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52.地獄絵図2
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卓の上の呼び鈴を鳴らして使用人を呼ぶと、晴人は神殿に行きたいのでここを出ようと思うとルイスに伝えてくれと言いつけた。
昨日と変わらず、表情のうかがえない使用人はうやうやしく礼をすると、部屋を出て行く。
ややあってやってきたのはルイスではなく、料理を持った使用人だった。パンやスープなどが卓の上に並べられる。
本当に伝言は伝わっているのか不安だったが、機械仕掛けの人形のように黙々と動く使用人を見ると、晴人はどう声をかけたらよいものか戸惑ってしまう。
結局、食事の準備を終えた使用人が出て行くまで何も言うことはできなかった。
「セイ……この食事に何か変なものが入っているってこと、あるかな?」
まさか自分を足止めするためだろうかという疑念が浮かび上がってくる。
晴人が尋ねてみれば、セイはじっと黙ったまま料理を眺めていた。
「……いや、おかしなものは入っていないようだね。調べたけれど、きみの身体に不調をきたすようなものは感じられなかった」
しばしの沈黙の後、セイが答える。晴人はひとまず安心して、料理に視線を移す。
思い出したように腹が音を立てた。気が張っていたせいかさほど空腹を感じなかったが、実際はそうでもなかったらしい。
晴人はそっとパンに手を伸ばし、食べ始める。昨日の夕食と同じく、味は美味しかったが何かが欠けているような物足りなさを覚えた。
用意された食事をたいらげる頃、部屋にルイスがやってきた。
「神子様、神殿に行きたいそうですね。まだ疲れも癒えぬうちからさらなる功徳を積みたいなど、神子様の気高いお志には頭が下がるばかりです」
きらきらと瞳を尊敬の色に染めてルイスが晴人を見つめてくる。
美化された内容にむず痒くなってしまいそうだったが、この様子だと神殿に行かせてくれるのは間違いないだろう。晴人はこっそりと安堵の息を吐く。
「私もお供いたします。神殿までご案内させてください」
ところが続くルイスの言葉に晴人はぎょっとする。これが小さな親切、大きなお世話というやつだろうか。
断る方法はないだろうかと、晴人は必死に頭を働かせる。
しかし、晴人の頭では打開策を導き出すことはできず、ただ冷たい汗が流れるだけだった。
昨日と変わらず、表情のうかがえない使用人はうやうやしく礼をすると、部屋を出て行く。
ややあってやってきたのはルイスではなく、料理を持った使用人だった。パンやスープなどが卓の上に並べられる。
本当に伝言は伝わっているのか不安だったが、機械仕掛けの人形のように黙々と動く使用人を見ると、晴人はどう声をかけたらよいものか戸惑ってしまう。
結局、食事の準備を終えた使用人が出て行くまで何も言うことはできなかった。
「セイ……この食事に何か変なものが入っているってこと、あるかな?」
まさか自分を足止めするためだろうかという疑念が浮かび上がってくる。
晴人が尋ねてみれば、セイはじっと黙ったまま料理を眺めていた。
「……いや、おかしなものは入っていないようだね。調べたけれど、きみの身体に不調をきたすようなものは感じられなかった」
しばしの沈黙の後、セイが答える。晴人はひとまず安心して、料理に視線を移す。
思い出したように腹が音を立てた。気が張っていたせいかさほど空腹を感じなかったが、実際はそうでもなかったらしい。
晴人はそっとパンに手を伸ばし、食べ始める。昨日の夕食と同じく、味は美味しかったが何かが欠けているような物足りなさを覚えた。
用意された食事をたいらげる頃、部屋にルイスがやってきた。
「神子様、神殿に行きたいそうですね。まだ疲れも癒えぬうちからさらなる功徳を積みたいなど、神子様の気高いお志には頭が下がるばかりです」
きらきらと瞳を尊敬の色に染めてルイスが晴人を見つめてくる。
美化された内容にむず痒くなってしまいそうだったが、この様子だと神殿に行かせてくれるのは間違いないだろう。晴人はこっそりと安堵の息を吐く。
「私もお供いたします。神殿までご案内させてください」
ところが続くルイスの言葉に晴人はぎょっとする。これが小さな親切、大きなお世話というやつだろうか。
断る方法はないだろうかと、晴人は必死に頭を働かせる。
しかし、晴人の頭では打開策を導き出すことはできず、ただ冷たい汗が流れるだけだった。
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