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第三章 巡り会い
90.良い一日を
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「楽器を売っている店って、この近くに楽器屋があったの?」
ゆったりと朝食を食べ終えて食後のお茶を飲みながら、ミゼアスは何気なく尋ねてみる。
「いや、雑貨屋みたいだったよ。置物とか装飾品もあったし、いろいろなものの中に楽器もあった」
「へえ、よくそんな店を見つけたね」
「仕事の帰り道、たまたま竪琴がどうこう言っている声が聞こえてきたんだ。宿屋とか酒場のような感じの看板だったから、そのままだと通り過ぎていたな」
「もしかして、海鳥の羽休め商店のこと?」
ちょうどお茶のおかわりを持ってきたリーゼが話に入ってきた。
先ほどまではやや平常心を欠いていたようだったが、今はもう普段と同じ様子になっているようだ。
「あ……店名までは見なかった。止まり木で羽を休める鳥が描かれた看板だったよ」
「ああ、じゃあきっとそうね。店主さん、黒髪で綺麗な男の人じゃなかった? 物腰が柔らかくて、でもきびきびした感じの」
「うん、そのとおり。ちょっと圧倒されちゃった」
「やっぱり。あの店主さん、素敵よね。大人の色気が滲み出ているっていうのかしら。この辺りの子たちでも、憧れている子は結構いるのよ」
「ああ、なるほど。確かに納得だ」
朗らかに笑うアデルジェスの顔を見ていると、ミゼアスの胸に靄がうっすらと広がる。
「ジェスもその店主さんのことが気に入ったみたいだね」
声にはわずかな棘が含まれた。
「気に入ったっていうか……対応が丁寧で、いいお店だなって思っただけだよ。ミゼアスも気に入るような竪琴があればいいんだけど」
のんびりとしたアデルジェスの言葉を聞いて、ミゼアスの胸から靄が消えうせる。
代わりに、わずかな罪悪感が浮かんできた。アデルジェスはミゼアスのためを思って竪琴を探してくれていたというのに、くだらない嫉妬をしてしまった自らを恥じる。
「うん……きっと、あるような気がする。ジェスが見つけてきてくれたんだもの。ありがとう……ごめんね」
「え?」
「……なんだか、やってられないわ」
よくわからない様子で不思議そうに首を傾げるアデルジェスと、何かに感づいたようでうんざりとした呟きを漏らすリーゼ。
「さ、お茶飲んだら部屋でイチャイチャするなり、お出かけしてイチャイチャするなり、好きにして。良い一日を、ね」
リーゼはわざとらしくため息を吐き出すと、悪戯っぽい笑みを残して仕事に戻っていった。
ゆったりと朝食を食べ終えて食後のお茶を飲みながら、ミゼアスは何気なく尋ねてみる。
「いや、雑貨屋みたいだったよ。置物とか装飾品もあったし、いろいろなものの中に楽器もあった」
「へえ、よくそんな店を見つけたね」
「仕事の帰り道、たまたま竪琴がどうこう言っている声が聞こえてきたんだ。宿屋とか酒場のような感じの看板だったから、そのままだと通り過ぎていたな」
「もしかして、海鳥の羽休め商店のこと?」
ちょうどお茶のおかわりを持ってきたリーゼが話に入ってきた。
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「うん、そのとおり。ちょっと圧倒されちゃった」
「やっぱり。あの店主さん、素敵よね。大人の色気が滲み出ているっていうのかしら。この辺りの子たちでも、憧れている子は結構いるのよ」
「ああ、なるほど。確かに納得だ」
朗らかに笑うアデルジェスの顔を見ていると、ミゼアスの胸に靄がうっすらと広がる。
「ジェスもその店主さんのことが気に入ったみたいだね」
声にはわずかな棘が含まれた。
「気に入ったっていうか……対応が丁寧で、いいお店だなって思っただけだよ。ミゼアスも気に入るような竪琴があればいいんだけど」
のんびりとしたアデルジェスの言葉を聞いて、ミゼアスの胸から靄が消えうせる。
代わりに、わずかな罪悪感が浮かんできた。アデルジェスはミゼアスのためを思って竪琴を探してくれていたというのに、くだらない嫉妬をしてしまった自らを恥じる。
「うん……きっと、あるような気がする。ジェスが見つけてきてくれたんだもの。ありがとう……ごめんね」
「え?」
「……なんだか、やってられないわ」
よくわからない様子で不思議そうに首を傾げるアデルジェスと、何かに感づいたようでうんざりとした呟きを漏らすリーゼ。
「さ、お茶飲んだら部屋でイチャイチャするなり、お出かけしてイチャイチャするなり、好きにして。良い一日を、ね」
リーゼはわざとらしくため息を吐き出すと、悪戯っぽい笑みを残して仕事に戻っていった。
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