貞操を守りぬけ!

四葉 翠花

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31.貞操の危機1

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「神子様……ご無礼は承知です。神子様は直接の交わりなしにすら、魔を浄化してしまったと聞いております。それであれば、交わりを介してならばきっと、わたくしの穢れた身と魂までもお救いいただけるのではないでしょうか」

 神殿長の手がうやうやしく晴人の服を脱がせていく。動けない晴人はただ着せ替え人形として黙っていることしかできない。
 セイの姿を必死に探し、寝台の横に浮かぶ姿を見つけると視線で助けを求める。

「あいにく、神殿長の身にはそれほど魔素は取り込まれていないようだね。穢れた、というのは自らがそう思い込んでいるだけだろう。正直、吸収できる魔素が少ないからあまりうまみのある相手じゃないけど……まあこの際、きっかけとしてヤられてみるといいんじゃないかな」

 あっさりと放たれた言葉に晴人は愕然とする。
 先ほど、晴人が貞操を守ることに理解を示してくれたのは、いったいどこの誰だったのだろうか。選択を尊重するとぬかしたのは、どの口だろうか。

「神子様……お怒りはごもっともです。申し訳ございません……後ほど、どのようなお叱りでも受けますので、どうか一刻も早く穢れたわたくしをお救いください……」

 セイに憤る晴人に向け、怒りを自分へのものと勘違いしたらしい神殿長が謝罪を口にのぼらせる。しかし、手は止めない。
 ほどなく晴人はすべての衣服を剥ぎ取られ、寝台にうつ伏せとなって寝かされた。クッションのようなものを下に敷かれ、尻だけがやや高く上がった状態だ。
 とろり、とぬめりを帯びた液体が晴人の臀部に垂らされた。神殿長の指が液体をすくって、晴人の本来入れるべきではない場所へと伸ばされる。

「……っ!」

 晴人の口からはかすれた呻きしか出ない。
 ゆっくりと指が内部に侵入してきた。優しく探るような動きで、苦痛はない。奇妙な異物感だけがあった。

「神子様……もしかして、慣れておいでではない……?」

 意外そうな神殿長の声が晴人の頭上から響いた。それでも内部を蹂躙する指は動きを止めず、何かを探すように蠢く。

「それなら……まずは少しでも快楽を味わってください」

 ある場所をかすめたとき、動けないはずの晴人の身体がわずかに跳ねた。晴人の全身を電流のような刺激が駆け巡る。

「ここが神子様の良いところですね」

 満足そうな呟きをもらすと、神殿長は同じ場所を何度も執拗に責め立ててきた。ときには優しくかすめるように指を蠢かせ、ときには強く擦りあげてくる。

 晴人にも、男同士で繋がるときはこの場所を使用するという知識くらいは、この世界に来る前からあった。しかし、もちろん晴人は実践したことなどない。
 思い起こすのは幼い頃に座薬を使われたことだが、あれほど細い物体でも苦痛があり、気持ち悪いだけだった。

 そもそもこの場所は出すところであり、入れるところではない。それを無理に、しかも太い男のものでこじ開けるなど、正気の沙汰ではないとしか思えなかった。
 快楽を生み出す部位とも信じられない。細い座薬ですら痛かったのだ。
 きっと、この場所を使って性交する人たちは、並々ならぬ努力と訓練を重ねてきたのだろうと晴人は思っていた。そしてそういった行為は一般人の晴人には関係ないことだと、自分から切り離してもいた。

 ところが今、晴人はその場所を指でかき回され、快楽を覚えている。
 神殿長の指は二本に増えており、どう考えてもいつかの座薬よりも太いだろう。
 それなのに苦痛などかけらもなく、全身をぞくぞくとした愉悦だけが駆け巡っていく。
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