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世界は拍手する、グレーゾーンの犯罪者たちに
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このままでは自分はいつか死ぬと思った、そう思うと体から力が抜けていくようだ。
逃げ出したいと思っても、ここがどこなのかわからない。
それに逃げたとしても家に帰ることもできない、頼れる人間もいないのだ。
親戚は無理だ、それに友人と呼べる人間は金で繋がっていたようなものだ。
一文無しの自分だと厄介払いされるのは目に見えている。
過去に犯した罪で自分は犯罪者となった今、両親から見放された、新しい国の法律など知らなかった。
少し前に右の肺を取られた、事故で怪我をした青年に移植されたらしい。
肺は一つでも生きられるのだろうか、不安になってしまった自分に人工肺を移植するので心配いりませんと言われて驚いた。
「最近、開発された新しいタイプの臓器ですが、よかったです」
良かった、何がだと思ってしまう、すると試験体、成人男性がいなくて困っていたんですよ、続く言葉に自分はモルモットかと叫んでしまった。
すると医者は首を振った、とんでもないと、そして言葉をつづけた、昨今では動物実験というものは減っているのだという。
臓器や薬品実験の場合、ある程度の成果がでたとしても意味がない、確実な答えが出なければ意味がないというのだ。
マウスやモルモット、犬や猫、大きな個体となれば牛なども実験に使われてきた。
だが人間ではない限り、はつきりとした答えは出てこない。
大丈夫かもしれない、可能性があるという曖昧な答えでは納得できないのだという。
「最近では動物愛護団体の反対意見も厳しくなっていますからね」
まるで、自分は動物以下だと言われているような気がした。
自分は、このままベッドの上で一生を過ごしていくことになるのだろうか。
そんなことを考えていた、ある日のこと、部屋を移動するということを知らされて驚いた。
そこには自分と同じ、いや、年上の男もいた、だが、部屋の出入りを自由にしているし、体の臓器を移植された様子もない、どういうことだろう、不思議に思った。
気になって、どんな犯罪を犯したのかと聞いてみた。
「薬物だよ、ドラッグに手を出したんだ」
「売人をやっていた」
「スリ、強盗まがいのこともやった」
中には海外で犯罪を犯した者もいた。
皆、自慢するように自分の犯した罪を告白するのだ、その様子を見て疑問を抱く、彼らは、ここがどんな場所か知らないのだろうかと思ってしまった。
「あんた、こうしてみるとまともに見えるけど」
一人の青年が不思議そうに尋ねた。
どういうことかと聞くと、薬のせいでおかしなことをいう病人が同室だが、気にしないでとほしいといわれたらしい。
その言葉に笑いたくなった、本気で、そんな言葉を信じているのだろうか。
どうせ、彼らもいずれは自分と同じような目に遭うのだ、そう思っていると、一人の男が声をかけた。
「そんな体じゃ、女ともできないだろう」
すぐには返事ができなかった、今、この男は何を言った、頭がおかしいのか。
「昨日の女は良かったな」
意味が分からなかった。
同室の男達は部屋を出て、数時間、遅いときには一晩中、戻ってこないときもある。
それは女性とセックス、行為をするためだという。
不妊薬の為の実験の為だという、しかも女達は美人で中には有名人もいるらしい。
「おい、それ以上は」
「構わねえだろ、ここから出られないんだ」
男の笑みに男は過去の自分を思いだした。
自分が相手をした女達は若いくて未成年もいた。
それも、ただの性行為ではない、薬を使ったのだ、そのせいで危なく死にかけた女もいた。
あのときは、正直、怖くなり、慌てて父親に電話したのだ。
「おい、あんただって、そのうちできるぜ、とびきりいい女とな」
その言葉にあり得ないだろうと思って、言葉が出てこなかった。
未来がないと悲観していた、これから、どうなってしまうのだろうと思っていたのに男達が女とやっていると聞いて羨ましいと思ったのだ。
死にたいと思っていたのに。
どうせ、ここから出ることはできない、それなら少しでも楽な道を選びたいと思ってしまった。
「移植後の拒否反応もない、歩行訓練を始めてもいいでしょう」
男は、ぽつりと呟いた。
「俺もセックスしたいっていったら、笑うか」
医者は首を振った、あなたはまだ若い、当然ですよ、彼らに刺激を受けたのですね、いいことです、その言葉に男はほっとした。
笑われる、いや、馬鹿にされると思ったのかもしれない。
「有名人とやったって言ってたけど、嘘だろう、そんなことは」
「口の軽い人がいたものだ」
「いいのか、そんなことを」
「あなたは好みのタイプは、この間の移植手術で相手はとても感謝していました」
配慮しますよと言われて男は言葉を飲み込んだ。
すぐには返事ができなかった。
医者は言葉を続ける、有名人、特殊業についている成功者はストレスが一般人とは比べものにはならなですからねという答えが返ってきた。
「だからこその救済システムなんですよ、救うのは犯罪者だけではないんです」
二週間が過ぎた、男はベッドから起きあがれるようになっていた。
それと同時に部屋を変わることになった。
その日、夕食がすむと医者からっくすが死体ですかと聞かれた。
返事の代わりに心臓がどくんと跳ねる。
できるのかと男は尋ねた。
勿論ですという一言、まるで何でもないことのように平然と答える医者に
案内された部屋には大きな椅子と機械がある。
何だ、これは女はどこだと思い、尋ねようとしたとき腕にかすかな痛みが走った。
椅子に座り、腕と足を個体された男の頭にはヘルメットがつけられた。
しばらくすると男の口から歓喜の声が聞こえてきた。
「うまくいっているようだな」
「性能、よくなっていますからね」
「以前の男達はどうだ」
「新型の奴に切り替えました」
最近のドラッグ、麻薬は効能や性質が変わってきた、中毒状態になっても、ある薬を服用すると精神と体調のバランスが平常になる。
犯罪者の男達に薬を投与した後、仮想の映像世界を見せる、そこで生身の女性と出会うのだ。
女性とのセックスしたという疑似体験は薬と現在のコンピューターの進化のせいで現実だと彼らは思っているのだ、仮想と現実の境目がなくなる。
以前から注目されていた、この実験は医療とコンピューターだけではない、大きな規模で様々な分野から注目されていた。
だが、実験を始めるにあたり、問題があった。
システムに関わる人間は国から選ばれた人間、エリートだ、実験の予算は莫大で無駄は勿論、失敗も許されない、大きなプロジェクトだ。
結果を出すための動物実験を中には否定する人間もいる、体の大きさ、知能が違う生き物を実験体として確実とはいえない。
だから人間を使う、昨今になり問題になってきたのがグレーゾーンの犯罪だ。
それも若者の犯罪者の数が右肩上がりなのは未成年、捕まっても重い罪にはならないという認識があるからだ。
更正してまともになったと思えても再犯率が高いのは頭が痛い、悩みどころだ。
恐喝、カツアゲ、最初に犯す事件は注意、叱責ですむものが多い、だが、スリルを味わいたいと思っているのか残酷な、殺人まで犯すようになった事例が増えてきた。
人工臓器、コンピューターの進歩に伴う仮想世界の進歩、様々な分野の進歩の発展の為に実験は必要だ、だが、その為には犠牲も必要だ。
今、女性の犯罪者に子供を産ませる試みも行われている、日本だけではない、世界には難病の胎児がいる、必要なのは臓器だ、それも胎児、子供の。
世界が手を叩き、称賛する未来は、そこまで迫っていた。
逃げ出したいと思っても、ここがどこなのかわからない。
それに逃げたとしても家に帰ることもできない、頼れる人間もいないのだ。
親戚は無理だ、それに友人と呼べる人間は金で繋がっていたようなものだ。
一文無しの自分だと厄介払いされるのは目に見えている。
過去に犯した罪で自分は犯罪者となった今、両親から見放された、新しい国の法律など知らなかった。
少し前に右の肺を取られた、事故で怪我をした青年に移植されたらしい。
肺は一つでも生きられるのだろうか、不安になってしまった自分に人工肺を移植するので心配いりませんと言われて驚いた。
「最近、開発された新しいタイプの臓器ですが、よかったです」
良かった、何がだと思ってしまう、すると試験体、成人男性がいなくて困っていたんですよ、続く言葉に自分はモルモットかと叫んでしまった。
すると医者は首を振った、とんでもないと、そして言葉をつづけた、昨今では動物実験というものは減っているのだという。
臓器や薬品実験の場合、ある程度の成果がでたとしても意味がない、確実な答えが出なければ意味がないというのだ。
マウスやモルモット、犬や猫、大きな個体となれば牛なども実験に使われてきた。
だが人間ではない限り、はつきりとした答えは出てこない。
大丈夫かもしれない、可能性があるという曖昧な答えでは納得できないのだという。
「最近では動物愛護団体の反対意見も厳しくなっていますからね」
まるで、自分は動物以下だと言われているような気がした。
自分は、このままベッドの上で一生を過ごしていくことになるのだろうか。
そんなことを考えていた、ある日のこと、部屋を移動するということを知らされて驚いた。
そこには自分と同じ、いや、年上の男もいた、だが、部屋の出入りを自由にしているし、体の臓器を移植された様子もない、どういうことだろう、不思議に思った。
気になって、どんな犯罪を犯したのかと聞いてみた。
「薬物だよ、ドラッグに手を出したんだ」
「売人をやっていた」
「スリ、強盗まがいのこともやった」
中には海外で犯罪を犯した者もいた。
皆、自慢するように自分の犯した罪を告白するのだ、その様子を見て疑問を抱く、彼らは、ここがどんな場所か知らないのだろうかと思ってしまった。
「あんた、こうしてみるとまともに見えるけど」
一人の青年が不思議そうに尋ねた。
どういうことかと聞くと、薬のせいでおかしなことをいう病人が同室だが、気にしないでとほしいといわれたらしい。
その言葉に笑いたくなった、本気で、そんな言葉を信じているのだろうか。
どうせ、彼らもいずれは自分と同じような目に遭うのだ、そう思っていると、一人の男が声をかけた。
「そんな体じゃ、女ともできないだろう」
すぐには返事ができなかった、今、この男は何を言った、頭がおかしいのか。
「昨日の女は良かったな」
意味が分からなかった。
同室の男達は部屋を出て、数時間、遅いときには一晩中、戻ってこないときもある。
それは女性とセックス、行為をするためだという。
不妊薬の為の実験の為だという、しかも女達は美人で中には有名人もいるらしい。
「おい、それ以上は」
「構わねえだろ、ここから出られないんだ」
男の笑みに男は過去の自分を思いだした。
自分が相手をした女達は若いくて未成年もいた。
それも、ただの性行為ではない、薬を使ったのだ、そのせいで危なく死にかけた女もいた。
あのときは、正直、怖くなり、慌てて父親に電話したのだ。
「おい、あんただって、そのうちできるぜ、とびきりいい女とな」
その言葉にあり得ないだろうと思って、言葉が出てこなかった。
未来がないと悲観していた、これから、どうなってしまうのだろうと思っていたのに男達が女とやっていると聞いて羨ましいと思ったのだ。
死にたいと思っていたのに。
どうせ、ここから出ることはできない、それなら少しでも楽な道を選びたいと思ってしまった。
「移植後の拒否反応もない、歩行訓練を始めてもいいでしょう」
男は、ぽつりと呟いた。
「俺もセックスしたいっていったら、笑うか」
医者は首を振った、あなたはまだ若い、当然ですよ、彼らに刺激を受けたのですね、いいことです、その言葉に男はほっとした。
笑われる、いや、馬鹿にされると思ったのかもしれない。
「有名人とやったって言ってたけど、嘘だろう、そんなことは」
「口の軽い人がいたものだ」
「いいのか、そんなことを」
「あなたは好みのタイプは、この間の移植手術で相手はとても感謝していました」
配慮しますよと言われて男は言葉を飲み込んだ。
すぐには返事ができなかった。
医者は言葉を続ける、有名人、特殊業についている成功者はストレスが一般人とは比べものにはならなですからねという答えが返ってきた。
「だからこその救済システムなんですよ、救うのは犯罪者だけではないんです」
二週間が過ぎた、男はベッドから起きあがれるようになっていた。
それと同時に部屋を変わることになった。
その日、夕食がすむと医者からっくすが死体ですかと聞かれた。
返事の代わりに心臓がどくんと跳ねる。
できるのかと男は尋ねた。
勿論ですという一言、まるで何でもないことのように平然と答える医者に
案内された部屋には大きな椅子と機械がある。
何だ、これは女はどこだと思い、尋ねようとしたとき腕にかすかな痛みが走った。
椅子に座り、腕と足を個体された男の頭にはヘルメットがつけられた。
しばらくすると男の口から歓喜の声が聞こえてきた。
「うまくいっているようだな」
「性能、よくなっていますからね」
「以前の男達はどうだ」
「新型の奴に切り替えました」
最近のドラッグ、麻薬は効能や性質が変わってきた、中毒状態になっても、ある薬を服用すると精神と体調のバランスが平常になる。
犯罪者の男達に薬を投与した後、仮想の映像世界を見せる、そこで生身の女性と出会うのだ。
女性とのセックスしたという疑似体験は薬と現在のコンピューターの進化のせいで現実だと彼らは思っているのだ、仮想と現実の境目がなくなる。
以前から注目されていた、この実験は医療とコンピューターだけではない、大きな規模で様々な分野から注目されていた。
だが、実験を始めるにあたり、問題があった。
システムに関わる人間は国から選ばれた人間、エリートだ、実験の予算は莫大で無駄は勿論、失敗も許されない、大きなプロジェクトだ。
結果を出すための動物実験を中には否定する人間もいる、体の大きさ、知能が違う生き物を実験体として確実とはいえない。
だから人間を使う、昨今になり問題になってきたのがグレーゾーンの犯罪だ。
それも若者の犯罪者の数が右肩上がりなのは未成年、捕まっても重い罪にはならないという認識があるからだ。
更正してまともになったと思えても再犯率が高いのは頭が痛い、悩みどころだ。
恐喝、カツアゲ、最初に犯す事件は注意、叱責ですむものが多い、だが、スリルを味わいたいと思っているのか残酷な、殺人まで犯すようになった事例が増えてきた。
人工臓器、コンピューターの進歩に伴う仮想世界の進歩、様々な分野の進歩の発展の為に実験は必要だ、だが、その為には犠牲も必要だ。
今、女性の犯罪者に子供を産ませる試みも行われている、日本だけではない、世界には難病の胎児がいる、必要なのは臓器だ、それも胎児、子供の。
世界が手を叩き、称賛する未来は、そこまで迫っていた。
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