林檎を並べても、

ロウバイ

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暗い場所で

眠りにつく

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「今」のソウへの離別を決めた夜から、約半年後。

眠りに落ちるようにして、死の足音が近づいてきているのを感じる。目を閉じているから、今世界はどうなっているのかはわからない。でも、なんの根拠もなく大丈夫だという気がした。
 
多分、あいつは大丈夫。大丈夫さ、ソウなら。
 
心の奥底で歯を噛み締める俺に静かに語りかける。いまだにあいつの隣に立つのは俺だけだと叫ぶ声をそっと無視して、息を吐いた。

無意識のうちにシーツを握っていたようで、手に布の乾いた感触がする。
無機質な俺の心拍数を知らせる音のリズムが、次第に崩れ始めているのはちょっと前から聞こえていた。

もしも、あいつにひとつ何でも渡すことができるとすれば。
本当に、最期に何かできるとするなら。
俺は、俺がいないあいつの未来を最高に輝かせてやるんだ。
最高に、幸せにしてみせる。

ずっと自分に言い聞かせてきた言葉を、再び口にする。

たとえ、俺が好きだったソウじゃなくなったからと言って、ソウであることは間違いない。俺がいつか、ソウの腕の中で誓った言葉に狂いはなかったのだ。

口元に当てられたプラスチックが邪魔ったらしい。
脳裏に、桜が降る中苦しそうな顔をしたソウが過ぎる。

本当に、心の底からソウに悲しい顔をして欲しかった訳じゃないけど。もしかすると、同じ分だけ渡したいだなんて選択をしたこと自体がソウを悲しませるのかもしれないけれど。

最期の最後に見る光景に、ソウが居てくれたら幸せだっただろうな。
ただ一つだけの願い。身勝手ながらもその光景を思い浮かべながら、俺は静かに意識を手放した。

最期になんとか開いた視界には、一つだけ。
早咲きの桜が映った。
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