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14.取り残されること

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 エアイールは、精神状態がかなり不安定になっているようだ。
 見習い時代からヴァレンとエアイールは同期として過ごしてきたが、同期の中ではこの二人が突出していて、他に並ぶような相手はいなかった。一つ年上のネヴィルが似たような位置にいたため、三人でよく過ごしていたものだ。

 しかしネヴィルは一年ほど前に、島を出た。そのときもエアイールは、口でこそせいせいするなど憎まれ口を叩いていたが、実際には寂しそうだったことをヴァレンは知っている。
 それでもそのときは、まだヴァレンもミゼアスもいた。エアイールにとってミゼアスは憧れであり、目標でもあった存在だ。
 エアイールが親しく口をきくような相手は、ヴァレン、ネヴィル、ミゼアスの三人だけだった。

 それが先日、とうとうミゼアスも島を出てしまった。長い間白花の頂点に君臨し、それがずっと続くと思われていたミゼアスでさえ、幼馴染であるアデルジェスと共に去っていったのだ。
 ロシュはアデルジェスの友人であり、ヴァレンとも幼馴染というほどではないが、以前に関わりがあった人物である。

 おそらくエアイールにとっては、ミゼアスが島を去ったときと状況が重なっているように感じられるのだろう。
 ヴァレンが去ってしまえば、エアイールの近しい人は誰もいなくなってしまうのだ。おそらく、エアイールは孤独への恐怖に苛まれているのだろう。

 取り残されることの寂しさなら、ヴァレンにもわかる。
 ミゼアスが愛しい相手との旅立ちを迎えられたことは、素直に嬉しい。幸せになってほしいと、心から願いもする。
 それでも、幸福と寂しさは同居できるものなのだ。
 ミゼアスが島を去ったことを祝福する気持ちに偽りはないが、同時に寂しくもある。

 いざとなれば感情をばらばらに切り離せるヴァレンだからこそ、悲しみに呑み込まれることはありえないと、悠然と構えていられるが、エアイールはそうではないだろう。
 思えば、初めて身体を重ねたのも、ミゼアスが去っていた日の夜だった。慰めてほしいと言われ、減るものでもないし構わないかと身体を差し出したのだ。
 なんとなくその後も関係を続けているが、今もこれでエアイールを慰めることができているのだろうか。
 ヴァレンはよくわからないまま、エアイールの頭を撫で続けることしかできなかった。
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