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本編
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しおりを挟む目が覚めた時二人は居なくなっていた。
体は綺麗になっているし服も元通りになっている。
(どのくらい寝てたんだろう…)
外はすでに明るい。
突然目の前が真っ暗になったから、多分気を失ったんだろうと思う。
(気絶耐性付いてるって女神様言ってなかったっけ…?)
まだ頭がぼーっとしているし、畑にお水をあげなきゃと立ち上がろうとするがよろけてしまう。
そのままベッドに逆戻りした。
「ぅ」
下半身がとてもだるくて、筋肉痛になりそうな予感がする。
無理して立とうとすると、足がプルプル震えてしまって動けそうにない。
それとお腹も空いている。
(『元気』スキルがあってもまだ回復してないのかな?)
(水やりしないといけないんだけど…とりあえず何か食べようかな)
ボードを開き、『持ち物』から塩むすびと野菜ジュースを取り出す。
手を上げるのも億劫だ。
ピロリン♪
『メッセージが届きました』とバナーが降りてくる。
この世界に来てから二度目だ。
ご飯を食べてからにしようかなと思ったが、気になったのでタップして開く。
メッセージは一回目と同じように始まっていた。
『みのりちゃんへ♪
番の三人と無事結ばれて良かったですね~♡
なんで番が三人なのかは、ちゃあんと理由があるんですよ!
だから悩まないでね!
それに、三人と番の契約を結べたのは、みのりちゃんの実力があってこそ、ですからね~♡
これでエッチの可能性も無限大です~♡
あと、みのりちゃんのスキルの追加をしました♪
3Pは気持ち良すぎだったみたいですね♡
あのまま二人に付き合ってたら、一日中指の一本でも動かせなかったので、気絶耐性を(中)に変更しておきました♡
出会うべき時に出会うべき運命があるんでね~。
でも心配しないでっ、今後は3Pでも4Pでも朝までエッチでも、身の危険を感じないくらいなら耐えられるように、身体強化も追加しておきましたよ~♡いっぱい愛されてね♡』
ここまで読んだところで温かな風が体を包み込むような感覚がして、体の怠さが全て吹き飛んだ気がした。
だが理由が理由である。
(ありがとうございます、なのかな…?)
メッセージは続いている。
『羊さんの言っていた『召喚魔法』なんですが、みのりちゃんのとは少し違いますから、安心してくださいね♪
羊さんの召喚魔法について
①12時間の時間制限は無し、途中強制送還は出来る。
その代わり失敗時には成功時の半分の魔力消費が起こるようになる。
②異世界の物の召喚は無し、この世界にある物・人なら魔力消費量に併せて召喚できる。
しかし、自分の所有物もしくは、同意の下でなければ成立しない。
人一人を召喚する場合の消費量は、一般的な獣人のほぼ全ての魔力を消費する。
獣化できる獣人の召喚は、同じく獣化できる獣人しか召喚出来ない。
③国の結界を感知・阻害されずに通過する事は出来るが、今後、タイミングを見てその対策を講じる予定。
また、この召喚魔法を基にした文化の発展は容認します。
いずれは出来ていたからね♪
続けて、みのりちゃんの召喚魔法の変更点
①12時間の時間制限は無し、途中強制送還が出来るようになる。
今まで通り魔力消費は起こらないが、番しか召喚出来ない。
続けて召喚と同時召喚は今まで通りできないから、一人召喚した後は12時間待ってね。
これ以外に変更はないよ。
みのりちゃんの召喚魔法は、これを読んだ時点で適用されるよ。
焦って変更しちゃったから、問題があったらまた変更するかも?
あと、心配してたみたいだから伝えておきます。
妊娠はまだ出来ません。
ちゃんと伝えておけば良かったんだけど、私は最初からみのりちゃんの体をそうするつもりだったから、伝え忘れてました。
ごめんね。
みのりちゃんに尻尾が生えたら妊娠出来るようになるから、安心してね♡』
「妊娠、しないんだ」
月のものが来てなくても、なし崩し的に中に出されてたから心配してた。
まだ心の準備が出来てないし、想像も出来ない。
でももしも妊娠していたら、例え自分一人だとしても全力で育てる、自分の親のようには絶対にならないと心に誓う。
今はまだそれだけしか考えられない事が、出来ていたかもしれない自分の子どもに申し訳なく思う。
流されて中出しされてたなんて、覚悟が足りなかった。
尻尾が生えるのがいつかは分からないけど。
(それまでにちゃんと生活の基盤を作らないと)
シアンさんやビオさん達が子どもを認識しないとは思わないけど、一人でも育てられるように、子どもが辛い思いをしないように。
「決めた」
(街を探そう)
ナビマップで探せば多分見つかる。
(シアンさんやビオさんは、この世界のどこかの国から来たんだから)
この洞窟から通える所ならばここを拠点に作った野菜を売ったり、前世の知識を活かして商売とかも出来るかもしれない。
そう決意した。
早速動き出したいが、メッセージには続きがある。
『それとね、聞いてみのりちゃん!!
召喚魔法の発明はまだまだ先の時代だったのに、何で羊さんが使えるのか、みのりちゃんとボイスチャットしたいくらい!!
羊さんの弟がね!召喚魔法を研究し尽くしちゃうくらいヤバいヤツだったの~(怒)
召喚魔法の制限を全部取っ払っちゃう所だったんだよ!?
神の文言で作ってあって、解読できないはずなのに……
流石に神の領域に突っ込んじゃうから、妨害が大変だったの(泣)
なんとか羊さんの召喚魔法に制限付けられたけど、
その弟にはもうやらないでって無意識下でアプローチしたら、
今度はこっちにハッキングかけてきて、『声可愛い、会ってみたいな』とか言ってきて~…
ぅ、思い出しただけで鳥肌立ちました~(泣)
出会い系ボイスチャットじゃないですよぉ…
査問会にも呼ばれちゃいましたし…
だ・か・ら♡ご褒美にいっぱい(愛あるエッチ)お願いしますね♡
女神より』
「やっぱり査問会に呼ばれたんですね」
(いつか呼ばれるんじゃないかと思ってたけど)
普通は、こんなに神様が介入してくるなんて事は無いだろうから、納得してしまう。
「怒られるだけだったら良いけど…」
(この世界を失くす話とかになったらやだなぁ)
とても心配になった。
そして、召喚魔法がこの世界でいつの間にかそんな事態になっていたとは。
(解読できない神の文言を解読しちゃうって…)
ビオと多分彼の弟は、余程頭が良いのだなと感心する。
よく分からないけど、弟の方は逆に女神様をハッキングしちゃって口説くとか、ちょっと変な人なのだろう。
でも、女神様がきちんと召喚魔法の件に対応してくれて良かったと安心した。
出会い系ボイスチャットも知ってるなんて、女神様はどれだけ前の世界を見ていたのだろう。
(やっぱり神様は何でも知ってるんだなぁ、弟さんは言ってる事が危ない人みたいだけど、女神様なら大丈夫だよね)
のほほんと考えた。
女神様が授けてくれたスキルのおかげで体が軽くなったので、ご飯を食べた後、まずはやらなければいけない畑の水やりに外に出る。
すると既に水やりが終わっていた。
(もしかしたらシアンさんがやってくれたのかな)
気を遣ってくれたのだろう、胸の中が温かくなる。
出来ることならこのまま、穏やかな日常の中で、愛する人、未来に愛する人達と幸せな生活を送れると良いな、と願った。
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