上 下
25 / 34

第二十五話:カナの故郷

しおりを挟む

 俺達は王都の門を出て、移動魔法を使いバーテン村へと向かった。
 バーテン村はバンダリー村の山を挟んで隣にあるのだが、山がかなりでかい事もあり、迂回して行くか、山の中を通るしかない。
 山の中は魔獣が多く出現する為、戦えない人達は迂回して進むのだが、俺達は最短ルートである山を通って向かった。
 途中魔獣が出たりもしたが、移動魔法のスピードについてこれずに諦めてくれる為、戦わずにバーテン村へと着いた。

「ここがバーテン村か。近くにあったのに、来るのは初めてだ。」

「懐かしいな。前とあんまり変わらない風景で、少し安心した。」

「おい、門の前で魔獣と誰か戦ってるぞ!」

「ほんとだ。すぐ行かないと!」

 俺達は門の前で戦っているところへと急いで向かった。
 近くに行くと、魔獣が10体いて、その中にはランク5のミノタウロスがいた。

「すぐに倒すぞ!」

「わかった!でも、私の剣ボロボロで使えない。」

「とりあえず、俺の刀を使え!」

 俺はそう言うとカナに刀を渡し、魔獣の方へ向かった。

「ファイアボール!ファイアボール!ウォータースラッシュ!ロックブラスト!」

「はぁぁぁ!」

 俺は4体の魔獣に向かって魔法を使い倒し、カナは刀で5体倒した。
 残りがミノタウロスだけになり、俺は魔法で、カナは刀で攻撃した。

「アイススピア!」

 俺の魔法はミノタウロスの両手両足に当たり、動きを止めたところにカナが刀で首を斬った。

「ふぅ。村の近くでもランク5が出るのか。」

「大丈夫ですか?」

 カナは戦っていた人の方へと走っていった。

「ああ、大丈夫だ。ありがとう。」

「それなら良かった。」

 門の前で戦っていた人はカナの顔を見ると、驚いたように声をだした。

「あんた、カナかい?」

「うん、そうだよ。」

 その人は全身に鎧を着けていて、誰か判断することができなかったカナは、困惑しながら答えた。
 すると、その人は鎧の兜を外しながら話した。

「わしだよ。カールだよ。大きくなったな。」

「カールおじさん!?」

「カナ、会えて嬉しいよ。」

「私も嬉しい!」

 カナは涙ぐみながらカールおじさんに抱きついた。

「カールおじさんは私の家の近くに住んでいて、よく遊びに行ったの!」

 カナは俺に分かるように説明をしてくれた。

「そうか。会えて良かったな。それで、この村にはいつもこんなに魔獣が?」

「ああ、そうだ。ここ最近はずっと強い魔獣ばっかり出現する。村の皆んなで対処しているが、怪我人が多くてな。」

「そうなのか。」

「君たち、バーテン村に用があったんだろ?なら門を開けるから入って行きなさい。村長なら集会所にいると思うから。カナ場所は分かるね?」

「ありがとう。場所は覚えてるよ。」

 カールおじさんはそう言うと、門を開けてくれた。
 俺達は門を通りそのまま集会所の方へと向かった。
 集会所に着き、扉を開けると数人が中にいた。

「誰だ?」

 村長らしき人が俺を見て真っ先にそう聞いてきた。

「俺は冒険者のヤミだ。」

「冒険者がここへ何しにきた?ん?後ろにいるのはカナか!?」

「うん!そうだよ!」

 カナが答えると集会所の中にいたひと達が響めいた。

「本当にカナなのか?久しぶりだな。元気そうで安心したよ。」

「あなたもしかして、カイ?昔はあんなに小さかったのに、立派になったね!」

「ああ、そうだ。今じゃ、ここの村長だ。」

「カイはね、この村で唯一、歳の近い子供だったからよく遊んでたの。」

 カナは関係をよく分かっていない俺に説明してくれた。

「皆んなに知らせないとな。カナが帰ってきたって!」

 村民の一人がそう言うと、集会所の外に行ってしまった。
 
「カナ、本当に無事で良かった。王都に向かった人は皆殺されてしまったと思っていたから。」

「私だけは何とかね。」

 カナは皆んなと再開した喜びを分かち合っていた。

「村長、今南の国はどこも魔獣が多く出ているのか?」

「恐らくな。バンダリー村と共闘しようとも試みたが、あっちも自分達の村を守るのに必死で手が貸せないようだ。村同士の移動は半日以上かかってしまうからお互い移動が出来ないんだよ。」

「そうか。山は迂回して行くのか?」

「そうだな。一刻も早く着きたいが、その前に体力を消耗するわけにもいかないし、強い魔獣と戦って負傷者を出す訳にも行かないからな。」

「そうか。なら一番近い道が出来ればいいのか。」

「そうだな。ただそんな道を作っている暇もなくて、どうしたら良いものかと悩んでいるところだ。」

「なるほどな。」

 俺が気になっていた事を聞くと村長が色々と答えてくれた。

「カナ、今日は泊まって行くのか?それなら自分の家に行くといい。カールおじさんが帰って来る事を信じて毎日掃除してくれていたから。」

「そうなんだ。ただ泊まるかどうかは···。」

 村長に聞かれ、カナは俺の方を見て困っていた。

「折角なら泊まって行こうか。カナの武器も作らないといけないし。」

「やった!じゃあ、おうちに行こ!」

 カナは嬉しそうに俺の手を引っ張った。
 俺達はそのままカナの家へと向かって行った。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話

菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。 そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。 超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。 極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。 生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!? これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。

異世界のんびり冒険日記

リリィ903
ファンタジー
牧野伸晃(マキノ ノブアキ)は30歳童貞のサラリーマン。 精神を病んでしまい、会社を休職して病院に通いながら日々を過ごしていた。 とある晴れた日、気分転換にと外に出て自宅近くのコンビニに寄った帰りに雷に撃たれて… ================================ 初投稿です! 最近、異世界転生モノにはまってるので自分で書いてみようと思いました。 皆さん、どうか暖かく見守ってくださいm(._.)m 感想もお待ちしております!

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

異世界転生したら何でも出来る天才だった。

桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。 だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。 そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。 =========================== 始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。

スライムから人間への転生〜前世の力を受け継いで最強です

モモンガ
ファンタジー
5/14HOT(13)人気ランキング84位に載りました(=´∀`) かつて勇者と共に魔王を討伐したスライムが世界から消えた…。  それから300年の月日が経ち、人間へと転生する。 スライムだった頃の力【勇者】【暴食】を受け継ぎいろんな場所を巡る旅をする そんな彼の旅への目的はただ1つ!世界中の美味しいご飯を食べる事! そんな食いしん坊の主人公が何事もないように強敵を倒し周りを巻き込んで行く! そんな主人公の周りにはいつのまにか仲間ができ一緒に色々なご飯を食べて行く!  *去年の9月まで小説家になろう。で連載を辞めた作品です。  続きを書こうと気持ちになりまして、こちらで再開しようもおもった次第です。  修正を加えてます。  大きいのは主人公の名前を変えました。(ヒロインと最初の一文字が被っている為)  レアル→リューク  ラノベ専用アカウント作りましたー( ̄∀ ̄)  Twitter→@5XvH1GPFqn1ZEDH

処理中です...