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第六話 ご主人様のピンチ

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 塔を目指していた俺はようやく目的の場所に到着した。
 だがしかし肝心のメイドさんの姿がない。
 さっきの話だと塔の前で待ち合わせのはずだったのだが。
 それと気になるのは急に頑丈院……いや、メイドさんからの通信が途絶えたことだ。

「メイドさんメイドさん、こちらご主人様です、どーぞ」

 反応はない。
 本当の名前を知られてしまったのが気まずいのか、あるいは機嫌を損ねているのだろうか?
 ここでメイドさんに見捨てられたら元の世界に戻れるきっかけもつかめない。
 どうしようかと思っていた時だった。
 おかしな連中が俺に近づいてくるのに気がついた。
 その姿は、使い古したアメフトの防具に身を包み、手には釘打ちバットや手製の斧が握られている。
 髪型はだいたいモヒカンで、いまにも「ヒャッハー!」とか言い出しそうな勢いだ。
「汚物は消毒だ! コノヤロー!」
「種モミよこせコラっ!」
 ヒャッハーな人たちだった。
 ゲームの世界だからNPC(ノンプレイヤーキャラクター)の決められたセリフなのだろうが、著作権とか関係ないのだろうかと余計な心配をしてしまう。
「あの、僕はツレと待ち合わせしてるだけのモブキャラなので気にしないでください。というわけですみませんが、これで失礼します」
 俺は丁重に誤魔化し……いや断りを入れてその場をさろうとしたがヒャッハーたちが立ちふさがる。
「ふざけるんじゃねえ!  この◯☆▢☓がーっ!」
 ヒャッハー1号が、ピー音の入る罵声を浴びせてくる
「てめえ、◯☆して☓▢して☆◯するぞ! コラぁ!」
 ヒャッハー二号が続けて言う。
 その背後では、他のヒャッハーたちが肩を揺らせて立っている。
 このNPCめ……好き勝手に言いやがって。でも相手は武器(しかも痛そうな)を持っているし、戦闘はしたくな。みたかぎり典型的ザコキャラだし、おそらくチュートリアル的に設定された敵だろう。
 戦闘力は低いはずだが、俺には対抗する武器がない。手に持っているのは鉢植えだけだ。頭に殴りつけることはできるかもしれないが、武器にはならないだろう。どうしよう……。
「このやろー! くたばりやがれー!」
 ヒャッハー3号が鉄製の斧を振り上げて俺に襲いかかってきた。
 もうだめだ! そう思ったときだった。
「あなたたち、わたくしのご主人様に何をしているのですか!」
 振り下ろされた斧が弾き飛ばされ、目の前には刀を構えたメイドさんが立っていた!
「ごしゅじんさま……いえ、マスター。もう大丈夫です! あとはわたくしにおまかせください」
 メイドさんはそう言って刀を振り上げた。た、たのもしい!
 だが、相手は所詮は雑魚キャラ。おそらくメイドさんの相手にはならないだろう。
「かかってこい!」
 よし、やっておしまいなさい! メイドさん!
「魔王よっ!」
「って、ザコキャラじゃないのかよっ!」
 俺は思わず叫んでしまった。
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