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ダンジョン発生

とうとう

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「総員、警戒!!」

バッと盾を構え、レバースイッチが付けられている壁を背にして半円状に、盾の隙間なく並ぶ。

「では押すぞ!3・2・1」

隊長と呼ばれた人物がレバーを押した。

次の瞬間、それまで持ち込んだライトのみで照らされた内部にまるで電気が通ったかのようにどこからともなく明かりがついた。

急な変化に心の準備をしていたとはいえ、周りに緊張が走る。

少しして

「これといって何かが起こったわけではないな…。いや――」

『システムが起動しました。それに伴いダンジョンセンターをアップデートします。現在建物にいる方は直ちに外へ移動してください。繰り返します。システムが――』

「総員、撤退!急げ!」

二度目のリピートが聞こえる前に判断したのは上に立つものの責任か、はたまたただの慎重さゆえか。ともかく、隊員達は命令に応えるべく重い盾を捨て速攻で出口へ向かっていく。

全員が出たのを見計らってか、タイミング良く出入口にシャッターが下りた。

その後しばらく何もなく、脱出後そのまま待機していた者たちと入れ替わるように新しい人員が補充され、レバースイッチをいじる前よりもより厳重な監視体制が広がった。

しかし拍子抜けなことに、その日は丸1日何も変化がなかったという。

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 システムが起動した。

このアナウンスは実は日本ダンジョンセンター周辺だけではなく、全世界に同時に流れていた。国や地域によってだいなりしょうなり混乱を巻き起こした。ただ、直近にも似たようなことが起こっていたためか大半の人はそこまで騒ぐことはなかった。もちろん、暴動が起こった場所もあるが。

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事態が動き出したのは日付が切り替わる午前0:00。

そのアナウンスは突然やってきた。

『ただいまより人口が1億人以上の国にてそれぞれ50個のレベル1ダンジョンを開放します。それに伴い、ダンジョンセンターも増設いたします。』

三度目のアナウンスだった。

世界は落ち着いてなどいられなかった。

人口1億を超える国は現在14カ国。その首都で見慣れない建物が発見された。

それだけではない。

レベル1ダンジョン――

その数50がその14カ国の広大な土地の中にそれぞれ隠されているのだ。とはいっても世はSNS時代。情報の共有はすさまじく瞬く間に見つかっていった。
そして、早くも犠牲者が出たという報告もあがった。

人間、一度湧き上がった好奇心はなかなか抑えられぬもの。第一発見者の多くはついついダンジョンにもぐってしまい帰らぬ人となった。

結果その日のうちに各政府によりダンジョンは危険だと判断され、進入を禁ずる宣言が出された。しかし、実際には宣言から警察・自衛隊・特殊部隊によるダンジョン入口の監視を行うまでのわずか数時間で、さらに死者が増えてしまったが。

なぜ亡くなったのか。

出てしまったのだ、モンスターが。

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すでに死者は出てしまったがそのまま放置するわけにはいかず、攻略を開始した国も出てきた。
方法としてはただ1つ。銃器による物量戦だ。

モンスターといってもスライムのようなザ・ファンタジーなものから、凶暴化しただけの動物のようなものまで。何の準備もしていなかった素っ裸同然の人が数人であったから抵抗しきれず死んでしまっただけで、武器があれば難易度的には何の問題もなかった。

のだが。

数日をかけて攻略していくうちに、どこの国も気づいた。

費用と釣り合わないのではないか――

倒しても倒しても出てくるモンスター相手に銃を使うのはもったいない。倒したモンスターは2~3秒後には消え、残るのは小さな宝石らしき物のみ。

接近しないため間違いなく安全な倒し方ではあるが…。と攻略法の変更を検討しているうちに、のちにボス部屋と呼ばれる装飾のない大きな門で塞がれたところまでたどり着いた。

誰が見ても物々しい雰囲気を醸し出しているが、さすがにレベル1ダンジョン。ボスモンスターは通常のものよりやや強いかったがあっさりと片がついた。

しかし変わりがなかったのはモンスターだけで、いつもは小石が残るはずの場所にコルクで栓がされ、緑色の液体が入った試験管が置いてあった。

もちろん持ち帰り、栓を抜いて分析してみると擦り傷や瘡蓋かさぶた程度なら一瞬で治る回復薬だということが分かった。

これはとんでもないニュースとして取り上げられたのだが、現時点で数も少なくたいした傷も治せない薬よりも実用性のある発見があった。

それはアナウンスによると『世界で10個のダンジョンをクリアした記念アップデート』だった。

情報開示システムの導入。
すなわち、クリアしたダンジョン数ごとに情報を与えるというもの。第1回目の内容は「宝石小石」の利用方法についてだ。

これがまたまた世界を揺るがした。エネルギー変換が可能な魔法の石だったのだ。名を魔石といい、モンスターがいる限り無限に手に入る代物。加工の知識を手に入れたことで、各国はこぞって自国のダンジョン探索に精を出し始めた。
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