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8.神から与えられたのは、罰と……

たとえステラを苦しませたとしても

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「それは……」

アルフィーは何かを言おうと口を開いてみたが、何から話せばいいのか分からず、口を開けたまま固まってしまった。
ステラの中にトラヴィスを入れると言う文字列が、あまりにも想像しづらい内容だったので、複数のパターンでアルフィーは考えた。


まず、ステラのお腹を切り開き、トラヴィスが中に入るパターン。
これは速攻アウトだろう。
普通にステラは死ぬ。

次に、トラヴィスの体の一部を切り取ったものを、切り開いたステラのお腹に入れる。
これも……犠牲になるものが多すぎる。

などなど……アルフィーは……彼が過去見聞きしてきたものが影響しているのだが……グロテスクな想像しか思いつかなかった。

「ルカ、念の為に聞くが」
「うん」
「トラヴィスの体をステラの中に入れるって言うのは……その……」

自分が思いついた中で、最も身体的にはまだマシだろうと言う方法であってほしいと、アルフィーが本気で願いながらルカの回答を待つ。

「うん。トラヴィスとステラが交尾することだって」

やはり、そっちで正解だったか、とアルフィーはステラには聞こえないよう、小さく小さく安心のため息をついた。
……交尾という言い方は、獣同士が行う生殖行為を意味するので、それはアルフィーの中ではしこりとして残ったが。
何故神が、人間同士の性交を交尾と言うのか。
でも、今そのことを考えても展開には関係ないので、アルフィーはしこりをなかったことにしてから

「それを、今ステラに伝えたのか」
「だからメルキオールには言いたくなかったんだよ。きっと怒り狂ってトラヴィスを殺しちゃうかもしれないって神様が言うから」

…………否定をしようと思ったけど、否定できるだけの材料をアルフィーは持っていなかった。

「ど、どうすんだよ」

アルフィーはちらとステラを見る。
もう、どう慰めていいか分からないほど、ステラはただ泣きじゃくっていた。

「嫌です……メルキオール様以外の人とあんなはしたないこと……」
「おい、ステラ、どう言うことだよ?なあ」

ステラは、内容を言わずとも戸惑いと苦しみを口に出していた。
それが余計メルキオールを動揺させた。

「あのさ、ルカ」
「うん」
「その方法じゃないと、いけないのか?」
「んーとねぇ……ちょっと待ってね」

ルカはうーんっと少し考えてから

「トラヴィスの魔の力で、ステラの体の構造を変えてから、もう1回メルキオールと交尾すれば、メルキオールの魔がステラの中にちょっと戻るんだって」
「な、なるほど?」

つまり、ステラの中が今溢れるだけのコップだと例えると、そこにメルキオールの漏れ出した魔を受け入れる構造に作り替えてしまい、余分な魔をそこに受け入れられるようにすればいい……と言うわけらしい。

「ちなみに、それをしなかった場合はどうなる?」
「神様が言うには、メルキオールもステラも、魔の爆発に巻き込まれるって」
「いつ」
「…………多分……明日」

早すぎる。
考えている時間も、本当にそれが正しいか検証する時間もない。
やらないでこのまま2人の命を目の前で失くすくらいなら……。

「ルカ。…………やるしか、ないのか?」
「って、神様は言ってる」
「ルカは?お前はどう思う」
「え?」
「お前は、やったほうがいいと思うか?」

アルフィーは分かっていた。
自分の質問がルカにとって少々意地悪であることを。
ルカは自分の意志で質問に答えたことはなかったから。
きっと今まで、神の言葉を聞き、それを伝えるだけで良い人生だったからなのだろう。
でもアルフィーはあえて聞いてみたかった。

ステラを精神的に追い詰める方法しかないとして、それを実行して2人を助けるべきか否か。
ちなみにアルフィーの心は、決まっていた。


「私は……2人ともっと一緒にいたい」

ルカは、おそらく彼女に今できる最大限の意思表示をしたのだろう。
その言葉を聞いて、アルフィーはニヤと笑った。

「俺も、その気持ちだ」


ステラとトラヴィスを性交させて、メルキオールもステラも助ける。
たとえステラを苦しませたとしても。
命以上に大事なものはきっとない。
これが、アルフィーにとってベストな選択肢だと、本気で信じていた。
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