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61.過去への悔恨

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 ヴァレンがネヴィルを連れて、門の外の休憩所まで戻ると、ちょうどジリーメルも目を覚ましたところのようだった。
 まずはネヴィルに部屋の外で待っていてもらい、ヴァレンだけがジリーメルの前に現れる。

「あ……あの……僕は、助かったんでしょうか? あの男から、逃げられたんですか? ここは……?」

 ジリーメルは部屋を見回し、おどおどとしながらヴァレンに問いかけてくる。

「大丈夫だよ、無事に逃げ切れた。ここはあの男が追ってこられないような場所で、安全だよ」

 安心させるようにヴァレンが微笑むと、強張っていたジリーメルの身体から力が抜けていったようだ。

「あ……ありがとうございます……本当に、ありがとうございます……」

 涙をにじませながら、ジリーメルは何度もヴァレンに感謝の言葉を述べる。

「さて、ジリーメル君。きみは自由なわけだけれど、これからどうしたい?」

「……どうって……えっと、まずは助けてくれたあなたにお礼を……でも、今の僕は無一文で、この身でお礼をすることくらいしかできませんけれど……」

「いや、俺、男の子に興味ないから」

 ヴァレンが正直に答えてしまうと、ジリーメルの表情が悲痛に歪んだ。
 しかし、ヴァレンは構わずに話を続ける。

「えっと、別に俺への礼はいいんだ。俺が好きでやったことだし。それよりも、これから行く当てはあるの?」

「……いえ……」

「ネヴィルのところには戻らないの?」

「……今さら、逃げ出した僕が戻れるはずがありません……」

「ネヴィルが許してくれるとしたら? それとも、ネヴィルのところには何があっても戻りたくない?」

「いえ……戻れるものなら、戻りたいです……。もっと、きちんと教わっておけばよかった……頑張ればよかった……」

 ジリーメルは俯きながら、肩を震わせる。か細い声で呟くのは、過去への悔恨だ。

「していればよかった、じゃなくて、これからしようとは思わないの? ネヴィルに謝って、許してもらってから、さ」

 悔いと共に過去を振り返ることなどないヴァレンは、何故これからのことに目を向けないのかという疑問をそのままぶつける。
 しかし、ジリーメルは俯くだけだ。

「……一度、間違いを犯してしまったのに、もう許してもらえてもらえるはずがありません……。そうだ、あなたはネヴィルさんのお友達でしたよね。ネヴィルさんに、僕が謝っていたって伝えてもらえませんか?」

「そういうことは自分で言いなよ。それに、ネヴィルがどうして許さないと思うんだい? ネヴィルだって、昔はきみと似たようなことをやっている。でも、間違っていたと認めてやり直し、努力したんだ。……ねえ、ネヴィル?」
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