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プロローグ

衝撃の日(1)

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1年の始め。1月1日。この日は竹林家、中川家にとってしばらく忘れられない日になるに違いなかった。


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「「本当にすみませんでした。」」

ここは竹林家の玄関。大の大人が2人揃って土下座をしている。

2人は竹林 大輔だいすけと中川 道助みちすけ。それぞれの家の大黒柱だ。お金を稼いで家族が暮らせるように頑張っているはずだった。

「ねぇ借金ってどういう事よ。」

一方、土下座をしている男たちの前で立っている女性がいる。こちらも2人。もちろんそれぞれの妻で名前を竹林 礼子れいこ、中川 友美ともみという。
いま問いかけた方が礼子。腕を組んで壁によしかかっている。

「あなたもう少し詳しく話してちょうだい。」

そして礼子に比べて少し柔らかい雰囲気をかもしだしているのが友美だ。

「あの、母さんおせち…。」

玄関からリビングまでの廊下は真っ直ぐで、廊下とリビングを繋ぐ扉に1人の男の子が頭をのぞかせていた。竹林 マコト この物語の主人公だ。

広斗ひろとの家で食べてくれる?新年早々少し大輔と話さないといけないことができたの。」

マコトへ向けて話しているが体は今もなお土下座している男たちへ向いていた。

「兄さんのところで?でも兄さんこっちに向かっているって連絡『2度言わせない!』」

マコトの言葉にかぶせた声は大きく、広くない廊下に響いた。
マコトは扉を閉めて、持っていたスマホを耳にあてる。

「そういう事だから兄さんよろしく。」

通話相手は竹林 広斗ひろと。既に出たとおりマコトの兄で大学3年生。学校はそう遠くないが入学時から一人暮らしを始めていた。

『はぁ…母さんだいぶキレてるね。なんでこんなことになったのやら。とりあえず今から引き返すよ。家、何回も来たことあるし場所は分かるよね?』

「大丈夫、覚えているよ。部屋番号は703だったかな。」

スマホを耳と肩で挟み、両手で器用におせちを風呂敷に包みなおしていく。

『正解。一応マンションのロビーで待っとくよ。ところで結衣ゆいちゃんは?』

結衣ちゃんとは中川家の次女で高校2年生。マコトと広斗の幼なじみだ。ちなみに長女の芽衣めいは広斗と同い年で、こちらは大学に進学せずアルバイトなどをしている。

「まだ来てないからおめかししているかも。ん、おせちとお餅の準備できた。着替えたら出るからまたね。」

はいよ、という声とともに通話を終了しスマホをおいた。
そして昨日畳んだばかりの服から適当に選び着替えていく。

(うし、準備完了。そうだをやっておこう。)

スマホを忘れずにズボンのポケットに入れ、おせちを包んだ風呂敷を両手で持ち、市販のお餅を入れた手さげ袋を肩に掛ける。
廊下への扉を開けると玄関に4人はおらず、礼子の大きい声が2階から聞こえ既に移動していたことがわかった。

「いってきます。」

マコトは靴を履き小さくボソッとそう呟くと玄関を出て、隣の中川家へ向かった。
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