異世界に来たって楽じゃない

コウ

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第百十二話

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 肩を貸してもらいながら僕は歩く。プリシラさんは僕より大きくて力もあるし、姉御肌の面倒見のいい人だ。

  
 でも、殺します。いつかヤり殺す。せめて、せめてベットで鳴かす。アラナも同罪だからな、覚えておけよ。忘れたら聞きに行ってやる、体に聞いてやる。
 
 それと白薔薇!    忘れないからな。死にかけてる僕に止めを刺すように刺されやがって。特にリース!    お前のウエストが細くて後ろからヤりたかったんだよ!    特にノーラ!    さすが火系の魔法使いだけあって中も暖かかったね。    特にニコール。    水系だけあって、漏らしたように愛液が流れ出たのはビックリしたよ。ローズさん鍛えすぎ、締め過ぎです。
 
 しかも四人で代わり替わり。アトラクションじゃねぇんだから、並ぶんじゃねぇ。チケット代もらうぞ。
 
 コアトテミテスの街中は、僕の体と同じくらい酷い有りさまだ。もう昼になるが冒険者やオーガ、トロールや黒炎竜の死体がまだ転がっている。爆発に巻き込まれたオーガや斬られた冒険者もいっばいだった。
 
 街の中央広場には白百合団が待っていてくれた。ソフィアさんは泣き崩れて抱き寄って来てくれて「生きてて良かった」と改めて実感したものだ。
 
 「だ、団長うぅ。大丈夫ですかぁぁ」
 
 泣き崩れながらも、僕の胸に飛び込んで心配をしてくれるなんて嬉しいね。団長やってて小さな幸せ。
 
 「ん?    クンクン。   何か匂います……」
 
 「ぼ、僕は大丈夫ですよ。それにこの怪我のほとんどが……」
 
 腹を貫通してプラチナ色のレーザーが、破壊された街を焼き払い冒険者やオーガ、黒炎竜の火葬が終わった。僕の命も終わった。
 
 
 気が付けばベットの上。見慣れた天井。いつも泊まっていた宿屋の天井。隣には裸のソフィアさん。何故だ!?
 
 胸の痛みも、脚の痛みも、腹に空いた傷口も、すっかり癒えて、疲れ以外は治った感じだった。いつでも働けそうだ。死にかけていたのに、もう働かなければならないのか。
 
 それとも、もう働いたのか。新技「寝ながらヤれる」が発動したのだろうか。ソフィアさんは満足げに眠っている。もう戦時報酬は払ってしまったのだろうか……
 
 いや、払って無いだろう。払ったとしても覚えていない報酬に何の価値がある!?    「お持ち帰り」をしても覚えていないなら、持ち帰った意味が無い。
 
 無意味な事より意義の有る事を、僕はそう思ってソフィアさんの胸に手を伸ばして、自分の胸をかきむしる。
 
 「……起きましたか」
 
 痛いのぉ、シンちゃんのお胸が痛いのぉ。ドア近くの壁に寄りかかり、静かに立っている姿も絵になるクリスティンさん。寝起きの麻痺は止めてぇ。
 
 「状況の報告をお願いします」
 
 もう少しソフィアさんの寝顔を見ながらイタズラしたかったけど、団長だからね。決して心臓麻痺に屈した訳ではない。本当なら全治何週間とかかる怪我も全快しちゃってるし。休む暇がないなぁ。
 
 「……戦闘は終結。……領軍が街を制圧し残党狩りも終了。……それが昨日の事です。……白百合団で怪我を負ったのは団長だけです。……現在は瓦礫の撤去等を行っています。……以上です」
 
 もう少し速く話そうね。取り合えず終わったか。これからはコアトテミテスの復興に力を注ぐ事になるのだろう。去って行った人達を呼び戻し、魔物が来る前の街に戻すのにどれだけ大変か。
 
 「僕は一日中、寝ていたの?」
 
 「……そうです。……戦時報酬は皆、頂きました。……ソフィアが最後です」
 
 お前ら僕が寝ている間に何してくれてんねん。シバくぞ。まあ戦争も終わったし報酬も個人的に寝ている間に終わって、楽だったから万事オーケーでいいかな。
 
 「そうですか。みんなが無事で良かったです。他のメンバーはどこですか」
 
 「……プリシラは飲んで寝てます。……アラナは瓦礫の撤去作業に、……オリエッタは自室で何かを作ってます。……ルフィナはアンデッド作りに行ってます」
 
 二人ほど注意が必要だけど放っておこう。いや、寝ているプリシラさんを襲うのも有りか。起き上がろうとして手を動かすとソフィアさんの手も一緒に動く。
 
 ん?   
 
 「クリスティンさんこれは何でしょう?」
 
 僕の右の手首には、赤い紐がソフィアさんと繋がれていた。
 
 「……手錠らしいです」
 
 これはどういう意味なのか。答えがいくつも浮かび上がり、どれも良い答えが出てこない。
 
 「僕はもう少し休むことにします。クリスティンさんも休んで下さい」
 
 ここで紐を千切ったりしたら、僕のを千切られそうな気がするのは思い過ごしだろうか。休みを促したのに部屋を出ていかないクリスティンさん。まだ何か用があるのかな。
 
 「……辺境伯のコーネリアス・リマーが呼んでました」
 
 それ大事。かなり前の段階で言って欲しかったよ。それと「様」か敬称を付けようね、貴族は五月蝿いんだから。
 
 「行けますかね?」
 
 僕は自分の繋がれている赤い紐上げながら聞いてみた。
 
 「……コアトテミテスが全壊しても良いのなら行けます」
 
 止めておこう。僕は怪我人なのだから。いや、病人にしてもらおう。胃が痛い、心臓が痛い、五臓六腑の全てが痛い、そんな気分だ。
 
 「もう少し休んでからにします。おやすみなさい」
 
 僕は布団を被って寝る事にした。リマー辺境伯に呼び出されたのは事の事情を聞きたいからだろうけど、それは後でもいいでしょ。コアトテミテスの街の方が大事だからね。おやすみ。
 
 「……ご一緒します」
 
 はぁ?    この人、布団に入ってきたよ。しかも脱いで。チャレンジャーなのか!?    馬鹿なのか!?    コアトテミテスが全壊していいのか!?    戦時報酬ほ払ったんだから、これ以上は団則違反じゃないの?
 
 固まる。突然の事でどうしていいのか分からない。見ていたい。クリスティンさんの美しい裸体を。
 
 「……たまにはいいですよね」
 
 何がどうすれば「いい」になるんだよ。「たまに」ってさっきヤったんだろ。記憶にないけど……
 
 右手には慈愛に満ち溢れ、自爆も辞さないプラチナのソフィアさん。左手には九頭身超絶美女の心臓麻痺のクリスティンさん。「我慢」を選ぶか、「死」を選ぶか、選択肢が他に見つからない……
 
 
 幸いにも死ぬ事は無かった。きっと日頃の行いが良いからだろう。ソフィアさんが起き出した時は流石に驚いて中に出してしまったけど、クリスティンさんは気にした様子も無く続けていた事に思わず感心してしまった。
 
 「ずるい……」
  
 最後には平穏無事に三人で事を成した後、白百合団の全員が揃って夕御飯を取る事になったのだが、この何日間の戦いで街への補給が滞り保存食を食べる事になってしまった。
 
 宿屋の親父さんは街を避難していたが、領軍と共に戻ってきてくれたお陰で、綺麗なベットで寝れる事になったが帰って来なければ無料で泊まれたのに残念だ。
 
 今回のスコアの戦時報酬は昨日の支払いで構わないと言われたので、それに甘える事にした。以前なら数える位の戦果だったのだけど、広域魔法が使える人が増えると不公平になりかねない。
 
 一度、戦時報酬の査定の見直しを検討しなければいけないのかも。最近は数より質を重視するように思える。数が減るのは助かるのだけど、誰かの真横とか戦闘中とか危ない報酬を求められても困る。
 
 食事の時にオリエッタから後で見せたい物があると言われ、部屋で待つことになった。最近は魔物との戦闘が多くて、ショートソードだと辛い事もあるからバスターソードくらいが欲しい。それを作ってくれてるといいなぁ、と言う淡い期待。
 
 部屋で待つことに一時間。流石に忘れてしまったのかと思ったけどノックの音に呆けていた頭も覚めた。
 
 部屋には全員が外套を頭から被って入ってきた。出発の予定は立てていないのに……    もしかして僕を抜きに行ってしまうのか。

 「団長~。面白い物を作ったです~」
 
 剣か?   盾か?   その格好はなあに?
 
 
 全員が揃えて外套を脱ぐとそこには……
 
   
 
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