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第百六十五話
しおりを挟むハルモニア王都。僕とアンネリーゼ嬢は無人の外街を抜け将兵が陣を張る北門の前に来ていた。
「アンネリーゼ様、打合せ通りに」
「本当にやるのですか?」
「お願いします。士気高揚の為です」
僕が昨日の夜、テントの外にいるとフリートヘルムは身体を治してきて、僕の正面に座りやがった。酒の一つでも差し入れてくれたらいいものを、黙って座って僕と見つめ合っていた。
そんな趣味は無いので、僕は元気になったフリートヘルムに命じて、倒したホブゴブリンの首を一つ取って来てもらう事にした。元気になったら働く、この世界は厳しいのだよ。
そしてアンネリーゼ嬢には北門の前で居並ぶ将兵達の前に、そのホブゴブリンの首を投げ付けて一席をぶってもらった。
「見ろ! ハルモニアの兵士達よ! 魔王など恐れるに足らず! 我々は勝つ! 我が国土は魔王に蹂躙された。女、子供は泣き、耕した麦も刈り取られた。我々は己の尊厳と自由の為に戦わなくてはならない。立て! 今こそ戦う時だ!」
見た目で、か弱い女の子が重いプレートメイルを着てホブゴブリンの首を投げ、口上を述べたんだ。これで盛り上がらない訳がない。
大歓声の後に国歌斉唱。士気は最高潮に上がった。僕はこの国の出になってるけど国歌なんて知らん。僕は残りの舞台をアンネリーゼ嬢とフリートヘルムに託した。
僕は白百合団のいる第一旅団に戻ると、オリエッタが珍しく抱き付いて僕の帰りを喜んでくれた。
「団長の剣が出来たんです~」
思わず右手を押さえたが斬られる心配は無さそうだった。オリエッタは白い鞘の黒い柄の剣を僕に差し出した。
「これが僕の剣ですか……」
僕が以前から頼んであった剣。出来上がったのは嬉しいが思っていたのと少し違った。鞘から剣を抜くと大きさはショートソードと変わり無く、頼んでいたバスターソード並の大きさでは無かった。
「あんまり嬉しそうじゃないです~」
嬉しいんだけとね。嬉しいんだけど、これから魔物を相手にするにはショートソードでは小さい。重さもショートソードと同じくらいで鐔の所には剣に沿って小さな突起があるくらいだ。
振ってみたがバランスはいい。むしろ剣速が上がったくらいに感じるが、やはり短い。これではトロールの足を切り裂くには二、三回は切り付けないと。
「嬉しいですよ。もちろん、嬉しいです。ただちょっと短いかな、なんて……」
オリエッタの作る物だから凄い物なのだろうけど、見た目では普通のショートソードと変わらない。
「大丈夫です~。この剣はオリちゃんとソフィアちゃん、ルフィナちゃんの三人で作った最強の剣です~」
今まで居なかったのは三人で剣を作っていたからだったのか。それなら「立ち入り殺す」なんて書かないで教えてくれたら良かったのに。無駄に一人、死んじゃったからね。
「それは凄い! 凄いんだろうけど、何が最強なのかな?」
「それはですね~」
「もういいだろ!」
何故か一人で怒ってるプリシラさん。どうしたんだろう? 女の子の日かな?
「ただいま、プリシラさん。変わりはありませんか?」
「今まで何をしてやがった!」
仕事だよプリシラさん。護衛の仕事でアンネリーゼ嬢を守って来たんだよ。デート気分の楽な仕事で帰って来たよ。お帰りのチューは無いのかな?
「クリスティンさんから聞いてませんか? アンネリーゼ様の護衛でシュレイアシュバルツの街の偵察に行って来たんですよ」
「そんな事は聞いてねえ!」
今、聞いたろ! 言ったよ、「何をしてた」って。まるで気分屋の上司の様だ。扱いに苦しむ。
「だって……」
「だってじゃ、ねえ!」
他に何を答えればいいのか。マニュアルがあったら欲しいよ。そして何故にプリシラさんと居並ぶ様に皆いるのかな? オリエッタは帰っておいで、もう少し抱き合いたいよ。
「また勝手な事をしてくれたな。あたいが居ない間に女と自由行動か! どこまでヤれば気が済む!」
この大いなる誤解を誰か解いて欲しいよ。アンネリーゼ嬢に頼まれた時、まず先にプリシラさんを頼ったら酔っぱらっていて、アラナは補給の手違いに対応して不在。
オリエッタ達、三人は入ったら殺すの張り紙をドアに付けて立て籠ってるし、クリスティンさんは僕が不在の間は旅団を見てもらわないといけない。みんな忙しかったんだよ、お前以外は!
「プリシラさん、良く話し合いましょう。いつもの事です。ちゃんと話せばみんなで幸せに……」
「問答無用!」
プリシラさんのハルバートを新しい剣で受けても良かったが、性能がわからない物は使いにくい。僕は神速で無人の街に逃げ出す事にした。こうして「第二回、白百合団対団長」の殺し愛が王都で切って落とされた。
「追え!」
逃げます。僕は逃げます、地の果てまで。モード・スリーをこんな事に使うのは気が引けるが命には代えられない。
だが、腐っても白百合団を率いた団長だ。二回目でもあるし勝算はある! 舐めるなよプリシラ! 今日こそは至高の存在にしてやるからな!
僕のモード・スリーに追い付ける訳も無く。白百合団を街中で巻くのは簡単だった。僕は民家の屋根に登り白百合団が追って来るのを待っていた。
僕の存在は既に無く、追いかけるなら目を使う以外の方法が必要になる。予定通り、先頭はアラナが受け持って鼻をヒクヒクさせながら臭いで追って来てるのが分かった。
アラナは白百合団の目になって僕を探している。潰すなら最初はアラナから、だが良く見れば本気になっているのは三人だけだ。
アラナを先頭にプリシラさんとルフィナが続き、他の三人は詰まらなそうに付いてくるだけ。それなら狙いを代えて行こう。
白百合団と勝負するのに以外と厄介なのがクリスティンさんだ。クリスティンさんの不幸にもを発動されると神速が一段は落ちる。そのまま神速のマッサージを使わなければ、あっという間にあの世行きだ。
そしてクリスティンさんは自身を狙った者にもオートで攻撃してくるし範囲も広い。今だに未知数な力だけに仕止めるなら速い方がいい。
僕は隊列が伸び一番後ろから着いてくるクリスティンさんに狙いを付けて真後ろに着地。他のメンバーに分からない様にかっさらった。
抱き上げクリスティンさんの柔らかい肉の感触を楽しみなが神速で逃げたが、クリスティンさんからは落ちまいと手に力が入るだけで心臓麻痺の不幸にもの力は来なかった。
「クリスティンさんは分かってくれますよね!」
僕はアラナに直ぐには見付からない様に民家の二階に上がってクリスティンさんに壁ドンを喰らわせる。
「……分かってますよ、プリシラとルフィナだけが張り切ってるだけですから」
やっぱり分かってくれると思ったよ。アンネリーゼ嬢が来た時にはクリスティンさんが側にいたし、他のメンバーの事もクリスティンさんに聞いたからね。
未知数の力もこれで味方だ。戦わなくてもいいんだ、旅団の所に戻ってくれるか、このまま嵐が過ぎ去るのを待っていてくれたら。
僕は壁から手を離して次のターゲットは、と思うとクリスティンさんから僕の胸に手を当ててくる。もしかして一人になるのは寂しいのかな? 嵐が過ぎたらゆっくり二人きりでね。
クリスティンさんの手を取って離れようとすると、壁ドンならぬ心臓ドン! いきなり喰らわせやがって! 三途の川が遠くに見えたぞ!
「ク、クリスティンさ、さん、いきなりはちょっと……」
僕は手を取ったままクリスティンさんにもたれ掛かる。神速マッサージはいらない、麻痺よりも心臓爆破に近い衝撃がドンと襲い掛かった。
「……時間はありますから」
ねえよ! 無いです。 アラナが追い掛けて来てるんだから見付かるのも時間の問題だ。猫化の亜人の力を舐めてはいけない。
「……うふふ、アラナなら来ませんよ、わたしがいますからね。 ……わたしと団長の匂いが混じっている時に部屋に入るほど愚かではないですよ」
入って来た時もあったね。確かテントを開けたんだったかな。哀れアラナ、クリスティンさんの怒りを買って不幸にもを喰らったね。あの痛みは忘れられるものじゃない。
僕はクリスティンさんの首筋にもたれ掛かり、くすぐったい髪の毛から、いい香りがする。心臓もいつもよりドキドキだ。まるで爆発するくらいだよ、クリスティンさん。
もちろん、逃げられるものでは無く。引くことは許されない。僕は不退転の決意でクリスティンさんに挑んだ。
「クリスティンさん……」
クリスティンさんの首筋を舐めれば、微かな声を上げた。ベッドは後ろだ、このまま抱き上げて運んでしまえ。
ベッドに寝かせたクリスティンさんは、美しいと言う言葉だけでは当てはまらない程の輝きを持って、恥ずかしそうに顔を背けて心臓を締め上げる。
僕はクリスティンさんに覆い被さった。少しくらいの乱暴も許されるだろう。デリケートにするほど、心臓マッサージで余裕は無い。
唾液が滴るキスをしながら、パンツを下ろす。最近になって覚えた、鎧を取らなくてもパンツを下ろす方法だ。
日々勉強だね。その成果を見せれて良かったよ。すぐさま呪文を唱え相棒をショートソードに。そして狙いをすませて一直線に刺し込んだ。
濡れていないと思ったクリスティンさんの秘部は、あっさりと僕を受け入れ、背中を仰け反らせて悶えた。
「う…くっ、あぁあんん」
膨張した相棒は、ピタリと肉壁と一体化して膣内を広げた。もう奥まで届いているのが分かる。かき乱して奥のドアをノックしてやる。
「あ…あ…んん、はぁぁふう…ああっ…んんっ!」
相変わらず大きな声で鳴くクリスティン。これだとアラナじゃなくても居場所が分かってしまいそうだよ。唇で塞いでもいいが、鼓膜を破られるのは困る。
仕方がないから…… 仕方がないから手で押さえて声を潜めさせた。まるで無理矢理ヤッてるかの様なのが、僕の腰の動きを神速まで早くした。
「ふ…んぐぅ… ふ…ぅんぐぅ」
まるでレイプだね。されてるのが、僕の様な気が心臓の方でほうでする。繰り返し突き上げる度に声を殺させる僕の手は、繰り返し突き上げる度に心臓を殺すクリスティン。
神速、モード・スリー!
「あぁ…があぁ…があぁぁ…」
もう口を手で押さえる余裕は無く。全神経を集中して奥底まで突き続けた。最後の声が聞こえた時には僕も果てて、秘部をドロリとした白い液体で満たした。
久しぶりって程では無いけれどモード・ツーが普通に使うくらいに激しくなったのは、クリスティンさんの不幸にものレベルが上がったからだろう。
見えない力、評価のされ難い力の持ち主は魔王との決戦に向かってパワーアップしている。その練習台にされている僕も追い付かれない様に頑張らないと死ぬ。
勝利までの二十分はとても長く辛い戦いだった。残り五人。
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