42 / 90
42.都へ1
しおりを挟む
「大変、申し訳ないことをいたしました。神子様が恩寵をお与えになろうとしているのを邪魔してしまうなど……どうかお許しください」
晴人が神子だと肯定すると、青年は顔を青ざめさせて謝罪した。
魔物に襲われている人を助けたつもりが、神子が魔物を浄化しようとしているところを邪魔してしまったと思ったようだ。
まったくの誤解である。
「いや、助かりました。ありがとうございます」
あわてて晴人は首を横に振り、礼を述べる。
「神子様……邪魔したことをお許しくださったばかりか、私を気遣ってそのようなお言葉まで……何とお優しいのでしょう」
うっとりと晴人を見つめながら、青年は夢見るような声で呟く。
どうも勘違いしているようで、晴人はどうしたものかと苦笑を浮かべるが、青年は晴人の様子などお構いなしのようだった。
「私は神子様が現れたという話を聞き、都からやってきました。私どもの都も魔素の影響により、あまり芳しい状態ではなく……ぜひ、神子様においでいただけないかと思ったのです。どうか、私と一緒に都にいらしてくださいませんか?」
姿勢を正すと、青年はすがるような眼差しを向けて晴人に懇願してくる。
「え……はい、俺でよかったら……」
晴人は二つ返事で頷いた。もともと都に向かうつもりだったのだし、何より青年は貞操の恩人だ。断る理由などない。
しかし、言ってからちらりとセイの様子を伺ってみれば、セイは不機嫌そうに唇を引き結んでいた。
どうしたのだろうと驚いていると、セイが晴人の様子に気づいたようだ。
「……きみがそうしたかったら、いいんじゃない」
セイは突き放すように言い捨てる。晴人は何かおかしなことをしてしまったのだろうかと、おろおろとしてしまう。
「神子様、ありがとうございます!」
ところが晴人の態度になど気づかずに、感激した様子で青年が叫び、晴人の手をうやうやしく取って手の甲に口付ける。
「……っ!?」
先ほどまでの強姦未遂とは違った意味での気恥ずかしさにとらわれ、晴人は目を見開いて固まってしまう。セイがぷい、と晴人から顔をそらした。
結局、セイの不自然な態度に言及することはできず、晴人は青年の用意した馬車に揺られることになったのだった。
晴人が神子だと肯定すると、青年は顔を青ざめさせて謝罪した。
魔物に襲われている人を助けたつもりが、神子が魔物を浄化しようとしているところを邪魔してしまったと思ったようだ。
まったくの誤解である。
「いや、助かりました。ありがとうございます」
あわてて晴人は首を横に振り、礼を述べる。
「神子様……邪魔したことをお許しくださったばかりか、私を気遣ってそのようなお言葉まで……何とお優しいのでしょう」
うっとりと晴人を見つめながら、青年は夢見るような声で呟く。
どうも勘違いしているようで、晴人はどうしたものかと苦笑を浮かべるが、青年は晴人の様子などお構いなしのようだった。
「私は神子様が現れたという話を聞き、都からやってきました。私どもの都も魔素の影響により、あまり芳しい状態ではなく……ぜひ、神子様においでいただけないかと思ったのです。どうか、私と一緒に都にいらしてくださいませんか?」
姿勢を正すと、青年はすがるような眼差しを向けて晴人に懇願してくる。
「え……はい、俺でよかったら……」
晴人は二つ返事で頷いた。もともと都に向かうつもりだったのだし、何より青年は貞操の恩人だ。断る理由などない。
しかし、言ってからちらりとセイの様子を伺ってみれば、セイは不機嫌そうに唇を引き結んでいた。
どうしたのだろうと驚いていると、セイが晴人の様子に気づいたようだ。
「……きみがそうしたかったら、いいんじゃない」
セイは突き放すように言い捨てる。晴人は何かおかしなことをしてしまったのだろうかと、おろおろとしてしまう。
「神子様、ありがとうございます!」
ところが晴人の態度になど気づかずに、感激した様子で青年が叫び、晴人の手をうやうやしく取って手の甲に口付ける。
「……っ!?」
先ほどまでの強姦未遂とは違った意味での気恥ずかしさにとらわれ、晴人は目を見開いて固まってしまう。セイがぷい、と晴人から顔をそらした。
結局、セイの不自然な態度に言及することはできず、晴人は青年の用意した馬車に揺られることになったのだった。
0
お気に入りに追加
45
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる