34 / 50
第二章 『過去の試練』
第34話 〜馬鹿な奴ら〜
しおりを挟む
現在、俺の目の前には体の半分を失ったワイバーンが見るも無惨な形で横たわっている。
隣では、イヴが満足げな表情で手をパンパンと払っていた。
結果だけを言えば、イヴとワイバーンの対決は10秒もかからず、イヴの圧勝で終わった。
イヴがワイバーンの突進を躱してすぐ、体の半分を魔法で吹き飛ばしたのだ。
「なあイヴ、何の魔法を使ったんだ?」
「ただの風属性の中級風魔法よ」
中級の魔法であの威力……化け物だな。
「また何か失礼なこと考えていたでしょ?」
イヴがジト目をして俺を見つめる。
「いや、そんなことないぞ。それより、俺もやるべきことをやらないとな」
イヴの言葉に誤魔化しつつ返答し、ワイバーンの前に立つ。
そして……
「”奪取”」
固有スキルを発動させた。
~~~~~~
奪ったスキル:”金剛”(魔力を常に身体中に流すことで、体の強度を上げることができる。また、集中して特定の箇所に魔力を流せば、その部分をより強固にすることができる)
~~~~~~
黒いオーラが俺の体の中に入ってくる。
「ライムもこれで私の実力がある程度は分かったかしら?」
頭の中に流れてきた情報が消えると同じタイミングでイヴが話しかけてきた。
「ああ。イヴの魔法の腕は控えめに言って天才だな」
俺の奥義と同じ威力の魔法を放つことができ、AA級の魔物ごときなら、中級魔法で討伐することができる。
イヴは紛れもない魔法の天才と言えるだろう。
「そうでしょ!よかったわ。ライムにやられっぱなしでいいところがなかったもの」
「そんなことはないと……」
『そんなことはないと思うぞ』と言いかけて、俺は口をつぐんだ。
イヴが俺を見つめ、無言の圧力をかけていたからだ。
「じゃあ、ギルドに戻るか」
「ええ」
そして、俺たちは狐女に依頼達成を報告するために、冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドに入り、まず受付嬢の元へ向かった。
無許可でギルド長室に入ることはできないからな。
「ギルド長に会いたいのだが」
受付嬢に声をかける。
「ライム様ですね。ギルド長から部屋へ通せと伺っております。こちらへどうぞ」
受付嬢は顔色ひとつ変えずに、俺たちを案内した。
どうやら、俺たちがすぐに戻ってくることは予測済みだったみたいだ。
相変わらず食えない女だな。
扉を開けて中に入ると、中からすぐに声がかかった。
「お疲れ様。貴方達なら、すぐにやり遂げてくれると思っていたわよ」
「そうか。じゃあ、早く報酬をくれ。すぐにこの街を出ていきたい」
「まるでこの街が嫌いみたいな、悲しいことを言うのね」
「ほとんどの原因はお前だけどな」
「そうね!」
ラピスは嬉しそうに笑いながら、俺に報酬である金貨10枚を渡す。
「じゃあ、俺たちはもう行く」
報酬をもらった以上、ここに用はなかった。
「ライム、イヴ」
ギルド長室のドアに手をかけた時、また背中に声がかかった。
「街を出る時には気をつけなさいよ。まあ、貴方達なら大丈夫だと思うけどね」
「分かった」
返事をしてから、ギルド長室を出る。
「どういうことなのかしら?」
「さあな。まあ、街を出るときには分かるだろう」
「これから、火山へ向かうのね?」
「ああ。あの女のせいで少し予定が遅れたからな」
「分かったわ」
今後の予定を話しながら、街の門を出ようとしたその時、俺の”気配感知”に7人の人間の気配が反応した。
どうやら、7人とも俺たちには明確な敵意を持っているようだ。
【狼王の紋】の影響なのか、”気配感知”の能力も”鑑定”と同様に向上しており、敵意の有無も判別できるようになっていた。
「イヴ、近くで、7人の人間が俺たちに敵意を抱いている」
短くイヴに声をかける。
イヴは少し驚いた後、頷いた。
「気づいていないふりをして、誘き出しましょう」
「そうだな」
敵意を持った人間を釣るために、俺たちはそのまま目的地である火山に向かうことにした。
それからしばらく歩き、何もない荒野に出た。
その時、後ろから俺たちに声がかかった。
どうやら、上手く釣れたみたいだ。
「なあ、冒険者ギルドではよくもやってくれたな」
振り返って顔を確認すると、そこには冒険者ギルドで気絶させたはずの馬鹿3人と見知らぬ顔の4人の男がいた。
「お返しにと言っては何だが、その女をよこさないか?」
「今度は俺たちより強い冒険者もいるんだぜ」
3馬鹿はもちろん、他の4人の冒険者も自分の勝利を過信しているのか、ニタニタと笑っている。
またか、本当に馬鹿な奴らだ。
隣をチラッと見ると、イヴの目が完全に据わっていた。
これは……アイツらがヤバいな。
「中級土魔法”砂塵”」
イヴが隣で魔法を唱えている。
すると次の瞬間、辺り一帯が巨大な砂嵐に包まれ、7人の男達が砂嵐に飲み込まれて、消えていった。
よほど、運が良くないと生き残れないだろう。
「ライム、行きましょう」
イヴが何事なかったかのように俺に声をかけた。
「ああ」
こうして、俺たちは馬鹿も撃退し、次の目的である火山に向かった。
隣では、イヴが満足げな表情で手をパンパンと払っていた。
結果だけを言えば、イヴとワイバーンの対決は10秒もかからず、イヴの圧勝で終わった。
イヴがワイバーンの突進を躱してすぐ、体の半分を魔法で吹き飛ばしたのだ。
「なあイヴ、何の魔法を使ったんだ?」
「ただの風属性の中級風魔法よ」
中級の魔法であの威力……化け物だな。
「また何か失礼なこと考えていたでしょ?」
イヴがジト目をして俺を見つめる。
「いや、そんなことないぞ。それより、俺もやるべきことをやらないとな」
イヴの言葉に誤魔化しつつ返答し、ワイバーンの前に立つ。
そして……
「”奪取”」
固有スキルを発動させた。
~~~~~~
奪ったスキル:”金剛”(魔力を常に身体中に流すことで、体の強度を上げることができる。また、集中して特定の箇所に魔力を流せば、その部分をより強固にすることができる)
~~~~~~
黒いオーラが俺の体の中に入ってくる。
「ライムもこれで私の実力がある程度は分かったかしら?」
頭の中に流れてきた情報が消えると同じタイミングでイヴが話しかけてきた。
「ああ。イヴの魔法の腕は控えめに言って天才だな」
俺の奥義と同じ威力の魔法を放つことができ、AA級の魔物ごときなら、中級魔法で討伐することができる。
イヴは紛れもない魔法の天才と言えるだろう。
「そうでしょ!よかったわ。ライムにやられっぱなしでいいところがなかったもの」
「そんなことはないと……」
『そんなことはないと思うぞ』と言いかけて、俺は口をつぐんだ。
イヴが俺を見つめ、無言の圧力をかけていたからだ。
「じゃあ、ギルドに戻るか」
「ええ」
そして、俺たちは狐女に依頼達成を報告するために、冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドに入り、まず受付嬢の元へ向かった。
無許可でギルド長室に入ることはできないからな。
「ギルド長に会いたいのだが」
受付嬢に声をかける。
「ライム様ですね。ギルド長から部屋へ通せと伺っております。こちらへどうぞ」
受付嬢は顔色ひとつ変えずに、俺たちを案内した。
どうやら、俺たちがすぐに戻ってくることは予測済みだったみたいだ。
相変わらず食えない女だな。
扉を開けて中に入ると、中からすぐに声がかかった。
「お疲れ様。貴方達なら、すぐにやり遂げてくれると思っていたわよ」
「そうか。じゃあ、早く報酬をくれ。すぐにこの街を出ていきたい」
「まるでこの街が嫌いみたいな、悲しいことを言うのね」
「ほとんどの原因はお前だけどな」
「そうね!」
ラピスは嬉しそうに笑いながら、俺に報酬である金貨10枚を渡す。
「じゃあ、俺たちはもう行く」
報酬をもらった以上、ここに用はなかった。
「ライム、イヴ」
ギルド長室のドアに手をかけた時、また背中に声がかかった。
「街を出る時には気をつけなさいよ。まあ、貴方達なら大丈夫だと思うけどね」
「分かった」
返事をしてから、ギルド長室を出る。
「どういうことなのかしら?」
「さあな。まあ、街を出るときには分かるだろう」
「これから、火山へ向かうのね?」
「ああ。あの女のせいで少し予定が遅れたからな」
「分かったわ」
今後の予定を話しながら、街の門を出ようとしたその時、俺の”気配感知”に7人の人間の気配が反応した。
どうやら、7人とも俺たちには明確な敵意を持っているようだ。
【狼王の紋】の影響なのか、”気配感知”の能力も”鑑定”と同様に向上しており、敵意の有無も判別できるようになっていた。
「イヴ、近くで、7人の人間が俺たちに敵意を抱いている」
短くイヴに声をかける。
イヴは少し驚いた後、頷いた。
「気づいていないふりをして、誘き出しましょう」
「そうだな」
敵意を持った人間を釣るために、俺たちはそのまま目的地である火山に向かうことにした。
それからしばらく歩き、何もない荒野に出た。
その時、後ろから俺たちに声がかかった。
どうやら、上手く釣れたみたいだ。
「なあ、冒険者ギルドではよくもやってくれたな」
振り返って顔を確認すると、そこには冒険者ギルドで気絶させたはずの馬鹿3人と見知らぬ顔の4人の男がいた。
「お返しにと言っては何だが、その女をよこさないか?」
「今度は俺たちより強い冒険者もいるんだぜ」
3馬鹿はもちろん、他の4人の冒険者も自分の勝利を過信しているのか、ニタニタと笑っている。
またか、本当に馬鹿な奴らだ。
隣をチラッと見ると、イヴの目が完全に据わっていた。
これは……アイツらがヤバいな。
「中級土魔法”砂塵”」
イヴが隣で魔法を唱えている。
すると次の瞬間、辺り一帯が巨大な砂嵐に包まれ、7人の男達が砂嵐に飲み込まれて、消えていった。
よほど、運が良くないと生き残れないだろう。
「ライム、行きましょう」
イヴが何事なかったかのように俺に声をかけた。
「ああ」
こうして、俺たちは馬鹿も撃退し、次の目的である火山に向かった。
0
お気に入りに追加
539
あなたにおすすめの小説
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~
WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
1~8巻好評発売中です!
※2022年7月12日に本編は完結しました。
◇ ◇ ◇
ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。
ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。
晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。
しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。
胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。
そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──
ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?
前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました
夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」
命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。
本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。
元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。
その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。
しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。
といった序盤ストーリーとなっております。
追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。
5月30日までは毎日2回更新を予定しています。
それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。
udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。
他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。
その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。
教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。
まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。
シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。
★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ)
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第二章シャーカ王国編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる