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蜂鉢怪異談∞
204話「雨クジオンナ2」
しおりを挟む「1」
ーー「八木家」ーー
「ただいま」と八木家の長女八木楓が通う高校から帰宅した。
「おかえり」と中学二年生になる次女八木瑠奈は居間で掃除機をかけている。
今月は梅雨入りの六月であり、雨雲がいくつか出ていて家の中は湿気でジメジメしていた。
「瑠奈。お風呂掃除は済ませましたか?」
と、楓の問いかけに掃除機止めた瑠奈は、
「ごめん。まだー」
「なら、私がやりますから瑠奈はそのまま掃除機かけてください」
「うん。わかった」と瑠奈は再度掃除機をかけた。
ーー「風呂場」ーー
楓は風呂場に入り明かりの電気をつける。ここまではいいがその浴槽に楓が会いたくないそいつがいた。
「…………」
そいつの名は雨クジオンナである。
梅雨入りの時期に現れてジメジメした場所に好むという妖怪の類だった。
そいつはジメジメして濡れており見てると暗い気持ちしたどんよりなる。
しかし、雨クジオンナが現れるのはしょうがないがよりによって浴槽の中で現れたのだ。
この状況に悩んでいると、瑠奈もやってきた。
「お姉ちゃん。こっちは終わったから……手伝うよ……?」
「…………」
瑠奈はなんとなく察した。
そう、よりによってあの場所に現れたからだ。風呂掃除のところじゃなかったから。
楓と瑠奈はお互いうなずきこの雨クジオンナを退治するために奮闘するのであった。
「2」
まず彼女達は最初は定番の塩とお酒を使い雨クジオンナにかけてみたが全く通用しなかった。もちろん逆に砂糖や霊水もかけてみたが無駄の足掻きのようだったので次のプランへ移行する。
次の作戦はつぶ念のつぶ経の朗読音楽をかけたり、十字架をかざしてみたがこれも通用しない。そしてマジカルカメラや楓の紅く光る眼をやってみたが全く通用せずあれこれ1時間経過した。
「奥の手ね」
そこで楓は禁じ手を使うことにした。それはネット検索「ククレヨロカス」を使う。最初から使えばいいじゃない?と妹のツッコミ無視して検索をかけるがどうやら雨クジオンナは誰も知られてないマイナーな妖怪のため記事には引っ掛からなかった。もうお手上げかなぁというときにさらなる禁じ手をもう一つ披露する。
それは八木家の当主に尋ねることだ。しかしそれはむなしく封じられる。なぜなら美月はどうしても外せない緊急の用事であり、今晩は帰宅せずにさらに言えばスマホも見てないのかチャットも入れても反応はしなかった。唯一の家長である父親はオカルトや幽霊に疎く知識に乏しい凡人であるから、頼れない。
そこで楓と瑠奈はもうお手上げの状態の時に救世主が現れる。
「ただいま」と早速帰宅したのは先代当主八木沙凪。
当主のご意見番なら詳しいと踏んでいたからだ。
早速、楓と瑠奈はご教授するために尋ねてみた。
「3」
「ふむ。アレなら大丈夫だろう」
と、沙凪は台所に向かいアレを取り出す。
その風呂場に向かい浴槽にいる雨クジオンナにふりかけるとドロドロと溶けてなくなった。
「「……」」
「さ。もう安心だから、風呂場掃除頼むよ」
と、沙凪は自分の部屋に戻った。
アレとは片栗粉である。
雨クジオンナに有効的であり、八木家では切らさずに大量に保持していたのは雨クジオンナ対策でもあったからだ。(過去に楓が雨クジオンナに振り回されていたのは黒歴史の汚点のひとつに数えるようになった)
そこで楓と瑠奈は無言で風呂掃除に移り風呂を沸かすがそのドロドロになった後の浴槽に入ろうとせずにしばらくはシャワーに切り替えていた。
雨クジオンナ2 完
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