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12.はじめてのモテ期と魔物1
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晴人が二階の客室から一階の食堂に降りて行くと、すでににぎわっているようだった。客室の数よりもずっと多くの人たちがいるので、おそらく村の人たちが食堂だけ利用しているのだろう。
ただ若者から年寄りまで様々な年齢の客がいるが、全て男である。給仕をしているのも先ほど受付をしていた少年なので、やはり男だ。
「今日もかわいいねー」
常連らしき中年の男が、給仕をする少年の尻を撫でる姿があった。
「やだなー、やめてくださいよ」
少年はさほど嫌がる素振りもみせず、慣れた様子で男の手をあしらう。いつもの出来事で慣れっこだというように、本人たちも周囲も誰も気に留めない。
「……男の尻、撫でちゃうんだ」
ぼそっと晴人は呟く。
ウエイトレスの尻を撫でるというのは、よくある話だ。現代日本ではセクハラとなる行為とはいえ、時代や背景が変われば珍しくもないだろう。かわいい女の子の尻を撫でたいという気持ちなら、晴人にもよくわかる。
だが、少年の尻を撫でたいという気持ちはさっぱり理解できない。
「何をいまさら」
やや呆れたようなセイの声が聞こえてくる。晴人はセイに視線を向けたが、ごく真面目な顔を見ると、黙って視線をそらした。
「おお、巡礼っていうのは兄ちゃんかい?」
すでにやや酒が入っているらしい中年の男が、酒の入った杯を持ちながら晴人に近づいてくる。それが合図だったかのように、食堂内の注目が晴人に向く。
「おや、なかなか見ないような、綺麗な兄ちゃんじゃないか」
「本当だな。兄ちゃん、一杯どうだい?」
わらわらと地元民らしき男たちが晴人に寄ってくる。
好意的な姿ばかりだったが、晴人は混乱してきょろきょろとすることしかできない。
村によそ者がやってくることは珍しいのだろう。巡礼というのは好意的に受け止められるらしいので、久しぶりの旅人に村人たちが興味を示すのは当然といえば当然だ。
しかし、晴人の容姿にも興味を示しているのは何故だろう。
晴人は自らの顔面偏差値が決して高くないことを知っている。七五三の衣装を着たときなど、馬子にも衣装だという声をよくもらっていたので、二目と見られぬほどではないが、よくて人並み程度ということだろう。
男たちはおごりだから飲めと酒をくれたり、うまいから食べてみろと料理を分けてくれたりもする。誰も彼も、どことなく熱っぽく晴人を見つめているように思えるのは、気のせいということにしたい。
生まれて初めて到来したモテ期だというのに、微妙に嬉しくない。尻がむずむずとしてしまうようだ。
ただ若者から年寄りまで様々な年齢の客がいるが、全て男である。給仕をしているのも先ほど受付をしていた少年なので、やはり男だ。
「今日もかわいいねー」
常連らしき中年の男が、給仕をする少年の尻を撫でる姿があった。
「やだなー、やめてくださいよ」
少年はさほど嫌がる素振りもみせず、慣れた様子で男の手をあしらう。いつもの出来事で慣れっこだというように、本人たちも周囲も誰も気に留めない。
「……男の尻、撫でちゃうんだ」
ぼそっと晴人は呟く。
ウエイトレスの尻を撫でるというのは、よくある話だ。現代日本ではセクハラとなる行為とはいえ、時代や背景が変われば珍しくもないだろう。かわいい女の子の尻を撫でたいという気持ちなら、晴人にもよくわかる。
だが、少年の尻を撫でたいという気持ちはさっぱり理解できない。
「何をいまさら」
やや呆れたようなセイの声が聞こえてくる。晴人はセイに視線を向けたが、ごく真面目な顔を見ると、黙って視線をそらした。
「おお、巡礼っていうのは兄ちゃんかい?」
すでにやや酒が入っているらしい中年の男が、酒の入った杯を持ちながら晴人に近づいてくる。それが合図だったかのように、食堂内の注目が晴人に向く。
「おや、なかなか見ないような、綺麗な兄ちゃんじゃないか」
「本当だな。兄ちゃん、一杯どうだい?」
わらわらと地元民らしき男たちが晴人に寄ってくる。
好意的な姿ばかりだったが、晴人は混乱してきょろきょろとすることしかできない。
村によそ者がやってくることは珍しいのだろう。巡礼というのは好意的に受け止められるらしいので、久しぶりの旅人に村人たちが興味を示すのは当然といえば当然だ。
しかし、晴人の容姿にも興味を示しているのは何故だろう。
晴人は自らの顔面偏差値が決して高くないことを知っている。七五三の衣装を着たときなど、馬子にも衣装だという声をよくもらっていたので、二目と見られぬほどではないが、よくて人並み程度ということだろう。
男たちはおごりだから飲めと酒をくれたり、うまいから食べてみろと料理を分けてくれたりもする。誰も彼も、どことなく熱っぽく晴人を見つめているように思えるのは、気のせいということにしたい。
生まれて初めて到来したモテ期だというのに、微妙に嬉しくない。尻がむずむずとしてしまうようだ。
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