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4章

34★ 取り戻す方法

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「?! コ、コホン! 話を戻すぞ! ーー“護りの首輪“の効果は二つ。身体強化の効果と、あと一つは世界の狭間に落ちずに迷いなく戻ってこられる効果じゃ。ーーここまでは良いな?」

宰相ムスメからの圧に耐えられず、この部屋で、というかこの国で一番偉いはずの女王が慌てて説明を再開した。

「ーー血の宣誓をしたもの同士はおのずと引かれ合う。例え世界が違っても、超える術さえあれば相手の元には辿りつけよう。この魔道具を使えば帰りも問題ないはずじゃ」
「……なあ女王様。ちょっと口挟んでもいいかい?」

そう言ってエリザの言葉を止めたのはリュウだった。

「好きにするがよい。どのみち、そこの猫共も聞いておいた方が良い話のようじゃからな」
「ーーそういや読心スキル持ちだったなアンタ。まあそれはいいがーー世界を渡れるのは子供だけって話のはずだ。あの嬢ちゃんは兎も角、そこの猫たちは子供じゃねーだろ?」
「そーいえばアンタ達って歳いくつなのぉ?」

問われたシアンとマゼンタはお互いに見交わした後、首を横に振る。

「歳なんて分かりませんよ。誕生日だって知りませんから」
「ま、ノラだったんだからそんなもんだよな」
「それもそうねぇ~。んー、見た目で言えば二十代半ば? もうちょっといくかしら?」
「どちらにせよ、子供というにはとうが立っておりますわね」
「ちょっ、言い方! 宰相様ってホント毒舌だよな……」

確か前回も神様にケンカ売ってたし、と呆れた声でマゼンタが呟きーーそのまま硬直した。


「ーーッ!! なあ女王様!」
「おや、こっちの猫は気づいたようじゃのぅ?」
「勿体ぶってねーで、例の神様の居場所教えてくれよ!」

マゼンタの興奮した叫びに、マヤ、リュウ、シアンの三人はハッとした顔になる。

「神様って、ひょっとしてエリザベスの時間を奪ったっていうあの?」
「……おいおい、マジかよ……」
「なるほど、その手がありましたか」


一様に驚いた顔をする面子を眺めまわし、エリザベスは得意げに答える。

「時空神の居場所は、帝国領にある絶海の孤島じゃ」
「絶海の、ってことは相当遠いのかしら~?」

首を傾げるマヤに、サイラスが微笑みながら補足した。

「そうだね、大陸の端からおよそ一千キロは離れている。我が国の領土とはなっているが、遠すぎて管理はしていないよ。かろうじて神殿はあるから駐在の神官達はいるけれど、定住している人はいないんじゃないかな」
「まああ奴にうたからといってお主らの望み通りにいく保証はないが、行かんことには始まらんからの。島への上陸許可はサイラスから出してもらっておる! ーーま、非公式にじゃが」
「おい……さらっと気になる単語混ぜんな。非公式ってなんだよ」

嫌な予感しかしないんだが、とこめかみを押さえながらリュウが呻く。

「ふふ、君は苦労人っぽいね。ーー件の神の島に入るのは構わないよ。言った通り国としては管理していないからね、神殿の連中にバレなければ目を瞑ろう。ただし、それ以外の立ち入りは認められない」
「ーーどういうことでしょうか」

胡乱な目で見てくるシアンをにこりと見つめ返す前皇帝陛下。

「普段島への移動は途中途中の島に置かれた転位魔法陣を使うんだが、その使用は許可できない。帝国にとって重要な施設に設置されたものもあるからね、友好国とはいえ他国のものを入れる訳にはいかないんだ。あとあの辺はウチの領海だから、船も禁止だよ」
「ーーだから? もうハッキリ言ってくれよ、まどろっこしいのキライなんだけど?」

苛つき出したマゼンタにも動じず、ではお望みどおりにと前置きした上で、サイラスは楽しげに言葉を続ける。

「つまりねーー猫君たちには、転位陣なしで島までの一千キロを一気に転移してもらう」

できないとは言わないよねとにこやかにトドメを刺すサイラスは、やはりクロエと親子なのだと皆んなが納得した瞬間だった。









****************************

リュウがマヤをこの世界に連れ込んだときの話は
『異世界から来た迷い犬は婚約破棄令嬢を拉致することにした』
という作品の方で書いております。
よろしければこちらもご覧ください(*・ω・)ノ
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