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ダンジョン発生

ご機嫌取り

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それからまたしばらくしてクリア数記念により、新しいアップデートが入った。

ライセンスカードの導入――だ。

システムによるとこのカードに個人を登録することで「スキル」というものを手に入れるための準備が完了し、ダンジョン攻略に役立てることが可能だという。

ここで一部国民の不満が爆発した。というのも実はダンジョンが明らかになってから買い溜めが起き、物価の上昇もわずかながら発生しているのだ。そこにこの好奇心くすぐる情報は火に油を注ぐかのごとく大盛り上がりを見せた。

さすがの政府も登録だけなら問題ない、と20歳以上を条件として男女問わず募集し当選者から順に登録をおこなっていった。スキルはダンジョン内でドロップするアイテムを使用することでしか手に入らないという事前情報があったからだ。

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「んーライセンスカードもってないけどスキルは既に手にしてるんだよね。」

マコトはテレビを前に無視しようと思えば無視できるほど小さなモヤモヤを口にした。

「まぁいっか。」

無視した。

「さて、準備はできた?そろそろ駅に向かわないと新幹線に間に合わなくなるかもよ。」

「あ、おっけー。今行く。」

ライセンスカードの登録を機に緊急事態宣言の取り下げが起き、それに伴いおもに大都市でここ2~3日動いていなかった公共交通機関も再開を始めた。

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新幹線に揺られ2時間半後。住み慣れた町、石川の駅に到着した。

出口の改札を通り、迎えの車が待っている約束の場所に向かう。あたりはすっかり暗いが、

「ふふっ。なんか仁王立ちしてる人いるけどマコトの知り合いじゃない?」

「兄さんの知り合いでもあると思うけど。」

そんなこんなで車の近くにたどり着いた。広斗はマコトの荷物も一緒に車のトランクへと積んでいる。

「あー…ただいま。」

「…おかえり。」

少しの間沈黙が流れる。結衣の表情や態度に変化は無い。マコトは気まずさから後で渡そうと思っていたお土産をポケットから取り出した。それは白い袋に包まれていた。

「…なにこれ?」

「ストラップ、開けていいよ。それで許し――」

「え、ストラップ?今までお土産といったらすぐ無くなっちゃう食べ物しかくれなかったマーくんが?嬉しいありがとう!」

ストラップは、東京の形をした体のマスコットが新幹線を持っているだけのものであったが、その後の結衣の喜びようからマコトはまた買ってこようと思った。

お土産のおかげですっかり気分が良くなった様子の結衣はそれ以降特に小言を言うわけでもなく、無事家に着いた。

ただ玄関で別れる間際に、次からは連絡をしっかりしてねと念を押されたが。

(まぁこれからはもうちょっと意識するようにしよう。世界もおかしくなっちゃったことだし。)

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