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15:真実のキス
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15:真実のキス
ドンドンドンドン!
「出せー 出せーー! 出してよ~
ダーリン! たすけてぇ~
コワィ女子高生たちが苛める~~!!
きんつば~!」
ガチャガチャガチャ
目覚めたナナは、助けを求めていたが、
外側からの”保険”で、ビクともしないドアを、ズルズル滑り床で顔をこすった。
そしてまたメモを読み返した。
|もし、また私たちの誰かに手を上げたら
|グループ創始者(裏)が動くかもしれません
|お父上の会社もろとも…ご用心下さい
|風祭 カナ
「大家… 風祭一族の娘…
か、かっこ、裏ってなにさ~~~~
こんなの嘘! うそっぱちだぁーーー!
でも、こぁいよぉ~~
本物のおにーさん達が来る?
す巻きにされちゃうー!
コンクリ詰めかぁーー!
ママ~! パパ~! タカオミーー!
ヒーー きんつば~~」
声に気づいた犬は何度か飛び起きた。
そのたび尻尾を振り喜んだが、すぐ静かになってしまうドアに飽き、
また眠ってしまった。
*
『ダメ! 逃げちゃダメ! 話さなきゃ、だってアタシ、アタシ!
タカオミが大好き! ほんとのこと聞くの…』
ノックすると、ドアはお入りなさいとでも言うように、簡単に隙間を見せた。
部屋は真っ暗だった。
手探りで明かりのスイッチを入れると、床に散った木々の破片が目に付いた。
『な、何これ。 何があったの? タカオミ!』
天井を見上げたイリはそこに穴が出来てるのを知り、広くもない部屋を見回した。
ゴミ箱に空になったマヨネーズが見えた。
『タカ…』
誰も居ないリビングから、寝室へ入った。
彼はどこにも居なかった…。
振り向くと、ゆっくり、そっと歩いた…。
しゃがみこみ、それを見た。
テーブル下にあった一枚の紙片。
彼の上で、幸せそうに目を閉じたナナが写る、
プリントアウトされた写真…。
イリはそうじゃないと思って拾いあげた。
はじめは何が写っているのか分からなかった。
でも、現実はイリを、また大きく。強く。揺さぶった。
「あたし、タカオミの赤ちゃんいるんだー」
声が浮かんだ。
『…やっぱり…アタシじゃ…』
イリは部屋を飛び出した!
その時、何かを引っ掛けた。
弾かれて、転がっていったのは、
丁寧に、丁寧に天使のイリが描かれたキャンバス。
羽の部分にためらったような筆跡が残り、少しぼやけていた…。
*
チューチューチュールルルチュ~ チュッパチュー♪
すごい下品な音がした。
15-1:真実のキス
「おぃ みっともねーだろー ちゃんとご飯食べに行こう。な?」
二人目のタカオミは、もう一人と混同するので、自分はオミーだと言っていた。
オミーは、タカが夢遊病の様に入ってしまった。
近くのコンビニに付き添い、冷や汗をかいていた。
冷ややかな客たちの視線。
タカは購入前のマヨネーズを袋から出し!
吸いまくりはじめていたのだ。
「あの~困るんですけどぉ…」
店員が二人、前後に立っていた。
「あ。だいじょーぶでーす。ちゃんとお金払いますから~
こいつすげぇーお腹空いてるだけでー
い、異常な… マヨラーなんです!
ほんとですよ! 話すと長いからやめますけど…
(そーだった。タカは、あの日以来…トホホ…)
おかしいーですよね~ハッハッハッ…
スンマセン スンマセン ハァ~…
じゃ、これでお願いします」
オミーは、店員Aにカードを渡そうとしたが、
店員Bがひったくる様に奪い、
「毎度アリー」っとカードを頭に掲げ、腰は低くレジに走った。
店員Aは納得して抱えていたモップを下げ、掃除しはじめた。
その時、雑誌を見ていた一人の女性客がオミの顔を見て驚き、
連れの女性に「この人! この人! そこに居る~」っと、雑誌を指し耳打ちした。
「わ! 噂の占い師。DPオミーだーー きゃーかっこいぃ~!」
他の女性客も一斉にサインを貰おうと、寄って来てしまった。
オミーは親友がマヨをチューチューしてる横で、罰が悪そうにサインをしてあげた…。
「プハーーー!」
タカはマヨを吸い切り、店員Aに空の容器を渡した。
さっきまでの死んだような顔とは違い、やっと正気を取り戻したように見えた…
「! オミ~?… なんで… ここ… に…」
が、再び全てのことがどーでも良くなり、芯を無くしグニャーっと折れ曲がっていった…。
「おぃ 今度はなんだ? 落ち込んでるんだな? 原因は? おーぃい」
支えたタカを揺すって起こそうとすると、
「コドモデキタナナノコ」
と、言った。
「え? ナナって」
焦点の定まらない目をし、タカオミはもう何も話さなくなった。
*
じぶんちなのに…ボロ雑巾のような二人は、
フローリングの床で正座させられていた。
その前を、定規を手にピシピシ叩き持つミサキが、行ったり来たりしていた。
「このサイトのことですの?」
カナが聞くと、
「うん。そこそこ」
ヤッスーは身を乗り出し指をさした。
「ゴラァーー はい! だろぉー カナ嬢になんて口聞く~
身を乗り出すな! 一ミリも! 動くなっけっ、汚らわしい!!」
ビシシシーッ!
定規が飛んだ。
15-2:真実のキス
「あぅーーーん ごめんなさいぃ~ん」
ヤッスーは叩かれ身悶えた。
「(うわ、こいつ今笑ってた~。
でも、恋する相手が自分の部屋にいるんだものなぁ~
何されても痛くなさげだ…
でも、なんで僕まで正座する必要が~
しかし、こいつら何を聞きに来たんだょー
僕には僕の行くべき道ががあるんだ!
こうしている場合じゃない~
僕は、メグミさまーんと早く結ばれたいんだ!! キャ~♪)
風祭さーん! ぼ、ぼぼぼ僕。
忙しいからかかかかか、帰ってもいいでしょうかーー」
ヨッシーは恐る恐るカナに聞いた。
ビシッ!
「ギャッ」
「なに? 帰る? そー言って俺らをたぶらかす気だな?!
その手には乗らん!
お前は二号だ! まだ、聞きたいことがあ~る! じっとしてろぉーー!」
痺れてきた足を叩かれたヨッシーは、動くことも出来ず。もがき苦しんだ。
「ミサキ! やめなさーぃ そーいうことするの~
で、結局 噂は本当ですの?」
「噂の震源地は確かにそこだと思うけどー?
ぼ、僕はーこんな、霊感商法まがいには
引っ掛かりたくないからー
そいつが行くみたいよ? ぁ!
ですですで、ございます。ございます~ ハァハァ~」
ヤッスーは両手を挙げひれ伏すと、ミサキはピクッっと眉を動かした。
「お前が行くのか?」
ヨッシーの顎にミサキは定規を当てた。
「ミサキ いい加減にしなさい!
あんたいると話しが進まないぃ~~!」
「うわー 俺はカナのボディーガードで来たんだぞぉー
カナにもしものことがあったらどーすんの!」
「どーにもなりませんって…
お二人がどーにかなっちゃうから~ 解放して上げなさいってば!」
「し、しかも、こいつ。これ見てくれよぉー
ほらほら!
こんないっぱい隠し撮りしてんだぜ!
いつだったか、無くなった!
消しゴムのカスで作った。お気に入りの芋虫も!
水玉のハンカチも!
カナに貰ったキラキラストラップもー!!
飲もうとしたのに消えた缶ジュース~!
きっと、こいつらのせいだー!
目にも止まらぬ速さで変態行為してるに違いない!
気持ち悪いよぉ~ 俺ばっか写ってるし!!」
ミサキは辺りにあった、自分の写真を束にして、
ヤッスーの頭を叩きながらばら撒いた。
『なに! そのどーでもい話。
君が物忘れ激しいの、皆知ってるよぉ…
上げたストラップうちにまだあるって、言ってるでしょー?
てか、なんで今、写真の話しになるの~?!』
ついに来たかと、カナは身構えた!
15-3:真実のキス
「てかさ、この写真誰が撮った?…」
ミサキは振りかざした定規を下ろしながら、一枚の写真を拾い上げた。
「それはこいつ!」
「コイツコイツー!」
互いを指し合う男子二人。
「ふむ。どっちでもいいけど。この写真いいな♪ すげぇ~良く撮れてる!
~我ながら美しい~♪」
ミサキはかた膝を付き、一枚、また一枚。写真を手に取り眺め始めた。
「良く見たら、綺麗な写真撮るじゃん! 変態のくせに才能ある? ほほぉー」
ミサキは照れ、定規で頭をかいた。
「でしょ! でしょ? さっきの気に入ってくれたやつ。すごっい苦労したんだ!
その時の戦利品がこれ!
ジャジャーン! ほら! まだ少し入ってる!」
ヤッスーは膝で歩き、机の引き出しから、
ラップに包んだ”缶ジュース”を宝物だと、ご本人に差し出していた…。
チャプン チャプ~ン チャポン
「あぁあああああ! ここここれは、ちちちち違います!
そんなことする訳ないじゃーないですっかー!
うわーーーーーーーー!
のぉおおおおおおおおおおおおおおおお---!」
信じられない墓穴を掘ったヤッスー。
『ばかーん』
ヨッシーは目を丸くした!
『ほんとだった~!!!』
カナはその後の展開に目をつぶった!
ところが!
数分経っても、何か起こる気配は無く、
カナは恐る恐る目を開けた。
「なぁ変態一号。お前なんで、俺のことばっか撮る?」
ミサキはヤッスーの胸ぐらを掴んでいた。
「アゥアゥアゥアゥ…」
殺されると思ったヤッスーは腰を抜かしていた。
「まさかお前! 俺のことが好き?…なのか? 恋してるのか…」
ミサキはヤッスーににじり寄った。
ミサキの真剣な眼差しに、ヤッスーはゴクリッ固い唾を飲んだ。
「なぁ 教えてくれ。一つでいい教えてくれ。
恋ってのは、絞められて落ちるときの感じに似てるって、
父親代わりだった。死んだ兄貴が言ってた…。
教えてくれ… そーなのか?
おしえろーーー!」
ミサキの掴んだ胸ぐらは、服で首。喉をグイグイ絞めつけていた!
ギュギュギューー ギギギュ
「うぐぅぐぐぐぐ…」
ミサキの手を振り解こうと、もがくヤッスー!
バシーッ! ババッバッシーン!!
「いいかげんにしなさーぃ!」
カナは血相を変え、ミサキの頭を定規で叩いた!
「イッテーー! だってぇ~ 聞くのが早いじゃーん」
そして、ヤスヒロは”落ちる”寸前に何かを見ていたらしく…
「オバーチャンマッテヨ~…」
と、呟きガクッと力を無くした…。
『人は誰でも恋の正体を知っている~♪
あっという間に恋をする~♪
相手がどこの誰でも~自分がどこの誰でも
どんな場所でも、恋に落ちるの~♪。
恋が実らず花を咲かせないことも知ってるけど~
それでも、また恋をするの~♪
そしてやがて~そして!』
「ミサキィイイイーーーー!!!
君はほんとになーんにも、分かって無い!」
カナは即興で詩を思い浮かべ、親友の未来を案じていた。
15-4:真実のキス
「ぁうぁうぁうううううあぅぅうぁあうぁう」
「うん。え? 不良のナナに夜這いされてててて!
男の操を奪われた…!
うぇ~ そりゃむごい…
むごすぎだなぁ~ そりゃ落ち込むなぁ…」
「あぅあぅ」
「ていうか、俺。アシカと話せる飼育員のおじさん?…」
「あぅーっ あぅあぅあうーん…」
「だよなー 男としては、お前の気持ちは痛いほど分かる。
でもな、あいつが狼少年なの知ってるだろう? 嘘臭いぞぉ~
俺は知り合いや友達、ましてお前の運命は占わないって決めてるから。
ばーちゃんに聞いてみるか?」
「あぅあぅあぅーーーぁあ当たり過ぎて怖いからやめろ!」
タカは思いっきり首を横に振った。
「ナナとっちめる?」
「…もし、ほんとだったら… そっちのが怖い…
俺は何も悪くないんだ! イリ~~~ イリに逢いたい… でも…」
タカはまた袋から、マヨネーズを取り出そうとしていた。
「おぃおぃ、もうやめろって! もう吸っちゃだめ…
ところでイリって?」
オミはついでだと、棚にあったマヨを全部買い込んでいて、
マヨだらけのレジ袋をタカから取り上げ、座ってるベンチのすみに押しやった。
ここはコンビに近くの公園で、寒空の中二人は話しこんでいた。
「俺の天使」
うつむいて顔を押さえたタカが小さな声で言った。
吐く息は白かった。
「そうか、天使が居るのに悪夢のナナが現れ。笛を吹いたって訳か…
細かいこと分からんけど、これはあいつのでっちあげだ絶対!
だから安心しろって。
俺もついさっき運命の子! に逢えちゃったんだよ~これが♪
あぁーこの子、この子。
名前はー教えてくれなかったけど…え?」
その子は、握りすぎてヨレヨレの紙片を突き出していた。
「赤ちゃん…」
「!」
タカオミは驚いて顔を上げた!
「赤ちゃん生まれる?…」
「! なんでそれを…」
「おねーさん嬉しそうだったょ…」
イリはタカオミに、ギュッと紙片を握らせた。
「きちんと言って。 お前じゃダメだって… アタシまだ子供だけど、だけど…」
「………」
タカオミはずっと混乱していて、何をどう言っていいか分からなかった…。
「…報告色々あったけど、もういいね…
さ よ う な…」
イリはかけ出した!
『イリ!』
立ち上がれなかった。
追えなかった。
風が吹いた。
翼から羽が抜け落ち、イリの背中から消えて無くなるように思え、
一枚の羽がタカの頬に触った。
そして、すぐに消えた。
それは、雪。
また振りはじめた雪…。
彼は、紙片を破り捨てた。
「おぃなにしてる! 追っかけろ天使がいっちまぅ!
いいのかよ!
追わなくていいのか?
次は俺が行くぞ?!
お前たちの最悪の状況に便乗する気は無い!
けどだ…ちょっと前から俺とおまえは、
運命のライバルになっちまったんだ~!」
ドンドンドンドン!
「出せー 出せーー! 出してよ~
ダーリン! たすけてぇ~
コワィ女子高生たちが苛める~~!!
きんつば~!」
ガチャガチャガチャ
目覚めたナナは、助けを求めていたが、
外側からの”保険”で、ビクともしないドアを、ズルズル滑り床で顔をこすった。
そしてまたメモを読み返した。
|もし、また私たちの誰かに手を上げたら
|グループ創始者(裏)が動くかもしれません
|お父上の会社もろとも…ご用心下さい
|風祭 カナ
「大家… 風祭一族の娘…
か、かっこ、裏ってなにさ~~~~
こんなの嘘! うそっぱちだぁーーー!
でも、こぁいよぉ~~
本物のおにーさん達が来る?
す巻きにされちゃうー!
コンクリ詰めかぁーー!
ママ~! パパ~! タカオミーー!
ヒーー きんつば~~」
声に気づいた犬は何度か飛び起きた。
そのたび尻尾を振り喜んだが、すぐ静かになってしまうドアに飽き、
また眠ってしまった。
*
『ダメ! 逃げちゃダメ! 話さなきゃ、だってアタシ、アタシ!
タカオミが大好き! ほんとのこと聞くの…』
ノックすると、ドアはお入りなさいとでも言うように、簡単に隙間を見せた。
部屋は真っ暗だった。
手探りで明かりのスイッチを入れると、床に散った木々の破片が目に付いた。
『な、何これ。 何があったの? タカオミ!』
天井を見上げたイリはそこに穴が出来てるのを知り、広くもない部屋を見回した。
ゴミ箱に空になったマヨネーズが見えた。
『タカ…』
誰も居ないリビングから、寝室へ入った。
彼はどこにも居なかった…。
振り向くと、ゆっくり、そっと歩いた…。
しゃがみこみ、それを見た。
テーブル下にあった一枚の紙片。
彼の上で、幸せそうに目を閉じたナナが写る、
プリントアウトされた写真…。
イリはそうじゃないと思って拾いあげた。
はじめは何が写っているのか分からなかった。
でも、現実はイリを、また大きく。強く。揺さぶった。
「あたし、タカオミの赤ちゃんいるんだー」
声が浮かんだ。
『…やっぱり…アタシじゃ…』
イリは部屋を飛び出した!
その時、何かを引っ掛けた。
弾かれて、転がっていったのは、
丁寧に、丁寧に天使のイリが描かれたキャンバス。
羽の部分にためらったような筆跡が残り、少しぼやけていた…。
*
チューチューチュールルルチュ~ チュッパチュー♪
すごい下品な音がした。
15-1:真実のキス
「おぃ みっともねーだろー ちゃんとご飯食べに行こう。な?」
二人目のタカオミは、もう一人と混同するので、自分はオミーだと言っていた。
オミーは、タカが夢遊病の様に入ってしまった。
近くのコンビニに付き添い、冷や汗をかいていた。
冷ややかな客たちの視線。
タカは購入前のマヨネーズを袋から出し!
吸いまくりはじめていたのだ。
「あの~困るんですけどぉ…」
店員が二人、前後に立っていた。
「あ。だいじょーぶでーす。ちゃんとお金払いますから~
こいつすげぇーお腹空いてるだけでー
い、異常な… マヨラーなんです!
ほんとですよ! 話すと長いからやめますけど…
(そーだった。タカは、あの日以来…トホホ…)
おかしいーですよね~ハッハッハッ…
スンマセン スンマセン ハァ~…
じゃ、これでお願いします」
オミーは、店員Aにカードを渡そうとしたが、
店員Bがひったくる様に奪い、
「毎度アリー」っとカードを頭に掲げ、腰は低くレジに走った。
店員Aは納得して抱えていたモップを下げ、掃除しはじめた。
その時、雑誌を見ていた一人の女性客がオミの顔を見て驚き、
連れの女性に「この人! この人! そこに居る~」っと、雑誌を指し耳打ちした。
「わ! 噂の占い師。DPオミーだーー きゃーかっこいぃ~!」
他の女性客も一斉にサインを貰おうと、寄って来てしまった。
オミーは親友がマヨをチューチューしてる横で、罰が悪そうにサインをしてあげた…。
「プハーーー!」
タカはマヨを吸い切り、店員Aに空の容器を渡した。
さっきまでの死んだような顔とは違い、やっと正気を取り戻したように見えた…
「! オミ~?… なんで… ここ… に…」
が、再び全てのことがどーでも良くなり、芯を無くしグニャーっと折れ曲がっていった…。
「おぃ 今度はなんだ? 落ち込んでるんだな? 原因は? おーぃい」
支えたタカを揺すって起こそうとすると、
「コドモデキタナナノコ」
と、言った。
「え? ナナって」
焦点の定まらない目をし、タカオミはもう何も話さなくなった。
*
じぶんちなのに…ボロ雑巾のような二人は、
フローリングの床で正座させられていた。
その前を、定規を手にピシピシ叩き持つミサキが、行ったり来たりしていた。
「このサイトのことですの?」
カナが聞くと、
「うん。そこそこ」
ヤッスーは身を乗り出し指をさした。
「ゴラァーー はい! だろぉー カナ嬢になんて口聞く~
身を乗り出すな! 一ミリも! 動くなっけっ、汚らわしい!!」
ビシシシーッ!
定規が飛んだ。
15-2:真実のキス
「あぅーーーん ごめんなさいぃ~ん」
ヤッスーは叩かれ身悶えた。
「(うわ、こいつ今笑ってた~。
でも、恋する相手が自分の部屋にいるんだものなぁ~
何されても痛くなさげだ…
でも、なんで僕まで正座する必要が~
しかし、こいつら何を聞きに来たんだょー
僕には僕の行くべき道ががあるんだ!
こうしている場合じゃない~
僕は、メグミさまーんと早く結ばれたいんだ!! キャ~♪)
風祭さーん! ぼ、ぼぼぼ僕。
忙しいからかかかかか、帰ってもいいでしょうかーー」
ヨッシーは恐る恐るカナに聞いた。
ビシッ!
「ギャッ」
「なに? 帰る? そー言って俺らをたぶらかす気だな?!
その手には乗らん!
お前は二号だ! まだ、聞きたいことがあ~る! じっとしてろぉーー!」
痺れてきた足を叩かれたヨッシーは、動くことも出来ず。もがき苦しんだ。
「ミサキ! やめなさーぃ そーいうことするの~
で、結局 噂は本当ですの?」
「噂の震源地は確かにそこだと思うけどー?
ぼ、僕はーこんな、霊感商法まがいには
引っ掛かりたくないからー
そいつが行くみたいよ? ぁ!
ですですで、ございます。ございます~ ハァハァ~」
ヤッスーは両手を挙げひれ伏すと、ミサキはピクッっと眉を動かした。
「お前が行くのか?」
ヨッシーの顎にミサキは定規を当てた。
「ミサキ いい加減にしなさい!
あんたいると話しが進まないぃ~~!」
「うわー 俺はカナのボディーガードで来たんだぞぉー
カナにもしものことがあったらどーすんの!」
「どーにもなりませんって…
お二人がどーにかなっちゃうから~ 解放して上げなさいってば!」
「し、しかも、こいつ。これ見てくれよぉー
ほらほら!
こんないっぱい隠し撮りしてんだぜ!
いつだったか、無くなった!
消しゴムのカスで作った。お気に入りの芋虫も!
水玉のハンカチも!
カナに貰ったキラキラストラップもー!!
飲もうとしたのに消えた缶ジュース~!
きっと、こいつらのせいだー!
目にも止まらぬ速さで変態行為してるに違いない!
気持ち悪いよぉ~ 俺ばっか写ってるし!!」
ミサキは辺りにあった、自分の写真を束にして、
ヤッスーの頭を叩きながらばら撒いた。
『なに! そのどーでもい話。
君が物忘れ激しいの、皆知ってるよぉ…
上げたストラップうちにまだあるって、言ってるでしょー?
てか、なんで今、写真の話しになるの~?!』
ついに来たかと、カナは身構えた!
15-3:真実のキス
「てかさ、この写真誰が撮った?…」
ミサキは振りかざした定規を下ろしながら、一枚の写真を拾い上げた。
「それはこいつ!」
「コイツコイツー!」
互いを指し合う男子二人。
「ふむ。どっちでもいいけど。この写真いいな♪ すげぇ~良く撮れてる!
~我ながら美しい~♪」
ミサキはかた膝を付き、一枚、また一枚。写真を手に取り眺め始めた。
「良く見たら、綺麗な写真撮るじゃん! 変態のくせに才能ある? ほほぉー」
ミサキは照れ、定規で頭をかいた。
「でしょ! でしょ? さっきの気に入ってくれたやつ。すごっい苦労したんだ!
その時の戦利品がこれ!
ジャジャーン! ほら! まだ少し入ってる!」
ヤッスーは膝で歩き、机の引き出しから、
ラップに包んだ”缶ジュース”を宝物だと、ご本人に差し出していた…。
チャプン チャプ~ン チャポン
「あぁあああああ! ここここれは、ちちちち違います!
そんなことする訳ないじゃーないですっかー!
うわーーーーーーーー!
のぉおおおおおおおおおおおおおおおお---!」
信じられない墓穴を掘ったヤッスー。
『ばかーん』
ヨッシーは目を丸くした!
『ほんとだった~!!!』
カナはその後の展開に目をつぶった!
ところが!
数分経っても、何か起こる気配は無く、
カナは恐る恐る目を開けた。
「なぁ変態一号。お前なんで、俺のことばっか撮る?」
ミサキはヤッスーの胸ぐらを掴んでいた。
「アゥアゥアゥアゥ…」
殺されると思ったヤッスーは腰を抜かしていた。
「まさかお前! 俺のことが好き?…なのか? 恋してるのか…」
ミサキはヤッスーににじり寄った。
ミサキの真剣な眼差しに、ヤッスーはゴクリッ固い唾を飲んだ。
「なぁ 教えてくれ。一つでいい教えてくれ。
恋ってのは、絞められて落ちるときの感じに似てるって、
父親代わりだった。死んだ兄貴が言ってた…。
教えてくれ… そーなのか?
おしえろーーー!」
ミサキの掴んだ胸ぐらは、服で首。喉をグイグイ絞めつけていた!
ギュギュギューー ギギギュ
「うぐぅぐぐぐぐ…」
ミサキの手を振り解こうと、もがくヤッスー!
バシーッ! ババッバッシーン!!
「いいかげんにしなさーぃ!」
カナは血相を変え、ミサキの頭を定規で叩いた!
「イッテーー! だってぇ~ 聞くのが早いじゃーん」
そして、ヤスヒロは”落ちる”寸前に何かを見ていたらしく…
「オバーチャンマッテヨ~…」
と、呟きガクッと力を無くした…。
『人は誰でも恋の正体を知っている~♪
あっという間に恋をする~♪
相手がどこの誰でも~自分がどこの誰でも
どんな場所でも、恋に落ちるの~♪。
恋が実らず花を咲かせないことも知ってるけど~
それでも、また恋をするの~♪
そしてやがて~そして!』
「ミサキィイイイーーーー!!!
君はほんとになーんにも、分かって無い!」
カナは即興で詩を思い浮かべ、親友の未来を案じていた。
15-4:真実のキス
「ぁうぁうぁうううううあぅぅうぁあうぁう」
「うん。え? 不良のナナに夜這いされてててて!
男の操を奪われた…!
うぇ~ そりゃむごい…
むごすぎだなぁ~ そりゃ落ち込むなぁ…」
「あぅあぅ」
「ていうか、俺。アシカと話せる飼育員のおじさん?…」
「あぅーっ あぅあぅあうーん…」
「だよなー 男としては、お前の気持ちは痛いほど分かる。
でもな、あいつが狼少年なの知ってるだろう? 嘘臭いぞぉ~
俺は知り合いや友達、ましてお前の運命は占わないって決めてるから。
ばーちゃんに聞いてみるか?」
「あぅあぅあぅーーーぁあ当たり過ぎて怖いからやめろ!」
タカは思いっきり首を横に振った。
「ナナとっちめる?」
「…もし、ほんとだったら… そっちのが怖い…
俺は何も悪くないんだ! イリ~~~ イリに逢いたい… でも…」
タカはまた袋から、マヨネーズを取り出そうとしていた。
「おぃおぃ、もうやめろって! もう吸っちゃだめ…
ところでイリって?」
オミはついでだと、棚にあったマヨを全部買い込んでいて、
マヨだらけのレジ袋をタカから取り上げ、座ってるベンチのすみに押しやった。
ここはコンビに近くの公園で、寒空の中二人は話しこんでいた。
「俺の天使」
うつむいて顔を押さえたタカが小さな声で言った。
吐く息は白かった。
「そうか、天使が居るのに悪夢のナナが現れ。笛を吹いたって訳か…
細かいこと分からんけど、これはあいつのでっちあげだ絶対!
だから安心しろって。
俺もついさっき運命の子! に逢えちゃったんだよ~これが♪
あぁーこの子、この子。
名前はー教えてくれなかったけど…え?」
その子は、握りすぎてヨレヨレの紙片を突き出していた。
「赤ちゃん…」
「!」
タカオミは驚いて顔を上げた!
「赤ちゃん生まれる?…」
「! なんでそれを…」
「おねーさん嬉しそうだったょ…」
イリはタカオミに、ギュッと紙片を握らせた。
「きちんと言って。 お前じゃダメだって… アタシまだ子供だけど、だけど…」
「………」
タカオミはずっと混乱していて、何をどう言っていいか分からなかった…。
「…報告色々あったけど、もういいね…
さ よ う な…」
イリはかけ出した!
『イリ!』
立ち上がれなかった。
追えなかった。
風が吹いた。
翼から羽が抜け落ち、イリの背中から消えて無くなるように思え、
一枚の羽がタカの頬に触った。
そして、すぐに消えた。
それは、雪。
また振りはじめた雪…。
彼は、紙片を破り捨てた。
「おぃなにしてる! 追っかけろ天使がいっちまぅ!
いいのかよ!
追わなくていいのか?
次は俺が行くぞ?!
お前たちの最悪の状況に便乗する気は無い!
けどだ…ちょっと前から俺とおまえは、
運命のライバルになっちまったんだ~!」
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日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
田中天狼のシリアスな日常
朽縄咲良
青春
とある県の平凡な県立高校「東総倉高等学校」に通う、名前以外は平凡な少年が、個性的な人間たちに翻弄され、振り回され続ける学園コメディ!
彼は、ごくごく平凡な男子高校生である。…名前を除けば。
田中天狼と書いてタナカシリウス、それが彼の名前。
この奇妙な名前のせいで、今までの人生に余計な気苦労が耐えなかった彼は、せめて、高校生になったら、平凡で平和な日常を送りたいとするのだが、高校入学後の初動に失敗。
ぼっちとなってしまった彼に話しかけてきたのは、春夏秋冬水と名乗る、一人の少女だった。
そして彼らは、二年生の矢的杏途龍、そして撫子という変人……もとい、独特な先輩達に、珍しい名を持つ者たちが集まる「奇名部」という部活への起ち上げを誘われるのだった……。
・表紙画像は、紅蓮のたまり醤油様から頂きました!
・小説家になろうにて投稿したものと同じです。
不撓導舟の独善
縞田
青春
志操学園高等学校――生徒会。その生徒会は様々な役割を担っている。学校行事の運営、部活の手伝い、生徒の悩み相談まで、多岐にわたる。
現生徒会長の不撓導舟はあることに悩まされていた。
その悩みとは、生徒会役員が一向に増えないこと。
放課後の生徒会室で、頼まれた仕事をしている不撓のもとに、一人の女子生徒が現れる。
学校からの頼み事、生徒たちの悩み相談を解決していくラブコメです。
『なろう』にも掲載。
風船ガール 〜気球で目指す、宇宙の渚〜
嶌田あき
青春
高校生の澪は、天文部の唯一の部員。廃部が決まった矢先、亡き姉から暗号めいたメールを受け取る。その謎を解く中で、姉が6年前に飛ばした高高度気球が見つかった。卒業式に風船を飛ばすと、1番高く上がった生徒の願いが叶うというジンクスがあり、姉はその風船で何かを願ったらしい。
完璧な姉への憧れと、自分へのコンプレックスを抱える澪。澪が想いを寄せる羽合先生は、姉の恋人でもあったのだ。仲間との絆に支えられ、トラブルに立ち向かいながら、澪は前へ進む。父から知らされる姉の死因。澪は姉の叶えられなかった「宇宙の渚」に挑むことをついに決意した。
そして卒業式当日、亡き姉への想いを胸に『風船ガール』は、宇宙の渚を目指して気球を打ち上げたーー。
神様自学
天ノ谷 霙
青春
ここは霜月神社。そこの神様からとある役職を授かる夕音(ゆうね)。
それは恋心を感じることができる、不思議な力を使う役職だった。
自分の恋心を中心に様々な人の心の変化、思春期特有の感情が溢れていく。
果たして、神様の裏側にある悲しい過去とは。
人の恋心は、どうなるのだろうか。
Cutie Skip ★
月琴そう🌱*
青春
少年期の友情が破綻してしまった小学生も最後の年。瑞月と恵風はそれぞれに原因を察しながら、自分たちの元を離れた結日を呼び戻すことをしなかった。それまでの男、男、女の三人から男女一対一となり、思春期の繊細な障害を乗り越えて、ふたりは腹心の友という間柄になる。それは一方的に離れて行った結日を、再び振り向かせるほどだった。
自分が置き去りにした後悔を掘り起こし、結日は瑞月とよりを戻そうと企むが、想いが強いあまりそれは少し怪しげな方向へ。
高校生になり、瑞月は恵風に友情とは別の想いを打ち明けるが、それに対して慎重な恵風。学校生活での様々な出会いや出来事が、煮え切らない恵風の気付きとなり瑞月の想いが実る。
学校では瑞月と恵風の微笑ましい関係に嫉妬を膨らます、瑞月のクラスメイトの虹生と旺汰。虹生と旺汰は結日の想いを知り、”自分たちのやり方”で協力を図る。
どんな荒波が自分にぶち当たろうとも、瑞月はへこたれやしない。恵風のそばを離れない。離れてはいけないのだ。なぜなら恵風は人間以外をも恋に落とす強力なフェロモンの持ち主であると、自身が身を持って気付いてしまったからである。恵風の幸せ、そして自分のためにもその引力には誰も巻き込んではいけない。
一方、恵風の片割れである結日にも、得体の知れないものが備わっているようだ。瑞月との友情を二度と手放そうとしないその執念は、周りが翻弄するほどだ。一度は手放したがそれは幼い頃から育てもの。自分たちの友情を将来の義兄弟関係と位置付け遠慮を知らない。
こどもの頃の風景を練り込んだ、幼なじみの男女、同性の友情と恋愛の風景。
表紙:むにさん
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