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第4話 なーべさんとSSS

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「このクエストを受けたいのだが」

「...こちらはSSSのクエストになりますが」

「そんなことは分かっている」と、金のプレートとギルド証を見せる。


 多分この子新人だな。


 俺があの【X】だと分かり、ハッとしたような顔になる。


「...し、失礼しました。それでは受理いたします。いつ出発されますか?」

「今すぐに」


 そうして俺はダンジョンに向かい歩き始めるとギルドのおっさんが話しかけてくる。


「おいおい、単独でSSSダンジョンだぁ?あんた、何者だ?」

「気安く話しかけるな」と、適当にあしらってダンジョンに降りようとすると、「おいおい、その口の聞き方はなんだ?」と言われる。

「SSSっていうのはよぉ...?超つえー仲間数人でやるダンジョンなんだよ...。お前みたいな...見ず知らずのやつが...行くようなダンジョンじゃないんだよぉ...」と、千鳥足になりながらそんなことを言う。

「...そうか。忠告ありがとう」

「おめぇ...ダンジョンの意味わかってんのかぁ?ダンジョンはよぉ...?ヒッ...数百年前に突如現れて...低いランクでF~SSSまであってよぉ...?Fランクなら...1か月程度...SSSは1000年ほどの期限が決められていて...その期限を過ぎると...このダンジョンからモンスター達が現れて...ヒック...大変なことになるんだよ...ヒック...。だから各国が協力して...なんとかクリアしてるんだが...お前が行こうとしているのはSSSの中でも...超高難易度...ダンジョンが現れて以来...いくつものパーティーが死んだ...魔のダンジョン...そんなところに...若造が一人で...何ができる...ヒック...」

「はぁ...そうですか。ありがとうございます。すみません、時間がないのでもう入っていいですか?」

「俺の話を聞いてなかったのかぁ!!ああん!?」と、なぜかキレ始めて俺に殴りかかってくるおっさん。


 ...はぁ、早く帰らないといけないし...やるか。


「...お前も誰に口聞いてるのか分かっているのか?」


【威圧の波動】


 その瞬間、おっさんは膝から崩れ落ちるのだった。


「おいおい、なんだなんだ喧嘩か?」と、人だかりができたのでそこに向かっておっさんを投げる。

「あんた...何者だ?」

「...X」

「...あんたがあの...!?」と、ざわつき始めるギルド内。


 俺は正体を隠し活動しており、以前も単独でのSSSダンジョンを達成したことがある。
そんな正体不明の俺を人々を【X】と呼んでいた。
基本的なクエストは街の外にいる低級~中級のモンスター狩りか雑用などなど、もしくはダンジョンにいる上級~超上級のモンスター狩りの二択である。

 幼い時から最強だった裏ボス悪役貴族の俺は低級のクエストを受け続け信用を勝ち取り、現在は超上級SSSのクエスト/ダンジョン攻略も受けられるようになっていた。

 そして、現在のクエスト成功確率は100%。つまりは今まで一度も途中帰還も失敗もしたことなどないのだ。


「...そうか...。このおじさんのこと悪く思わないでほしい...。おじさんの息子は...このギルド内でじゃそこそこ有名でさ...。けど、数年前にあんたが行こうとしているダンジョンに挑戦して...死んじゃったんだよ。だから...おじさんのためにも...絶対クリアしてくれ」

「...善処しよう」


 ◇


 ダンジョンに入るとその暑さに思わず息をするのも辛くなる。

 確か火のモンスターだったか?
名前は【業火の龍】だったか。

 SSSとランク付けされている時点で、容易く倒せる相手ではない。
俺は最強と言っても無敵ではないのだ。

 こちらの存在に気づいた龍が咆哮する。


「ギャオオオオオオオオ!!!」


 恐らく、セバちゃんや悪魔たちを利用すればこのダンジョンの攻略自体は容易だろう。
しかし、それではダメなんだ。俺には守りたいものができたから。強くならないといけない。


「...さてとやるか」と、バフ魔法をかけて...その龍に斬りかかるのだった。





 ◇


「あれ...ラン様は?」と、部屋の前に立つ私にアイン様が話しかける。

「...おぼっちゃまは既に寝ております」

「...そうですか。...珍しいですね。この本をお勧めしようと思っていたのですが...」と、しょんぼりするアイン様。

「その本は私がラン様の部屋に置いておきますね」

「...分かりました。ラン様は...何であんなに優しいのですか?」

「私に聞かれても分かりませんが、ぼっちゃまは基本的に怠惰な人間です。しかし、奴隷市場の人達を助けたり、1人で色々と抱えてしまうお方なのです。なのでもしよければ、そばにいてあげてくれたら私としても嬉しいです」

「...私なんかでよければ」

「えぇ。きっとそのことを伝えたら、おぼっちゃまも喜ぶと思います」

「...はい」と、私に本を渡すとそそくさと去っていっていくのだった。

「...無理だけはしないでくださいね。ぼっちゃま」


 ◇翌朝


 ボロボロの状態で帰宅する。
流石にSSSクエスト、無傷どころか左腕に消えないやけどの呪いをかけられてしまった。

 ...ったく、厄介だな。
まぁ、痛みはさほどではないがずっと消えないとなるとメンタル的にキツさが残るな。

 そうして、自室に向かっているとナーベさんとすれ違う。


「...あら、こんな朝から何をしてるの?」

「あっ、いや!ちょっと寝付けなくて散歩してまして...」

「徘徊...」

「そういう言い方にすると急に怪しくなるんで辞めてくれます?」

「はぁ。まぁ、私には関係ないけど。あなたがどこで何をしてようとね」

「...そうですよね」


 2人と違い、ナーベさんは全く俺に興味がない。





 そのまま彼女の横を通り、部屋に向かおうとすると「腕どうかしたの?」と言われる。

 自然と撫でてしまっていたことに気づく。


「...あぁ、ちょっとかぶれちゃって」

「そう」

 そう嘘をついて部屋のベッドに倒れ込むのだった。
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