31 / 138
31.敵わない相手
しおりを挟む
「……ちょっと暗い話になっちゃったね。気分を変えて、どこか遊びに行こうか」
「遊び?」
「賭博場でも行ってみる?」
「賭博場!?」
「うん、そういった施設もあるよ。でも、貴族や裕福な相手向けでわりとお上品だから安心して」
「いや……そういうところは……」
兵士たちの間でも賭博はよく行われる。しかしアデルジェスは自分には向いていないという自覚があった。顔にすぐ出てしまうので、同僚たちの格好の餌食とされていたのだ。
それに金銭面の問題もある。貴族や裕福な相手向けということは、掛け金も高そうだ。アデルジェスの懐を考えると、かなり無理があるように思えた。
「じゃあきみが気になっている、広場の奥に行ってみるかい? あの辺の店で場所だけ借りて遊ぶこともできるよ」
「それって……変態向けの店だって言っていなかったっけ……?」
「うん、でも度合いがあるし。痛いのや汚いの、畜生は嫌だけれど、雰囲気だけとか軽いものだったら僕もまんざらでもない」
ミゼアスは軽く目を伏せる。恥らっているように見えなくもない。
「はい!?」
「ああ、でも特殊趣味は無理。笛の音に欲情したりしないし、それだけで射精なんて僕にはできない。合わせ鏡の間に肉を置いて見つめるのも、意味がわからない」
「……それ……なに……?」
ミゼアスの言っていることがわからない。笛や合わせ鏡とは、何かの隠語なのだろうか。アデルジェスは頭が痛くなりそうだった。
「僕にはわからない世界だけれど、笛愛好家っていうのが意外といるらしい。世界各地の笛を取り揃えた店があるんだよ。吹き手に吹いてもらってどれがどう下半身に響くかを試し、お気に入りの一品を見つけたり、そのときの気分で使い分けたりできるんだって。それから……」
「ごめんなさい! もういいです! 聞きたくないです!」
アデルジェスは上擦った声で叫んだ。
あまりに深い茨道すぎる。理解できないし、理解したくもない世界だった。
「そういう変なのなしで! ごくごく普通の散歩がいいです。お願いします」
「ずいぶん健全だねぇ。まあ、きみがいいならいいけど」
ミゼアスはあっけらかんと答える。
やはり敵う相手ではない。アデルジェスは了承の返事を得られたことに安堵しながらも、身体が震えそうになるのを感じていた。
「遊び?」
「賭博場でも行ってみる?」
「賭博場!?」
「うん、そういった施設もあるよ。でも、貴族や裕福な相手向けでわりとお上品だから安心して」
「いや……そういうところは……」
兵士たちの間でも賭博はよく行われる。しかしアデルジェスは自分には向いていないという自覚があった。顔にすぐ出てしまうので、同僚たちの格好の餌食とされていたのだ。
それに金銭面の問題もある。貴族や裕福な相手向けということは、掛け金も高そうだ。アデルジェスの懐を考えると、かなり無理があるように思えた。
「じゃあきみが気になっている、広場の奥に行ってみるかい? あの辺の店で場所だけ借りて遊ぶこともできるよ」
「それって……変態向けの店だって言っていなかったっけ……?」
「うん、でも度合いがあるし。痛いのや汚いの、畜生は嫌だけれど、雰囲気だけとか軽いものだったら僕もまんざらでもない」
ミゼアスは軽く目を伏せる。恥らっているように見えなくもない。
「はい!?」
「ああ、でも特殊趣味は無理。笛の音に欲情したりしないし、それだけで射精なんて僕にはできない。合わせ鏡の間に肉を置いて見つめるのも、意味がわからない」
「……それ……なに……?」
ミゼアスの言っていることがわからない。笛や合わせ鏡とは、何かの隠語なのだろうか。アデルジェスは頭が痛くなりそうだった。
「僕にはわからない世界だけれど、笛愛好家っていうのが意外といるらしい。世界各地の笛を取り揃えた店があるんだよ。吹き手に吹いてもらってどれがどう下半身に響くかを試し、お気に入りの一品を見つけたり、そのときの気分で使い分けたりできるんだって。それから……」
「ごめんなさい! もういいです! 聞きたくないです!」
アデルジェスは上擦った声で叫んだ。
あまりに深い茨道すぎる。理解できないし、理解したくもない世界だった。
「そういう変なのなしで! ごくごく普通の散歩がいいです。お願いします」
「ずいぶん健全だねぇ。まあ、きみがいいならいいけど」
ミゼアスはあっけらかんと答える。
やはり敵う相手ではない。アデルジェスは了承の返事を得られたことに安堵しながらも、身体が震えそうになるのを感じていた。
2
お気に入りに追加
147
あなたにおすすめの小説
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】
彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。
「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」
その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました
海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。
しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。
偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。
御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。
これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。
【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】
【続編も8/17完結しました。】
「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785
↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
チート魔王はつまらない。
碧月 晶
BL
お人好し真面目勇者×やる気皆無のチート魔王
───────────
~あらすじ~
優秀過ぎて毎日をつまらなく生きてきた雨(アメ)は卒業を目前に控えた高校三年の冬、突然異世界に召喚された。
その世界は勇者、魔王、魔法、魔族に魔物やモンスターが普通に存在する異世界ファンタジーRPGっぽい要素が盛り沢山な世界だった。
そんな世界にやって来たアメは、実は自分は数十年前勇者に敗れた先代魔王の息子だと聞かされる。
しかし取りあえず魔王になってみたものの、アメのつまらない日常は変わらなかった。
そんな日々を送っていたある日、やって来た勇者がアメに言った言葉とは──?
───────────
何だかんだで様々な事件(クエスト)をチートな魔王の力で(ちょいちょい腹黒もはさみながら)勇者と攻略していくお話(*´▽`*)
最終的にいちゃいちゃゴールデンコンビ?いやカップルにしたいなと思ってます( ´艸`)
※BLove様でも掲載中の作品です。
※感想、質問大歓迎です!!
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる