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8.神から与えられたのは、罰と……
こんなに美しい人を見たのは初めて
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その日も、アルフィーは魚を釣りに川に出た。
ただ、この日はトラヴィスではなく別の人間がアルフィーと一緒だった。
「アルフィー様、ご一緒させていただいても宜しかったでしょうか?」
「むしろ、あなたにこのような役割をさせてしまって、申し訳ない。ステラさん」
アルフィーは、なぜかステラにだけは敬語を使ってしまう。
気品があり、仕草の1つ1つが美しいステラには、貴族のような風格すら感じられた。
たくさんの知識を持つアルフィーでさえ
「こんなに美しい人を見たのは初めてだ」
と本人を目の前にして言葉を漏らしたほどだった。
ステラ自身は、美しいと言われることに慣れていないようで
「そ、そんなことないです!」
と本気で狼狽えていた。
たくさんの知識を持つアルフィーには、男だからこうするべき、女だからこうするべきといった差別的考え方は持ち合わせていない。
徹底した合理主義。
得意なことだけをすればいいとすら、思っている。
だからこそ、いくら生きるために必要な仕事とはいえ、野蛮なこともするような魚釣りや狩りのような仕事に、ステラは合わないとアルフィーは思っていた。
先日メルキオールの力で作った庭で、お茶でも飲んでくれていた方がよっぽど似合うとすら思った。
ところが、アルフィーの心配をよそに、ステラは美しくはにかんだ。
「いいえ、むしろ嬉しいんです」
「何がです?」
「国にいる頃は、こうして外を歩くことすら、ままならなかったのです」
「どういうことですか?」
ステラは、ほんの少し寂しそうな表情をしてから空を見上げながら
「私は、お家の小さな窓からしか、こうして空を眺めることは許されなかったのです」
と言った。
アルフィーはそこまで聞いて悟るくらいには、空気も読める男だった。
「申し訳ない」
「だから、こうして歩いているのが楽しいんですの」
ステラはそう言うと、またにっこりと微笑んだ。
ステラという人間の魔も、アルフィーにとっては未知のもの。
現時点でアルフィーにわかっていることといえば、目の前にある世界の中に、全く別世界の空間を作り、そこと唯一行き来ができるということ。
それだけでも、正直アルフィーにとっては理解不能だった。
ただ、部屋が増えているというのとは訳が違う。
その空間同士、時間の流れも、空気の流れもまるで違う。
1度だけ、アルフィーはステラが作った空間に足を踏み入れたが、体内がよじれるような、言葉にするのが難しい現象に襲われた。
「時空間酔いですわね……」
自分に合わない時空間に入ってしまうと、その拒絶反応で体がおかしくなるのだと、ステラは泣きながらアルフィーに説明してはいたが、その原理すら、アルフィーには理解ができなかった。
だからこそ、ステラの近くにいて、必要があればステラの魔をもう少し分析してみたいという好奇心も、アルフィーの中に芽生えていた。
そうして、川にたどり着くと、ステラは履いていた靴を脱ぎすて、スカートをたくし上げた。
「え、ステラさん、あなたが川に入るんですか?」
「もちろんですわ。私、入ってみたかったんですの」
「いや……しかし……」
アルフィーは、何度もこの川に来たことがあるから知っている。
男のアルフィーの皮膚でも長時間耐えられるかわからない程、この川の水は冷たい。
そんな水に、ステラのようなちょっと刺激を与えたら壊れてしまいそうな肉体を持つ女が入ってもいいのかと、アルフィーは考えた。
「どうしても、入りたいのですか?」
「もちろんですわ」
2回、もちろんですと言われてしまった。
「私、裸足で水の中に入るのが夢だったんですの」
ここまで言われてしまえば、アルフィーも流石に引き止めることはできなかった。
もしステラに何かがあれば、すぐに自分が対処してあげようと、知識の引き出しを片っ端からアルフィーは開け始めた。
その時だった。
「君たち、何か困ってるのかい?」
アルフィーが振り返ると、背中に手を回したトラヴィスが、息を切らせて立っていた。
ただ、この日はトラヴィスではなく別の人間がアルフィーと一緒だった。
「アルフィー様、ご一緒させていただいても宜しかったでしょうか?」
「むしろ、あなたにこのような役割をさせてしまって、申し訳ない。ステラさん」
アルフィーは、なぜかステラにだけは敬語を使ってしまう。
気品があり、仕草の1つ1つが美しいステラには、貴族のような風格すら感じられた。
たくさんの知識を持つアルフィーでさえ
「こんなに美しい人を見たのは初めてだ」
と本人を目の前にして言葉を漏らしたほどだった。
ステラ自身は、美しいと言われることに慣れていないようで
「そ、そんなことないです!」
と本気で狼狽えていた。
たくさんの知識を持つアルフィーには、男だからこうするべき、女だからこうするべきといった差別的考え方は持ち合わせていない。
徹底した合理主義。
得意なことだけをすればいいとすら、思っている。
だからこそ、いくら生きるために必要な仕事とはいえ、野蛮なこともするような魚釣りや狩りのような仕事に、ステラは合わないとアルフィーは思っていた。
先日メルキオールの力で作った庭で、お茶でも飲んでくれていた方がよっぽど似合うとすら思った。
ところが、アルフィーの心配をよそに、ステラは美しくはにかんだ。
「いいえ、むしろ嬉しいんです」
「何がです?」
「国にいる頃は、こうして外を歩くことすら、ままならなかったのです」
「どういうことですか?」
ステラは、ほんの少し寂しそうな表情をしてから空を見上げながら
「私は、お家の小さな窓からしか、こうして空を眺めることは許されなかったのです」
と言った。
アルフィーはそこまで聞いて悟るくらいには、空気も読める男だった。
「申し訳ない」
「だから、こうして歩いているのが楽しいんですの」
ステラはそう言うと、またにっこりと微笑んだ。
ステラという人間の魔も、アルフィーにとっては未知のもの。
現時点でアルフィーにわかっていることといえば、目の前にある世界の中に、全く別世界の空間を作り、そこと唯一行き来ができるということ。
それだけでも、正直アルフィーにとっては理解不能だった。
ただ、部屋が増えているというのとは訳が違う。
その空間同士、時間の流れも、空気の流れもまるで違う。
1度だけ、アルフィーはステラが作った空間に足を踏み入れたが、体内がよじれるような、言葉にするのが難しい現象に襲われた。
「時空間酔いですわね……」
自分に合わない時空間に入ってしまうと、その拒絶反応で体がおかしくなるのだと、ステラは泣きながらアルフィーに説明してはいたが、その原理すら、アルフィーには理解ができなかった。
だからこそ、ステラの近くにいて、必要があればステラの魔をもう少し分析してみたいという好奇心も、アルフィーの中に芽生えていた。
そうして、川にたどり着くと、ステラは履いていた靴を脱ぎすて、スカートをたくし上げた。
「え、ステラさん、あなたが川に入るんですか?」
「もちろんですわ。私、入ってみたかったんですの」
「いや……しかし……」
アルフィーは、何度もこの川に来たことがあるから知っている。
男のアルフィーの皮膚でも長時間耐えられるかわからない程、この川の水は冷たい。
そんな水に、ステラのようなちょっと刺激を与えたら壊れてしまいそうな肉体を持つ女が入ってもいいのかと、アルフィーは考えた。
「どうしても、入りたいのですか?」
「もちろんですわ」
2回、もちろんですと言われてしまった。
「私、裸足で水の中に入るのが夢だったんですの」
ここまで言われてしまえば、アルフィーも流石に引き止めることはできなかった。
もしステラに何かがあれば、すぐに自分が対処してあげようと、知識の引き出しを片っ端からアルフィーは開け始めた。
その時だった。
「君たち、何か困ってるのかい?」
アルフィーが振り返ると、背中に手を回したトラヴィスが、息を切らせて立っていた。
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