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高校生編
第68話 卒業式
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「おはよ、碧くん」
「...うん。おはよ...真凜ちゃん」
「ふふっ、だらしない顔してる。昨日はいっぱい頑張ってくれたもんね?」
「...うん」
「そろそろ起きないと遅刻だよ?卒業式に遅刻なんて前代未聞だよ?」
「...そうだね。うん。あと5分だけ...」と言った瞬間にデコピンされる。
「いたっ...」
「ダラシない人は嫌いだぞー。はい、起きる起きる!」と、無理やり布団を剥がされて芋虫のように丸くなる俺を太鼓の達人のように叩きまくる。
そうして、戯れながら遊んでいるといつの間にか時間が経過し、ボサボサの頭を掻きむしりながらシャワーを浴びていると、乱入してくる真凜ちゃん。
「ちょっ!?//」
「いや、マジで時間ないから!今更恥ずかしがらない!」
「い、いや...」
そのまま朝から2人でシャワーを浴びて、急いで支度をして家を飛び出す。
「タクシー使う!?」
「いや...走っても間に合うはず!」
「最後の最後でー!もー!!」と、2人で走りまくりなんとか時間ギリギリに間に合うのだった。
「「はぁぅ...、はッっ...」」と、汗だくで登場俺たちをクラスのみんなが笑う。
「最後の最後に遅刻ギリギリとかw2人はほんまにおもろいねーw」
「だって!...碧くんが芋虫みたいになるから...!」
「いやっ...はあっ...面目ない...」
「2人とも早く教室入れー」と、国岡先生に急かされながら息絶え絶えのまま教室に入るのだった。
時間になると全員で体育館に向かう。
胸には小さな花をつけて、少しだけ緊張しながら待機する。
そんな中、保護者が待機する場所に目をやるとそこには奏さんや監督、喫茶店のマスターや真凜ちゃんのご両親などがいた。
しかし、もう一組見知った人たちがいた。
それは...実の父と再婚相手の母...そして妹が2人...居たのだ。
こちらには気づいていないようだが、相変わらず母は外面がよく、誰かのお母さんたちと談笑していた。
しかし、妹2人とお父さんは浮かない表情をしていたのだった。
「私が呼んだんだよ」と、真凜ちゃんが言う。
「...そうなんだ」
「別に無理やり連れてきたわけじゃないよ。一応来てもいいですよって言っただけだから」
「...そっか」
あの母が来たとなれば何か裏があるのではと勘繰ってしまう。というか、何かはあるはずなのだ。じゃなきゃ、あの人がここに出てくるわけがないのだから。
「...」と、無言で拳を強く握ると「なんかあったら俺も手伝うぞ」と、清人が笑う。
「そそそ。私たちは全員仲間なんだから」と、本庄さんが続く。
「...私も...協力する」と、海ちゃんもそんな普通に言ってくれた。
本当に...本当に...いい友達を持った。
けど、その全ての始まりはやっぱり真凜ちゃんであった。
「行こっか。最後は笑顔でね?」と、笑いながらそう言った。
◇
卒業代表として真凛ちゃんが壇上に上がる。
その姿は入学式のあの時と一緒だ。
誰もが憧れる天才で、どこか抜けている天然で、だけど誰よりも優しい天使。
けど、それだけじゃなかった。
小学校から同じだけど知らないことはたくさんあって、一途で前向きでたまに弱くて可愛くて...たくさんの真凜ちゃんを知ることができた。
そして、たくさんのかけがえのない友人ができた。
こんな卒業式を迎えるなんて昔の俺なら想像もできなかっただろう。
これからも...ずっと...ずっと。
「卒業生代表...汐崎真凜」と言い深く礼をする。
涙するクラスメイトたち。
そんな姿にもらい泣きしそうになるも、それは最後までとっておこうと我慢するのだった。
◇
「うわーん!!!卒業したくないヨォ!!!!明日も学校来ようよー!!!」
「あー、卒業かー。いやー、まじ早かったな」
「ちょっと!写真撮るよ!」
そんな会話が飛び交う中、俺は少し外れたところで1人桜の木を見ていた。
すると、後ろから声をかけられる。
振り返るとそこにいたのは父だった。
「...久しぶりだな。碧」
俺を名前を呼んだのは何年ぶりだろう。
「...父さん」
「卒業...おめでとう」
「...うん」
「...すまなかった」と、父さんは軽く頭を下げる。
「...別にいいよ。謝らなくて」
「...お前が悪いわけじゃないことはわかっていた。けど...けど...」
「別にもういいよ」
あの日々のこと...許せる日なんてきっと永遠に来ない。
時間が解決してくれるなんて、時間で解決できるようなことだから言えるセリフだ。
全てが時間で解決してほど単純じゃないことは知っている。
「...今の父さんのことは大嫌いだから。もう好きになることもないし」
「...」
「けど、俺は母さんのこと今でも大好きだから。そんな母さんが大好きだった父さんのことは俺も好きだから」
だから...。
「さようなら、父さん。大好きだったよ」
そういうと父さんは涙を流した。
あの日以来、人前で見せることはなかった父さんの涙だった
「...うん。おはよ...真凜ちゃん」
「ふふっ、だらしない顔してる。昨日はいっぱい頑張ってくれたもんね?」
「...うん」
「そろそろ起きないと遅刻だよ?卒業式に遅刻なんて前代未聞だよ?」
「...そうだね。うん。あと5分だけ...」と言った瞬間にデコピンされる。
「いたっ...」
「ダラシない人は嫌いだぞー。はい、起きる起きる!」と、無理やり布団を剥がされて芋虫のように丸くなる俺を太鼓の達人のように叩きまくる。
そうして、戯れながら遊んでいるといつの間にか時間が経過し、ボサボサの頭を掻きむしりながらシャワーを浴びていると、乱入してくる真凜ちゃん。
「ちょっ!?//」
「いや、マジで時間ないから!今更恥ずかしがらない!」
「い、いや...」
そのまま朝から2人でシャワーを浴びて、急いで支度をして家を飛び出す。
「タクシー使う!?」
「いや...走っても間に合うはず!」
「最後の最後でー!もー!!」と、2人で走りまくりなんとか時間ギリギリに間に合うのだった。
「「はぁぅ...、はッっ...」」と、汗だくで登場俺たちをクラスのみんなが笑う。
「最後の最後に遅刻ギリギリとかw2人はほんまにおもろいねーw」
「だって!...碧くんが芋虫みたいになるから...!」
「いやっ...はあっ...面目ない...」
「2人とも早く教室入れー」と、国岡先生に急かされながら息絶え絶えのまま教室に入るのだった。
時間になると全員で体育館に向かう。
胸には小さな花をつけて、少しだけ緊張しながら待機する。
そんな中、保護者が待機する場所に目をやるとそこには奏さんや監督、喫茶店のマスターや真凜ちゃんのご両親などがいた。
しかし、もう一組見知った人たちがいた。
それは...実の父と再婚相手の母...そして妹が2人...居たのだ。
こちらには気づいていないようだが、相変わらず母は外面がよく、誰かのお母さんたちと談笑していた。
しかし、妹2人とお父さんは浮かない表情をしていたのだった。
「私が呼んだんだよ」と、真凜ちゃんが言う。
「...そうなんだ」
「別に無理やり連れてきたわけじゃないよ。一応来てもいいですよって言っただけだから」
「...そっか」
あの母が来たとなれば何か裏があるのではと勘繰ってしまう。というか、何かはあるはずなのだ。じゃなきゃ、あの人がここに出てくるわけがないのだから。
「...」と、無言で拳を強く握ると「なんかあったら俺も手伝うぞ」と、清人が笑う。
「そそそ。私たちは全員仲間なんだから」と、本庄さんが続く。
「...私も...協力する」と、海ちゃんもそんな普通に言ってくれた。
本当に...本当に...いい友達を持った。
けど、その全ての始まりはやっぱり真凜ちゃんであった。
「行こっか。最後は笑顔でね?」と、笑いながらそう言った。
◇
卒業代表として真凛ちゃんが壇上に上がる。
その姿は入学式のあの時と一緒だ。
誰もが憧れる天才で、どこか抜けている天然で、だけど誰よりも優しい天使。
けど、それだけじゃなかった。
小学校から同じだけど知らないことはたくさんあって、一途で前向きでたまに弱くて可愛くて...たくさんの真凜ちゃんを知ることができた。
そして、たくさんのかけがえのない友人ができた。
こんな卒業式を迎えるなんて昔の俺なら想像もできなかっただろう。
これからも...ずっと...ずっと。
「卒業生代表...汐崎真凜」と言い深く礼をする。
涙するクラスメイトたち。
そんな姿にもらい泣きしそうになるも、それは最後までとっておこうと我慢するのだった。
◇
「うわーん!!!卒業したくないヨォ!!!!明日も学校来ようよー!!!」
「あー、卒業かー。いやー、まじ早かったな」
「ちょっと!写真撮るよ!」
そんな会話が飛び交う中、俺は少し外れたところで1人桜の木を見ていた。
すると、後ろから声をかけられる。
振り返るとそこにいたのは父だった。
「...久しぶりだな。碧」
俺を名前を呼んだのは何年ぶりだろう。
「...父さん」
「卒業...おめでとう」
「...うん」
「...すまなかった」と、父さんは軽く頭を下げる。
「...別にいいよ。謝らなくて」
「...お前が悪いわけじゃないことはわかっていた。けど...けど...」
「別にもういいよ」
あの日々のこと...許せる日なんてきっと永遠に来ない。
時間が解決してくれるなんて、時間で解決できるようなことだから言えるセリフだ。
全てが時間で解決してほど単純じゃないことは知っている。
「...今の父さんのことは大嫌いだから。もう好きになることもないし」
「...」
「けど、俺は母さんのこと今でも大好きだから。そんな母さんが大好きだった父さんのことは俺も好きだから」
だから...。
「さようなら、父さん。大好きだったよ」
そういうと父さんは涙を流した。
あの日以来、人前で見せることはなかった父さんの涙だった
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