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野花怪異談N⑥巻【完結】

65話「イシヤマリサーチ株式会社[入院編]」

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「1」

 礼察や霊急車のサイレンが鳴り響く。
 平穏な日常が非日常と切り替わり暗雲な事態へと移る。
 そこに霊救スタッフが現場に救命して患者を運び込む。
 そこに患者安良田悠人を見守るイシヤマリサーチ株式会社メンバーは現場に待機して軽視官から聞き取り調査を行う。
 そこに音成茜はまだ事態に飲み込めずにただ呆然として、楓は彼女にぶたれた頬の痛みを思い出しつもただ見守るだけだった。

 ーー「夢山病院呪術室」ーー

 悪霊犯罪などにより、取り憑かれたり巻き込まれた患者はここに運ばれていく。
 この場所は緊急霊視オペを行う。

「お札」と霊媒医師が看護師からお札を渡して身体に貼り付けで霊魂を駆除する。
 状況が状況だけに緊急霊視オペ行ったが意外にも患者の容態は良好だった。これは楓が人霊呼吸を行ったために取り憑かれた悪霊魂をほぼ取り除かれたによるモノである。このため緊急霊視オペはわずか数時間程度で終わらせたのは不幸中の幸いだった。
 オペが終了すると患者は閉鎖病棟の個室に運ばれて一晩安静にすることになった。

「2」

 ーー「安良田の病院個室」ーー

「ん……ここは?」
 僕が目を覚ますと病室にいた。
 どうやら体質の悪化でまた入院したらしい。
 一応確認しよう。
 1+1=2。
 よし。大丈夫だ。
 精神面もまともだ。
 ガチャとドアの扉が勝手に開かれると女性看護師がやってきた。
「おはよう、安良田悠人さん。私、受け持ちなった熊長葵です。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
 僕は葵さんに挨拶する。
 ところで目の隅下クマが出来ているけど大丈夫なんだろうか?
「しばらくドアのロック開けておくから、それまでに顔洗ってきなさいね。……まぁ。ここは閉鎖病棟だから大丈夫ね」
「了解です」と僕は背筋をピンと立たせて眠気を取り、顔を洗いに洗顔室に向かった。

 ーーーーーーーー。

 僕の名前は安良田悠人。
 僕は体質という持病を悪化発症して入院中である。
 事の発端は僕につきまとう悪霊ストーカーが原因と葵さんに言われた。
 こないだは舟でされたから、充分気をつけてるだけどね。
 さて、今回僕は閉鎖病棟に入院したがこれらは患者が勝手に出入りしたり、悪霊からの侵入を防ぐためによるものである。
 閉鎖病棟の入院患者は、精神、幽霊、体質患者に区別して分けられている。
 その時ガシャンと叩く音がした。
「おい!お前ぶつぶつ呟いただろ!?」
「つぶつぶ」
 喧嘩だ。大変だ止めないと。
 僕は両者をなだめて看護師を呼んだ。
 どうやら、彼らを引き離してくれた。
 閉鎖病棟だから、ストレスやイライラが溜まり患者同士のトラブルや喧嘩も絶えないのだ。
 そして閉鎖病棟に持ち込む物も厳しい。
 電化製品、スマホ、写真、人形などはゴーストウィルスに感染するので持ち込むことはできない。
 その代わりにボードゲームや漫画、食べ物などは一部持ち込むことはできる。
 そうだな。お父さんにヤギプリンなんか持ってきてもらおう。
 ヤギプリンは僕みたいな体質でも食べられるようにしてるから安心である。
 楓さんがヤギプリンにハマっていたからな。
 僕もそれは同意するな。
 ふー。喉が渇いたな。
 水分補給はこまめに取る。
 このお茶も霊水だから、幽霊や体質な方も安心して飲める。
 神水や酒になると幽霊にとっては猛毒になるから充分取り扱いには注意しないといけない。
 丁度、朝食が来たので僕は食べることにした。

「3」

「いただきます」

 朝食はごはんと大根の味噌汁と魚の干物、にポテトサラダだった。
 当然患者の栄養を考えて食事を摂る。
 ちなみに幽霊は食事を摂る必要性はないがストレスが溜まるので僕らと一緒な物を食べる。当然幽霊達食べた物は廃棄する。これには感染が怖いためである。その廃棄した食べ物はリサイクルして環境にやさしい肥料になるのだ。
「ごちそうさま」
 僕は食べ残しせずに平らげた。
 そしてお腹満たした後はすぐ自分の個室へと戻った。

 ーーーーーー。

「今日の担当の石井です。検温を測らせてもらいます」
「はい。どうぞ」
 女性看護師石井さんは僕の腕に検温の機械を測る。
 入院してる間は体調管理はきちんとしてる。
 途中で体調が崩れたり良くなったりするから、気をつけている。
 と、途中僕はどこから視線を感じた。
 (……葵さん?)
 葵さんは僕の様子を遠からず見ていて視線を合わすとどこかへ立ち去っていった。

 ーー「????」ーー

 寝静まる晩に僕の身体からすごい締め付けられるような金縛りがきた。
 その時うっすらと瞼を開けて周囲を確認すると病院個室のドアを見ると女性看護師らしきの黒い人影が立っていた。

 ーーーーーーー。

『……ちゃん。お兄ちゃん!きいてる?』
「あ、うん聴いてるよ」

 妹の電話にも上の空だった。
 電話は病院内に設置してる公衆電話だ。
 1人持ち時間は約10分程度である。
 あと、希望であれば受信してあの世の國へと交信はできるが國へ住んでいるお母さんに迷惑かけたくないから退院後に受信しようかなと思う。
 その時、男性の悲痛な叫び声がする。
『な、なにどうしたの!?』
 電話越しに聴こえるほどの悲鳴。
 その時警報ベルが鳴り響き、患者や看護師は混乱になる。
 その時、石井さんが僕の所までやってきた。

「安良田君!大変よ。今殺霊事件が起きたの。ここは危険だから避難して!!」
「殺霊事件!?」
 殺霊事件とは幽霊達を殺害することである。
 あちこち悲鳴が上がっている。
 そこに葵さんが僕のことをギロリと睨みつけてこっちに向かってきた。
 石井さんは、僕を急いで連れてどこかの個室へと避難した。

「4」

 どこかの個室で避難した時に僕は安堵していたが途中から身体中あちこち痛んでくる。 

「大丈夫よ。私に委ねて」

 石井さんは僕の病衣を脱がしてマッサージしてくれる。
 途中から気持ちよくうたた寝するほどの眠気が来る。
 その時個室のドアがガチャガチャとドンドンと叩く音が気になった。
 僕は一瞬不安になり、出てきませんようにと祈っていたがむなしくもドアが開かれた。

 ーー終わったと思った。

 しかし、入ってきた看護師は2人だった。

 葵さんと、


 もう1人は石井さんだった。

「あー。結構やられてるわね」

 そうつぶやく葵さんの指摘に僕の上半身にいくつか青白い女の手形がついていていた。


「5」

「礼察には通報したから、私たちも充分監視体制強化するからね」
「はい……すみません」
 葵さんは、そう言って個室から出て行った。
 個室には厳重なお札が貼られて個室のドアの前にはつぶ人形が置かれて警備してる。
 僕のストーカーは1人だけじゃなく複数いる。
 この入院生活で起きた出来事は恐怖の始まりに過ぎなかった。

 イシヤマリサーチ株式会社[入院編]  完
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