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外伝 レオンハルト編
最強(恐)の魔法使い2
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心臓の一つや二つ? 本当なのだろうか?
母上からは確かに、竜族は生命力が強いから少々傷ついても簡単には死なないと教わっているけれど、心臓をえぐり取られる事が、母上の言う少々に当てはまるとは思わなかった。
「私の理論でいけば、首を落とされたとしても死なないはずなの。竜族の身体は人間と同じ肉体と思念、つまり魂のようなものと、魔素でできているの。肉体が少々損なわれたところで、そこは魔素で補えば良いのだから、思念さえしっかりしていれば死にはしないわ。でも、首を落とされると、おそらく思念が分断されてしまうのね。魔石になるのは、思念が分断されて、己が何者であったか分からず、元の姿に戻れないからよ。こんなに意識もはっきりしているレオンが、死ぬはずないじゃない」
「でも、レオンは本当に死にかけてて・・・」
『確かに抜け殻みたいだった』
俺がレオンの共鳴石の波動を追って来てみれば、森の中に建つ神殿が目に入った。
あれほど巧妙に隠されていたものが何故今剥き出しになっているのか。
罠か?と訝りながらも、慎重に神殿に潜入し、レオンとフローラを探す。
祭壇にはやはり双子神の偶像があった。
祭壇の奥からかすかな声が聞こえ、警戒しながら部屋に入って驚いた。
裸のフローラが横たわる弟に覆いかぶさって、まさか交合してる最中なのかと一瞬目を逸らしたものの、すぐに異変に気付く。
近付いて見れば、精気の抜けた弟にフローラが泣きながら必死に魔力を吹き込もうとしていた。
「おそらく、思念が番った時のどさくさで、一時的にフローラの中に入り込んでいたのよ。レオンには思い当たるフシがあるんじゃないの?」
レオンは、いろいろあったような気がしなくもないけど、よく覚えていないと言った。
『では、母上の理論でいくと、レオンの失われた心臓は魔素で補われて、元に戻るという事なのですか? そうなのですか、母上?』
俺は一番気になるところを母上に訊ねた。
「それがねぇ、そういうわけでもないみたいなのよねぇ」
先ほどまではあんなに自信満々で饒舌だった母上が、途端に言葉を濁し始める。
「元に戻せると思うんだけど、アルがね、腕や足を失って生えてきたなんて話は聞いた事がないって言うの」
『「「えーーー?!」」』
「どうしてなのかしら?」
何だその無責任な言いようは!と思ったけど、母上に対して、勿論そんな事は口に出したりはしない。
でも、そうすると母上の理論自体が怪しいものに思えてくる。
「知らないよ! 母上に分からないものが、俺に分かるわけないじゃんか!」
レオンが動揺して喚く。
「それもそうね」
「母上!!」「母上様!」
「分かってるわよ、そんなに喚かなくても。レオン、あなた竜の魔石持ってるわよね。一つ出してちょうだい、それをあなたの心臓にするわ」
母上曰く、心臓が無いと不安だって言うなら、それに代わるものを入れておけばいいのよと、レオンの胸に浄化魔法を施した竜の魔石を埋め込んだ。
「魔力も補えて一石二鳥よ。さぁ、これでいいわ」
「母上様! ありがとうございます! 本当に、ありがとうございます! レオン、どう? 大丈夫? 苦しくない?」
「うん、胸の中がじんじん熱いけど、我慢できないほどじゃないし、他は何ともない」
「レオン、魔力が暴れるといけないから、馴染むまでは大人しくしているのよ。フローラ、レオンは大丈夫だから安心なさい。じゃあ、私は行くわ。・・・・・・ルカ、後は、頼むわね」
『・・・はい。母上、どうか無理はしないで』
母上にもしもの事があった場合、母上と魂を結んでいる父上は死ぬ。
つまり、長兄がレノルドに婿入りしている今、俺が竜王となって、竜王国を守っていかねばならない。
「あ、そうだ、母上! あの魔族の狙いは父上なんだ。それに、竜族の雌が大勢死んだのも流行り病じゃなくて、あの魔族が竜族を竜王国から引っ張り出すためにした事だったんだよ。あの魔族には、魔法が効かないだけでなく、魔法を使えなくする首輪も持ってる。母上、あいつは厄介だ。お願い、どうか気を付けて」
母上の疑念は的中した。
やはり、この魔族は俺達竜族に並々ならぬ執着を見せている。
「なるほどね。ますます、その魔族、放置しておくわけにはいかなくなったわ」
父上と母上を見送ると、入れ替わりに、兄上家族や兄弟達が近付いて来た。
順番にレオンとフローラに挨拶をして離れて行く。
二人を取り戻した今、障壁になるものは何一つ存在しない。
皆やる気満々だ。
『魔族の度肝を抜いてやろうぜ!』
踵を返して、兄弟の後を追った。
母上からは確かに、竜族は生命力が強いから少々傷ついても簡単には死なないと教わっているけれど、心臓をえぐり取られる事が、母上の言う少々に当てはまるとは思わなかった。
「私の理論でいけば、首を落とされたとしても死なないはずなの。竜族の身体は人間と同じ肉体と思念、つまり魂のようなものと、魔素でできているの。肉体が少々損なわれたところで、そこは魔素で補えば良いのだから、思念さえしっかりしていれば死にはしないわ。でも、首を落とされると、おそらく思念が分断されてしまうのね。魔石になるのは、思念が分断されて、己が何者であったか分からず、元の姿に戻れないからよ。こんなに意識もはっきりしているレオンが、死ぬはずないじゃない」
「でも、レオンは本当に死にかけてて・・・」
『確かに抜け殻みたいだった』
俺がレオンの共鳴石の波動を追って来てみれば、森の中に建つ神殿が目に入った。
あれほど巧妙に隠されていたものが何故今剥き出しになっているのか。
罠か?と訝りながらも、慎重に神殿に潜入し、レオンとフローラを探す。
祭壇にはやはり双子神の偶像があった。
祭壇の奥からかすかな声が聞こえ、警戒しながら部屋に入って驚いた。
裸のフローラが横たわる弟に覆いかぶさって、まさか交合してる最中なのかと一瞬目を逸らしたものの、すぐに異変に気付く。
近付いて見れば、精気の抜けた弟にフローラが泣きながら必死に魔力を吹き込もうとしていた。
「おそらく、思念が番った時のどさくさで、一時的にフローラの中に入り込んでいたのよ。レオンには思い当たるフシがあるんじゃないの?」
レオンは、いろいろあったような気がしなくもないけど、よく覚えていないと言った。
『では、母上の理論でいくと、レオンの失われた心臓は魔素で補われて、元に戻るという事なのですか? そうなのですか、母上?』
俺は一番気になるところを母上に訊ねた。
「それがねぇ、そういうわけでもないみたいなのよねぇ」
先ほどまではあんなに自信満々で饒舌だった母上が、途端に言葉を濁し始める。
「元に戻せると思うんだけど、アルがね、腕や足を失って生えてきたなんて話は聞いた事がないって言うの」
『「「えーーー?!」」』
「どうしてなのかしら?」
何だその無責任な言いようは!と思ったけど、母上に対して、勿論そんな事は口に出したりはしない。
でも、そうすると母上の理論自体が怪しいものに思えてくる。
「知らないよ! 母上に分からないものが、俺に分かるわけないじゃんか!」
レオンが動揺して喚く。
「それもそうね」
「母上!!」「母上様!」
「分かってるわよ、そんなに喚かなくても。レオン、あなた竜の魔石持ってるわよね。一つ出してちょうだい、それをあなたの心臓にするわ」
母上曰く、心臓が無いと不安だって言うなら、それに代わるものを入れておけばいいのよと、レオンの胸に浄化魔法を施した竜の魔石を埋め込んだ。
「魔力も補えて一石二鳥よ。さぁ、これでいいわ」
「母上様! ありがとうございます! 本当に、ありがとうございます! レオン、どう? 大丈夫? 苦しくない?」
「うん、胸の中がじんじん熱いけど、我慢できないほどじゃないし、他は何ともない」
「レオン、魔力が暴れるといけないから、馴染むまでは大人しくしているのよ。フローラ、レオンは大丈夫だから安心なさい。じゃあ、私は行くわ。・・・・・・ルカ、後は、頼むわね」
『・・・はい。母上、どうか無理はしないで』
母上にもしもの事があった場合、母上と魂を結んでいる父上は死ぬ。
つまり、長兄がレノルドに婿入りしている今、俺が竜王となって、竜王国を守っていかねばならない。
「あ、そうだ、母上! あの魔族の狙いは父上なんだ。それに、竜族の雌が大勢死んだのも流行り病じゃなくて、あの魔族が竜族を竜王国から引っ張り出すためにした事だったんだよ。あの魔族には、魔法が効かないだけでなく、魔法を使えなくする首輪も持ってる。母上、あいつは厄介だ。お願い、どうか気を付けて」
母上の疑念は的中した。
やはり、この魔族は俺達竜族に並々ならぬ執着を見せている。
「なるほどね。ますます、その魔族、放置しておくわけにはいかなくなったわ」
父上と母上を見送ると、入れ替わりに、兄上家族や兄弟達が近付いて来た。
順番にレオンとフローラに挨拶をして離れて行く。
二人を取り戻した今、障壁になるものは何一つ存在しない。
皆やる気満々だ。
『魔族の度肝を抜いてやろうぜ!』
踵を返して、兄弟の後を追った。
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