異世界に来たって楽じゃない

コウ

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第二十話

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 マクジュル王国まで逃げて来た白百合団ま。ただ逃げた訳では無い。ちゃんとある程度の処理と証拠隠滅はしてきた。
 
 
 二人が死んだ後に屋敷の者達を呼んで「いきなり倒れた。心臓発作だ」と言って誤魔化して治療魔術師を呼ぶように手配した。
 
 見た目で刀傷はないし魔法も使えなさそうな僕達は、屋敷の者に捕らえられる事もなく善意の第三者になれた様だった。もちろんお金は頂いた。仕事は仕事だからね。ビジネスはクールにって誰が言ってたっけ。
 
 今回、クリスティンさんには悪い事をしてしまった。とても気分が悪い。言い訳に聞こえるかも知れないが、誰を連れて行っても結果は同じだったような気がする。もしかしたら、僕が切ってたかもしれないしね。
 
 気分は悪いが良い話も聞けた。帝国の名前はアシュタール帝国で同じだった。これで違うのは帝国の西側の三か国の名前だけみたいだ。
 
 記憶通りなら帝国の西側の三か国はトワルソルヤ、ハーベマー、ガイベラでしたが、今はプロメリヤ、マクジュル、ハリヌークになってる様で位置関係は同じだ。
 
 これからマクジュルの王都まで行って仕事をさがそう。反乱貴族の鎮圧はたいした事が無かったと記憶しているし、お金を稼いで安泰な老後を目指そう。
 
 王都までは五日ほどかかるが、隣に座ったアラナとはマクジュルに着く前くらいになって、話を出来る様になった。普通の他愛もない話ぐらいに。  
 
 「アラナ大丈夫だよ。ソフィアさんの冗談だから」
 
 「冗談で刺すッスか?    あの声を聞いた日、僕は夜も寝れなかったッス」
 
 「ソフィアさんも普段は可愛い声なのにあんなに凄い声が出せるんだね、怖いね」
 
 これだけの普通の他愛の無い話しをアラナとしたのは着く直前で馬車を降りる時だった。あのソフィアさんの声を聞いて、本気で冗談だと言える人は早死にすると思う。
 
 マクジュルの王都は記憶と違って華やかな感じの賑わいのある都市だった。記憶では三か国は戦争ばかりで僕達の儲け口だったが、今の三か国は違うのかもしれない。
 
 「傭兵ギルドに行って来ますから皆さんは自由にしていて下さい」
 
 宿に引き留める度に「何でも言う事をきく券」なんて出したりはしない。命は一つ、大事にしないと夜の営みに響く。
 
 「クリスティン、男を探しに行こうぜー」
 
 行ってらっしゃい。人死には無しでお願いします。おや、珍しいルフィナが何も無いなんて。やっぱり変わってきてるんだね。
 
 「私も着いて行ってもいいですか?」
 
 「どうぞ、どうぞ。一緒にいきましょう」
 
 ソフィアさんは隠れ巨乳だ。ローブを着てるから隠れてしまうのは仕方が無いんだけど、尚且つ可愛い。一緒に歩いて自慢する気分を味わえるくらい。
 
 アラナは僕達を見たら目を伏せていた。可哀想なアラナ。僕からソフィアさんに注意は出来ないよ。メテオストライクの雨を避ける傘は持ってないからね。
 
 傭兵ギルドでは何度も仕事を受けているので段取りが分かるのは前世の話。 ギルドの事は分からないふりをしてソフィアさんに色々な事を教えてもらった。
 
 仕事の中で「貴族の反乱」と書いてあるのではなく「軍事演習」と書かれているのを見つけた。これが貴族の反乱の鎮圧に参加する事になる。
 
 「演習ですか?」
 
 「どうやら、ここの王国軍の演習相手になるみたいですよ。演習の割りにお金はいいし、受けようかと思います」
 
 「そうですね。演習だと怪我の程度が低いので大丈夫だと思います」
 
 ギルドの受け付けに持って行くと二日後に王宮に集まるように言われた。今日、明日は自由だから僕の装備品が欲しいね。借りてばかりも悪いからね。
 
 皆のいる宿屋に帰る前に食料をソフィアさんと買っていると、不意に「幸せってこんなのかな~」と思ってしまった。
 
 可愛い女性と買い物したりして夕食を作ったり、普通の事を普通にして人を殺す事もなく、朝は太陽と共に起きて暗くなったら寝て。自然と共に女性と共に。少し感傷的になってるのかな?    こんな時があってもいいよね。
 
 宿屋に帰ってもプリシラさんとクリスティンさんは帰って来てなかった。前世ではいつもの事なので死人さえ出さなければ構いません。
 
 夕食を食べながら仕事の「演習」の事を話すと「つまらない」「面白くない」「血が出ない」と文句が出たが、団長権限かソフィアさんの一言か、どちらかが効いたようで「演習」は決定した。
 
 
 今日は疲れました。ルフィナとゆっくりラブラブして寝たい。その前に一緒にお風呂に入りたい。その前にはキスがいいかな。
 
 「たまには、ゆっくりラブラブしようよ!」
 
 「何を言ってるであるか!?    あの様な物を突き立てて何を言うのである! 」
 
 「ルフィナだって突き立てただろう。ソフィアさんにナイフまで貸したし!」
 
 ちなみにベッドを挟んで二人で裸で言い合ってる。ルフィナの右手に刃渡り三十センチはあろうかと言う大型のナイフが握られており、裸エプロンはエロっぽいですが裸ナイフは遠慮したい。
 
 「その粗末な物を切り取って私のコレクションにするである」
 
 大型ナイフを振って僕の粗末な物を切り取るしぐさをするルフィナは、さすがネクロマンサーと言えるほどの恐怖を感じる。あそこも縮みあがって、スライムになりそうだよ。それとコレクションの一部にはなりませんからね。
 
 「その粗末な物でルフィナを鳴かしてやるから早くベッドに入れ!」
 
 神速!    一気に近づきルフィナの右手を押さえる。チート持ちをなめるなよ。 押さえた右手から落ちたナイフを逆手で左手に持ち直し僕の脇腹に差し込もうとする根性は見上げたものだ。
 
 こんな根性を二十分ほど見せ付けられ、ようやくナイフを僕に向かって投げつけて来た。一応これが終わりの合図みたいだ。
 
 「好きにすればいいである」
 
 ベッドに足を閉じて手を広げた姿で寝転がるルフィナは全てを受け入れる様に見えた。ルフィナはネクロマンサーだが、簡単には魔術は使わない。ゾンビを出す事も黒魔術の攻撃魔法も使うことは無く、使うのはナイフ以外にはない。前世の話だけど……
 
 ルフィナは色白で可愛い。胸は普通だがスタイルはいい。男として見たら将来が楽しみになる女の子だ。ネクロマンサーとしてみたら最強、最悪、罪悪感ゼロ、人殺し、悪魔、悪鬼。
 
 ルフィナはそんな女性だ。そして僕はルフィナを抱きました、お仕舞い。で、終わるなら苦労は無い。
 
 ルフィナは観念したかの様にベッドに横たわっていた。  ここで何も考えずに押し倒した人は「さようなら」だ。
 
 慎重に気を許さず、ゆっくりとルフィナに覆い被さった瞬間にルフィナの体を縁取るかの様に無数のナイフが飛び出して来た。
 
 このくらいなら神速で対応、天井まで飛び上がるが、そこまでナイフは飛び出してくる。そこまで威力があるのは予測済み。
 
 天井を蹴って、窓の方まで飛んで事なきを得なかった。自動追尾か何かは知らないけど天井に何本か刺さりその他のナイフは追いかけるように飛んできた。
 
 「マジか!」
 
 ルフィナにこんな事が出来るはず無い。たぶんオリエッタが錬金術か何かで手伝ったに違いない。こいつら、いつの間に手を組んだんだ?

 避けながら手刀でナイフを叩き落とす。神速が無ければベッドで串刺しだ。神速があっても素手で刃物を落とすのは怖いんだよ。
 
 「クソッ!」
 
 全てのナイフを叩き落とし、ルフィナが毒づいているのが楽しい。そんな時は「ある」を付けない自が出る。ざまあみろ。
 
 「ルフィナ。誰に手伝ってもらった!?」
 
 「何の事であるか」
 
 手で隠す所を隠しながら気丈に言っても説得力は無いね。その姿も色っぽくて良し!
 
 「ルフィナに出来る訳が無いだろう。オリエッタだろ」
 
 「ち、違うである。私がやったで……」
 
 神速で近付きルフィナの喉元に僕を襲ったナイフを突き付け、もう一度聞く。
 
 「オリエッタに頼んだんだな?」
 
 「そ、そうである。オリエッタに頼んである」
 
 ナイフは首もとだけに付けている訳じゃない、全身を這わせる様に切り刻む様に。決して傷を着けたりはしない。刃の無い方で優しく優しくね。
 
 やっぱりオリエッタか。しかし珍しい、一人で襲いかかる事はあるけど結託する事は希だ。何かあったのか?
 
 このベッドはどうしようか?   飛び出たナイフでズタズタに裂かれてるし、取り合えずルフィナとは椅子でしようか。ベッドは明日オリエッタに直させるとして……
 
 「団長!」
 
 ビックリするから考える事をしてる時に大声は出さないでね。ナイフが刺さってルフィナの肌に傷を付けたら大変だろ。
 
 「なんでしょ?」
 
 「血が出てるのである!」
 
 ルフィナの落とした目線の先には僕のペティナイフが。そこから大声を出すほども無いくらいの血が浮かんでいた。きっとスライム状態の気分でナイフを避けていたから、ペティナイフのサイズを忘れていたのだろう。唾でも付けとけば直ぐに治るさ。
 
 「直ぐに見るである。椅子に座るのである」
 
 たいした事は無いけど、必死になって頼んでくるし、恥ずかしいけど診てもらおうかな。大事に使えば一生使える。六十……    五十までは使えるかな?
 
 「大丈夫だと思うよ」
 
 僕は椅子に座って大股開き。恥ずかしいけど、大切な所だし確認の意味も込めて診てもらう。血は横から薄っらと見えるだけなのに、覗き込むルフィナ。
 
 僕は恥ずかしいと思い顔を反らした。明日は晴れるかな……    ペティナイフを舐められる感覚。って、おい!    嬉しいけど治療じゃないのか!?    魔法はどうした!?
 
 「動くなである!」
 
 いつの間に拾ったか、自動で飛んで来たナイフを持ち、いつでも切り落とせるぞと、僕のペティナイフの根元に刃先を合わせて人質に……    チン質に取られた。
 
 「お前……    本気か!?」
 
 「これを切り落とせば大量の血が舞い上がるである。この誘惑に勝てるかどうか……」
 
 目が本気だ……    左手に僕のペティナイフを持ち、右手ではナイフの切れ味を証明しようと、根本に押し当ててる。
 
 「安心するのである。切り落とせばクリスティンやソフィアに殺されるのである。ただ少しの血を貰えればいいのである」
 
 そこまで言うとルフィナは僕のペティちゃんをナイフで切りつけた!    が、痛みは多少はあるが、切り落とされてはいない。その代わり血が出る、吹き出す様に血が出始めた。
 
 「これである!」
 
 じゅぼっと、咥えて吸い上げるルフィナ。舌を使い舐め上げる姿はスプラッター映画で見るように口元から血が溢れ出す。
 
 こんなスプラッター映画なんてねぇよ!    アダルトビデオにだってねぇ!    一回で二つを楽しめるなんて、なんてお得なんでしょう……    て、思わねぇよ!
 
 僕は痛みを堪えて固まる。どうすればいいんだ?    人質に乱暴を働く犯罪者相手にスワットは突撃したらいいのか?    それとも交渉で何とかするべきか?
 
 「充分である……」
 
 満足してくれたか。だが、その口はなんだ!?    笑う口元が血だらけなんだよ。ヴァンパイアがいたら、こんなのなんだろうね。
 
 さて、何をしてたんだっけ。もう良い子はお休みの時間かな。ルフィナ、終わったなら一緒に寝ようか。色々とあって疲れちゃったよ。
 
 「これである!」
 
 ルフィナは僕に背中を見せると自ら腰を降ろしてペティナイフに刺さりに来た。僕は呆気に取られ動く事さえ忘れていた。
 
 「中で吸い取るのである」
 
 訳が分かんねぇ。ペティナイフを自らの中に入れ、ルフィナが腰を振り始め、ぐちゅぐちゅといやらしい音を立てた。
 
 「うぐ、、、んぅあっ、、、」
 
 固まってるんじゃねえ!    犯人は人質から離れたんだ!    突入!    スワット突入だ!    僕はルフィナの手首を持って腰を打ち付けた。
 
 「あぁぁぁぁ、、、」
 
 神速!    チェーンガン!
 
 わずか一秒の斉射だったが、犯人を制圧するには充分だった。犯人は倒れ最後に残された力を振り絞って言葉に残した。
 
 「団長の赤い血を膣の中で感じる……」
 
 
 ルフィナよ……    その赤い血は白い物が交ざってピンク色になってるよ。
 
 
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