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82.嫉妬

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「エアイールは親身になってフェリスの相談にのって、計画に協力したそうだよ。あの薬だって、エアイールは何か知っていた。僕をきみから引き離しもした。でも、最後に手の平を返したんだ。エアイールに言わせれば、最初からそのつもりだったそうだけれど」

「そうなんだ……」

「ジャニスはこれから追及していくことになる。この件はグリンモルド伯爵にも何か思惑があるみたい。ごちゃごちゃした貴族の考えだろうけれど」

「はあ……」

「とりあえずはこんな感じ。それより……僕の考えが甘かったんだろうけれど、一歩間違えればきみを失うところだった……無事でよかった……」

 ぎゅっとアデルジェスにしがみつき、ミゼアスは頭を擦り付けた。身体が微かに震えている。
 アデルジェスはそっとミゼアスの身体を抱き、頭や背中を優しく撫でてやった。
 しばらくそうしていると、ミゼアスも落ち着いてきたらしい。アデルジェスの胸に埋めていた顔を上げ、きつい眼差しで睨むように見上げてくる。

「じゃあ、今度は僕から質問。どうしてきみはフェリスにのこのこついて行ってしまったんだい? それもあんな密室に。せめて広場や人のいる喫茶店とか、人目のある場所にしようとは思わなかったの?」

「う……」

 アデルジェスは言葉につまる。言われてみれば、確かにそのとおりだ。あんな宿屋らしきところの一室なんて、好きにしてくださいと言わんばかりだろう。

「それとも……フェリスに興味があったのかい? あんなところですることといったら、一つしかないよね。フェリスとしたかったのかい?」

 唇を尖らせてミゼアスが詰問してくる。

「い、いや、そんなこと思っていないよ。そんなんじゃない」

 確かにフェリスに対する興味はあったが、それは幼馴染の子ではないかという疑問だ。ミゼアスの言うようなことは考えもしなかった。

「……怪しい。きみ、本当は僕なんかより女のほうがいいんじゃないのかい?」

「そんなことないって! 俺はミゼアスが好きなんだ。女だろうが男だろうが、他の連中なんてどうでもいいよ」

「本当に……?」

 勢いに任せて言うと、ミゼアスが潤んだ瞳で見上げてくる。不安げに歪められた唇といい、アデルジェスの胸を苦しげに締め付けてくる愛らしさだった。

「う、うん……」

 どぎまぎしながらアデルジェスは答える。
 だが、これはミゼアスが嫉妬しているということなのだろう。そう思うとアデルジェスの胸は心地よく満たされていった。

「じゃあ、どうしてあんな部屋について行ったの?」

 頼りなげな声だった。思わず抱きしめたくなるくらいだ。アデルジェスの胸は締め付けられる苦しさと満たされる喜びが入り混じり、混乱状態になっていた。
 やっぱり黒の箱を持ってくるか……などとミゼアスが呟いたような気がするが、よくわからない。アデルジェスには目の前の愛らしいミゼアスの姿しか見えていなかった。
 しかし、これではいけない。きちんと説明しなければ、とアデルジェスは心を決める。

「それは……フェリスが幼馴染の子じゃないかって思っていたから……」
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