126 / 138
126.成れの果て
しおりを挟む
夕方近く、グリンモルド伯爵領に入った。
馬車は伯爵の屋敷に向かう。アデルジェスが現在住居としている兵舎もその近くにある。
するとミゼアスが荷物をあさり始めた。
「うん……あると思ったら、やっぱり……」
ミゼアスが呟いて取り出したのは、女物の服と化粧道具だった。
「……それ、どうしたの?」
「領主様から渡された。必要なものを詰め込んでおいたって」
「はあ……」
何とも手回しのよいことだ。アデルジェスは半ば呆れすら覚えていた。
馬車の中でミゼアスが着替える。薄緑色の動きやすそうなドレスだ。旅用なのかもしれない。ごてごてとした飾りはないが、胸元や袖に繊細な刺繍が施されている。
続いてミゼアスは自らに化粧を施していった。アデルジェスは化粧をする姿というものを初めて見る。ついついじっと見てしまっていた。
島で見たような化粧ではなく、目元を柔らかく、優しく見えるようにしているようだった。ミゼアスはややきつい目をしているので、そこが和らぐとかなり違って見える。
頬にも何かを乗せ、唇にはうっすらと紅を差す。
髪も両側を編みこみ、後ろを髪留めでとめる。
「こんなところかな」
ミゼアスがそう呟いて身支度を終えると、そこには絶世の美少女がいた。
化粧は全体的に薄めで、柔らかく優しそうな印象だ。今までこれほどの美少女を見たことなどない。
アデルジェスは思わず顔を赤くして俯いてしまう。
「どう? これならフェイちゃんだって思える? 可愛い?」
からかうようにミゼアスが尋ねてくる。
「う……うん……可愛い……」
ぼそぼそとアデルジェスが答えると、ミゼアスがしなだれかかってきた。
「じゃあ、今度この格好でしてみようか? ちょっと倒錯的でいいだろう」
「ええっ!?」
「きみ、まだよく僕とフェイちゃんが繋がっていないみたいだし。だったら、幼馴染で初恋のフェイちゃんを犯しちゃうって、興奮しない?」
「ううっ……」
アデルジェスは頭を抱えた。自分の中にある聖域が崩されていく気分だった。あの甘く、そして切ない初恋の思い出が汚されるような気すらする。
だがこの言葉を吐いたのは、その幼馴染にして初恋であるフェイちゃんの、成れの果てなのだ。しかもすでに何回も肌を重ねている。今更ではある。
そして認めたくはないが、確かに少しだけ興奮してしまった。アデルジェスにはそのことも自分を許せない気分だった。
「ジェスのこと、ずっと好きだったの……ああ、でも恥ずかしい……お願い、優しくして……」
女の子のような声まで作り、恥じらう少女のふりをするミゼアス。
「お願い……やめて……」
アデルジェスはさらに頭を抱える。認めたくないが、興奮してしまった。下半身が反応してしまったのだ。
「ふふ……じゃあ、後は夜にとっておこうね。今日はまだ色々あるし、無理かもしれないけれど。でも、急ぐことはないよね。これからずっと一緒にいられるんだもの」
馬車は伯爵の屋敷に向かう。アデルジェスが現在住居としている兵舎もその近くにある。
するとミゼアスが荷物をあさり始めた。
「うん……あると思ったら、やっぱり……」
ミゼアスが呟いて取り出したのは、女物の服と化粧道具だった。
「……それ、どうしたの?」
「領主様から渡された。必要なものを詰め込んでおいたって」
「はあ……」
何とも手回しのよいことだ。アデルジェスは半ば呆れすら覚えていた。
馬車の中でミゼアスが着替える。薄緑色の動きやすそうなドレスだ。旅用なのかもしれない。ごてごてとした飾りはないが、胸元や袖に繊細な刺繍が施されている。
続いてミゼアスは自らに化粧を施していった。アデルジェスは化粧をする姿というものを初めて見る。ついついじっと見てしまっていた。
島で見たような化粧ではなく、目元を柔らかく、優しく見えるようにしているようだった。ミゼアスはややきつい目をしているので、そこが和らぐとかなり違って見える。
頬にも何かを乗せ、唇にはうっすらと紅を差す。
髪も両側を編みこみ、後ろを髪留めでとめる。
「こんなところかな」
ミゼアスがそう呟いて身支度を終えると、そこには絶世の美少女がいた。
化粧は全体的に薄めで、柔らかく優しそうな印象だ。今までこれほどの美少女を見たことなどない。
アデルジェスは思わず顔を赤くして俯いてしまう。
「どう? これならフェイちゃんだって思える? 可愛い?」
からかうようにミゼアスが尋ねてくる。
「う……うん……可愛い……」
ぼそぼそとアデルジェスが答えると、ミゼアスがしなだれかかってきた。
「じゃあ、今度この格好でしてみようか? ちょっと倒錯的でいいだろう」
「ええっ!?」
「きみ、まだよく僕とフェイちゃんが繋がっていないみたいだし。だったら、幼馴染で初恋のフェイちゃんを犯しちゃうって、興奮しない?」
「ううっ……」
アデルジェスは頭を抱えた。自分の中にある聖域が崩されていく気分だった。あの甘く、そして切ない初恋の思い出が汚されるような気すらする。
だがこの言葉を吐いたのは、その幼馴染にして初恋であるフェイちゃんの、成れの果てなのだ。しかもすでに何回も肌を重ねている。今更ではある。
そして認めたくはないが、確かに少しだけ興奮してしまった。アデルジェスにはそのことも自分を許せない気分だった。
「ジェスのこと、ずっと好きだったの……ああ、でも恥ずかしい……お願い、優しくして……」
女の子のような声まで作り、恥じらう少女のふりをするミゼアス。
「お願い……やめて……」
アデルジェスはさらに頭を抱える。認めたくないが、興奮してしまった。下半身が反応してしまったのだ。
「ふふ……じゃあ、後は夜にとっておこうね。今日はまだ色々あるし、無理かもしれないけれど。でも、急ぐことはないよね。これからずっと一緒にいられるんだもの」
3
お気に入りに追加
147
あなたにおすすめの小説
転移者を助けたら(物理的にも)身動きが取れなくなった件について。
キノア9g
BL
完結済
主人公受。異世界転移者サラリーマン×ウサギ獣人。
エロなし。プロローグ、エンディングを含め全10話。
ある日、ウサギ獣人の冒険者ラビエルは、森の中で倒れていた異世界からの転移者・直樹を助けたことをきっかけに、予想外の運命に巻き込まれてしまう。亡き愛兎「チャッピー」と自分を重ねてくる直樹に戸惑いつつも、ラビエルは彼の一途で不器用な優しさに次第に心惹かれていく。異世界の知識を駆使して王国を発展させる直樹と、彼を支えるラビエルの甘くも切ない日常が繰り広げられる――。優しさと愛が交差する異世界ラブストーリー、ここに開幕!
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
森の中の華 (オメガバース、α✕Ω、完結)
Oj
BL
オメガバースBLです。
受けが妊娠しますので、ご注意下さい。
コンセプトは『受けを妊娠させて吐くほど悩む攻め』です。
ちょっとヤンチャなアルファ攻め✕大人しく不憫なオメガ受けです。
アルファ兄弟のどちらが攻めになるかは作中お楽しみいただけたらと思いますが、第一話でわかってしまうと思います。
ハッピーエンドですが、そこまで受けが辛い目に合い続けます。
菊島 華 (きくしま はな) 受
両親がオメガのという珍しい出生。幼い頃から森之宮家で次期当主の妻となるべく育てられる。囲われています。
森之宮 健司 (もりのみや けんじ) 兄
森之宮家時期当主。品行方正、成績優秀。生徒会長をしていて学校内での信頼も厚いです。
森之宮 裕司 (もりのみや ゆうじ) 弟
森之宮家次期当主。兄ができすぎていたり、他にも色々あって腐っています。
健司と裕司は二卵性の双子です。
オメガバースという第二の性別がある世界でのお話です。
男女の他にアルファ、ベータ、オメガと性別があり、オメガは男性でも妊娠が可能です。
アルファとオメガは数が少なく、ほとんどの人がベータです。アルファは能力が高い人間が多く、オメガは妊娠に特化していて誘惑するためのフェロモンを出すため恐れられ卑下されています。
その地方で有名な企業の子息であるアルファの兄弟と、どちらかの妻となるため育てられたオメガの少年のお話です。
この作品では第二の性別は17歳頃を目安に判定されていきます。それまでは検査しても確定されないことが多い、という設定です。
また、第二の性別は親の性別が反映されます。アルファ同士の親からはアルファが、オメガ同士の親からはオメガが生まれます。
独自解釈している設定があります。
第二部にて息子達とその恋人達です。
長男 咲也 (さくや)
次男 伊吹 (いぶき)
三男 開斗 (かいと)
咲也の恋人 朝陽 (あさひ)
伊吹の恋人 幸四郎 (こうしろう)
開斗の恋人 アイ・ミイ
本編完結しています。
今後は短編を更新する予定です。
Please,Call My Name
叶けい
BL
アイドルグループ『star.b』最年長メンバーの桐谷大知はある日、同じグループのメンバーである櫻井悠貴の幼なじみの青年・雪村眞白と知り合う。眞白には難聴のハンディがあった。
何度も会ううちに、眞白に惹かれていく大知。
しかし、かつてアイドルに憧れた過去を持つ眞白の胸中は複雑だった。
大知の優しさに触れるうち、傷ついて頑なになっていた眞白の気持ちも少しずつ解けていく。
眞白もまた大知への想いを募らせるようになるが、素直に気持ちを伝えられない。
【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】
彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。
「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」
その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました
海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。
しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。
偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。
御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。
これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。
【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】
【続編も8/17完結しました。】
「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785
↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる