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外伝 レオンハルト編

ばれる2

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 どうすんだ、俺!

「あ、そうよね!! 私が部屋を出てから、随分時間が経ってるし、帰って来てるかも! 私、部屋に戻ってみる! あ、レオンくんはちゃんと休んでなきゃ駄目よ。元気そうには見えるけど、本当に一時は危なかったんだから」

「わ、わかった」

 まずいまずいまずい。
 あー、もう、俺ってばなんであんなコト言っちゃったんだよ!
 部屋にレオンがいなかったら、きっと探しに飛び出しちまう。
 兄上達が上手くやってくれているだろうけど、魔族が何を仕掛けてくるか分からないこの状況で、俺の魔力も回復していない今、フローラを無防備に外に出すわけにはいかないのに。
 どうかな、ちょっとくらいの間なら変化へんげしていられるかな。

 
 先回りしてなんとか部屋に辿り着いた。
 一発転移では来れなかった。やっぱり、魔力が全然足りない。
 でも、やるしかないのだ。
 俺はレオンになって、フローラがやって来るのを待った。


「レオン!! 戻っていたのね!! 良かった!! どこも怪我はしていない?」

 フローラに、頬ずりされ、キスされて、熱い抱擁を受けた。

「レオン、私、すごく心配したのよ。レオンはどこに行こうと自由だけど、だけど、私がすごく心配するって事だけは忘れないで。それから絶対に無理はしないで。お願い。あ、そうだ、お腹空いてるでしょう? お肉をもらってあるの。レオンが帰って来たら、いつでも食べられるように。レオンが戻って来てくれて、本当に嬉しい。ありがとう、レオン。ほら、あ~んして。おいしい?」

 フローラは俺を愛おしげに見つめ、大事そうに抱えたまま、肉を口に入れてくれた。
 気持ちはすごく嬉しかったけど、俺は焦っていた。そろそろ時間切れのような気がする。
 早く俺を解放してくれないかな。
 俺は給餌タイムを終わらせるために、一口だけ食べて、そっぽを向いた。

「あら、もういいの? お腹空いてないの? それとも、味が気に入らなかった? あ、そうだ! それより、レオンくんに知らせなきゃ。レオンくんにも随分心配かけちゃったから」

 よしよし、それでいい。
 目を離した隙をついてドロンするつもりだった。
 
「そうだ、せっかく部屋に戻ったんだから、着替えてこっと」

 ええー!!
 しかも、フローラは俺を離さないまま替えの服を出して、俺をベッドの上に置くとわざわざ目の前で着替えを始める。
 もう逃がさないわよと言われているような気がした。
 事実、着替え中もちっとも目を離してくれない。


 あっと思った瞬間の出来事だった。変化が解けた。

「れ、レオンくん!!?」

 突然現れた俺に、フローラが頓狂な声を上げる。
 うげっ! ちょうど服を脱いで上半身裸のフローラと目が合った。

「あっ、あの、えっと、えっと、これはその、何て言ったらいいのか、ごめん」

 すぐに横を向いて、フローラの目からも裸からも目を逸らす。
 フローラは脱いだ服で胸を隠し、くるりと後ろを向いた。

「あ、ううん、大丈夫、気にしないで。ちょっとびっくりしただけ。でも、転移して来たの? もう、魔法を使っても大丈夫なの?」
 
 ん? 転移? もしかして気付いてない?

「ああ、まぁ。あの、ごめん、着替え中だとは思わなくて。その、どうだったか気になっちゃってさ」

 俺も後ろを向いて、フローラの素肌を見ないようにして答える。
 フローラは慌てて服を着ているようだった。

「あ、そうよね! あのね、レオンくんの言う通りだった! ありがとう! レオン、戻って来てたの! 怪我もしてなかったわ! ちょうど今、レオンくんに知らせに行くつもりだったんだけど、あれ? レオン、その辺にいなかった?」

 背後でごそごそレオンを探すフローラの気配がする。
 俺も、なおざりに周囲を探すフリをした。

「え? そう? あれ? いないなぁー。でも、元気だったんなら、良かったじゃないか! フローラもこれで安心しただろう?」

「うん、まぁ、それはそうだけど・・・。でも、どうして、またいなくなっちゃったのかな。レオンくん、もうこっち向いてもいいよ」

「あ、うん」

「!!」

 前を向くと、フローラが目を見開いて、驚いたような顔をしてじっと俺を見る。
 な、なにかな? 俺、何かおかしなコトしたか?
 ハッ、まさか尻尾だけ残ってたとか? 
 ちらりとおしりを見たけど、生えていなかった、良かった。
 でもまだ、じっと見てる。何か考え込んでいるような顔つきだ。
 う、疑われてる?

「レオンくん、その口・・・」
「え?」
 
「レオンも、ちょうど今のレオンくんみたいに口の周りを汚してた・・・」

 え? 口を拭うとべっとりとソースが付いていた。
 ばれたああああああ!!

「フローラ、ごめん!! 決して騙すつもりじゃ無かったんだ!! フローラをただ守りたかった!! それだけなんだ!!」

「・・・・・・」

「近々言うつもりだったんだよ? もう少し、もう少しだけ、フローラがレオンの時と同じ様に、俺を頼ってくれるようになったらって、思ってた。その、本当にごめん!! この通りだ、許してくれ!! すまなかった!!」

 俺はベッドから下り、番いのメスの怒りをかったオスの正しい行動、即ち、土下座をして床に頭を擦りつけて懇願した。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「フローラ、何とか言ってくれよ」

「・・・・・・」

「なぁ、怒ってるのか? 口もききたくないくらい、怒ったのか?」

 フローラはしばらく考え込んで、逡巡した後、俺を見据えて言った。

「・・・・・・怒ってるというより、驚いてる。っていうか、確認したいんだけど、レオンくんが謝ってるのは、レオンのお肉を食べちゃったからじゃなくて、レオンくんがレオンだったって事!?」

「え? お肉を食べた? え? え? え? えーと、そう! ごめん! レオンの肉を食っちまって!」

 ははは、と笑って誤魔化したけど、やっぱり、無理があるよな。

「・・・・・・」

 ちらりと見上げれば、フローラの顔が母上みたいに鬼の形相になってた。

 だよね・・・

「スミマセンデシタ。ゴメンナサイ。モウゴマカシタリシマセンカラ、ユルシテクダサイ」

 
 

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