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外伝 レオンハルト編

怪我の功名2

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 俺の魔力は、結果的に思った以上の影響をフローラにもたらした。

 今朝目覚めた時、フローラは俺におはようの挨拶も無しで、しばらくぼーっとしていたかと思うと、今度は自分の身体を動かしたり見回したりして、そして怪訝な顔をして、俺を見た。

「コレって、レオンがやったの? なんかすごく身体が軽いの。それにいつも胸につっかえてた塊が無くなって、ふわふわしていて・・・すごく幸せな気分なの・・・」

 俺はニンマリした。
 やっぱり思った通りだ。
 俺の魔力はフローラにいい影響を及ぼしている。

「あ、今笑ったでしょ! やっぱりレオンの仕業だったのね!」

 フローラは俺を両手で掬い上げ、自分の目の高さまで持っていく。

「ありがとう、レオン。・・・でも、これってレオンの魔力じゃないの? 私に魔力を渡してしまってレオンは大丈夫なの? お願い、私のために無理はしないで。レオン、分かってる? 絶対よ? 約束して!」

 そして、俺の真意を探ろうと、真剣な眼差しを向けた。
 もちろん俺は、フローラのためなら無理だろうが何だろうが、するに決まってる。
 でも、フローラを不安な気持ちにさせるのは本意ではないから、フローラの手に頭をすり寄せ、甘えて誤魔化した。

「甘えて誤魔化しても、ダメよ!」

 え? もしかして、俺の頭の中、まる見え?
 今までは簡単に騙されてくれたのに。俺は驚いた。
 頭は手の平にすり寄せたまま、目だけを上に向けてフローラを窺ってみると、俺を睨みつけている。
 そして、私は誤魔化されませんからね! と一歩も引かない強い口調で迫ってくる。

 これって、俺達の繋がりが深くなったから?
 ふーん、それはそれで悪くない。
 俺はバタリと倒れ、お手上げ、降参しましたという意味を込めて、両手両足を上に向けた。

「まあ、レオンったら!」

 俺のメッセージはフローラに伝わったようだ。
 フローラはクスクス楽しそうに笑っている。
 フローラが笑うと俺は嬉しくなる。
 俺はフローラが大好きだ。



 俺の魔力は、不安定だったフローラの魔力を落ち着かせただけでなく、気力を与え、身体を強くし、魔法のコントロールにもその威力を発揮した。
 そしてそれは、フローラに自信を与えることとなり、フローラは周りの人間に対し無闇に怯えなくなった。
 怯える必要が無くなれば、警戒もする必要は無くなり、硬く強張った表情はどんどん柔らかくなり、明るく笑うようにもなった。

 もちろん俺はフローラのこの変化を喜んでいる。
 フローラの心の負担が減って、フローラ本来の明るい性格を取り戻し、生き生きとした生活をし始めたのだから、嬉しいに決まっている。

 だが、美しい花に悪い虫は付きもので、今までフローラの警戒心が作り上げていた魔力結界が薄くなるにつれて、悪い虫どもがわんさか寄って来るようになった。
 番いの俺としては、当然気に入らない。
 竜族の男として目覚めた俺は、父上を見習うことに決めた。
 母上の小言なんて、もう空の彼方に飛ばしてやったさ。

 暴露本を読んだ時は、なんか父上って、情けなくてちっちぇーと思ったけど、竜族の男としては全く正しい行為だったと今なら分かる。
 というわけで、寄って来る虫は片っぱしから追っ払う。
 とりあえず、フローラの半径2メートル以内には近付けないように結界を張った。
 そして、俺自身も、もうポケットの中に隠れたりしない。
 フローラは俺のものだと周りに知らしめるべく、俺の定位置はフローラの肩の上になった。
 
 フローラから仕事に支障が出ると苦情が入って、しぶしぶ半径2メートルの結界は取り止めにした。
 でもその代わりに、”触れたら虫ぞわぞわ”結界にした。
 フローラには呆れた顔をされたけど、知るもんか。
 俺だって譲歩はしてやったんだからな。
 それから、下心を持って俺のフローラをイヤラしい目で見るような奴には、遠慮なく耳に噛みついてやる。
 フローラを傷付ける奴もだ。
 こうして俺は第5警備隊において、フローラの小さなおっかない用心棒としての市民権を確立した。

 フローラを敵対視する奴は相変わらずいる。
 戦争の爪痕はまだ深く残っている。
 でも、あの日以来、フローラは揺らいでも、自分自身を見失うという事はなくなった。
 俺が心配そうな顔をすると、フローラは決まって、自分の胸を押さえて、レオンがここで私の心を守ってくれてるから大丈夫なのと笑う。

 だから、俺はあの日から毎夜、フローラへの魔力の補充を欠かさない。
 俺の魔力をフローラは必要としている。

 俺のフローラ、可愛いフローラ、いい匂いのフローラ、どこもかしこも柔らかいフローラ。
 フローラだってカメレオンのを愛でて楽しんでいるのだから、俺がフローラを愛でて愉しんでも、何ら問題はないはずだ。

 ベッドに横たわりながらフローラを腕に抱き、可愛い寝顔を眺めながら考えを巡らせる。
 さぁ、次の一手はどうするかな? ねぇ、フローラ。
 




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