【R18】処女だったのに、異世界転生したら俺様王子の伽の相手として調教されていました

6.想定外だった彼の想い

嘘かも知れない。本当かも知れない

俺は、その場で急いで風を飛ばした。
周囲に満ちた臭いから、何か読み取れるのではないかと思ったから。

「王子……何故こんなところで魔力を使うのですか」
「黙れ」
「……御意……」

俺は、ゴードンの周囲に纏う違和感に気づいた。
ねっとりと気持ち悪い臭いが、微かにこびりついている。
その臭いと全く同じ臭いが水差しと……すぐ近くの窓からもした。

（……間違いない……）

ここは魔力に満ちている土地。
何らかの魔力が、ゴードンに影響したのだろう、という仮説はすぐにできた。
そして、この臭いの正体自体は分からない。
でも明らかに、この臭いがゴードンに何かを仕掛けたことは、もう間違いがないだろう。
そして、誰がそれをしたのかも。

（ノア……！）

あいつが、王からの伝言と偽って、ゴードンに何かを言ったのかもしれない。
そのタイミングで、何らかの魔法をゴードンに仕掛けたのかもしれない。
得体の知れない、何かを。

あいつは、息を吐くように嘘をつく男。
けれど、どこからが嘘で、どこからが本当なのか、その境界線を見せない男。
俺の命が、俺の選択によって尽きるのだとしたら、まだ……諦めもできるかもしれない。
でも、俺の選択によって、カシーの命が奪われることは……耐えられない。

嘘かもしれない。
でも、本当かもしれない。
もし、そんなことが起きたら、俺にどれほどのダメージを与えるのか、あいつは知り尽くしているから。
悔しいほどに。

「伽の準備に戻る」
「御意」

ノア……今は、お前の思惑に乗ってやる。
だが、俺はお前に恐れてこの選択をしたわけじゃない。
ほんの少しでも可能性があるであろう死から、カシーを守るためだ。