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第一章 裏切りと『力の試練』
第15話 〜過去6:決着〜
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走るライムに黒い雷がいくつも飛んでくる。
だが、ライムは走るのをやめようとしなかった。
(ライムくん、あいつはまだ覚醒したばっかりで、万全の状態じゃない。今なら、倒せるかもしれないよ)
(ああ、分かってる。だから、僕は大精霊達を信じる)
ライムに向かった黒い雷がぶつかる前に黒い闇と氷の壁によって防がれる。
『闇精霊魔法”喰らう黒空間”』
『氷精霊魔法”アイスウォール”』
闇の大精霊ミュータントと氷の大精霊コアだ。二人がライムの前方に防御魔法を発動させたのだ。
ライムはそれを気にした様子もなく走り続ける。
そんなライムの走る速度がどんどん上がっていった。
『光精霊魔法”光烈迅速”』
『風精霊魔法”送運の風”』
光の大精霊ライラと風の大精霊シルフがバフの精霊魔法を使ったのだ。
音や光、あるいは空間や次元までも置き去りにした速度で走るライムの視界は周囲の景色をスロモーションのようにうつしていく。
常人なら、視界に入ってくる情報量の多さで脳が焼き切れたことだろう。
しかし、ライムはそうならなかった。
『水精霊魔法”流れゆく水”』
水の大精霊ウンディーネが精霊魔法を使い、ライムの頭に入ってくる情報を水のように、必要なもの以外流していたからだ。
そして、ライムは『精霊獣』の前にたどり着いた。
『精霊獣』と対峙する。
だが、ライムはすぐに攻撃を放たなかった。
正確には、『精霊獣』が動き回るせいで放てなかったのだ。
『ライムさん、私は貴方を信じるっす。あとは任せましたよ。……土精霊魔法”ロックバインド”』
ソルムがライムの心を読んだかのようなタイミングで『精霊獣』を精霊魔法で拘束した。
少しでも動きを止めるだけでよかったので、ソルムの威力の少ない魔法でも時間稼ぎは十分だった。
(サラ、いくぞ!)
(ライムくん、あとは任せるよ!)
サラマンダーはライムに力の全てを委ね、ライムが全力で精霊魔法を放てるようにした。
ライムの右手に赤いオーラが集まる。
「炎精霊魔法奥義”炎拳”」
そして、ライムはその右手を『精霊獣』へ突き出した。
突如、精霊界全土に爆発音が轟く。
地面が振動し、その揺れが空気まで伝わり空間全体が震える。
視界が煙で埋め尽くされる。
やがて、煙が晴れるとそこには腹の部分に大きな穴の空いた『精霊獣』の姿があった。
だが、『精霊獣』はまだ倒れずに立っている。
『嘘!?あれでも無理なんっすか?』
ソルムがその様子を見て声を絞り出す。
ライムが恐る恐る動かない『精霊獣』に触れると、それはサラサラな粉となって飛んでいってしまった。
ライムの右手は確かに『精霊獣』を打ち倒したのだ。
その場にいる誰もが唖然として佇む。
そんな中、真っ先に声を上げたのはソルムとウンディーネだった。
『へっ?もしかして、倒したんっすか?』
『やったのですか?』
ソルムとウンディーネが『精霊獣』の安否を確認するためにライムの元へ近づく。
次の瞬間、ライムから眩いほどの光が放たれ、ライムの体から赤いオーラが分離していった。
そしてしばらくすると、そこには元の姿に戻ったライムとサラマンダーがいた。
『サラ……』
『サラさん……』
ウンディーネとソルムがサラマンダーの名前を呼び、懐かしむように抱擁する。
『もう会えないかと思っていました。サラが下界に行ってしまった時、私怖かったんです。もう、サラが戻ってこないんじゃないかと……本当によかった』
ウンディーネは涙を流しながら、サラマンダーの胸に顔を埋める。
サラマンダーはそんなウンディーネの頭を優しく抱きしめかえす。
そして他の大精霊に向き直り謝罪した。
『ごめん。ボクみんなに心配かけちゃった』
ソルムは涙を服の袖で拭いながら言う。
『本当っすよ。いや、私はサラさんなら大丈夫だと思っていましたけど』
ミュータントはソルムの様子を見て微笑みながら、サラマンダーに語りかける。
『そんなこと言いながら……サラのこと……一番心配していたのは……ソルム……』
『ちょ、ちょっと、ミューさん、それは言わない約束っすよ』
『……くすっ……ごめん……』
『それにしてもサラさん無事で本当によかったのですよ!』
シルフがサラマンダーに抱きつく。
『……、……、……』
コアもサラマンダーの手を握り、にっこりと笑顔になっている。
『サラ、本当によかったです。……zzz』
ライラはサラマンダーの無事を確認するとすぐに眠ってしまった。
サラマンダーはみんなに向き合う。
『みんな、ただいま!』
『『『『『おかえり!』』』』』
だが、ライムは走るのをやめようとしなかった。
(ライムくん、あいつはまだ覚醒したばっかりで、万全の状態じゃない。今なら、倒せるかもしれないよ)
(ああ、分かってる。だから、僕は大精霊達を信じる)
ライムに向かった黒い雷がぶつかる前に黒い闇と氷の壁によって防がれる。
『闇精霊魔法”喰らう黒空間”』
『氷精霊魔法”アイスウォール”』
闇の大精霊ミュータントと氷の大精霊コアだ。二人がライムの前方に防御魔法を発動させたのだ。
ライムはそれを気にした様子もなく走り続ける。
そんなライムの走る速度がどんどん上がっていった。
『光精霊魔法”光烈迅速”』
『風精霊魔法”送運の風”』
光の大精霊ライラと風の大精霊シルフがバフの精霊魔法を使ったのだ。
音や光、あるいは空間や次元までも置き去りにした速度で走るライムの視界は周囲の景色をスロモーションのようにうつしていく。
常人なら、視界に入ってくる情報量の多さで脳が焼き切れたことだろう。
しかし、ライムはそうならなかった。
『水精霊魔法”流れゆく水”』
水の大精霊ウンディーネが精霊魔法を使い、ライムの頭に入ってくる情報を水のように、必要なもの以外流していたからだ。
そして、ライムは『精霊獣』の前にたどり着いた。
『精霊獣』と対峙する。
だが、ライムはすぐに攻撃を放たなかった。
正確には、『精霊獣』が動き回るせいで放てなかったのだ。
『ライムさん、私は貴方を信じるっす。あとは任せましたよ。……土精霊魔法”ロックバインド”』
ソルムがライムの心を読んだかのようなタイミングで『精霊獣』を精霊魔法で拘束した。
少しでも動きを止めるだけでよかったので、ソルムの威力の少ない魔法でも時間稼ぎは十分だった。
(サラ、いくぞ!)
(ライムくん、あとは任せるよ!)
サラマンダーはライムに力の全てを委ね、ライムが全力で精霊魔法を放てるようにした。
ライムの右手に赤いオーラが集まる。
「炎精霊魔法奥義”炎拳”」
そして、ライムはその右手を『精霊獣』へ突き出した。
突如、精霊界全土に爆発音が轟く。
地面が振動し、その揺れが空気まで伝わり空間全体が震える。
視界が煙で埋め尽くされる。
やがて、煙が晴れるとそこには腹の部分に大きな穴の空いた『精霊獣』の姿があった。
だが、『精霊獣』はまだ倒れずに立っている。
『嘘!?あれでも無理なんっすか?』
ソルムがその様子を見て声を絞り出す。
ライムが恐る恐る動かない『精霊獣』に触れると、それはサラサラな粉となって飛んでいってしまった。
ライムの右手は確かに『精霊獣』を打ち倒したのだ。
その場にいる誰もが唖然として佇む。
そんな中、真っ先に声を上げたのはソルムとウンディーネだった。
『へっ?もしかして、倒したんっすか?』
『やったのですか?』
ソルムとウンディーネが『精霊獣』の安否を確認するためにライムの元へ近づく。
次の瞬間、ライムから眩いほどの光が放たれ、ライムの体から赤いオーラが分離していった。
そしてしばらくすると、そこには元の姿に戻ったライムとサラマンダーがいた。
『サラ……』
『サラさん……』
ウンディーネとソルムがサラマンダーの名前を呼び、懐かしむように抱擁する。
『もう会えないかと思っていました。サラが下界に行ってしまった時、私怖かったんです。もう、サラが戻ってこないんじゃないかと……本当によかった』
ウンディーネは涙を流しながら、サラマンダーの胸に顔を埋める。
サラマンダーはそんなウンディーネの頭を優しく抱きしめかえす。
そして他の大精霊に向き直り謝罪した。
『ごめん。ボクみんなに心配かけちゃった』
ソルムは涙を服の袖で拭いながら言う。
『本当っすよ。いや、私はサラさんなら大丈夫だと思っていましたけど』
ミュータントはソルムの様子を見て微笑みながら、サラマンダーに語りかける。
『そんなこと言いながら……サラのこと……一番心配していたのは……ソルム……』
『ちょ、ちょっと、ミューさん、それは言わない約束っすよ』
『……くすっ……ごめん……』
『それにしてもサラさん無事で本当によかったのですよ!』
シルフがサラマンダーに抱きつく。
『……、……、……』
コアもサラマンダーの手を握り、にっこりと笑顔になっている。
『サラ、本当によかったです。……zzz』
ライラはサラマンダーの無事を確認するとすぐに眠ってしまった。
サラマンダーはみんなに向き合う。
『みんな、ただいま!』
『『『『『おかえり!』』』』』
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