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師弟編
第11話 初めての回復薬作り。
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そのような話をしている間にいつの間にか太陽が高く昇っていた。
恐らく元の世界でいうと2時ぐらいなのだろうか。
俺はティアドラに連れられて家の裏庭に来ていた。
そこら一帯は耕されており、見たこともない植物が規則正しく並んでいる。
彼女が作った家庭菜園であろうか。
「今から何するんだ?……野菜の収穫?」
そういうとティアドラはあきれた顔になる。
「はぁ……。お主、ワシが何を生業としておるのか聞いておらんのか?これは薬草。これからお主に薬師としての教育をしていくのじゃ」
あ、なるほど。
そういえばティアドラは薬師でしたね。
「薬っていうと……体力とか魔力の回復に使うのか?」
俺は青色のアロエのような植物を眺める。
あんなのが薬になるのか?
「フフフフフ……。そんなものは初歩の初歩じゃ!他にも攻撃や素早さといったステータスの向上を補助することがあったり、各属性耐性の向上、武器に属性を付与するもの、水中呼吸を可能とするもの、透明化になったりするもの、衝撃により空気中の魔素と反応して煙を発するもの……薬の力は無限大じゃ!!お主にも薬師の面白さを伝授してやろうぞ!!!」
急に饒舌になったね。
よっぽど薬師が楽しいんだね。
「あ、じゃあ教えていただけますか?その、お手柔らかに」
ティアドラはご機嫌だ。
「ハハハハハ。よいぞ!まずはこの列の薬草を採取するのじゃ!!!」
彼女は両手を天に突き上げ俺に命令する。
気分は魔王……なのだろうか。
俺は言われるがままに薬草を採取していく。
「こら!薬草を扱うときは優しく、丁寧に!もっとこう……女性をエスコートするように……あぁ!もう!貸せ!ワシがやる!!」
一つ分かったこと。
ティアドラは薬草にうるさい。
採取が終わった後、俺達は家の中に入り、薬作りを始める。
机の上には乳鉢、薬研、小さ目の鍋、ナイフ、お玉、小さなビンが5個程ある。薬を作るのに使用するのだろうか。
机の脇にある籠の中には俺達が採取した薬草の他に何故かジャガリンが何個かある。
「さて、それでは早速始めようかの」
そういいながらティアドラはジャガリンを一つ手に取る。
「まずはこれを刻み絞る」
ナイフを手にすると慣れた手つきでジャガリンを細切れにしていく。
……何故ジャガリン?
それらを布にくるむと捻り上げ絞った汁をビンの中に入れる。
「同様にこの青ツユクサもじゃ」
今度は青い葉の広い草の束を掴み、同様に刻んでいく。
「お主は台所に沸かしている湯を取ってきておくれ」
俺は湯を先ほどの小さな鍋に注ぐ。
「そしたらこの青ツユクサの汁を湯の中に入れる」
湯の中に汁を入れると液の色が深い青色へと変化していく。
「このままではこれはただの青ツユクサ汁、じゃな。そこで登場するのがこれじゃ」
ティアドラはジャガリン汁の入った瓶を手に取る。
「お主はこの実をジャガリン等とふざけた名前を付けておったが、本来の名は『キダンの実』と呼ぶ。効果は……まぁ見たほうが早いじゃろ」
ジャガリン汁を青ツユクサの入った液に入れる。すると
「色が緑と青色に……」
液の色の上部が緑色、下部が青色に分離する。
「そう、キダンの実の効果は他の物質の効果を『分離』すること。ちなみに青ツユクサの効果は上澄みの緑色が『体力回復』、沈殿している青色が『魔力回復』じゃ。基本的にワシら薬師が扱う材料というのは複数の効果を有しておる。しかしながらその材料そのものを口にしたところで効果は得られん。得るためにはこの『分離』という工程が必要なのじゃ。薬師としての基本じゃからよく覚えておくといい」
そういいながら彼女はお玉を手にし、上澄み部分をすくい、ビンの中へ入れていく。
キダンの実って薬師においては超重要なものだったのか。
そう思うとたらふく食ったことが申し訳なくなる。
「分離面は緑、青が混じっておるから捨てる。混じり部は効果がなくなるからな」
ある程度緑部をすくうと混じり部がなくなるまで液を捨てていく。
「混じり部をなくせばひとまず終了じゃな。緑色の液が『回復薬』。青色の液が『魔力薬』じゃ。それぞれ体力を回復させる効果、魔力を回復させる効果がある。一種の材料から回復薬と魔力薬が作れるのはこの青ツユクサだけじゃ。なかなかにレアな植物なのじゃよ?」
レアな植物……か。そんな植物を沢山栽培している俺の師匠って何者なんだろう。
「これらは魔力の濃度が高いため効果が『原液』と呼ばれる、よく店なんかに売っているのはこれらを薄めたものじゃな」
ティアドラは回復薬の原液を少量取り、他のビンへ移す。
その中に台所から追加で持ってきた湯を入れていく。すると液の色が濃い緑色から段々と薄くなっていく。
「このぐらいが一般的じゃな。これで市販されておる回復薬の完成じゃ。よし、次はお主がやってみろ」
俺は彼女がやっていたことを頭に思い浮かべながら同じ作業をやってみる。
「あぁ違う違う!そんな大きいと絞り汁が十分に取れんじゃろう!」
「何故キダンの実を先に入れる!何を見ておったんじゃ!!」
「まだ上澄みが残っておるじゃろう!貴重なものなのじゃからギリギリを狙え!ギリギリを……ってあぁ……なぜ混ざり部まで回復薬に混ぜてしまうのじゃ……あぁ」
こうして俺達は日が沈むまで回復薬、魔力薬作りに没頭するのであった。
恐らく元の世界でいうと2時ぐらいなのだろうか。
俺はティアドラに連れられて家の裏庭に来ていた。
そこら一帯は耕されており、見たこともない植物が規則正しく並んでいる。
彼女が作った家庭菜園であろうか。
「今から何するんだ?……野菜の収穫?」
そういうとティアドラはあきれた顔になる。
「はぁ……。お主、ワシが何を生業としておるのか聞いておらんのか?これは薬草。これからお主に薬師としての教育をしていくのじゃ」
あ、なるほど。
そういえばティアドラは薬師でしたね。
「薬っていうと……体力とか魔力の回復に使うのか?」
俺は青色のアロエのような植物を眺める。
あんなのが薬になるのか?
「フフフフフ……。そんなものは初歩の初歩じゃ!他にも攻撃や素早さといったステータスの向上を補助することがあったり、各属性耐性の向上、武器に属性を付与するもの、水中呼吸を可能とするもの、透明化になったりするもの、衝撃により空気中の魔素と反応して煙を発するもの……薬の力は無限大じゃ!!お主にも薬師の面白さを伝授してやろうぞ!!!」
急に饒舌になったね。
よっぽど薬師が楽しいんだね。
「あ、じゃあ教えていただけますか?その、お手柔らかに」
ティアドラはご機嫌だ。
「ハハハハハ。よいぞ!まずはこの列の薬草を採取するのじゃ!!!」
彼女は両手を天に突き上げ俺に命令する。
気分は魔王……なのだろうか。
俺は言われるがままに薬草を採取していく。
「こら!薬草を扱うときは優しく、丁寧に!もっとこう……女性をエスコートするように……あぁ!もう!貸せ!ワシがやる!!」
一つ分かったこと。
ティアドラは薬草にうるさい。
採取が終わった後、俺達は家の中に入り、薬作りを始める。
机の上には乳鉢、薬研、小さ目の鍋、ナイフ、お玉、小さなビンが5個程ある。薬を作るのに使用するのだろうか。
机の脇にある籠の中には俺達が採取した薬草の他に何故かジャガリンが何個かある。
「さて、それでは早速始めようかの」
そういいながらティアドラはジャガリンを一つ手に取る。
「まずはこれを刻み絞る」
ナイフを手にすると慣れた手つきでジャガリンを細切れにしていく。
……何故ジャガリン?
それらを布にくるむと捻り上げ絞った汁をビンの中に入れる。
「同様にこの青ツユクサもじゃ」
今度は青い葉の広い草の束を掴み、同様に刻んでいく。
「お主は台所に沸かしている湯を取ってきておくれ」
俺は湯を先ほどの小さな鍋に注ぐ。
「そしたらこの青ツユクサの汁を湯の中に入れる」
湯の中に汁を入れると液の色が深い青色へと変化していく。
「このままではこれはただの青ツユクサ汁、じゃな。そこで登場するのがこれじゃ」
ティアドラはジャガリン汁の入った瓶を手に取る。
「お主はこの実をジャガリン等とふざけた名前を付けておったが、本来の名は『キダンの実』と呼ぶ。効果は……まぁ見たほうが早いじゃろ」
ジャガリン汁を青ツユクサの入った液に入れる。すると
「色が緑と青色に……」
液の色の上部が緑色、下部が青色に分離する。
「そう、キダンの実の効果は他の物質の効果を『分離』すること。ちなみに青ツユクサの効果は上澄みの緑色が『体力回復』、沈殿している青色が『魔力回復』じゃ。基本的にワシら薬師が扱う材料というのは複数の効果を有しておる。しかしながらその材料そのものを口にしたところで効果は得られん。得るためにはこの『分離』という工程が必要なのじゃ。薬師としての基本じゃからよく覚えておくといい」
そういいながら彼女はお玉を手にし、上澄み部分をすくい、ビンの中へ入れていく。
キダンの実って薬師においては超重要なものだったのか。
そう思うとたらふく食ったことが申し訳なくなる。
「分離面は緑、青が混じっておるから捨てる。混じり部は効果がなくなるからな」
ある程度緑部をすくうと混じり部がなくなるまで液を捨てていく。
「混じり部をなくせばひとまず終了じゃな。緑色の液が『回復薬』。青色の液が『魔力薬』じゃ。それぞれ体力を回復させる効果、魔力を回復させる効果がある。一種の材料から回復薬と魔力薬が作れるのはこの青ツユクサだけじゃ。なかなかにレアな植物なのじゃよ?」
レアな植物……か。そんな植物を沢山栽培している俺の師匠って何者なんだろう。
「これらは魔力の濃度が高いため効果が『原液』と呼ばれる、よく店なんかに売っているのはこれらを薄めたものじゃな」
ティアドラは回復薬の原液を少量取り、他のビンへ移す。
その中に台所から追加で持ってきた湯を入れていく。すると液の色が濃い緑色から段々と薄くなっていく。
「このぐらいが一般的じゃな。これで市販されておる回復薬の完成じゃ。よし、次はお主がやってみろ」
俺は彼女がやっていたことを頭に思い浮かべながら同じ作業をやってみる。
「あぁ違う違う!そんな大きいと絞り汁が十分に取れんじゃろう!」
「何故キダンの実を先に入れる!何を見ておったんじゃ!!」
「まだ上澄みが残っておるじゃろう!貴重なものなのじゃからギリギリを狙え!ギリギリを……ってあぁ……なぜ混ざり部まで回復薬に混ぜてしまうのじゃ……あぁ」
こうして俺達は日が沈むまで回復薬、魔力薬作りに没頭するのであった。
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