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第1章
プロローグ Ver0.5
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①
ファンタジーと聞いて多くの人が想像する剣と魔法の世界。
その世界で長く歴史を紡いできたバフナル王国にあるネルフェルテ学園では、王国の未来を背負う優秀な人材を輩出しようと多くの教員が指導に熱を入れ、それを受けた学生達が日々切磋琢磨していた。
学園内は、国が運営しているうえに多くの有力な貴族がスポンサーになっているだけのことはあり、ぱっと見は白と青を基調とした落ち着いたデザインの建築物が立ち並ぶが、ドアの取っ手一つを見ても、実に細かい意匠が施されていて、国の未来を育てるには相応しい華麗で荘厳な雰囲気に包まれている。
そんな落ち着いた学園の空気を斬り裂くように、耳をつんざくような女の悲鳴が轟いた。
「きゃあああああああああ!」
悲鳴の主は、火の精霊の加護の影響だろうか? 薄い桃色の髪色で肩まで伸びたミディアムヘアーで、今は水をかぶったのか、ぐっしょりと濡れて毛先から水が滴っている。
女はがくっと膝を地面について、目の前に腕組みをして仁王立ちする赤いドレスを着た黒いロングヘアーの女を仰ぎ見る。
「び、びっくりしたぁ! エアリーだったのね」
悲鳴をあげた女が、黒いロングヘアーの女を見上げた後、ほっと安どのため息を漏らす。
エアリーと呼ばれた女は、悲鳴を上げた女を意地悪そうな微笑みで見下ろしたまま言った。
「あら~? ごめんなさいねぇ。随分と薄汚れていたから、汚れを落とす魔法を使ったら、魔力をこめすぎてちょっと暴走してしまったわ」
「はぁ……。確かに、クリーンの魔法って制御が難しいもんね……。じゃなくって! 魔法を使う際は一言声をかけて欲しいものだわ!」
「あらあら。この私、エアリー・フォートブラッドが、あなたのようなドブネズミにいちいちお伺いをたてるわけがないでしょう!?」
「はぁ……。あなたの言うドブネズミには、一応、ティナ・ネルフェスという名前があるのだけれど」
「はぁ? 私があなたの名前をいちいち覚えるはずがないでしょう!? ドブネズミはドブネズミで十分なのよ!」
「はぁ……」
ティナがエアリーのやや後方に立っている男にちらりと視線を送る。
学園のイメージを施したのか、白を基調に所々に青いラインが入った制服をまとった自分と同い年くらいの若い男が伏目勝ちに、首を横にふって、ティナに申し訳なさを伝えている。
「エアリー。普段は優しいのに、いつも思い出したようにこういうことをするのは何故なの?」
「優しい!? 随分とドブネズミのくせにつけ上がるわね! 私の男に手を出しておいて! いい!? 陛下はあなたなんかに見向きもしないわ! 陛下にとってあなたはただの周りにゴミをまき散らす害獣なのよ!」
あまりに騒いでいるので、周りを歩いている他の教員や学生たちも、ちらりと様子をうかがうが、騒動の元がティナとエアリーであることを確認すると、何もなかったように過ぎ去っていく。
あーあ。またやってらー。そんな感じなわけだ。
ティナにとっても、この学園に入学して3カ月、エアリーからこのような仕打ちをうけるのは慣れてしまうくらいではあったが、いまいち腹の底から怒る気にはなれない。
なぜなら、普段はエアリーはとても優しく気さくで、立ち振る舞いも完璧な淑女だったからだ。
こうやってドブネズミ呼ばわりしている今でこそあれど、つい昨日はお茶会に呼ばれて次のテストのポイントを皆と一緒に勉強しただけでなく、美味しいケーキや紅茶をご馳走になったのだ。
当初は、エアリーが癇癪もちで、自分が何か地雷を踏んでしまったからこういったことが起きるのだと思っていて、必死に何が地雷なのか探ってはみたものの、エアリー自身が言うように、この国の王子であるレオン・バフナルにひょんなことから近づいてしまったことが原因かとも思って見たが、どうやら違う。
そして、今こうしてイジワルをしているエアリーをよく見ていると、最初こそ、自分に相対していたが、段々と体の向きを変えていって、今となってはティナからみれば斜めを向いており、エアリーの後方にいる男を横目でちらりちらりと視線を送っている。
まるで、男の指示でそうやれと言われているかのようだ。
だが、肝心の男は爽やかに困惑の顔を見せると、申し訳なさそうに首を振っている。
本当にわけがわからなかった。
だが、ティナも腐ってもというと失礼な話だが女である。
ぴーんとある日勘づいた。
(あたしは、男女の睦みあいのダシに使われている!!)
具体的にエアリーと男の間でどんなことが行われているかはわからないし、それを探る気も起きない。
ただ、突然エアリーにイジワルをされるときというのは、エアリーが男といちゃつきたいときなのだとなんとなくわかった。
レオンの婚約者候補という噂がありながら、まるでレオンに気持ちが入っているようにみえない日々。
エアリーの護衛を兼ねた付き人との禁断の恋を楽しんでいるのか……。そう思うと、突然放たれるイジワルも少しは耐えられるというものだ。というより、普段のエアリーからもらっているものを考えれば、お釣りがくる。
実際問題、こうやってわざとらしく罵られて、水をかけられたり、首筋にカエルを入れられたりと、幼い男の子のするようなことばかりで、身の安全は確保されているのだから。
「いいですこと!? 自分の分をわきまえなさい!」
エアリーはそう怒鳴ると、フンっとわざとらしく踵を返して、男とこの場を後にしていった。
男はティナに両手を合わせてごめんのポーズをとって、去っていく。
「やれやれ……。なんだかしらないけれど、着替えがないからびしょ濡れは勘弁して欲しかったわ……」
ティナのボヤキと共に、周りの学生が、大丈夫? と駆けつけてくれる。
それに対して、いつものことよと答えて自分もその場を後にした。
②
エアリーは私室で男と二人でいた。
いかにもファンタジー世界の貴族の空間といった絢爛な様子の部屋で、エアリーはベッドの端に腰かけて自分の正面に立っている男に下から熱を帯びた艶めかしい視線を送りながら、もじもじしている。
綺麗に整っているが特徴のないモブ顔の男が口を開く。
「お嬢様……。なんで、あんなことをしてしまうんですか?」
「お嬢様じゃないでしょ? 今は二人きりよ?」
「……エアリー。君がああいうことをする必要はもうないと教えたはずだが……?」
「そうね。でもね。あの子を見ているとイライラしてしまうことがあるのよ? 本当よ? いけないことだと思ってもついついやってしまうの。これが、前にあなたが言っていた運命の強制力というやつじゃないかしら?」
「エアリー。今日のは俺にはそうは見えなかったよ。それに、イライラ? 本当に? 昨日はお茶会で仲良く一緒に過ごしていたじゃないか」
「そうね。でも、今日薄汚れているあの子をみたら、イジワルをしたくなったのよ。でも、実際、殿下を篭絡しようとする泥棒猫なんでしょ? 婚約者である私には、あれくらいする権利はあるはずよ?」
「いや、そういうことじゃなくてだね」
「わかっているわ。私がこのまま悪行を重ねていくと、この学園の卒業の日に処刑されてしまうんでしょ?」
「わかっているなら、やめてくれないか。君に死んでほしくないから、今まで君が悪の道に行かないようにしてきたし、悪にとりつかれる要因は全て潰してきたはずだ。もう今は明るい道を歩き続けられる立派な淑女だよ」
「ありがとう。カイン。貴方のお陰で、とても充実しているわ。あなたの乙女ゲーの話を聞く限り、私はもっと孤独で悲惨な人生を歩んでいたはずなのよね」
エアリーはそう言うと、ゆっくりと立ち上がり、そのまま自分の真っ赤なドレスのスカートをショーツ付きガーダーベルトがカインに見えるところまで掴んでたくし上げた。
ショーツは、黒を基調としつつラインに沿って金色の模様が入っていて、所々に小さく蝶のような意匠がこしらえられている。
ふわりと、スカートをたくし上げたときに、エアリーの心地よい優しい甘い匂いと、わずかにレアチーズケーキを思わせる雌の匂いがカインの鼻腔をくすぐる。
よく見れば、黒いため目立たないが、ショーツはシミをつくり、スレンダーな足の太ももの内側を一滴の雫が流れていくのが見える。
「エアリー。何度も言うが俺は君の幸せを願う一人の騎士だ。立場が違いすぎる。君は……」
カインのセリフをエアリーが遮る。
「そう。だから、これはお仕置きなの。悪いことをしたからお仕置きされるの。カインは私の良いところを一杯褒めてくれて、悪いところはたしなめて、初めて出会ったときはお尻を叩いてくれたじゃない」
「それは、君が悪役令嬢そのものになりそうだったからだよ」
「えぇ、そうよ。だから、今も私、ヒロインをイジメてしまったわ。悪い悪い悪役令嬢になってしまうかも?」
「はぁ……。エアリー。つまりは、これは男女の睦みではなく、ただの教育と言いたいわけだな?」
「えぇ。それなら問題ないでしょ?」
「問題はある。ここは乙女ゲーの世界になにもかもがそっくりだけれど、みんな確かに生きている。ゲームの世界の中に入り込んだわけじゃない。ステータスオープンと言ったところでステータスは見ることはできないし、レベルの概念もない。いくらか隠しダンジョンや隠し装備はゲームと同じところにあったけれど、でも、やっぱり皆ちゃんと生きている世界なんだ。だから、この立場の違いは革命でも起きなければ……あぁ、だから……?」
「そうよ。私は、悪役令嬢として処分されるの。家から勘当されて、政治の駒から解放されて、あなたと一緒になるの。だから、私は、悪役令嬢にならないといけないのよ」
「ダメだ。俺は君を守るために鍛え続けてきた。しかし、君を処刑から守るには非力すぎる。それこそ、聖剣エクスカリバーでもなければ、負けイベントをくつがえすことはできない」
「でも、このまま穏やかで優しいお嬢様を続けたら、レオンのものになってしまうわよ? それでいいの? カイン」
「……。俺は、君が幸せであればそれでいい……」
「そう……。じゃあ、なおさらこれはお仕置きね。いっぱいいっぱい悪いことしなきゃ」
「エアリー……」
エアリーはカインに歩み寄って、頭の重さをカインの胸に預けると、カインの手を取って自分の女の割れ目へ誘う。
カインは、エアリーに動かされるままに、自分の手をエアリーの割れ目にそって触れさせられると、そこからサラサラとしつつも粘りのある愛液がじわじわと流れてくるのに触れた。
エアリーが顔を赤くしながら、熱を帯びた潤んだ瞳でカインを見上げている。
カインは、体内の魔力量が多いことを示す宝石のような透き通った青い瞳を見つめながら、そのまつ毛の一本一本を、小さな赤い唇を、透き通るような白い肌を、穴が空くように見つめながら、どうしてこうなったのか? こう育ってしまったのか? いくばくか想いを過去に巡らせながら、誘われた手の指を自分の意思で動かし始める。
「……はぁ……あっ……カイン……」
ショーツ越しに割れ目を、そして、クリトリスを優しく触られて、次第に吐く息が艶めかしい色に染まっていくエアリー。
そう、始まりはある森の中だった。
ファンタジーと聞いて多くの人が想像する剣と魔法の世界。
その世界で長く歴史を紡いできたバフナル王国にあるネルフェルテ学園では、王国の未来を背負う優秀な人材を輩出しようと多くの教員が指導に熱を入れ、それを受けた学生達が日々切磋琢磨していた。
学園内は、国が運営しているうえに多くの有力な貴族がスポンサーになっているだけのことはあり、ぱっと見は白と青を基調とした落ち着いたデザインの建築物が立ち並ぶが、ドアの取っ手一つを見ても、実に細かい意匠が施されていて、国の未来を育てるには相応しい華麗で荘厳な雰囲気に包まれている。
そんな落ち着いた学園の空気を斬り裂くように、耳をつんざくような女の悲鳴が轟いた。
「きゃあああああああああ!」
悲鳴の主は、火の精霊の加護の影響だろうか? 薄い桃色の髪色で肩まで伸びたミディアムヘアーで、今は水をかぶったのか、ぐっしょりと濡れて毛先から水が滴っている。
女はがくっと膝を地面について、目の前に腕組みをして仁王立ちする赤いドレスを着た黒いロングヘアーの女を仰ぎ見る。
「び、びっくりしたぁ! エアリーだったのね」
悲鳴をあげた女が、黒いロングヘアーの女を見上げた後、ほっと安どのため息を漏らす。
エアリーと呼ばれた女は、悲鳴を上げた女を意地悪そうな微笑みで見下ろしたまま言った。
「あら~? ごめんなさいねぇ。随分と薄汚れていたから、汚れを落とす魔法を使ったら、魔力をこめすぎてちょっと暴走してしまったわ」
「はぁ……。確かに、クリーンの魔法って制御が難しいもんね……。じゃなくって! 魔法を使う際は一言声をかけて欲しいものだわ!」
「あらあら。この私、エアリー・フォートブラッドが、あなたのようなドブネズミにいちいちお伺いをたてるわけがないでしょう!?」
「はぁ……。あなたの言うドブネズミには、一応、ティナ・ネルフェスという名前があるのだけれど」
「はぁ? 私があなたの名前をいちいち覚えるはずがないでしょう!? ドブネズミはドブネズミで十分なのよ!」
「はぁ……」
ティナがエアリーのやや後方に立っている男にちらりと視線を送る。
学園のイメージを施したのか、白を基調に所々に青いラインが入った制服をまとった自分と同い年くらいの若い男が伏目勝ちに、首を横にふって、ティナに申し訳なさを伝えている。
「エアリー。普段は優しいのに、いつも思い出したようにこういうことをするのは何故なの?」
「優しい!? 随分とドブネズミのくせにつけ上がるわね! 私の男に手を出しておいて! いい!? 陛下はあなたなんかに見向きもしないわ! 陛下にとってあなたはただの周りにゴミをまき散らす害獣なのよ!」
あまりに騒いでいるので、周りを歩いている他の教員や学生たちも、ちらりと様子をうかがうが、騒動の元がティナとエアリーであることを確認すると、何もなかったように過ぎ去っていく。
あーあ。またやってらー。そんな感じなわけだ。
ティナにとっても、この学園に入学して3カ月、エアリーからこのような仕打ちをうけるのは慣れてしまうくらいではあったが、いまいち腹の底から怒る気にはなれない。
なぜなら、普段はエアリーはとても優しく気さくで、立ち振る舞いも完璧な淑女だったからだ。
こうやってドブネズミ呼ばわりしている今でこそあれど、つい昨日はお茶会に呼ばれて次のテストのポイントを皆と一緒に勉強しただけでなく、美味しいケーキや紅茶をご馳走になったのだ。
当初は、エアリーが癇癪もちで、自分が何か地雷を踏んでしまったからこういったことが起きるのだと思っていて、必死に何が地雷なのか探ってはみたものの、エアリー自身が言うように、この国の王子であるレオン・バフナルにひょんなことから近づいてしまったことが原因かとも思って見たが、どうやら違う。
そして、今こうしてイジワルをしているエアリーをよく見ていると、最初こそ、自分に相対していたが、段々と体の向きを変えていって、今となってはティナからみれば斜めを向いており、エアリーの後方にいる男を横目でちらりちらりと視線を送っている。
まるで、男の指示でそうやれと言われているかのようだ。
だが、肝心の男は爽やかに困惑の顔を見せると、申し訳なさそうに首を振っている。
本当にわけがわからなかった。
だが、ティナも腐ってもというと失礼な話だが女である。
ぴーんとある日勘づいた。
(あたしは、男女の睦みあいのダシに使われている!!)
具体的にエアリーと男の間でどんなことが行われているかはわからないし、それを探る気も起きない。
ただ、突然エアリーにイジワルをされるときというのは、エアリーが男といちゃつきたいときなのだとなんとなくわかった。
レオンの婚約者候補という噂がありながら、まるでレオンに気持ちが入っているようにみえない日々。
エアリーの護衛を兼ねた付き人との禁断の恋を楽しんでいるのか……。そう思うと、突然放たれるイジワルも少しは耐えられるというものだ。というより、普段のエアリーからもらっているものを考えれば、お釣りがくる。
実際問題、こうやってわざとらしく罵られて、水をかけられたり、首筋にカエルを入れられたりと、幼い男の子のするようなことばかりで、身の安全は確保されているのだから。
「いいですこと!? 自分の分をわきまえなさい!」
エアリーはそう怒鳴ると、フンっとわざとらしく踵を返して、男とこの場を後にしていった。
男はティナに両手を合わせてごめんのポーズをとって、去っていく。
「やれやれ……。なんだかしらないけれど、着替えがないからびしょ濡れは勘弁して欲しかったわ……」
ティナのボヤキと共に、周りの学生が、大丈夫? と駆けつけてくれる。
それに対して、いつものことよと答えて自分もその場を後にした。
②
エアリーは私室で男と二人でいた。
いかにもファンタジー世界の貴族の空間といった絢爛な様子の部屋で、エアリーはベッドの端に腰かけて自分の正面に立っている男に下から熱を帯びた艶めかしい視線を送りながら、もじもじしている。
綺麗に整っているが特徴のないモブ顔の男が口を開く。
「お嬢様……。なんで、あんなことをしてしまうんですか?」
「お嬢様じゃないでしょ? 今は二人きりよ?」
「……エアリー。君がああいうことをする必要はもうないと教えたはずだが……?」
「そうね。でもね。あの子を見ているとイライラしてしまうことがあるのよ? 本当よ? いけないことだと思ってもついついやってしまうの。これが、前にあなたが言っていた運命の強制力というやつじゃないかしら?」
「エアリー。今日のは俺にはそうは見えなかったよ。それに、イライラ? 本当に? 昨日はお茶会で仲良く一緒に過ごしていたじゃないか」
「そうね。でも、今日薄汚れているあの子をみたら、イジワルをしたくなったのよ。でも、実際、殿下を篭絡しようとする泥棒猫なんでしょ? 婚約者である私には、あれくらいする権利はあるはずよ?」
「いや、そういうことじゃなくてだね」
「わかっているわ。私がこのまま悪行を重ねていくと、この学園の卒業の日に処刑されてしまうんでしょ?」
「わかっているなら、やめてくれないか。君に死んでほしくないから、今まで君が悪の道に行かないようにしてきたし、悪にとりつかれる要因は全て潰してきたはずだ。もう今は明るい道を歩き続けられる立派な淑女だよ」
「ありがとう。カイン。貴方のお陰で、とても充実しているわ。あなたの乙女ゲーの話を聞く限り、私はもっと孤独で悲惨な人生を歩んでいたはずなのよね」
エアリーはそう言うと、ゆっくりと立ち上がり、そのまま自分の真っ赤なドレスのスカートをショーツ付きガーダーベルトがカインに見えるところまで掴んでたくし上げた。
ショーツは、黒を基調としつつラインに沿って金色の模様が入っていて、所々に小さく蝶のような意匠がこしらえられている。
ふわりと、スカートをたくし上げたときに、エアリーの心地よい優しい甘い匂いと、わずかにレアチーズケーキを思わせる雌の匂いがカインの鼻腔をくすぐる。
よく見れば、黒いため目立たないが、ショーツはシミをつくり、スレンダーな足の太ももの内側を一滴の雫が流れていくのが見える。
「エアリー。何度も言うが俺は君の幸せを願う一人の騎士だ。立場が違いすぎる。君は……」
カインのセリフをエアリーが遮る。
「そう。だから、これはお仕置きなの。悪いことをしたからお仕置きされるの。カインは私の良いところを一杯褒めてくれて、悪いところはたしなめて、初めて出会ったときはお尻を叩いてくれたじゃない」
「それは、君が悪役令嬢そのものになりそうだったからだよ」
「えぇ、そうよ。だから、今も私、ヒロインをイジメてしまったわ。悪い悪い悪役令嬢になってしまうかも?」
「はぁ……。エアリー。つまりは、これは男女の睦みではなく、ただの教育と言いたいわけだな?」
「えぇ。それなら問題ないでしょ?」
「問題はある。ここは乙女ゲーの世界になにもかもがそっくりだけれど、みんな確かに生きている。ゲームの世界の中に入り込んだわけじゃない。ステータスオープンと言ったところでステータスは見ることはできないし、レベルの概念もない。いくらか隠しダンジョンや隠し装備はゲームと同じところにあったけれど、でも、やっぱり皆ちゃんと生きている世界なんだ。だから、この立場の違いは革命でも起きなければ……あぁ、だから……?」
「そうよ。私は、悪役令嬢として処分されるの。家から勘当されて、政治の駒から解放されて、あなたと一緒になるの。だから、私は、悪役令嬢にならないといけないのよ」
「ダメだ。俺は君を守るために鍛え続けてきた。しかし、君を処刑から守るには非力すぎる。それこそ、聖剣エクスカリバーでもなければ、負けイベントをくつがえすことはできない」
「でも、このまま穏やかで優しいお嬢様を続けたら、レオンのものになってしまうわよ? それでいいの? カイン」
「……。俺は、君が幸せであればそれでいい……」
「そう……。じゃあ、なおさらこれはお仕置きね。いっぱいいっぱい悪いことしなきゃ」
「エアリー……」
エアリーはカインに歩み寄って、頭の重さをカインの胸に預けると、カインの手を取って自分の女の割れ目へ誘う。
カインは、エアリーに動かされるままに、自分の手をエアリーの割れ目にそって触れさせられると、そこからサラサラとしつつも粘りのある愛液がじわじわと流れてくるのに触れた。
エアリーが顔を赤くしながら、熱を帯びた潤んだ瞳でカインを見上げている。
カインは、体内の魔力量が多いことを示す宝石のような透き通った青い瞳を見つめながら、そのまつ毛の一本一本を、小さな赤い唇を、透き通るような白い肌を、穴が空くように見つめながら、どうしてこうなったのか? こう育ってしまったのか? いくばくか想いを過去に巡らせながら、誘われた手の指を自分の意思で動かし始める。
「……はぁ……あっ……カイン……」
ショーツ越しに割れ目を、そして、クリトリスを優しく触られて、次第に吐く息が艶めかしい色に染まっていくエアリー。
そう、始まりはある森の中だった。
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