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28.来訪者2
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「弟さんのこと、俺も気に留めておくようにします。えっと、弟さんの特徴とかを教えてもらえますか?」
「ありがとうございます。弟は今年十五歳になるはずで、名はリオンと申します。髪も目も私と同じ色で、特にこの金色の瞳は珍しいかと思います。最後に会ったのは三年前ですが、当時は女の子のような顔だとよく言われておりました。おそらく今なら、もっと私に似ていると思います」
言われて、晴人はシオンの顔をじっと見つめる。
この世界に来てからまだわずかではあるが、これほどの美青年などいなかった。異世界とはいえ、美形がごろごろしているというわけではないようだ。
この美貌に匹敵する者といえば、あの美少女にしか見えなかったインプくらいだろうか。晴人はインプの顔を思い出しながら、シオンと比べてみる。
アーモンド型の瞳は、似ているような気がした。インプのほうが大きな瞳をしていたようにも思うが、色はどうだっただろうか。
あいにく色までは思い出せないが、日本にいるときと違和感なく受け止めたので、おそらく黒か茶色あたりだったのだろうと想像できる。
そこまで考え、晴人ははっとした。インプは魔物であり、シオンの弟であるはずがない。晴人は今までの考えを打ち消す。
「わかりました……リオン君ですね。もし会うことがあったら、お兄さんが探していたと伝えておきます」
気を取り直し、晴人はこの先向かう場所に神殿があれば、シオンの弟についても尋ねてみようと心に刻む。
「本当にありがとうございます。神子様のお優しさに、どれだけ感謝の言葉をつらねても足りないくらいでございます。こうして神子様のお傍にいるだけでも、温かいお力が伝わってまいります」
控えめながらも嬉しそうに顔をほころばせ、シオンは丁重な礼を述べる。
「それでは失礼いたします。お時間をいただき、しかも私のぶしつけな願いまでお聞きくださいまして、ありがとうございました」
シオンは立ち上がって晴人に礼をすると、次に晴人の隣に漂うセイに向けても礼をした。
晴人は思わずセイとシオンを交互に見比べるが、シオンは躊躇することなく部屋を出て行ってしまった。
晴人が視線を移せば、セイもあっけにとられたような顔をしていた。
「……今の聖娼、僕のことが見えていたね。初めてだよ。よっぽど力が強いみたいだね」
つくづく驚いたようにセイがゆっくりと息を吐いた。
「そんなにすごいんだ……」
少なくとも三百年は生きているセイが初めてだというのだ。シオンの力はかなり秀でているのだろう。
「……あのさ、今の話ってどう思う? 神殿をたらいまわしにされることって、あるの?」
シオンの力はとりあえずおいておき、晴人は疑問をセイにぶつけてみる。
「今は魔素が濃くなっているからね。おかしい話ではないと思うよ。特に力の強い聖娼ならどこでも欲しがるだろうね。もし弟も今の聖娼並みに力が強かったら、引っ張りだこだよ」
「そっか……それともうひとつ。聖娼たちの話を聞いていると、神殿長さんって評判いいよね。気をつけろっていうのは、いったいどういうことなんだろう……」
「まだあの魔物の言葉を覚えていたのかい」
セイが呆れたような声をもらす。
「いや……何となく気になって。もしかしたら、姿を消したリオン君にも神殿長さんが絡んでいたり……って、考えすぎか」
晴人は軽く首を振って考えを打ち消す。インプから送られた忠告の言葉は、意外と根深く晴人の中に突き刺さっているようだった。
「ありがとうございます。弟は今年十五歳になるはずで、名はリオンと申します。髪も目も私と同じ色で、特にこの金色の瞳は珍しいかと思います。最後に会ったのは三年前ですが、当時は女の子のような顔だとよく言われておりました。おそらく今なら、もっと私に似ていると思います」
言われて、晴人はシオンの顔をじっと見つめる。
この世界に来てからまだわずかではあるが、これほどの美青年などいなかった。異世界とはいえ、美形がごろごろしているというわけではないようだ。
この美貌に匹敵する者といえば、あの美少女にしか見えなかったインプくらいだろうか。晴人はインプの顔を思い出しながら、シオンと比べてみる。
アーモンド型の瞳は、似ているような気がした。インプのほうが大きな瞳をしていたようにも思うが、色はどうだっただろうか。
あいにく色までは思い出せないが、日本にいるときと違和感なく受け止めたので、おそらく黒か茶色あたりだったのだろうと想像できる。
そこまで考え、晴人ははっとした。インプは魔物であり、シオンの弟であるはずがない。晴人は今までの考えを打ち消す。
「わかりました……リオン君ですね。もし会うことがあったら、お兄さんが探していたと伝えておきます」
気を取り直し、晴人はこの先向かう場所に神殿があれば、シオンの弟についても尋ねてみようと心に刻む。
「本当にありがとうございます。神子様のお優しさに、どれだけ感謝の言葉をつらねても足りないくらいでございます。こうして神子様のお傍にいるだけでも、温かいお力が伝わってまいります」
控えめながらも嬉しそうに顔をほころばせ、シオンは丁重な礼を述べる。
「それでは失礼いたします。お時間をいただき、しかも私のぶしつけな願いまでお聞きくださいまして、ありがとうございました」
シオンは立ち上がって晴人に礼をすると、次に晴人の隣に漂うセイに向けても礼をした。
晴人は思わずセイとシオンを交互に見比べるが、シオンは躊躇することなく部屋を出て行ってしまった。
晴人が視線を移せば、セイもあっけにとられたような顔をしていた。
「……今の聖娼、僕のことが見えていたね。初めてだよ。よっぽど力が強いみたいだね」
つくづく驚いたようにセイがゆっくりと息を吐いた。
「そんなにすごいんだ……」
少なくとも三百年は生きているセイが初めてだというのだ。シオンの力はかなり秀でているのだろう。
「……あのさ、今の話ってどう思う? 神殿をたらいまわしにされることって、あるの?」
シオンの力はとりあえずおいておき、晴人は疑問をセイにぶつけてみる。
「今は魔素が濃くなっているからね。おかしい話ではないと思うよ。特に力の強い聖娼ならどこでも欲しがるだろうね。もし弟も今の聖娼並みに力が強かったら、引っ張りだこだよ」
「そっか……それともうひとつ。聖娼たちの話を聞いていると、神殿長さんって評判いいよね。気をつけろっていうのは、いったいどういうことなんだろう……」
「まだあの魔物の言葉を覚えていたのかい」
セイが呆れたような声をもらす。
「いや……何となく気になって。もしかしたら、姿を消したリオン君にも神殿長さんが絡んでいたり……って、考えすぎか」
晴人は軽く首を振って考えを打ち消す。インプから送られた忠告の言葉は、意外と根深く晴人の中に突き刺さっているようだった。
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