5 / 138
05.ネリー
しおりを挟む
「フェ……げほっげほっ!」
思わずアデルジェスは立ち上がった。
その拍子に食べかけの菓子が喉につまり、むせる。さらに慣れない傾斜に足を取られ、その場で盛大な尻餅をついた。
周囲からくすくすと笑う声が聞こえてくる。
目の前の美女もくすりと笑うと、何事もなかったかのようにまた歩き出してしまった。
「大丈夫?」
呆然と固まっていると、後ろから声がした。
見れば、赤毛に明るい茶色の瞳をした女性が心配そうにのぞきこんでいた。十六、七歳くらいだろうか。やや気の強そうな愛らしい顔立ちだった。
「あ……うん、大丈夫……ありがとう」
アデルジェスは深く息を吸い込み、吐く。気を落ち着けて立ち上がると、女性の手の甲にうっすらと花のような模様があるのが見えた。
「大丈夫そうね、よかった。ここって足場があまりよくないから気をつけないと」
人懐こそうな笑みを浮かべて女性が言う。
「えっと……今の……」
遠ざかっていく美女の後ろ姿を視線で追いながら呟いてみる。
「フェリス姉さん? どうかしたの?」
「ああ……いや、何でもない」
アデルジェスは落ち着いて考えてみる。
金髪で緑色の瞳をした女性など、探せばいくらでもいるだろう。幼馴染のあの子であるとは限らない。名前は少し似ていたが違う。そもそも名前を変えている可能性だってあるのだし、名前だけで判断もできないだろう。
「フェリス姉さんのことが気に入ったの? でもお高いわよ」
アデルジェスの思案をどう思ったのか、女性が悪戯っぽく笑う。
「え? い、いや、そんなんじゃ!」
慌てて首を左右に振り、アデルジェスは否定する。
「あなた、顔真っ赤よ。面白いわね。……あたし、ネリー。あなたは?」
「……俺はアデルジェス」
「そう、アデルジェスね。よろしく。せっかくだから少しお話ししない?」
「え? あ、うん……」
流されるがまま、アデルジェスは頷いた。
思わずアデルジェスは立ち上がった。
その拍子に食べかけの菓子が喉につまり、むせる。さらに慣れない傾斜に足を取られ、その場で盛大な尻餅をついた。
周囲からくすくすと笑う声が聞こえてくる。
目の前の美女もくすりと笑うと、何事もなかったかのようにまた歩き出してしまった。
「大丈夫?」
呆然と固まっていると、後ろから声がした。
見れば、赤毛に明るい茶色の瞳をした女性が心配そうにのぞきこんでいた。十六、七歳くらいだろうか。やや気の強そうな愛らしい顔立ちだった。
「あ……うん、大丈夫……ありがとう」
アデルジェスは深く息を吸い込み、吐く。気を落ち着けて立ち上がると、女性の手の甲にうっすらと花のような模様があるのが見えた。
「大丈夫そうね、よかった。ここって足場があまりよくないから気をつけないと」
人懐こそうな笑みを浮かべて女性が言う。
「えっと……今の……」
遠ざかっていく美女の後ろ姿を視線で追いながら呟いてみる。
「フェリス姉さん? どうかしたの?」
「ああ……いや、何でもない」
アデルジェスは落ち着いて考えてみる。
金髪で緑色の瞳をした女性など、探せばいくらでもいるだろう。幼馴染のあの子であるとは限らない。名前は少し似ていたが違う。そもそも名前を変えている可能性だってあるのだし、名前だけで判断もできないだろう。
「フェリス姉さんのことが気に入ったの? でもお高いわよ」
アデルジェスの思案をどう思ったのか、女性が悪戯っぽく笑う。
「え? い、いや、そんなんじゃ!」
慌てて首を左右に振り、アデルジェスは否定する。
「あなた、顔真っ赤よ。面白いわね。……あたし、ネリー。あなたは?」
「……俺はアデルジェス」
「そう、アデルジェスね。よろしく。せっかくだから少しお話ししない?」
「え? あ、うん……」
流されるがまま、アデルジェスは頷いた。
3
お気に入りに追加
147
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜
7ズ
BL
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。
攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。
そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。
しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。
彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。
どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。
ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。
異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。
果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──?
ーーーーーーーーーーーー
狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる