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67.見送り

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 たくさんの出来事を凝縮したような数日が終わり、ようやくヴァレンは日常を取り戻しつつあった。
 ロシュとネヴィルの話は無事にまとまり、ネヴィルが独立した後はローダンデリアの事業に関わることになったようだ。
 安全のためもあって、ネヴィルもジリーメルも、島に滞在している。この際だからと、ネヴィルは島をいろいろ見せて、ジリーメルに勉強させているらしい。

 ヴァレンが礼を言いそびれたイーノス宛てに手紙を送ると、数日後に帰ってきた手紙には『風月花』の所有者だった男が倒れたと書いてあった。ヴァレンの診断どおりだ。
 もうジリーメルを島から出しても平気だろう。ネヴィルに『風月花』を献上する話を進めても大丈夫だと伝えると、手紙でやり取りが行われていた。
 そちらも、もともとの予定だった権力者は『風月花』が手に入るのならばそれが一番であり、こっそり進んでいたネヴィルが献上品になるという話は立ち消えたようだ。

 そして、とうとうネヴィルたちも島を去る日が来た。
 ロシュもネヴィルと行動を共にするようで、これでジリーメルも合わせると一気に三人が去ることになる。
 今まで賑やかだった分、彼らが去ることは寂しくもあるが、ネヴィルが元気になって島を去ることができ、ヴァレンはほっと胸を撫で下ろす。
 ヴァレンはエアイールと共に、船着場まで見送りにやってきていた。

「ヴァレン……きみには、本当に世話になったよ。どれだけ感謝しても足りないくらいだ。僕のことだけじゃなく、ジリーメルのことまで……本当に、ありがとう」

 全てがうまく回りつつあるネヴィルは、島に来たときのような悲壮さはかけらもなかった。顔色が良くなり、表情もやわらかい。

「……ジリーメルって、前はもっと傲慢で強情な子だったんだけど……すっかり素直になってびっくりしたよ。でも……それだけ怖い目にあったんだろうなって思うと、かわいそうな気もするな」

「まあ、いろいろと張り詰めていたものが切れて、本来の性格が出てきたのかもしれないよ。昔のネヴィルのように、さ」

「……それを言われると、ちょっとつらいな」

 ネヴィルは苦笑しながら呟く。

「そういえば、ローダンデリア領主ってヴァレンの従兄なんだってね。きみ、そんなに立派な血筋だったの……?」

「立派っていうか……もともとはただの貧乏貴族だし、俺が生まれたのは商家だよ。それに、血筋がどうのって言うのなら、この島にはもっとすごいのがいるだろう?」

 ヴァレンは、ロシュと何かを話しているエアイールをちらりと見る。

「ああ……そうだったね」

 やや声を潜めてネヴィルが頷く。そして二人とも、これ以上その話題に触れることはなかった。
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