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3章 魔法&剣術指導
27.兄貴でいたいんだ…
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ユーリがアスタルト邸に迎えられてから一ヶ月が経とうとしていた。
しかし未だにユーリの心は晴れなかった…。
両親というこの世でもっとも大事な存在を失った彼は、与えられた自身の部屋のベッドに倒れこみ、自分の境遇に失望し、ついには感情まで失いかけていた。
(父さん、母さん…俺こんなのもう耐えられない…父さん達を殺した養父と同じ家で過ごすなんて…)
未だにアスタルト家を新たな家族として受け入れる事はもはらユーリにとっては不可能に近かった。
そしてその悲しい姿をサイガとサティ、そしてサティに抱っこされていたリタが見ていた。
「おにーさま、あのひとはどうしたんですか?」
「サティ…今はそお~っとしてあげよう…ユーリは心に深い傷を持っているから…」
「ふかいきず?」
当時2歳であったサティにはサイガの言っている事はさっぱりであった。
そんなサイガとサティと正反対に、リタは…
「ばあ~!」
「あ!こらリタ、」
リタはまるでユーリと遊びたがっているかのように、彼を呼びかけその拍子に部屋の扉が開いた…。
扉の開閉音に気が付いたのか、ユーリは正気に戻った。
「なんだよお前ら…何か用か?」
「ご、ごめんそんなつもりじゃ…」
「う~!う~!」
「な、何だよ!!」
赤ん坊であるリタは、その無邪気さをユーリに見せていた。
まさに、「遊ぼ~!」と言っているかのようだった。
「もしかして、リタはユーリと遊びたいんじゃない?」
「はあ、ふざけんじゃねえよ!言っとくけどな!俺はお前の兄貴じゃねえ!遊ばねえからな!」
ユーリはリタにきつい言葉を放った。
しかし、そのきつい言葉によりリタは今にも泣きだしそうな表情になった。
「わ、わわわ!おい!泣くな!」
「リタを泣かせないでください!!」
サティは怒りを見せた。
妹を泣かされた事が相当逆鱗となったらしい。
らちが明かなくなりユーリは仕方なくリタの遊び相手となる。
最初は人形遊びをして、次はおもちゃで遊び、絵本も読んであげた。
「そして、王子様とお姫様は2人仲良く暮らしたのでした…めでたしめでたし…」
「きゃ~!」
リタは楽しかったからか、ものすごい嬉しそうな笑みを浮かべた。
その笑顔を見たユーリも少しだが、心がほっこりしたのだった。
それを見たサイガとサティは彼に言った。
「楽しいだろ?リタといると」
「え?」
「この子といると、私達も自然と明るい気分になってしまうのです!」
「・・・」
「きゃ!」
リタの笑顔にユーリは完全に癒されたのだった。
もう戻ってこない両親の事をいつまでも引きずっていた自分が情けなく感じた。
いくら泣いても両親は帰ってこない、改めてそう思ってユーリは心に決めた。
そう思ったユーリはある場所へ向かった。
それは、ガイアの所だった。
「どうした?ユーリ?」
「あの、壺…壊してごめんなさい…」
「?…どうしたいきなり?」
「俺が間違ってました…もう俺には父さん母さんはいない…でも、"今"の父さん母さんならいる」
「・・・!?」
「もう泣かない、今の家族を大事にしたいから…」
反省の色をガイアに見せて壺の件を謝罪したユーリ。
その態度にガイアも心を許し・・・
「いいんだユーリ、反省しているならお父さんも本望だ…もう二度とやるなよ」
「はい…」
一件落着!
まさにそうだった。
新たな家族とのわだかまりが消えたユーリ、そのきっかけを作ったのは…リタであった。
そう思ったユーリは、心からリタに感謝したのだった。
ーー時は戻って現在。
ティオに過去の話をしていたユーリ。
「こうして俺は、この家の人間として改めて迎えられたんだ」
「そうなんですか…」
「今でも思うんだ…この家にリタが居なかったら、俺は俺じゃなくなってたんじゃないかって…」
「…僕も、拾ってくれたのがお姉ちゃんだったから、一緒に居たいって思った…だから…」
互いにリタに対する想いを打ち明けた2人であった。
「だがな、リタは知らないんだ…俺が本当の兄貴じゃねえって…」
「え?」
「俺から父さんに頼んだんだ…『リタが物心ついても俺が養子だって事は黙っててほしい』って」
「どうして、ですか?」
「あいつだって、この家が好きなんだ…だから俺が本当の兄貴じゃねえって知ったらショックを受けると思う…俺はこれからも、"兄貴"でいたいんだ…だから、悪いけどティオ、お前も黙ってくれねえか?」
ユーリの真剣な思いによるお願い事を伝えられたティオ。
だが、ティオの決心は決まっていた。
「分かりました、今の話はお姉ちゃんには内緒にします」
「頼んだぜ!」
こうして2人は約束をした。
しかし未だにユーリの心は晴れなかった…。
両親というこの世でもっとも大事な存在を失った彼は、与えられた自身の部屋のベッドに倒れこみ、自分の境遇に失望し、ついには感情まで失いかけていた。
(父さん、母さん…俺こんなのもう耐えられない…父さん達を殺した養父と同じ家で過ごすなんて…)
未だにアスタルト家を新たな家族として受け入れる事はもはらユーリにとっては不可能に近かった。
そしてその悲しい姿をサイガとサティ、そしてサティに抱っこされていたリタが見ていた。
「おにーさま、あのひとはどうしたんですか?」
「サティ…今はそお~っとしてあげよう…ユーリは心に深い傷を持っているから…」
「ふかいきず?」
当時2歳であったサティにはサイガの言っている事はさっぱりであった。
そんなサイガとサティと正反対に、リタは…
「ばあ~!」
「あ!こらリタ、」
リタはまるでユーリと遊びたがっているかのように、彼を呼びかけその拍子に部屋の扉が開いた…。
扉の開閉音に気が付いたのか、ユーリは正気に戻った。
「なんだよお前ら…何か用か?」
「ご、ごめんそんなつもりじゃ…」
「う~!う~!」
「な、何だよ!!」
赤ん坊であるリタは、その無邪気さをユーリに見せていた。
まさに、「遊ぼ~!」と言っているかのようだった。
「もしかして、リタはユーリと遊びたいんじゃない?」
「はあ、ふざけんじゃねえよ!言っとくけどな!俺はお前の兄貴じゃねえ!遊ばねえからな!」
ユーリはリタにきつい言葉を放った。
しかし、そのきつい言葉によりリタは今にも泣きだしそうな表情になった。
「わ、わわわ!おい!泣くな!」
「リタを泣かせないでください!!」
サティは怒りを見せた。
妹を泣かされた事が相当逆鱗となったらしい。
らちが明かなくなりユーリは仕方なくリタの遊び相手となる。
最初は人形遊びをして、次はおもちゃで遊び、絵本も読んであげた。
「そして、王子様とお姫様は2人仲良く暮らしたのでした…めでたしめでたし…」
「きゃ~!」
リタは楽しかったからか、ものすごい嬉しそうな笑みを浮かべた。
その笑顔を見たユーリも少しだが、心がほっこりしたのだった。
それを見たサイガとサティは彼に言った。
「楽しいだろ?リタといると」
「え?」
「この子といると、私達も自然と明るい気分になってしまうのです!」
「・・・」
「きゃ!」
リタの笑顔にユーリは完全に癒されたのだった。
もう戻ってこない両親の事をいつまでも引きずっていた自分が情けなく感じた。
いくら泣いても両親は帰ってこない、改めてそう思ってユーリは心に決めた。
そう思ったユーリはある場所へ向かった。
それは、ガイアの所だった。
「どうした?ユーリ?」
「あの、壺…壊してごめんなさい…」
「?…どうしたいきなり?」
「俺が間違ってました…もう俺には父さん母さんはいない…でも、"今"の父さん母さんならいる」
「・・・!?」
「もう泣かない、今の家族を大事にしたいから…」
反省の色をガイアに見せて壺の件を謝罪したユーリ。
その態度にガイアも心を許し・・・
「いいんだユーリ、反省しているならお父さんも本望だ…もう二度とやるなよ」
「はい…」
一件落着!
まさにそうだった。
新たな家族とのわだかまりが消えたユーリ、そのきっかけを作ったのは…リタであった。
そう思ったユーリは、心からリタに感謝したのだった。
ーー時は戻って現在。
ティオに過去の話をしていたユーリ。
「こうして俺は、この家の人間として改めて迎えられたんだ」
「そうなんですか…」
「今でも思うんだ…この家にリタが居なかったら、俺は俺じゃなくなってたんじゃないかって…」
「…僕も、拾ってくれたのがお姉ちゃんだったから、一緒に居たいって思った…だから…」
互いにリタに対する想いを打ち明けた2人であった。
「だがな、リタは知らないんだ…俺が本当の兄貴じゃねえって…」
「え?」
「俺から父さんに頼んだんだ…『リタが物心ついても俺が養子だって事は黙っててほしい』って」
「どうして、ですか?」
「あいつだって、この家が好きなんだ…だから俺が本当の兄貴じゃねえって知ったらショックを受けると思う…俺はこれからも、"兄貴"でいたいんだ…だから、悪いけどティオ、お前も黙ってくれねえか?」
ユーリの真剣な思いによるお願い事を伝えられたティオ。
だが、ティオの決心は決まっていた。
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「頼んだぜ!」
こうして2人は約束をした。
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