2 / 47
気になる1
しおりを挟む
「教室に行くぞ」
「あ、そうだね」
しばらく歩いて、ちゃんと後ろに付いてきているか気にかかって振り向いた。
いない。
一体どこに行ってしまったのか、と辺りを見回して、絶句した。
まだ、校庭の真ん中あたりをよたよたと歩いている。
嘘だろ。
待っていたら日が暮れる。
仕方がないので、もう一度戻って、重そうな方のカバンを一つを取り上げた。
「持ってやる」
「えっ? あの、私、大丈夫だから。ゆっくり行くから、あなたは気にしないで先に行ってていいよ?」
「いい。気にしなくていいから、お前は歩くことに専念して、ちゃんと俺の後をついて来い」
その後の言葉を言わせることなく、俺は向きを変え歩き始める。
速く歩き過ぎないよう、時々、ちゃんと付いて来ているかをチラチラ確かめながら、下駄箱に向かう。
三年一組の下駄箱の前で、上靴に履き替えると、
「あ、同じクラスだったんだ」
「ああ」
留年する奴がいるというのは、二年の時にも噂では聞いていたし、三年になってからは、担任から話があった。
「じゃあ、私の事知っていて、それで親切にしてくれたんだ」
「まぁな」
俺が答えると途端に元気がなくなって、しょぼんとしてしまった。
さっきまでは、確かに顔色は病的な青白さだけど、明るい顔をしていたのに。
俺なんか気に障るような事を言っちまったか?!
「お、俺の名前は大和功一だ。ちなみに、お前の席は、悪いが俺の隣だ。だから、カバンはそこまで運んでやる」
今は、学期が始まったばかりで、席は出席番号順だ。
俺は廊下側の一番後ろで、コイツはその隣。
俺が後ろの扉近くに陣取っているために、今のところクラスの連中が出入りするのは、前の扉オンリーになっている。
「そのうち、席替えがあるだろうから、それまでは我慢しとけ」
俺の定番の席は窓際の一番後ろ。そういうことになっているらしい。
クラスの連中が気を利かせているつもりなのか、厄介者をただ教室の隅に追い払いたいだけなのかは、分からないけど。
「あ! えっと、私は高岡愛美です! 御存じの通り、一年留年しました! あの、大和くん、いろいろありがとう。それから、あの、一年間よろしくお願いします!」
名前を言ったにもかかわらず、にっこり笑って挨拶された。
「お、おう!」
もしかしてコイツ、俺の事知らないのか?
「あ、そうだね」
しばらく歩いて、ちゃんと後ろに付いてきているか気にかかって振り向いた。
いない。
一体どこに行ってしまったのか、と辺りを見回して、絶句した。
まだ、校庭の真ん中あたりをよたよたと歩いている。
嘘だろ。
待っていたら日が暮れる。
仕方がないので、もう一度戻って、重そうな方のカバンを一つを取り上げた。
「持ってやる」
「えっ? あの、私、大丈夫だから。ゆっくり行くから、あなたは気にしないで先に行ってていいよ?」
「いい。気にしなくていいから、お前は歩くことに専念して、ちゃんと俺の後をついて来い」
その後の言葉を言わせることなく、俺は向きを変え歩き始める。
速く歩き過ぎないよう、時々、ちゃんと付いて来ているかをチラチラ確かめながら、下駄箱に向かう。
三年一組の下駄箱の前で、上靴に履き替えると、
「あ、同じクラスだったんだ」
「ああ」
留年する奴がいるというのは、二年の時にも噂では聞いていたし、三年になってからは、担任から話があった。
「じゃあ、私の事知っていて、それで親切にしてくれたんだ」
「まぁな」
俺が答えると途端に元気がなくなって、しょぼんとしてしまった。
さっきまでは、確かに顔色は病的な青白さだけど、明るい顔をしていたのに。
俺なんか気に障るような事を言っちまったか?!
「お、俺の名前は大和功一だ。ちなみに、お前の席は、悪いが俺の隣だ。だから、カバンはそこまで運んでやる」
今は、学期が始まったばかりで、席は出席番号順だ。
俺は廊下側の一番後ろで、コイツはその隣。
俺が後ろの扉近くに陣取っているために、今のところクラスの連中が出入りするのは、前の扉オンリーになっている。
「そのうち、席替えがあるだろうから、それまでは我慢しとけ」
俺の定番の席は窓際の一番後ろ。そういうことになっているらしい。
クラスの連中が気を利かせているつもりなのか、厄介者をただ教室の隅に追い払いたいだけなのかは、分からないけど。
「あ! えっと、私は高岡愛美です! 御存じの通り、一年留年しました! あの、大和くん、いろいろありがとう。それから、あの、一年間よろしくお願いします!」
名前を言ったにもかかわらず、にっこり笑って挨拶された。
「お、おう!」
もしかしてコイツ、俺の事知らないのか?
0
お気に入りに追加
229
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました
せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。
舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。
専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。
そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。
さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。
その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。
海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。
会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。
一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。
再会の日は……。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
【R18】ドS上司とヤンデレイケメンに毎晩種付けされた結果、泥沼三角関係に堕ちました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向けランキング31位、人気ランキング132位の記録達成※雪村里帆、性欲旺盛なアラサーOL。ブラック企業から転職した先の会社でドS歳下上司の宮野孝司と出会い、彼の事を考えながら毎晩自慰に耽る。ある日、中学時代に里帆に告白してきた同級生のイケメン・桜庭亮が里帆の部署に異動してきて…⁉︎ドキドキハラハラ淫猥不埒な雪村里帆のめまぐるしい二重恋愛生活が始まる…!優柔不断でドMな里帆は、ドS上司とヤンデレイケメンのどちらを選ぶのか…⁉︎
——もしも恋愛ドラマの濡れ場シーンがカット無しで放映されたら?という妄想も込めて執筆しました。長編です。
※連載当時のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる