11 / 12
第一章
狆の宝物
しおりを挟む
スッキリとしたエロ関白は上機嫌で城を後にした。
父上も、母上も、これでこの城も暫く安泰だと、ほっと胸を撫で下ろしていた。
しかし、姫君は違っていた。自分自身の先の人生を考えると、暗い気持ちになった。
あの醜いエロ関白の側室となり、好き放題オモチャにされ、ゆくゆくは飽きられ、肩身の狭い思いをしながら生涯を終えることとなる。
一体この人生は何なのだ?私は何の為に生まれてきたのだろう。
そしてもっと姫君を悩ませたのは、もし、自分があのエロ関白と同じ性別で、同じ両親に育てられ、同じ環境で育ったなら、同じことをしたのではないか?ということだった。
その疑問の答えは、いくら考えても出るものでは無かった。でも、あのケダモノと同じ性質が、自分自身の内に秘められている可能性を、胸を張って否定もできない。
そして、それは自分自身だけではなく、父上や母上、兄上、家臣や侍女、みんなに当てはまることではないのか?
そんなことを考えて、部屋で塞ぎ込んでいると、どこから入ってきたのか狆がやってきた。少し離れた場所で、尻尾をゆらゆらと振りながらこちらを眺めている。狆は口に四角を持っていなかったが、このときの姫君の心は、そこに関心が向かなかった。
「おちんちん、おいで」
姫君が優しく呼ぶと、狆は甘えるように飛びかかってきて、頬を優しく舐めてくれた。そこは涙の塩分で濡れていた。
狆が「もう泣くな」と言っているようだった。その優しさに触れ、涙はもっと溢れてきた。
「お前だけは、お前だけじゃ…」
狆は首を傾げると、やがて後ろを向いて歩き出した。襖の前までくると姫君の方を振り向いて、さも「開けろ」と言いたげにしている。開けてやると部屋を出ていき、少し歩くとまた姫君の方を振り返る。どうも「付いてこい」と言っているようだったので、姫君は訝しみながらも付いていってみることにした。
狆は壁の前に立ち止まると、その表面をガリガリと掻き始めた、すると、壁がくるりと回転して開いた。空いたスペースに狆が潜り込んだので、姫君も後に続いた。
そこは二畳程の踊り場になっており、中程に階段があった。狆は踊り場の隅に置いてあるごちゃごちゃとした小さいガラクタのようなものの集まりの横にお座りしてドヤ顔をして見せた。
よくみると、いつぞや無くしたカンザシや帯の一部、香料や小銭などがごちゃごちゃと集められていた。その中に四角もあった。
ハッ!として姫君は四角を取り上げた。
ムクムクと快楽の予感が脳内を過り、口角は自然と上がった。
ここは誰もいない…
装飾に手を掛ける。期待で体温が上昇する。
そして、ついに装飾を押下した。しかし、反応が無い…
なぜじゃ?と何度も押したが、やはり反応は無い。
「なんとしたことじゃ…」
卵形本体を急いで『こつぼ』から引き抜く。ホカホカの卵形を眼前にして、もう一度装飾を押下する。しかし、僅かばかり反応した後に、すぐにその動きは止まってしまった。
卵形は息絶えてしまった。
父上も、母上も、これでこの城も暫く安泰だと、ほっと胸を撫で下ろしていた。
しかし、姫君は違っていた。自分自身の先の人生を考えると、暗い気持ちになった。
あの醜いエロ関白の側室となり、好き放題オモチャにされ、ゆくゆくは飽きられ、肩身の狭い思いをしながら生涯を終えることとなる。
一体この人生は何なのだ?私は何の為に生まれてきたのだろう。
そしてもっと姫君を悩ませたのは、もし、自分があのエロ関白と同じ性別で、同じ両親に育てられ、同じ環境で育ったなら、同じことをしたのではないか?ということだった。
その疑問の答えは、いくら考えても出るものでは無かった。でも、あのケダモノと同じ性質が、自分自身の内に秘められている可能性を、胸を張って否定もできない。
そして、それは自分自身だけではなく、父上や母上、兄上、家臣や侍女、みんなに当てはまることではないのか?
そんなことを考えて、部屋で塞ぎ込んでいると、どこから入ってきたのか狆がやってきた。少し離れた場所で、尻尾をゆらゆらと振りながらこちらを眺めている。狆は口に四角を持っていなかったが、このときの姫君の心は、そこに関心が向かなかった。
「おちんちん、おいで」
姫君が優しく呼ぶと、狆は甘えるように飛びかかってきて、頬を優しく舐めてくれた。そこは涙の塩分で濡れていた。
狆が「もう泣くな」と言っているようだった。その優しさに触れ、涙はもっと溢れてきた。
「お前だけは、お前だけじゃ…」
狆は首を傾げると、やがて後ろを向いて歩き出した。襖の前までくると姫君の方を振り向いて、さも「開けろ」と言いたげにしている。開けてやると部屋を出ていき、少し歩くとまた姫君の方を振り返る。どうも「付いてこい」と言っているようだったので、姫君は訝しみながらも付いていってみることにした。
狆は壁の前に立ち止まると、その表面をガリガリと掻き始めた、すると、壁がくるりと回転して開いた。空いたスペースに狆が潜り込んだので、姫君も後に続いた。
そこは二畳程の踊り場になっており、中程に階段があった。狆は踊り場の隅に置いてあるごちゃごちゃとした小さいガラクタのようなものの集まりの横にお座りしてドヤ顔をして見せた。
よくみると、いつぞや無くしたカンザシや帯の一部、香料や小銭などがごちゃごちゃと集められていた。その中に四角もあった。
ハッ!として姫君は四角を取り上げた。
ムクムクと快楽の予感が脳内を過り、口角は自然と上がった。
ここは誰もいない…
装飾に手を掛ける。期待で体温が上昇する。
そして、ついに装飾を押下した。しかし、反応が無い…
なぜじゃ?と何度も押したが、やはり反応は無い。
「なんとしたことじゃ…」
卵形本体を急いで『こつぼ』から引き抜く。ホカホカの卵形を眼前にして、もう一度装飾を押下する。しかし、僅かばかり反応した後に、すぐにその動きは止まってしまった。
卵形は息絶えてしまった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
秦宜禄の妻のこと
N2
歴史・時代
秦宜禄(しんぎろく)という人物をしっていますか?
三国志演義(ものがたりの三国志)にはいっさい登場しません。
正史(歴史の三国志)関羽伝、明帝紀にのみちょろっと顔を出して、どうも場違いのようなエピソードを提供してくれる、あの秦宜禄です。
はなばなしい逸話ではありません。けれど初めて読んだとき「これは三国志の暗い良心だ」と直感しました。いまでも認識は変わりません。
たいへん短いお話しです。三国志のかんたんな流れをご存じだと楽しみやすいでしょう。
関羽、張飛に思い入れのある方にとっては心にざらざらした砂の残るような内容ではありましょうが、こういう夾雑物が歴史のなかに置かれているのを見て、とても穏やかな気持ちになります。
それゆえ大きく弄ることをせず、虚心坦懐に書くべきことを書いたつもりです。むやみに書き替える必要もないほどに、ある意味清冽な出来事だからです。
蒼穹(そら)に紅~天翔る無敵皇女の冒険~ 五の巻
初音幾生
歴史・時代
日本がイギリスの位置にある、そんな架空戦記的な小説です。
1941年5月、欧州大陸は風前の灯火だった。
遣欧軍はブレストに追い詰められ、もはや撤退するしかない。
そんな中でも綺羅様は派手なことをかましたかった。
「小説家になろう!」と同時公開。
第五巻全14話
(前説入れて15話)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
大奥~牡丹の綻び~
翔子
歴史・時代
*この話は、もしも江戸幕府が永久に続き、幕末の流血の争いが起こらず、平和な時代が続いたら……と想定して書かれたフィクションとなっております。
大正時代・昭和時代を省き、元号が「平成」になる前に候補とされてた元号を使用しています。
映像化された数ある大奥関連作品を敬愛し、踏襲して書いております。
リアルな大奥を再現するため、性的描写を用いております。苦手な方はご注意ください。
時は17代将軍の治世。
公家・鷹司家の姫宮、藤子は大奥に入り御台所となった。
京の都から、慣れない江戸での生活は驚き続きだったが、夫となった徳川家正とは仲睦まじく、百鬼繚乱な大奥において幸せな生活を送る。
ところが、時が経つにつれ、藤子に様々な困難が襲い掛かる。
祖母の死
鷹司家の断絶
実父の突然の死
嫁姑争い
姉妹間の軋轢
壮絶で波乱な人生が藤子に待ち構えていたのであった。
2023.01.13
修正加筆のため一括非公開
2023.04.20
修正加筆 完成
2023.04.23
推敲完成 再公開
2023.08.09
「小説家になろう」にも投稿開始。
晩夏の蝉
紫乃森統子
歴史・時代
当たり前の日々が崩れた、その日があった──。
まだほんの14歳の少年たちの日常を変えたのは、戊辰の戦火であった。
後に二本松少年隊と呼ばれた二本松藩の幼年兵、堀良輔と成田才次郎、木村丈太郎の三人の終着点。
※本作品は昭和16年発行の「二本松少年隊秘話」を主な参考にした史実ベースの創作作品です。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる