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野花怪異談N⑧巻【完結】

86話「イシヤマリサーチ株式会社[退院編]」

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「1」

 ーー「八木家」ーー

「本当に申し訳ありませんでした」
「いえお気になさらずに……相手の方も無事に意識を取り戻したのでしょう?そうですよね楓」
「ええ。私はあの時人霊呼吸が必要と判断しましたから」

 楓はなんでもないかのように取り繕っていた。
 今回イシヤマリサーチ株式会社の重役の方から謝罪と感謝のより八木家に訪れたことによるものだった。
 事の発端はイシヤマデパート内での映画館で起きた安良田悠人の悪霊ストーカーの襲撃事件である。
 その首謀者は偶然鉢合わせした楓により撃退により退けられて悪霊に取り憑かれた安良田を人霊呼吸によって救われたのである。
 ここまではいいがその時に安良田が好意を持っていた音成茜が楓にビンタしたことが発覚したのである。
 それを重く見た会社側は音成を懲戒処分をしようとしたが大事になりたくない八木家と処分を減刑を望む社員達により、現在音成は厳重注意と自室謹慎で済ましてる。
 石山県では石山県の統治権限を持ってる八木家に危害を加えようとする者は重罪にあたるのである。罪に問われなくても世間体には厳しい目にうつされるのである。実際の所会社は風評被害に晒されており、株価が下落したりSNS上で不買運動が一部起きてるのである。
 なので厳重注意と自室謹慎で済まされるのは幸運であるほうだ。
 そして今回の事件を受けて八木家当主権限により、イシヤマリサーチ株式会社に対して謝罪コメントを受け入れたと世間に発表すると事態は下火して終息へと向かった。

「2」

 ーー「安良田悠人の視点」ーー

 目覚めの良い朝だ。
 閉鎖病棟なので窓を開けることができないが微かに漏れる日差しを浴びて眠気を覚ます。
 と、僕の個室が開けられる。
     看護師の石永さんだった。

「安良田さん。起きた?そろそろ朝食が来るから顔を洗うなら済ませてね」

「はい。わかりました」

 今日はたしかレイ・サポートと午後に面談あるから忘れずにお風呂は先に済ませておこうと決めた。

「3」

 朝食終えると、早速風呂場の予約を入れる。
 お風呂場は個室であり、予約制である。
 もちろん、体質、精神、幽霊、男女別々である。
 一緒にすると精神的不安やストレスが溜まるので配慮されている。
 ちょうど午前の予約取れたのでその間に風呂の準備して待機する。

「安良田さんお風呂どうぞ」

 早速、風呂が空いたので僕は入る。
 体質にはあるあるの特徴的な風呂がある。
 まずは清めの聖水と塩がある。
 これをまず服用して僕らは入るのだ。浴室の壁にはお札だらけがある。
 そしてごく稀に排水溝には髪の毛の塊が詰まることがあるから、見つけたらそれを取り除いている。
 そして髪の毛を洗っていると肩の腕に掴まれたり鏡に人の気配はしょっちゅうあるから慣れたものである。今日は誰もいなかったな。
 珍しいな。
 僕は早々お風呂から上がる。

「4」

 風呂から上がると次の予約してる方に伝えるのである。
 もちろん体質の方である。
 ごく稀に精神と体質の方が風呂場を間違えるので、きちんと病棟スタッフがチェックしてるのである。
 さて喉が渇いたな。
 僕は病院の冷蔵庫から草サイダーを取って飲む。
 これは以前売店から購入したモノであり、冷蔵庫は患者達と共有であり、所有物には自分の名前を書いてる。
 もちろん幽霊にも書いてあり、当然幽霊が飲食したモノは忘れずに廃棄される。
 もったいないけど少しでも感染リスクを減らすためであるからね。
 そしてダラダラと時間を過ごしてると昼食の時間なった。
 今日はラーメンだった。
 病棟の食事にはたまに麺類が提供されるから、僕も残さず平らげている。
 当然、麺つゆは残すよ。
 昼食終えると、レイサポートと面談があり、これもすぐ始まった。

「5」

「レイサポート木村です。どうですか?体調の方は」
「そうですね。僕はーー」

 レイサポートの人と担当医師と看護師、そしてイシヤマリサーチ株式会社の上司である笠田さんと三者面談を行った。
 今回は僕の退院時期を決める話し合いだった。
 レイサポートとは何かというと、自立体質障がい支援所に僕らみたいな体質を生活支援や職業斡旋をしてくれる場所であり、体質の方は一度お世話になってる。ちなみに僕ら体質や幽霊はレイサポートを利用するが精神の場合はピアサポートになる。もちろん両方とも利用する方もいるくらいだ。
 そこで問題なく精神的に安定してるので来月から退院になる方向になった。

「6」

 3者面談の終わりに僕は個室に戻ると何やら叫び声が聞こえた。
「また殺霊事件!?」
 僕は以前のようにあったから慌てて部屋に飛び出した。

 そこに立っていたのは……。

「え?君はどうして?」

 そこに血だらけの加奈守美穂さんがいたから……。

「安良田君。迎えに来たわよ」

 そっと彼女はそのナイフで僕を刺した。


「7」

「ハッ!?」

 僕は個室で目を覚ました。
 身体の周りなどを調べたが異常はなかったし、服の周りには血がついてなかった。
 眠れない僕はナースコールをしてとんぷくを飲んで再び寝た。

 ーーーーーー

 今日から退院である。
 迎えは会社の関係者がやってくるので忘れずに前もって退室の準備は済ませておいたがあの夢が不安になり気になっていた。

「安良田迎えに来たぞ」

 笠田さん達がやってきた。
 そこの助っ人に音成さんと加奈守さんもいた。
 僕の背筋に悪寒が走ったのものキノセイと感じたが彼女達の協力によりようやく退院できた。

 ーーーーーー

「すみません。安良田さんを迎えにきましたが」

「は?安良田さんなら先程退院されましたけど?どちらさま?」

「いえ?私どもはイシヤマリサーチ株式会社の関係者でして安良田さんを退院の準備に来ましたが」

「え!?そ、それはどういう……」

 ーーーーーーー

 車内で眠る安良田悠人。
 安良田以外乗車してる彼らは両眼は黒く塗りつぶしてあったから。
 現在、安良田悠人は消息不明になっている。


 イシヤマリサーチ株式会社[退院編]  完


 登場人物

 安良田悠人

 音成茜

 加奈守美穂

 六山聖

 和田鍋辰也

 小山哲希

 笠田知幸

 八木楓

 他、多数

 イシヤマリサーチ株式会社シリーズ本編完結





 ーー????ーー

 僕は目を覚ますと真っ暗だった。
 何も見えなかった。
 そうか。
 僕は……。

「アラタ」

 END

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