の様に入ってしまった。

近くのコンビニに付き添い、冷や汗をかいていた。

冷ややかな客たちの視線。

タカは購入前のマヨネーズを袋から出し!

吸いまくりはじめていたのだ。

「あの~困るんですけどぉ…」

 店員が二人、前後に立っていた。

「あ。だいじょーぶでーす。ちゃんとお金払いますから~

 こいつすげぇーお腹空いてるだけでー

 い、異常な… マヨラーなんです!

 ほんとですよ! 話すと長いからやめますけど…

(そーだった。タカは、あの日以来…トホホ…)

 おかしいーですよね~ハッハッハッ…

 スンマセン スンマセン ハァ~…

 じゃ、これでお願いします」

 オミーは、店員Aにカードを渡そうとしたが、

店員Bがひったくる様に奪い、

「毎度アリー」っとカードを頭に掲げ、腰は低くレジに走った。

店員Aは納得して抱えていたモップを下げ、掃除しはじめた。

 その時、雑誌を見ていた一人の女性客がオミの顔を見て驚き、

連れの女性に「この人! この人! そこに居る~」っと、雑誌を指し耳打ちした。

「わ! 噂の占い師。DPオミーだーー きゃーかっこいぃ~!」

他の女性客も一斉にサインを貰おうと、寄って来てしまった。

オミーは親友がマヨをチューチューしてる横で、罰が悪そうにサインをしてあげた…。

「プハーーー!」

 タカはマヨを吸い切り、店員Aに空の容器を渡した。

さっきまでの死んだような顔とは違い、やっと正気を取り戻したように見えた…

「! オミ~?… なんで… ここ… に…」

 が、再び全てのことがどーでも良くなり、芯を無くしグニャーっと折れ曲がっていった…。

「おぃ 今度はなんだ? 落ち込んでるんだな? 原因は? おーぃい」

 支えたタカを揺すって起こそうとすると、

「コドモデキタナナノコ」

 と、言った。

「え? ナナって」

 焦点の定まらない目をし、タカオミはもう何も話さなくなった。





 じぶんちなのに…ボロ雑巾のような二人は、

フローリングの床で正座させられていた。

その前を、定規を手にピシピシ叩き持つミサキが、行ったり来たりしていた。

「このサイトのことですの?」

 カナが聞くと、


「うん。そこそこ」

 ヤッスーは身を乗り出し指をさした。

「ゴラァーー はい! だろぉー カナ嬢になんて口聞く~

 身を乗り出すな! 一ミリも! 動くなっけっ、汚らわしい!!」

ビシシシーッ!

 定規が飛んだ。


15-2:真実のキス


「あぅーーーん ごめんなさいぃ~ん」

 ヤッスーは叩かれ身悶えた。

「(うわ、こいつ今笑ってた~。 

 でも、恋する相手が自分の部屋にいるんだものなぁ~

 何されても痛くなさげだ…

 でも、なんで僕まで正座する必要が~

 しかし、こいつら何を聞きに来たんだょー

 僕には僕の行くべき道ががあるんだ!

 こうしている場合じゃない~

 僕は、メグミさまーんと早く結ばれたいんだ!! キャ~♪)

 風祭さーん! ぼ、ぼぼぼ僕。

 忙しいからかかかかか、帰ってもいいでしょうかーー」

 ヨッシーは恐る恐るカナに聞いた。


ビシッ!

「ギャッ」

「なに? 帰る? そー言って俺らをたぶらかす気だな?!

 その手には乗らん!

 お前は二号だ! まだ、聞きたいことがあ~る! じっとしてろぉーー!」

 痺れてきた足を叩かれたヨッシーは、動くことも出来ず。もがき苦しんだ。

「ミサキ! やめなさーぃ そーいうことするの~

 で、結局 噂は本当ですの?」

「噂の震源地は確かにそこだと思うけどー?

 ぼ、僕はーこんな、霊感商法まがいには

 引っ掛かりたくないからー

 そいつが行くみたいよ? ぁ!

 ですですで、ございます。ございます~ ハァハァ~」

 ヤッスーは両手を挙げひれ伏すと、ミサキはピクッっと眉を動かした。

「お前が行くのか?」

 ヨッシーの顎にミサキは定規を当てた。

「ミサキ いい加減にしなさい!

 あんたいると話しが進まないぃ~~!」

「うわー 俺はカナのボディーガードで来たんだぞぉー

 カナにもしものことがあったらどーすんの!」

「どーにもなりませんって…

 お二人がどーにかなっちゃうから~ 解放して上げなさいってば!」

「し、しかも、こいつ。これ見てくれよぉー

 ほらほら!

 こんないっぱい隠し撮りしてんだぜ!

 いつだったか、無くなった!

 消しゴムのカスで作った。お気に入りの芋虫も!

 水玉のハンカチも!

 カナに貰ったキラキラストラップもー!!

 飲もうとしたのに消えた缶ジュース~!

 きっと、こいつらのせいだー!

 目にも止まらぬ速さで変態行為してるに違いない!

 気持ち悪いよぉ~ 俺ばっか写ってるし!!」

 ミサキは辺りにあった、自分の写真を束にして、

ヤッスーの頭を叩きながらばら撒いた。

『なに! そのどーでもい話。

 君が物忘れ激しいの、皆知ってるよぉ…

 上げたストラップうちにまだあるって、言ってるでしょー?

 てか、なんで今、写真の話しになるの~?!』

 ついに来たかと、カナは身構えた!


15-3:真実のキス


「てかさ、この写真誰が撮った?…」

ミサキは振りかざした定規を下ろしながら、一枚の写真を拾い上げた。

「それはこいつ!」

「コイツコイツー!」

 互いを指し合う男子二人。

「ふむ。どっちでもいいけど。この写真いいな♪ すげぇ~良く撮れてる!

 ~我ながら美しい~♪」

 ミサキはかた膝を付き、一枚、また一枚。写真を手に取り眺め始めた。

「良く見たら、綺麗な写真撮るじゃん! 変態のくせに才能ある? ほほぉー」

 ミサキは照れ、定規で頭をかいた。

「でしょ! でしょ? さっきの気に入ってくれたやつ。すごっい苦労したんだ!

 その時の戦利品がこれ!

 ジャジャーン! ほら! まだ少し入ってる!」

 ヤッスーは膝で歩き、机の引き出しから、

ラップに包んだ”缶ジュース”を宝物だと、ご本人に差し出していた…。

チャプン チャプ~ン チャポン

「あぁあああああ! ここここれは、ちちちち違います!

 そんなことする訳ないじゃーないですっかー!

 うわーーーーーーーー!

 のぉおおおおおおおおおおおおおおおお---!」

 信じられない墓穴を掘ったヤッスー。

『ばかーん』

 ヨッシーは目を丸くした!

『ほんとだった~!!!』

 カナはその後の展開に目をつぶった!


 ところが!

数分経っても、何か起こる気配は無く、

カナは恐る恐る目を開けた。


「なぁ変態一号。お前なんで、俺のことばっか撮る?」

 ミサキはヤッスーの胸ぐらを掴んでいた。


「アゥアゥアゥアゥ…」

 殺されると思ったヤッスーは腰を抜かしていた。

「まさかお前! 俺のことが好き?…なのか? 恋してるのか…」

 ミサキはヤッスーににじり寄った。

 ミサキの真剣な眼差しに、ヤッスーはゴクリッ固い唾を飲んだ。

「なぁ 教えてくれ。一つでいい教えてくれ。

 恋ってのは、絞められて落ちるときの感じに似てるって、

 父親代わりだった。死んだ兄貴が言ってた…。

 教えてくれ… そーなのか?

 おしえろーーー!」

 ミサキの掴んだ胸ぐらは、服で首。喉をグイグイ絞めつけていた!

ギュギュギューー ギギギュ

「うぐぅぐぐぐぐ…」

 ミサキの手を振り解こうと、もがくヤッスー!

バシーッ! ババッバッシーン!!

「いいかげんにしなさーぃ!」

 カナは血相を変え、ミサキの頭を定規で叩いた!

「イッテーー! だってぇ~ 聞くのが早いじゃーん」

そして、ヤスヒロは”落ちる”寸前に何かを見ていたらしく…

「オバーチャンマッテヨ~…」

 と、呟きガクッと力を無くした…。


『人は誰でも恋の正体を知っている~♪

 あっという間に恋をする~♪

 相手がどこの誰でも~自分がどこの誰でも

 どんな場所でも、恋に落ちるの~♪。

 恋が実らず花を咲かせないことも知ってるけど~

 それでも、また恋をするの~♪

 そしてやがて~そして!』

「ミサキィイイイーーーー!!!

 君はほんとになーんにも、分かって無い!」

 カナは即興で詩を思い浮かべ、親友の未来を案じていた。


15-4:真実のキス


「ぁうぁうぁうううううあぅぅうぁあうぁう」


「うん。え? 不良のナナに夜這いされてててて!


 男の操を奪われた…!


 うぇ~ そりゃむごい…


 むごすぎだなぁ~ そりゃ落ち込むなぁ…」


「あぅあぅ」


「ていうか、俺。アシカと話せる飼育員のおじさん?…」


「あぅーっ あぅあぅあうーん…」


「だよなー 男としては、お前の気持ちは痛いほど分かる。


 でもな、あいつが狼少年なの知ってるだろう? 嘘臭いぞぉ~


 俺は知り合いや友達、ましてお前の運命は占わないって決めてるから。


 ばーちゃんに聞いてみるか?」


「あぅあぅあぅーーーぁあ当たり過ぎて怖いからやめろ!」


 タカは思いっきり首を横に振った。


「ナナとっちめる?」


「…もし、ほんとだったら… そっちのが怖い… 


 俺は何も悪くないんだ! イリ~~~ イリに逢いたい… でも…」


 タカはまた袋から、マヨネーズを取り出そうとしていた。


「おぃおぃ、もうやめろって! もう吸っちゃだめ…


 ところでイリって?」


 オミはついでだと、棚にあったマヨを全部買い込んでいて、


マヨだらけのレジ袋をタカから取り上げ、座ってるベンチのすみに押しやった。


 ここはコンビに近くの公園で、寒空の中二人は話しこんでいた。


「俺の天使」


 うつむいて顔を押さえたタカが小さな声で言った。


吐く息は白かった。


「そうか、天使が居るのに悪夢のナナが現れ。笛を吹いたって訳か…


 細かいこと分からんけど、これはあいつのでっちあげだ絶対!


 だから安心しろって。


 俺もついさっき運命の子! に逢えちゃったんだよ~これが♪


 あぁーこの子、この子。


 名前はー教えてくれなかったけど…え?」


 その子は、握りすぎてヨレヨレの紙片を突き出していた。


「赤ちゃん…」


「!」


 タカオミは驚いて顔を上げた!


「赤ちゃん生まれる?…」


「! なんでそれを…」


「おねーさん嬉しそうだったょ…」


 イリはタカオミに、ギュッと紙片を握らせた。


「きちんと言って。 お前じゃダメだって… アタシまだ子供だけど、だけど…」


「………」


 タカオミはずっと混乱していて、何をどう言っていいか分からなかった…。


「…報告色々あったけど、もういいね…


 さ よ う な…」


 イリはかけ出した!


『イリ!』


 立ち上がれなかった。


追えなかった。


風が吹いた。


翼から羽が抜け落ち、イリの背中から消えて無くなるように思え、


一枚の羽がタカの頬に触った。


そして、すぐに消えた。


それは、雪。


また振りはじめた雪…。


彼は、紙片を破り捨てた。


「おぃなにしてる! 追っかけろ天使がいっちまぅ!


 いいのかよ!


 追わなくていいのか?


 次は俺が行くぞ?!


 お前たちの最悪の状況に便乗する気は無い!


 けどだ…ちょっと前から俺とおまえは、


 運命のライバルになっちまったんだ~!」
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